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翌日。
私はオルグレン辺境伯が滞在しているという、王都のタウンハウス(別邸)を訪ねていた。
昨夜、彼が置いていった『雇用契約書』。
あれを読み込めば読み込むほど、私の事務官としての血が騒いでしまったのだ。
『第5条:残業代は基本給の15割増しとする』
『第8条:業務に必要な糖分(おやつ)は領主のポケットマネーから無制限に支給する』
『第20条:上司(オルグレン)が理不尽な命令をした場合、部下(ダーリ)はこれをハリセン等で却下する権利を持つ』
……ハリセンって何? という疑問はさておき、条件が良すぎる。
あまりにもホワイトだ。
王家という超・ブラック企業に勤めていた私にとって、この契約書はまるで天国への招待状のように見えた。
だが、父上は言ったのだ。
「ダーリよ、騙されるな。これは高度な『愛の告白』だ」と。
「『一生そばにいてくれ』とは言えないから、『終身雇用』という言葉を使っているのだ。不器用な男の精一杯のアプローチだぞ!」
父上は朝からハンカチを噛んで感動していたが、私は半信半疑だった。
あのクマ……もとい、閣下が?
あの氷のような目で?
その真偽を確かめるためにも、私は直接ここへ乗り込んだのである。
「どうぞ、こちらへ」
案内されたのは、飾り気のないシンプルな執務室だった。
そこには、大量の書類に埋もれるようにして、オルグレン辺境伯が座っていた。
「……来たか」
彼は顔を上げると、私を見て少しだけ眉を動かした。
「早いな。もう決めたのか」
「ええ、まあ。条件があまりにも魅力的でしたので」
私は単刀直入に切り出した。
対面の椅子に座り、彼と向き合う。
今日は軍服ではなく、ラフなシャツ姿だ。
鍛え上げられた筋肉が布越しにも分かり、改めてその威圧感に圧倒されそうになる。
「ですが、一つだけ確認させていただきたいことがあります」
「なんだ」
「この契約……父は『これは実質的なプロポーズだ』と申しておりまして」
私は彼の反応を伺った。
もし彼が赤面したり、視線を逸らしたりしたら、父上の説が濃厚だ。
その場合、私は「就職」ではなく「婚約」という新たな枷(かせ)を背負うことになる。それはちょっと、いや、かなり困る。
しかし。
オルグレン辺境伯は、キョトンとした顔をした。
「プロポーズ? ……求婚のことか?」
「は、はい」
「なぜそうなる?」
「……へ?」
彼は心底不思議そうに首を傾げた。
「俺は『事務官』として契約したいと言ったはずだ。妻を募集しているわけではない」
「で、ですよね! あーよかった!」
私は思わず拍手した。
「やっぱり父上の勘違いでしたわ! あー危ない危ない。『一生大事にする(雇用的な意味で)』を『一生愛する』と脳内変換してましたもの」
「……ふむ。アークライト公はロマンチストなのだな」
「ええ、残念な方向に」
私は胸を撫で下ろした。
これで安心して就職できる。
「では、確認ですが。私に求められているのは、あくまで『辺境伯領の事務処理』および『領地経営のサポート』。これだけでよろしいですね?」
「ああ。それと、俺のスケジュール管理と、対外的な交渉事の代行と、あと……」
彼は少し言い淀み、視線を泳がせた。
「……俺が計算間違いをした時の、修正も頼みたい」
「計算、苦手なんですか?」
「……指が太くて、そろばんが弾けんのだ」
彼は自分の大きな手を広げて見せた。
確かに、あの丸太のような指では、小さなそろばんの珠を弾くのは至難の業だろう。
「あと、細かい文字を書くとペンが折れる」
「筆圧!」
「ゆえに、書類仕事が溜まる一方だ。……助けてくれ」
最後の一言は、切実だった。
北の英雄、氷の狼と恐れられる男が、事務仕事に敗北して助けを求めている。
そのギャップに、私は思わず吹き出しそうになった。
「ふ、ふふっ……! なるほど、事情はよく分かりました」
私は笑いを噛み殺し、居住まいを正した。
「いいでしょう。その契約、お受けいたします」
「本当か」
彼の目が輝いた。
獲物を見つけた肉食獣のような、ギラリとした光。
「はい。ただし! 一つ条件を追加させていただきます」
「なんだ。給金を倍にするか? それとも別荘が欲しいか?」
「いえ、そうではなく」
私はビシッと人差し指を立てた。
「『定時退社』です。これだけは譲れません」
「……テイジ?」
「日が沈んだら仕事は終わり。あとは私の自由時間。休日もしっかり頂きます。王太子殿下のように、夜中の三時に『ポエムができたから聞いてくれ』と呼び出すようなことは、絶対に禁止です!」
私の剣幕に、オルグレン辺境伯は目を丸くした後、真剣な顔で頷いた。
「……約束しよう。俺も夜は寝たい派だ」
「交渉成立ですね!」
私は持参した契約書に、サラサラとサインをした。
そして、それを彼に差し出す。
「ダーリ・アークライト、本日よりオルグレン辺境伯家の筆頭事務官として就任いたします。……どうぞ、こき使ってくださいませ。定時の範囲内で」
「ああ。歓迎する」
彼は契約書を受け取ると、その大きな手で、私の小さな手を包み込むように握手をした。
手が熱い。
そして、ゴツゴツしていて硬い。
けれど、ギルバート殿下との握手のような、嫌な湿り気はなかった。
乾燥した大地のような、頼もしい手だった。
「……よろしく頼む、ダーリ」
「はい、閣下」
「オルグレンでいい」
「では、オルグレン様」
こうして。
私は「悪役令嬢」から「辺境伯領の凄腕事務官(予定)」へとジョブチェンジを果たしたのだった。
***
屋敷に戻ると、父上が待ち構えていた。
「どうだった!? 式の日取りは決まったか!?」
「お父様、残念ながら(?)違います。純粋なヘッドハンティングでした」
「な、なんだと……? あの色男が、お前の魅力に気づかんとは……節穴か?」
「事務処理能力という魅力には気づいてくれたようですけど」
私は契約書の写しを見せた。
「明日、北へ向けて出発します。荷造りを急がないと」
「あ、明日!? 早すぎないか!?」
「善は急げと言いますし、何より……」
私は窓の外を見た。
王宮の方角。
「そろそろ、ギルバート殿下が『やっぱりダーリがいないと無理だ』と泣きついてくる頃合いです。捕まる前に逃げないと」
「……確かに」
父上も真顔になった。
「よし、分かった。馬車の手配は任せろ。最高の馬を用意しよう」
「ありがとうございます。あ、それとマリーも連れて行っていいですか? 彼女も『王都の空気は肌に合わない』と言っていたので」
「構わんとも。……寂しくなるな」
父上が少しシュンとする。
私は苦笑して、父の背中をポンと叩いた。
「たまには帰ってきますわ。それに、北の美味しい海産物を送りますから」
「おお! カニか! カニが良いぞ!」
「ふふ、現金ですね」
こうして、私の王都脱出計画――もとい、新天地への旅立ちが決まった。
婚約破棄からわずか三日。
怒涛の展開だが、不思議と不安はなかった。
むしろ、これから始まる未知の生活に、胸が高鳴っていた。
(待っててね、北の大地。そして美味しいおやつたち!)
私はドレスを脱ぎ捨て、動きやすい旅装束へと着替え始めた。
その顔が、かつてないほど生き生きとしていることに、自分自身でも驚きながら。
私はオルグレン辺境伯が滞在しているという、王都のタウンハウス(別邸)を訪ねていた。
昨夜、彼が置いていった『雇用契約書』。
あれを読み込めば読み込むほど、私の事務官としての血が騒いでしまったのだ。
『第5条:残業代は基本給の15割増しとする』
『第8条:業務に必要な糖分(おやつ)は領主のポケットマネーから無制限に支給する』
『第20条:上司(オルグレン)が理不尽な命令をした場合、部下(ダーリ)はこれをハリセン等で却下する権利を持つ』
……ハリセンって何? という疑問はさておき、条件が良すぎる。
あまりにもホワイトだ。
王家という超・ブラック企業に勤めていた私にとって、この契約書はまるで天国への招待状のように見えた。
だが、父上は言ったのだ。
「ダーリよ、騙されるな。これは高度な『愛の告白』だ」と。
「『一生そばにいてくれ』とは言えないから、『終身雇用』という言葉を使っているのだ。不器用な男の精一杯のアプローチだぞ!」
父上は朝からハンカチを噛んで感動していたが、私は半信半疑だった。
あのクマ……もとい、閣下が?
あの氷のような目で?
その真偽を確かめるためにも、私は直接ここへ乗り込んだのである。
「どうぞ、こちらへ」
案内されたのは、飾り気のないシンプルな執務室だった。
そこには、大量の書類に埋もれるようにして、オルグレン辺境伯が座っていた。
「……来たか」
彼は顔を上げると、私を見て少しだけ眉を動かした。
「早いな。もう決めたのか」
「ええ、まあ。条件があまりにも魅力的でしたので」
私は単刀直入に切り出した。
対面の椅子に座り、彼と向き合う。
今日は軍服ではなく、ラフなシャツ姿だ。
鍛え上げられた筋肉が布越しにも分かり、改めてその威圧感に圧倒されそうになる。
「ですが、一つだけ確認させていただきたいことがあります」
「なんだ」
「この契約……父は『これは実質的なプロポーズだ』と申しておりまして」
私は彼の反応を伺った。
もし彼が赤面したり、視線を逸らしたりしたら、父上の説が濃厚だ。
その場合、私は「就職」ではなく「婚約」という新たな枷(かせ)を背負うことになる。それはちょっと、いや、かなり困る。
しかし。
オルグレン辺境伯は、キョトンとした顔をした。
「プロポーズ? ……求婚のことか?」
「は、はい」
「なぜそうなる?」
「……へ?」
彼は心底不思議そうに首を傾げた。
「俺は『事務官』として契約したいと言ったはずだ。妻を募集しているわけではない」
「で、ですよね! あーよかった!」
私は思わず拍手した。
「やっぱり父上の勘違いでしたわ! あー危ない危ない。『一生大事にする(雇用的な意味で)』を『一生愛する』と脳内変換してましたもの」
「……ふむ。アークライト公はロマンチストなのだな」
「ええ、残念な方向に」
私は胸を撫で下ろした。
これで安心して就職できる。
「では、確認ですが。私に求められているのは、あくまで『辺境伯領の事務処理』および『領地経営のサポート』。これだけでよろしいですね?」
「ああ。それと、俺のスケジュール管理と、対外的な交渉事の代行と、あと……」
彼は少し言い淀み、視線を泳がせた。
「……俺が計算間違いをした時の、修正も頼みたい」
「計算、苦手なんですか?」
「……指が太くて、そろばんが弾けんのだ」
彼は自分の大きな手を広げて見せた。
確かに、あの丸太のような指では、小さなそろばんの珠を弾くのは至難の業だろう。
「あと、細かい文字を書くとペンが折れる」
「筆圧!」
「ゆえに、書類仕事が溜まる一方だ。……助けてくれ」
最後の一言は、切実だった。
北の英雄、氷の狼と恐れられる男が、事務仕事に敗北して助けを求めている。
そのギャップに、私は思わず吹き出しそうになった。
「ふ、ふふっ……! なるほど、事情はよく分かりました」
私は笑いを噛み殺し、居住まいを正した。
「いいでしょう。その契約、お受けいたします」
「本当か」
彼の目が輝いた。
獲物を見つけた肉食獣のような、ギラリとした光。
「はい。ただし! 一つ条件を追加させていただきます」
「なんだ。給金を倍にするか? それとも別荘が欲しいか?」
「いえ、そうではなく」
私はビシッと人差し指を立てた。
「『定時退社』です。これだけは譲れません」
「……テイジ?」
「日が沈んだら仕事は終わり。あとは私の自由時間。休日もしっかり頂きます。王太子殿下のように、夜中の三時に『ポエムができたから聞いてくれ』と呼び出すようなことは、絶対に禁止です!」
私の剣幕に、オルグレン辺境伯は目を丸くした後、真剣な顔で頷いた。
「……約束しよう。俺も夜は寝たい派だ」
「交渉成立ですね!」
私は持参した契約書に、サラサラとサインをした。
そして、それを彼に差し出す。
「ダーリ・アークライト、本日よりオルグレン辺境伯家の筆頭事務官として就任いたします。……どうぞ、こき使ってくださいませ。定時の範囲内で」
「ああ。歓迎する」
彼は契約書を受け取ると、その大きな手で、私の小さな手を包み込むように握手をした。
手が熱い。
そして、ゴツゴツしていて硬い。
けれど、ギルバート殿下との握手のような、嫌な湿り気はなかった。
乾燥した大地のような、頼もしい手だった。
「……よろしく頼む、ダーリ」
「はい、閣下」
「オルグレンでいい」
「では、オルグレン様」
こうして。
私は「悪役令嬢」から「辺境伯領の凄腕事務官(予定)」へとジョブチェンジを果たしたのだった。
***
屋敷に戻ると、父上が待ち構えていた。
「どうだった!? 式の日取りは決まったか!?」
「お父様、残念ながら(?)違います。純粋なヘッドハンティングでした」
「な、なんだと……? あの色男が、お前の魅力に気づかんとは……節穴か?」
「事務処理能力という魅力には気づいてくれたようですけど」
私は契約書の写しを見せた。
「明日、北へ向けて出発します。荷造りを急がないと」
「あ、明日!? 早すぎないか!?」
「善は急げと言いますし、何より……」
私は窓の外を見た。
王宮の方角。
「そろそろ、ギルバート殿下が『やっぱりダーリがいないと無理だ』と泣きついてくる頃合いです。捕まる前に逃げないと」
「……確かに」
父上も真顔になった。
「よし、分かった。馬車の手配は任せろ。最高の馬を用意しよう」
「ありがとうございます。あ、それとマリーも連れて行っていいですか? 彼女も『王都の空気は肌に合わない』と言っていたので」
「構わんとも。……寂しくなるな」
父上が少しシュンとする。
私は苦笑して、父の背中をポンと叩いた。
「たまには帰ってきますわ。それに、北の美味しい海産物を送りますから」
「おお! カニか! カニが良いぞ!」
「ふふ、現金ですね」
こうして、私の王都脱出計画――もとい、新天地への旅立ちが決まった。
婚約破棄からわずか三日。
怒涛の展開だが、不思議と不安はなかった。
むしろ、これから始まる未知の生活に、胸が高鳴っていた。
(待っててね、北の大地。そして美味しいおやつたち!)
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