58 / 66
最終章 魔法少女はそこにいる
自らを縛る枷 2
しおりを挟む
エメランディアは飛行して娘たちの元へ来ると朱色の魔法光を放って自らも含め幼い子供たちに防御魔法を張った。
「みんな大丈夫?」
女王は子供たちに駆け寄って心配そうな顔で訊ねた。
「はいなの。 でも……他の子たちが……」
キルカがそう言って顔をぐしゃぐしゃにして泣き始めるとエメランディアは彼女をそっと抱きしめた。
そして駆け寄るスピカやルー、バレッタも見な抱きしめると、魔法で逃げ遅れている子供たちも呼び寄せて一か所へと集めた。
「みんな、ここでじっとしていなさい」
女王は子供たちにそう伝えると、凛とした表情で上空を見上げた。
はぐれ魔法少女たちがティアマトの兵士たちと戦いながらどんどん近寄ってくるのが見える。
「ねぇ……? あれ、もしかして女王じゃない?」
ふと一人のはぐれ魔法少女がそう口にした。
その瞬間、はぐれ魔法少女たちの視線が一斉にエメランディアへと集まった。
「陛下! お下がりください!」
上空からティアマトの兵士が一人降りてきてそう叫んだ。
エメランディアは頭を振ると彼女に向かって毅然とした口調で命じた。
「いいえ。 あなたちこそお下がりなさい。 ここは私が抑えます」
「陛下! 何をおっしゃいます!!」
魔法少女兵士は真っ青な顔になって驚いて叫ぶ。
「ここは私が全力の魔法を使うべきと判断致しました……。 お下がりなさい」
女王はあくまで冷静に嗜めるような口調で彼女にそう言うと振り向いて、子供たちに微笑んで見せた。
そしてエメランディアは上空を睨み付けて、襲い掛かってくる多数の魔法少女に向かって、その手の中に三叉槍の魔導杖を現出させると、それを構えて高速詠唱を始めた。
「全ティアマト兵士よ! 回避しなさい!! ……穿ちなさい……海神の銛!」
ティアマトの魔法少女たちは女王のその言葉を聞くと皆青ざめて、慌てて空中からあちこちへと逃げていく。
エメランディアは槍を高く掲げると、その先端から光る針を空中に向けて無数に放った。
空の上であちこちから悲鳴が上がると、大勢いたはぐれ魔法少女たちが皆塩になって砕けて風に飛ばされて消えていった。
ティアマトの兵士たちが戻ってきて女王の周りに集まってくると、キルカとスピカも泣き笑いの顔でエメランディアに向かって走り出した。
「おかあさま~!」
二人が叫んで駆け寄ろうとしたその瞬間、地面から棘のような物が生えて女王の身体を貫いた。
「ああっ!!」
エメランディアが叫んで血を吐き出してその場に倒れ込むと、キルカは目を見開いて叫んだ。
「いやあぁ!! おかあさまっ!! おかあさま!! ……いやぁ……いやあぁぁぁ!!」
虚ろな表情で叫ぶキルカの身体が赤い魔法光で輝き始め、彼女の背後の空間にだんだんとひび割れができていった。
パリン、と軽い音を立てて背後の空間がまるで薄いガラスのように割れるとそこから真っ黒い小さなナイフが飛び出して、それはすっぽりとキルカの手の内へと納まった。
キルカは感情のなくなった能面のような顔でナイフに誘われているかのようにそれを持ってふらふらと歩き出した。
「あははは!! 女王エメランディア!! 殺ったよ!!」
地面が割れて黒と赤の魔導鎧を身に着けた魔法少女が現れて高らかに笑った。
恐らく上空にいたはぐれ魔法少女たちとは別行動をして地面に隠れていたのだろう。
「さぁ、女王!! 殺されたくなかったら部下に命じて食糧と魔法石をよこしな!!」
彼女は言って、にやりと笑いながら腰に手を当てて足を肩幅くらいに開いて完全に勝ち誇った顔をした。
「おまえ……おまえなの……?」
無表情のままキルカがうわ言のように呟きながら小さな黒いナイフを手に彼女に向かってふらふらと二歩、三歩歩く。
「なんだい? あんたは?」
彼女は怪訝そうな顔でキルカを見て、すぐに凶悪そうな笑みをその貌に貼り付けた。
「あははは……なんだよ……王女様までいたのかい? そうかい……それで女王がのこのこと出てきたってわけかい!」
周りに近づいてきたティアマトの魔法少女たちも女王と王女を人質に取られたような形になり手出しができずに皆苦悶の表情を浮かべた。
「おまえ……おまえ……」
キルカは虚ろな顔のままぶつぶつと言いながら小さなナイフを手に持ってふらふらとゆっくりと近づいていった。
「キルカ様!! 近づいてはいけません!!」
周りの魔法少女の一人が叫んだ。
「ダメぇぇ!! ダメですわ! おねえさま!!」
スピカも叫ぶ。
ルーとバレッタは茫然としてキルカの背後で身体を震わせながら様子を窺う事しかできなかった。
ふとキルカは立ち止まった。
「あぁ……あああ……ああああ……あああああ……」
そして身体をがくがくと震わせてまるで手に持ったナイフに操られるかのようにナイフを握った右手を前にゆっくりと差し出した。
「そんな小さなナイフでどうするつもりだい?」
はぐれ魔法少女はバカにするような口調で言って、フン、と鼻をならした。
すると一瞬キルカの赤い魔法光が鼓動するように伸び縮みしたように見えた。
「?」
はぐれ魔法少女が眉根を寄せて不思議そうな顔をした瞬間……キルカの魔法光が爆発的に広がってあまりの眩しさに誰も目を開けていられなくなった。
そして轟音を響かせて、まるでキルカ自身が爆発を起こしたように見えた。
爆炎に包まれて何も見えない所から、だんだんと煙が晴れていくとキルカが呆然とした顔でナイフを持ったまま立ちすくんでいた。
周りにいるのは彼女と縁の深いエメランディアによって加護の防御魔法をかけられた数名の子供とエメランディア本人だけだった。
キルカの魔法爆発によりはぐれ魔法少女も、ティアマトの兵士たちもエメランディアの防御を受けていなかった子供たちも何もかもが吹き飛んでしまっていた。
遠巻きにその様子を見ていたライアットとメタルカは大きく目を見開いてその場に力なくぺたんと座り込んで、そのまま失禁し始めた。
この時、ライアットの心には絶対にキルカには勝てない、という思いが刷り込まれた。
メタルカもキルカに逆らってはいけない、とこの時から思うようになったのである。
オスティナだけは茫然としながらも、それなりに自らの意思を保ちながら冷静にその状況を見つめていた。
「こんな……こんなことって……」
オスティナは誰に言うともなくそう口にして唇を震わせた。
キルカはハッとした顔になると自分の周りの状況に気づいて、足をがくがくと震わせてその場にしゃがみこんだ。
彼女の背後ではスピカとルー、バレッタがショックのあまり気を失って倒れていた。
「ああ……あああああああ!!」
キルカは手に持ったナイフを投げ捨てて、頭を抱えるようにしてただ声を上げて泣き叫んだ。
すると彼女の座り込んでいる地面から半透明の蔦のような物が生えてきて、キルカの身体、そして投げ捨てられた黒いナイフをがんじがらめに縛り始めた。
それが全身に及ぶと、蔦は見えなくなってだんだん薄くなり消えていった。
「ああ……ああ~!!」
キルカは泣き叫び続けていたが、精神の限界を迎えたのかそのまま意識を失って前のめりに倒れてしまった。
これが彼女の魔導杖、魔力喰らいがこの世に生を受けた瞬間であった。
この時、キルカが最初にして最後の魔力喰らいの力を全力で振るったその有様そのものだった。
その力でエメランディアの防御魔法を受けていなかった魔法少女たちは、敵味方、成長した者も子供も関係なく、その魔力を食らいつくしたのだ。
後には彼女たちが死んだ証である塩の欠片すら残ってはいなかった。
「みんな大丈夫?」
女王は子供たちに駆け寄って心配そうな顔で訊ねた。
「はいなの。 でも……他の子たちが……」
キルカがそう言って顔をぐしゃぐしゃにして泣き始めるとエメランディアは彼女をそっと抱きしめた。
そして駆け寄るスピカやルー、バレッタも見な抱きしめると、魔法で逃げ遅れている子供たちも呼び寄せて一か所へと集めた。
「みんな、ここでじっとしていなさい」
女王は子供たちにそう伝えると、凛とした表情で上空を見上げた。
はぐれ魔法少女たちがティアマトの兵士たちと戦いながらどんどん近寄ってくるのが見える。
「ねぇ……? あれ、もしかして女王じゃない?」
ふと一人のはぐれ魔法少女がそう口にした。
その瞬間、はぐれ魔法少女たちの視線が一斉にエメランディアへと集まった。
「陛下! お下がりください!」
上空からティアマトの兵士が一人降りてきてそう叫んだ。
エメランディアは頭を振ると彼女に向かって毅然とした口調で命じた。
「いいえ。 あなたちこそお下がりなさい。 ここは私が抑えます」
「陛下! 何をおっしゃいます!!」
魔法少女兵士は真っ青な顔になって驚いて叫ぶ。
「ここは私が全力の魔法を使うべきと判断致しました……。 お下がりなさい」
女王はあくまで冷静に嗜めるような口調で彼女にそう言うと振り向いて、子供たちに微笑んで見せた。
そしてエメランディアは上空を睨み付けて、襲い掛かってくる多数の魔法少女に向かって、その手の中に三叉槍の魔導杖を現出させると、それを構えて高速詠唱を始めた。
「全ティアマト兵士よ! 回避しなさい!! ……穿ちなさい……海神の銛!」
ティアマトの魔法少女たちは女王のその言葉を聞くと皆青ざめて、慌てて空中からあちこちへと逃げていく。
エメランディアは槍を高く掲げると、その先端から光る針を空中に向けて無数に放った。
空の上であちこちから悲鳴が上がると、大勢いたはぐれ魔法少女たちが皆塩になって砕けて風に飛ばされて消えていった。
ティアマトの兵士たちが戻ってきて女王の周りに集まってくると、キルカとスピカも泣き笑いの顔でエメランディアに向かって走り出した。
「おかあさま~!」
二人が叫んで駆け寄ろうとしたその瞬間、地面から棘のような物が生えて女王の身体を貫いた。
「ああっ!!」
エメランディアが叫んで血を吐き出してその場に倒れ込むと、キルカは目を見開いて叫んだ。
「いやあぁ!! おかあさまっ!! おかあさま!! ……いやぁ……いやあぁぁぁ!!」
虚ろな表情で叫ぶキルカの身体が赤い魔法光で輝き始め、彼女の背後の空間にだんだんとひび割れができていった。
パリン、と軽い音を立てて背後の空間がまるで薄いガラスのように割れるとそこから真っ黒い小さなナイフが飛び出して、それはすっぽりとキルカの手の内へと納まった。
キルカは感情のなくなった能面のような顔でナイフに誘われているかのようにそれを持ってふらふらと歩き出した。
「あははは!! 女王エメランディア!! 殺ったよ!!」
地面が割れて黒と赤の魔導鎧を身に着けた魔法少女が現れて高らかに笑った。
恐らく上空にいたはぐれ魔法少女たちとは別行動をして地面に隠れていたのだろう。
「さぁ、女王!! 殺されたくなかったら部下に命じて食糧と魔法石をよこしな!!」
彼女は言って、にやりと笑いながら腰に手を当てて足を肩幅くらいに開いて完全に勝ち誇った顔をした。
「おまえ……おまえなの……?」
無表情のままキルカがうわ言のように呟きながら小さな黒いナイフを手に彼女に向かってふらふらと二歩、三歩歩く。
「なんだい? あんたは?」
彼女は怪訝そうな顔でキルカを見て、すぐに凶悪そうな笑みをその貌に貼り付けた。
「あははは……なんだよ……王女様までいたのかい? そうかい……それで女王がのこのこと出てきたってわけかい!」
周りに近づいてきたティアマトの魔法少女たちも女王と王女を人質に取られたような形になり手出しができずに皆苦悶の表情を浮かべた。
「おまえ……おまえ……」
キルカは虚ろな顔のままぶつぶつと言いながら小さなナイフを手に持ってふらふらとゆっくりと近づいていった。
「キルカ様!! 近づいてはいけません!!」
周りの魔法少女の一人が叫んだ。
「ダメぇぇ!! ダメですわ! おねえさま!!」
スピカも叫ぶ。
ルーとバレッタは茫然としてキルカの背後で身体を震わせながら様子を窺う事しかできなかった。
ふとキルカは立ち止まった。
「あぁ……あああ……ああああ……あああああ……」
そして身体をがくがくと震わせてまるで手に持ったナイフに操られるかのようにナイフを握った右手を前にゆっくりと差し出した。
「そんな小さなナイフでどうするつもりだい?」
はぐれ魔法少女はバカにするような口調で言って、フン、と鼻をならした。
すると一瞬キルカの赤い魔法光が鼓動するように伸び縮みしたように見えた。
「?」
はぐれ魔法少女が眉根を寄せて不思議そうな顔をした瞬間……キルカの魔法光が爆発的に広がってあまりの眩しさに誰も目を開けていられなくなった。
そして轟音を響かせて、まるでキルカ自身が爆発を起こしたように見えた。
爆炎に包まれて何も見えない所から、だんだんと煙が晴れていくとキルカが呆然とした顔でナイフを持ったまま立ちすくんでいた。
周りにいるのは彼女と縁の深いエメランディアによって加護の防御魔法をかけられた数名の子供とエメランディア本人だけだった。
キルカの魔法爆発によりはぐれ魔法少女も、ティアマトの兵士たちもエメランディアの防御を受けていなかった子供たちも何もかもが吹き飛んでしまっていた。
遠巻きにその様子を見ていたライアットとメタルカは大きく目を見開いてその場に力なくぺたんと座り込んで、そのまま失禁し始めた。
この時、ライアットの心には絶対にキルカには勝てない、という思いが刷り込まれた。
メタルカもキルカに逆らってはいけない、とこの時から思うようになったのである。
オスティナだけは茫然としながらも、それなりに自らの意思を保ちながら冷静にその状況を見つめていた。
「こんな……こんなことって……」
オスティナは誰に言うともなくそう口にして唇を震わせた。
キルカはハッとした顔になると自分の周りの状況に気づいて、足をがくがくと震わせてその場にしゃがみこんだ。
彼女の背後ではスピカとルー、バレッタがショックのあまり気を失って倒れていた。
「ああ……あああああああ!!」
キルカは手に持ったナイフを投げ捨てて、頭を抱えるようにしてただ声を上げて泣き叫んだ。
すると彼女の座り込んでいる地面から半透明の蔦のような物が生えてきて、キルカの身体、そして投げ捨てられた黒いナイフをがんじがらめに縛り始めた。
それが全身に及ぶと、蔦は見えなくなってだんだん薄くなり消えていった。
「ああ……ああ~!!」
キルカは泣き叫び続けていたが、精神の限界を迎えたのかそのまま意識を失って前のめりに倒れてしまった。
これが彼女の魔導杖、魔力喰らいがこの世に生を受けた瞬間であった。
この時、キルカが最初にして最後の魔力喰らいの力を全力で振るったその有様そのものだった。
その力でエメランディアの防御魔法を受けていなかった魔法少女たちは、敵味方、成長した者も子供も関係なく、その魔力を食らいつくしたのだ。
後には彼女たちが死んだ証である塩の欠片すら残ってはいなかった。
0
あなたにおすすめの小説
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる