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【20話】好きだからこそ
「パーティー……ですか?」
ミレアは首を傾げた。
唐突にパーティーに出てくれと言われても、何が何だかよく分からない。
「来月、王家主催のパーティーが王都で開催される。俺のパートナーとして、一緒に出席して欲しい」
「私で良いのでしょうか?」
王家主催ということは、ラルフは冒険者としてではなく第三王子として出席することになるだろう。
そのパートナーが身元不詳な家出令嬢となれば、悪評がついてしまうかもしれない。
「君が良い。君じゃなきゃダメだ」
自信の無い問いかけに、ラルフは即答してくれた。
強い言葉でそう言ってくれたことが、ミレアは本当に嬉しかった。
ドレスをプレゼントしてもらってからの二か月で、ハッキリと自覚したことがある。
それは、ラルフが大好きということだ。
ラルフにだけ感じていた、体が燃えるような熱い気持ちの正体。
あの時はまだ、それがよく分からないでいた。
でも、今なら分かる。
きっとそれは、リグレルよりもずっと深くラルフを想っていたからだ。
同じ好きでも、深さがまったく違っていた。
「それで、どうだろうか?」
「……少し、考える時間をくれませんか」
ラルフが大好きだからこそ、ミレアは彼の気持ちにすぐ応えることができなかった。
パートナーとして出席することで、迷惑をかけてしまったら。
そう考えると怖くて、頷くことができなかった。
「分かった」
小さく言ったラルフは、それ以上は何も聞いてこなかった。
彼なりの優しさだろう。
申し訳なさでいっぱいになるミレア。
ズンと重い痛みが、心にのしかかる。
しかし今はどうすればいいか分からず、何もできなかった。
翌日、昼すぎ。
家事を一通りこなしたミレアは外へ出る。
十分ほど歩き、赤い屋根の一軒家に到着する。
ここはエリザの家だ。
昨晩の件で思い悩んでいるミレアは、どうしても話を聞いて欲しかった。
扉をノックすると、すぐにエリザが顔を出した。
「ミレアちゃんじゃない! さ、入って入って!」
「お邪魔します」
ウキウキしているエリザに、軽く頭を下げるミレア。
掃除の行き届いているピカピカの玄関をくぐり、リビングに入る。
「そこに掛けて」
「ありがとうございます」
エリザに促されるまま、横長のソファーにちょこんと座る。
「どんなことを相談しに来たの?」
そう言って、ミレアのすぐ隣に腰を下ろしたエリザ。
優しい笑みを浮かべている。
まだ何も言っていないのに、ミレアが来た目的を見事に見抜いた。
やっぱりエリザはすごい。
「一緒にパーティーに出席して欲しいと、ラルフ様に言われたんです」
昨晩の出来事を全て話す。
途中、ラルフへの申し訳なさで胸が苦しくなったが、なんとか最後までやり抜いた。
なるほとね、と呟いたエリザは、じっとミレアを見る。
「ミレアちゃんはどうしたいの?」
「一緒に参加したいです。でもそうしたら、ラルフ様に迷惑がかかってしまいます」
「なんでそう思うの?」
「私、家にいるのが耐えられなくて、家出してこの街へ来たんです。身元が定かでない私が第三王子のパートナーと出席すれば、ラルフ様に悪評がついてしまいます」
「それは心配しなくていいんじゃないかな」
さらっと言ってから、エリザはニッコリ笑った。
「ミレアちゃんが心配していることは、ラルフなら全て分かっていると思うよ」
エリザの言う通りかもしれない。
ラルフはものすごく頭がいい。
常に先を見据えて行動している人間だ。
ミレアが心配しているようなことなど、すでに計算済みの可能性が高い。
「その上であいつは、ミレアちゃんに声をかけたんだ」
ミレアの両肩を掴むエリザ。
とても真剣な表情をしているが、そこには優しさも混ざっている。
「だから大丈夫。ミレアちゃんは自分の気持ちに素直になって良いんだよ」
温かな言葉がミレアの全身を包む。
抱えていた不安やモヤモヤ。その全部が、バーッと消え去っていく。
(私、素直になって良いのね)
緑の瞳から、ポロポロと涙がこぼれていく。
何度手で拭っても、全然止まってくれない。
「よしよし」
手を伸ばしたエリザが、ミレアの頭を優しく撫でる。
ミレアが落ち着くまで、エリザはずっと撫でていてくれた。
「エリザさん、私、パーティーに参加します」
泣き止んだミレアの瞳には、もう迷いはない。
強い意志をもって、その言葉を口にした。
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