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第一話 「忘れる者と、拒むもの」
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「記憶喪失の案件は終わったか」
「えぇ。二人とも今はストリートピアノで練習してるらしいよ」
“Call ”の事務所でつぐみはコーヒーを淹れていた。二つのうちひとつを陽希の前へおくと、「サンキュ」と言われた。
つぐみは窓際のスツールに腰掛ける。いつもは陽希の定位置でもあるのだが依頼人がいるわけでもないし、心配する必要はない。窓の外はまだ昼間だった。壁の時計を見ても、三時を指している。普通の会社員ならまだ仕事をしている頃だろう。
「そういえば」と陽希が切り出す。
「いつから十葉ちゃんがピアノ奏者だと気が付いていた?まさか最初からわかっていたってことはないだろ?」
陽希の指がマグカップに伸ばされる。彼の左手のやや細めの薬指には、指輪がはまっている。ほんの少し赤黒く錆びついている。とはいえ大事にしているのか、銀色の金属光沢はまだ失われていない。多分、とても大切な人からの贈り物。
つぐみは、指輪なんて、見ていない。
「あー最初に気がついたのは、十葉ちゃんの指の質、、、かな?」
「質?」
「うん。元々気にはなっていたんだけど。十葉ちゃんの指がね普通の人よりも一本一本が太くしっかりしていて、筋肉もついていて、関節も柔らかそうだったのよね。ほぼ日常的に手を多く使っているだろうなって考えていたんだけど。決め手は駅での目撃情報かな。南口で指を使いつつ、下校中にやれることなんて、ストリートピアノしか考えられないじゃないの!」
「えぇ。二人とも今はストリートピアノで練習してるらしいよ」
“Call ”の事務所でつぐみはコーヒーを淹れていた。二つのうちひとつを陽希の前へおくと、「サンキュ」と言われた。
つぐみは窓際のスツールに腰掛ける。いつもは陽希の定位置でもあるのだが依頼人がいるわけでもないし、心配する必要はない。窓の外はまだ昼間だった。壁の時計を見ても、三時を指している。普通の会社員ならまだ仕事をしている頃だろう。
「そういえば」と陽希が切り出す。
「いつから十葉ちゃんがピアノ奏者だと気が付いていた?まさか最初からわかっていたってことはないだろ?」
陽希の指がマグカップに伸ばされる。彼の左手のやや細めの薬指には、指輪がはまっている。ほんの少し赤黒く錆びついている。とはいえ大事にしているのか、銀色の金属光沢はまだ失われていない。多分、とても大切な人からの贈り物。
つぐみは、指輪なんて、見ていない。
「あー最初に気がついたのは、十葉ちゃんの指の質、、、かな?」
「質?」
「うん。元々気にはなっていたんだけど。十葉ちゃんの指がね普通の人よりも一本一本が太くしっかりしていて、筋肉もついていて、関節も柔らかそうだったのよね。ほぼ日常的に手を多く使っているだろうなって考えていたんだけど。決め手は駅での目撃情報かな。南口で指を使いつつ、下校中にやれることなんて、ストリートピアノしか考えられないじゃないの!」
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