もう行き詰まったので、逃亡したい私〜異世界でこの中途半端な趣味を活かしてお金を稼ぎたいと思います〜

刹那玻璃

文字の大きさ
14 / 102

家の概念……

しおりを挟む
 なんで……ここは家の概念を超えている……

 私は白亜の宮殿を見つめて固まった。
 最初は人の行き来も多く、ショッピングモールとか図書館、美術館などの公共施設なのかと思ったけれど、公共施設は施設でも……

「ここは、この国の宮廷ニーリィード……水の精霊の住まうところと言われています」
「ニーリィード……えっと、ここは水の上ですか?」

 水…‥池や噴水が見えるところにあるのかとキョロキョロするものの、見当たらず首を傾げる。
 微笑んだアルファードさんは、

「あ、ここから北に歩いて10分くらい行くと、川があります。そちらから水が引き込まれていますが、街中に水路と水道は地下に作っています。一応、この宮廷の中に憩いの場所として噴水庭園と、災害時用の大小の人工池がありますね」

とにっこり笑う。

 いやいやいや……、私が聞きたいのは……

「あ、コトハお姉ちゃん。あのね、夜ね、キレイなのよ」

フェリシアちゃんが一所懸命答える。

「夜ね! キラキラ~なの!」
「えっと、風で噴水の水が揺れるでしょう? 月明かりに浮かぶこの宮殿が青く輝くの。空を飛ぶドラゴンや騎獣に乗る騎士が目印にするのが、この宮廷なの」

 まだ幼いフェリシアちゃんの言葉に付け足すように、メリッサちゃんは口を挟む。

「へぇ……それは綺麗でしょうね」
「それに、この北にはアンブロシアスって言う大河があるんだけど、一年に2回、7の月と16の月の満月の夜には、その河から精霊がこの中庭の噴水公園や宮廷に遊びに来るっていう伝説もあるの。精霊は大河の神の子供で、私のご先祖様なの」

 緑色の瞳を輝かせ、自慢げにえっへんと胸を張る姿はかわいい。

「えっ? メリッサちゃんは、精霊がご先祖?」
「うん、私のずーっとずーっと昔のご先祖様よ。私の一族は水の一族でね? 精霊の末裔なの。でね? フェリは風の一族。ドラゴンと風の神の末裔よ」
「えっ……」

 瞬きをし、フェリシアちゃんを見る。
 整った可愛らしい……将来は絶世の美女になるであろう少女は、当然肉球もなく、翼もないのだが……。

「正確にいうと、フェリの先祖が天空に住まう風の神だったの。風の神が一頭のドラゴンと出会い恋に落ち、生まれた子供を兄妹神の子供と共に地上に降ろしたのね。で、この大地が荒れ果てていたから、二人は旅をしながら地を清め、整えて生まれていく生物の暮らしやすい世界にしていった。その途中で出会ったのが私の先祖なの」
「す、すごい……壮大な伝説……」
「うん、でも本当みたいよ。私たち、見た目は普通なんだけど、一族にはそれぞれ言い伝えがあって、フェリの実家は子供が少ない家系で、時々先祖返りが生まれるの。卵で生まれちゃうとか」

 今、何か言ったぞ?

「卵? 卵で生まれるの?」
「うん、ドラゴンは卵生だからね。でも、私の一族は卵じゃないけど、赤ん坊は柔らかい膜に包まれて生まれるんだよ? それが普通」

 普通……普通なの?
 首をひねる。

「だって、赤ん坊って無意識に力を暴走させるでしょ? 自我もほとんど芽生えてなくて本能で行動するってとうさま言ってたわ。だから、暴走させて母体を傷つけたり、周囲を破壊するような子が生まれる前に、親や祖父母が膜で覆っちゃうの。それが私たちにとって普通よ」
「普通……そうなんだ」

 無意識に力を暴走?
 えっ? なんの力?

「でもね? フェリには15歳違いの異母兄姉きょうだいがいるらしいけど、一族外出身の前妻さんが生まれた卵が気持ち悪いってどこかに売っちゃったんだって。伯父上は必死に探してるみたい。一回見つけたけど、行方不明みたい」
「えっ?」

 フェリシアちゃんの兄姉?
 卵……。

「あの……ちょっと聞いていいかな? そのフェリシアちゃんの兄弟って、卵が孵ったら、人間? それともドラゴン?」
「うーん……」

 フェリシアちゃんとメリッサちゃんは考え込む。

「あはは!」

 楽しげなのはアルファードさん。

「俺が知ってるのは、フェリシアの4代前のお婆さまのお姉さんにあたる、俺の大叔母でメリッサの母親は、小さい頃ドラゴンで生まれたらしいよ。と言っても、小さい頃は小さい騎獣の子供みたいな感じで、飛べなかったし、一般的なドラゴンの幼体に比べて足が短いのと胴体が長い……黒いぬいぐるみみたいだそうだ」

 ん、ん?

「あの……ドラゴンの幼体ってどんな感じですか?」
「あ、知らないの? この国で一番有名な幼体がもうすぐくるよ」

 アルファードさんが指し示す先に現れたのは、純白のスタンダード・プードルやビション・フリーゼ、サモエドをもっともふもふにして大型にしたようなぬいぐるみのような生物。

 毛玉だ!
 思わず抱きつきたい、撫で回したい、もふりたい!
 ついでに猫吸いならぬ、犬吸い……ドラ吸いをしまくりたい生き物!
 こ、コレがドラゴンの幼体だと言うの?
 めちゃくちゃ可愛い!

 そう思った私は悪くないと思うの。
 だって、モフモフはいくらあっても良い!
 モフ不足は心の栄養不足っていうじゃない!(言わない?)
 もふりたいなぁ……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

神スキル【絶対育成】で追放令嬢を餌付けしたら国ができた

黒崎隼人
ファンタジー
過労死した植物研究者が転生したのは、貧しい開拓村の少年アランだった。彼に与えられたのは、あらゆる植物を意のままに操る神スキル【絶対育成】だった。 そんな彼の元に、ある日、王都から追放されてきた「悪役令嬢」セラフィーナがやってくる。 「私があなたの知識となり、盾となりましょう。その代わり、この村を豊かにする力を貸してください」 前世の知識とチートスキルを持つ少年と、気高く理知的な元公爵令嬢。 二人が手を取り合った時、飢えた辺境の村は、やがて世界が羨む豊かで平和な楽園へと姿を変えていく。 辺境から始まる、農業革命ファンタジー&国家創成譚が、ここに開幕する。

嘘つきな君の世界一優しい断罪計画

空色蜻蛉
ファンタジー
誰も傷つけないよう付いた嘘が暴かれる時、誰よりも優しい青年の真実が明らかになる。 悪逆非道な侯爵家に生まれたリトスは、王太子妃を狙っている妹の野望を阻止し、実家を良い感じに没落させて、自分は国外追放されたいな~と考えていた。 軟派で無能な侯爵令息を装い、妹の対抗馬である庶民出身のテレサ嬢を支援したり、裏でいろいろ画策していた。 しかし、リトスの完璧な計画は、国外から招聘された有名な魔術師レイヴンによって徐々に暴かれていく。 リトスとレイヴン、二人の【星瞳の魔術師】が織りなす、オリジナル世界観の異世界ファンタジー物語。 ※女性向けハイファンタジー&ブロマンス作品です  恋愛がメインではないので既存の女性向けカテゴリに分類できず・・主役二人の関係性はBLに近いです。  主人公最強、かつ相方も最強で、対等に戦うライバル&相棒です。  主役二人が水戸黄門よろしく事件を恰好よく解決していくお話になります。いっそ文芸の方がいいのかも? ※カクヨム、エブリスタ、Talesで連載中。掲載サイトによって進行がちがいます。  また、番外編の掲載の仕方も各サイトの仕様に合わせて変えています。

処理中です...