【完結】金貨三枚から始まる運命の出会い~家族に虐げられてきた家出令嬢が田舎町で出会ったのは、SSランクイケメン冒険者でした~

夏芽空

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【13話】ミレアが欲しいもの

 ミレアとラルフは、夕食を終える。
 
 先ほどのことを引きずっていたのか、最初の方はラルフのテンションがいつもより低かった。
 
 しかしそこは、ミレアが頑張って話を盛り上げた。
 その頑張りもあって、最後の方はいつも通りの楽しい夕食の時間にすることができた。
 
 テーブルに座っているラルフが、「そうだ」と唐突に呟いた。
 
「忘れないうちに渡しておかなくてはな」

 懐に手を入れたラルフは、大きな金貨を三枚取り出した。
 それは大金貨と呼ばれるもので、一枚で金貨十枚分の価値がある。
 
「受け取ってくれ」

 三枚の大金貨を、ラルフが手渡してきた。
 
 これを金貨の価値に換算すると、なんと三十枚。
 リグレルが迷惑料として渡してきた金額の、十倍もの額だ。
 
 急に大金を渡されたミレアは、目をぱちくりさせる。
 
「この金貨はいったい……」
「これは給料だ。君がここに来て一か月になるからな」
「ですが、いくらなんでもこれは多すぎませんか?」
「そうか? ミレアの働きに見合った適正な金額だと思うが。むしろ、もっと多くてもいいくらいだ」

 平然と言ってから、ラルフはゆっくり頷いた。
 
(いやいやいや、どう考えても多すぎるわよ!)

 心の中でツッコミを入れる。
 
 家事は滞りなくこなしてきたつもりだし、こうして仕事振りを評価してくれる気持ちは嬉しい。
 だが、大金貨三枚に値するかというと、どう考えても違うと思う。
 
「これで欲しい物を買って、自分を彩るんだ。そうして、自分を幸せにする一歩を歩めばいい」

 ニコリと笑ってから、ラルフは二階の私室へ向かった。
 給料についての話をもっとしたっかたのだが、ここで終わってしまう。
 
「幸せになるために、私が欲しい物か……」

 自分のための買い物など、これまでしてこなかった。
 何が欲しいかなんて、考えたことすらことない。
 
 ラルフに託された問題は、ミレアにとって非常に難しいものだった。
 
 
 翌日。
 
 ミレアはシルクットの街を歩いていた。
 色々な店を回りながら、自分が幸せになれそうな物を探していく。
 
 しかし、まったく見つからない。
 
 ビビっとくるものがないのだ。
 どれを買っても心が満たされない気がする。
 
(なんて難しいかのかしら)
 
 かれこれ三時間ほど歩きまわっているが、未だ収穫はゼロのまま。
 簡単には見つけられないと覚悟していたが、まさかここまでとは思わなかった。
 
 
 すっかり疲れ切ったミレアが次に向かったのは、この街唯一の服飾店だった。
 
 店内に入り、洋服を見てみる。
 以前と同じく、セール中で安売りされている品が何点かあった。

「安いわね。もう少しストックを増やしたいし、買って帰ろうかしら」
 
 そう思ったのだが、やっぱりめる。
 
 今回の目的はそうではない。
 セール中の洋服を買ったところで、幸せになれる気がしなかった。
 
 続けてドレスを見てみる。
 以前とは違い、今の手持ちならドレスだって買うことができるだろう。
 
 しかし、どうも食指が動かない。
 
 先ほどの洋服と同じだ。
 これを買ったところで、今回の目的は果たせない気がした。
 
 最後にミレアは、アクセサリー類が置いているスペースへ向かった。
 
 ショーケースの中には、美しいイヤリングやネックレスが飾ってある。

(綺麗だわ)

 そんな感想を抱くが、それだけで終わってしまう。
 欲しいとまでは思わなかった。
 
 そんな時、ミレアの視界にチラッと入り込んできたものがあった。

 それは、革製のネックレス。
 装飾のない、非常にシンプルなデザインをしている。
 
 そのネックレスは、安全祈願グッズとして紹介されていた。
 
「ラルフ様」
 
 ネックレスを手に取り、じっと見つめる。
 
 冒険者として危険な依頼をこなしているラルフを、あらゆる災厄から守って欲しい。
 頭に思い浮かんだのは、彼のことだった。
 
「やっと見つけたわ!」
 
 ビビっと来た物と初めて出会った。
 これこそがきっと、求めていたものに違いない。
 
 探し物を見つけられて、ミレアのテンションは急上昇。
 
 だが一瞬で、テンションは急降下。
 昨晩の会話が引っかかってしまった。
 
(私を彩るものを買え、ラルフ様はそうおっしゃっていたわ。だから、ラルフ様への買い物じゃダメよね)

 せっかく欲しい物が見つかったと思ったのに、また振り出しに戻ってしまった。
 ネックレスを泣く泣く元の位置に戻す。
 
 
 結局何も買わずに、服飾店を出たミレア。
 色々探してみたのだが、やっぱり欲しい物は見つからなかった。
 
 出入り口の前に立ち止まり、大きなため息を吐く。
 
 その直後、女性が声をかけてきた。
 
「あれ、ミレアちゃんじゃない!」

 元気な声の主は、ラルフのパーティーメンバーである、冒険者のエリザだった。

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