化学ファンタジア

saiha

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理系世界編

15話:核爆弾

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 セントラルドグマのいる大きな繭のような物が妙に光出した。そして、新たな進化を遂げてしまった。
「これが私の最後の進化。誰も殺せはしない。あのフェノールから言われた通りにして良かったぞ…。そこにいるカスどもを自然の猛威によってひれ伏すが良い!」
 セントラルドグマの力はレセプター国を覆うほどの強大で全ての生物が究極進化してしまうほどの能力で、進化した生き物は一斉にエントロピーたちに襲い掛かった。
「これはまずいな。撤退するにしても、敵が多すぎる。そして、この進化何なんだ…気持ち悪い。変なところから腕生えてるわ、やけにステロイド使い込んでマッチョに変貌してる奴もいる。残ってる水素爆弾では太刀打ちできんな」
 そこでボディビルダーの話するか?とアルカリ王は思ったが、その敵の進化する姿を見て吐き気を催した。そして、セントラルドグマは衝撃的な一言を放った。
「お前たちがモタモタしてる間にこの国は塩基国へと進軍を進めていたのだ!爆弾で足止めしようとしていたらしいが残念ながら我が国の治癒力をナメるな!アルカリ王よ。お前は良い奴だったが、エントロピーと手を組むとは思ってもなかったぞ。お前の治める国と共に散るがいいわ!」
 セントラルドグマから出されたのは、大きな木のようなものを複数召喚した。そしてその木は重なり合い、一本の太く長い木へと育った。雨雫のようなものが落ちてきて1人の兵士がそれを誤って口に含んだ瞬間、体に耐えられない進化をし始めて弾け飛んだ。
「皆のもの、間違えてもこの水を飲むでない!そしてこの木を何が何でも切り倒すぞ!」
 エントロピーは一匹の虫を捕まえて複製を始めた。そして多くの虫を作り出して兵士の代わりに進軍を行った。虫責めならぬ、虫攻めという奇抜な策だ。
「こりゃ一体何ですかい?白くてしかも団結力もありそうだが…」
「こいつらはシロアリだ。木を食べて生活をする害虫扱いされる虫の一種だ。我が国では一時期、シロアリによる被害で大変な損害を食らった。そこで、逆利用すれば何とかなるだろうと思ってこのシロアリを使用する事にした。ただし、普通のシロアリではない。"爆発する"シロアリだからな!」
 もはや物理を超えてしまっている、と思ったがエントロピーの策はシロアリに核爆弾を食わせて死ぬと同時に爆破する仕組みを秒で作り出した。木はみるみると朽ちる一方で、シロアリはその勢いを衰える事なく進軍を行なった。
「おのれ…こうなったら…」
 セントラルドグマはもう一段階の進化をしようとした時、エントロピーはセントラルドグマの首に波状の剣を突き付けた。
 「お前の負けだ。諦めろ。今は殺さないが、両国を侵害した罪を犯した場合は立場関係なく公開斬首刑だ。おい、拘束して牢に叩き入れとけ!」
 部下は長い紐のような物に電気を流した物をセントラルドグマの手首と進化を遂げる原因となる胸元のコアを切り取った。切り取られた時のセントラルドグマは声を荒げながら抵抗をしたがそれも虚しく、コアはエントロピーの軍によって保管された。塩基国へ帰国した両軍はマーキュリー王とフラーレン、コバルトに事情を話し、マグネシウムのことも話した。
「…そうですか。マグ姐さん。最後まで尽力してくれたこと、そして私たちのような異国民に優しく接してくれてありがとうの意を込めて追悼の意を捧げましょう」
 コバルトの提案に一同は空に向かって黙祷を捧げた。それぞれ涙を流していたがそれに応えるように空に銀のような輝きを持つ星が一段と輝いた。そして、それに応えたのか流れ星のように静かに消えた。涙の別れから夜が明けた。エントロピーとアルカリ王はいつもの通りトンネルづくりのために現場監督へ向かった。しかし、そこにコバルトの姿は無かった。よほど悲しかったのか、フラーレンと一緒に引きこもっていた。マーキュリー王はそれを静かに見守っては作業の様子を伺ったりと出来る限りのことをした。
「やぁコバルト君…。心は大丈夫かい?結構やつれてしまったが大丈夫なのか…?と言ってもアクリロニトリルやプロパノールという信頼できる人が死んでしまい、ましてやマグネシウム王妃まで死んでしまったトラウマを乗り越えるのは難しい話だよね…」
 フラーレンはただ、コバルトの虚しい姿を見つめることしかできなかった。励ましたくてもどう声をかければ良いのか分からないからだ。二人が持ってる荷物は儀式に使う器具と塩酸、水酸化ナトリウム、試薬のフェノールフタレイン、そしてアクリロニトリルから貰ったお守りを加工したネックレスに護身用のTNTだった。そんなフラーレンとコバルトを見てたかのようにお守りのネックレスは悲しく、光も疎らにになった。数日経ったある日、見覚えのある人が塩基国へ入国した。その人の手には、塩基国とホイートストンブリッジ国がレセプター国と戦争をしたという新聞を握りしめていた。
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