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【15話】お返しをしたい ※ラルフ視点
バタン!
私室の扉を勢いよく閉めたラルフは、ベッドへダイブ。
これでもかというくらいに、顔面を枕に押し付ける。
そして、叫ぶ。
「可愛すぎるだろっっ!!」
先ほどのは反則だった。
ニコリと笑ったミレアの笑顔が脳裏に焼き付いている。もう一生忘れることはないだろう。
あのままリビングにいれば、感情の赴くままにミレアを抱きしめていたはずだ。
しかしそんなことをすれば、彼女に嫌われてしまうかもしれない。
ことを起こす前にラルフは、私室へ退散してきたのだ。
「今日はもう寝てしまおう」
興奮した気持ちを抑えつけるように、ラルフはギュッと目を瞑る。
だが、まったく寝付けない。
貰ったネックレスとミレアの笑顔が、ずっと頭に浮かんでいる。
「お返しをしなくてはな」
ポツリとした呟きが、部屋の暗闇に溶けた。
翌日。
ギルドからの依頼を終えたラルフは、ギルドで依頼達成の報告を終える。
「やっぱりラルフの魔法は別格だな!」
「そうね。しかも以前より、強力になっている気がするわ」
今日の依頼を一緒にこなしたパーティーメンバーのルークとエリザが、褒めたたえてくれる。
くすぐったくなる発言に、いつもなら何かしらの注意をしていただろう。
しかし今日のラルフは、それに構わなかった。
「二人に相談があるのだが、時間はあるか?」
そう言うと、二人は顔を見合わせた。
「ラルフが俺達に相談なんて珍しいな」
「天変地異の前触れかしらね」
軽口を叩きながらも、二人は了承してくれた。
ギルド内にあるテーブル席に、三人は座る。
「実は昨日、ミレアにプレゼントを貰ったんだ。だから俺は、お返しをしようと考えている」
「貰ったら返す。人として大事なことだな」
「あんたは良く忘れているけどね」
うんうんと頷くルーク。
エリザのツッコミは華麗にスルーしている。
「渡すものはもう決まっているのか?」
「あぁ。ドレスにしようと思っている。前に服飾店で見かけたドレスだ。ミレアが着たらきっと似合う」
「おお! いいじゃねぇか!」
「へぇ、やるじゃないラルフ!」
二人が盛り上がる一方、ラルフは真剣な顔になった。
「それで、相談したいのはここからだ」
「何を相談するんだよ。あとは渡すだけじゃねぇか!」
ツッコんできたルークを見ながら、ラルフは首を横に振った。
「ドレスを貰って、ミレアは心から喜ぶのだろうか。そう考えたら、何をプレゼントにすべきか分からなくなってしまったんだ」
「変えなくていいだろ。こういうのはあんまりフラフラせず、ビシッといくもんだ!」
「私も変えなくていいと思うわ。ラルフが選んだものなら、ミレアちゃんは絶対に喜んでくれる。そういう子でしょ?」
「……そうだと嬉しいのだが、いかんせん自信が持てないんだ」
エリザの言う通り、何をプレゼントしてもミレアは喜んでくれるだろう。
笑っている顔が容易に想像できる。
だが、どうせなら心から喜んで欲しい。
そう思うと、プレゼントする勇気がとたんになくなってしまった。
ため息をついたエリザは「仕方ないわね」と呟く。
「そんなに心細いなら、私達もついて行ってあげるわよ」
「仕方ねぇな」
「いいのか!」
二人がいれば勇気を貰えるかもしれない。
背中を押してくれる心強い提案に、ラルフは弾んだ声を上げた。
「お姉ちゃんとしては、可愛い妹が気になってしょうがないのよ」
「……よく分からないが、とりあえず礼を言うぞ。二人ともありがとう」
エリザの言っている意味が理解できなかったが、二人が来てくれることには変わりない。
ルークとエリザがパーティーメンバーで本当に良かった。
相談を終えた三人はギルドを出た。
「俺とエリザは寄っていくところがある。先に行って待っていてくれ」
「分かった」
二人と別れたラルフは、急いで服飾店へ向かった。
ドレスが展示されているスペースへ行き、一つのドレスを手に取る。
鮮やかな青色のエンパイアドレス。
気品あふれるそのドレスこそが、ラルフがプレゼントしようとしているものだった。
(喜んでくれると嬉しいのだが)
ハラハラドキドキしつつ、ラルフはドレスを購入。
服飾店を出る。
自宅に戻ると、いつものようにミレアが出迎えてくれた。
「おかえりなさいませ、ラルフ様」
「ただいま。急で悪いのだが、このあとルークとエリザがここへ来る」
「わあ! それは楽しみです! お二人の夕食も準備しますね」
「迷惑をかけてすまないな。俺も手伝うよ」
「お願いします!」
ミレアと一緒になって、夕食の準備を行っていく。
そうして夕食の準備を終えた頃。
ちょうどベストなタイミングで、ルークとエリザがやって来た。
「いらっしゃいませ。お二人とも、どうぞお上がりください」
客人二人に挨拶するミレア。
そのまま、夕食が載っているテーブルへと案内する。
「ミレア、少しいいだろうか」
夕食が始まる前に、プレゼントを渡そうと決めたラルフ。
決意が揺らいでしまう前に、ちゃんと伝えておきたかった。
先ほど購入してきたばかりのドレスを、ミレアへ手渡す。
「昨日のネックレス……その、とても嬉しかった。言葉では言い表せないくらいにだ。これはそのお返しだ。受け取ってくれると嬉しい」
いきなりドレスを手渡されて、面食らっているミレア。
やがてその顔が、嬉しそうな笑顔に変わる。
「嬉しい……とっても嬉しいです! ラルフ様からのプレゼント……! 私、これを一生の宝物にします!!」
その表情から、その声色から。
本心で言ってくれているのが、真っすぐに伝わってくる。
(プレゼントを買って本当に良かった)
心より安心したラルフは、大きな笑みを浮かべた。
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