もう行き詰まったので、逃亡したい私〜異世界でこの中途半端な趣味を活かしてお金を稼ぎたいと思います〜

刹那玻璃

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共同生活開始

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 桜智に、

【来るもの拒まず、どんと来いな太っ腹体質やめなさいよね!】

と叱られつつ、琴葉はアルスとソフィアを受け入れて生活開始。
 お金のことを気にするアルスに、桜智が、

【バカドラから1000ルード預かってるから、しばらく気にしなくていいわよ。バカドラは一月3ルード引くから、アンタたちは二人で2ルードよ。そこから一緒に引くわね】

「なんでさ! ボクの方が体積ちっさいじゃん!」

【アンタはこのでかいアルスの3倍食ってんのよ! 本当はアルスとソフィアちゃんの分は、もうちょっと少なくてもいいくらいなのよ! でも、アルスがバカドラの足りない分もあわせて、2ルード取ってくれっていうもんだからね!】

アタシはこの家の金庫番よ!

と言い張る。
 その横で、おっとりと、

「あ、新しいお菓子できましたよ。というか、向こうで作ってたオヤキという、おやつにも間食にも食べられているものですけど……2種類の皮……包んでいる外側があって、中はクルミ、小豆餡、芋餡、野菜の漬物や晩のおかずの残り入りと色々作ってます。どうぞ。ヴァーロくんは野菜の代わりにジャム入れてるよ」
「わーい! ありがとう! 琴葉好き~!」

ぎゅっと抱きつくヴァーロに、ニコニコと頭を撫でる。

【琴葉! 気をつけなさい! そいつは見た目はガキだけどね? エロジジイよ!】

「うるさいなぁ! 琴葉、ボク、モフる?」

【おいっ!】

 どすの利いた声で桜智が睨みつける。
 こう言った光景も慣れてきた。

「あははは! 後でね。この外側の皮は白い方が麦粉です。茶色というかくすんだ方は蕎麦粉になります。麦粉は前に事典でここにあると言っていた年に2回収穫するという主食の実を臼でひいた粉ですね。水で練って薄く広げて中に具材を詰めて丸め、平べったくして焼くのです。蕎麦粉の方も作り方は一緒です。お茶は麦を炒った麦茶です。向こうでは冷やしてよく飲まれていましたが、今日は少し寒いので、温かい麦茶出しますね」

 テーブルに人数分のお皿に置かれたおやつに、手を伸ばし、アルスは一つ食べる。
 クルミあんらしく、最初は香り、続いて歯応えに驚き、そして……。

「美味い……」
「今はあったクルミを使ったのですが、時期によっては栗も使えますし、子供ならジャムも好かれますね」

 ジャムあんのおやきを頬張るヴァーロをチラッと見る。
 満足そうに頬を膨らませる……ドラゴンというよりリスである。

「他にも前日のおかず……例えば私は、水気を切った煮物やきんぴらごぼうも中に入れてました」
「そっか……そういうふうに自分の自由にできるんだな」
「私はこの世界で旅に出るというのはわかりませんが、少しでも美味しいものが食べられたらなぁと思いますし、身体にいいものをと思います……あ、ヴァーロくんに一個だけ、切り干し大根の煮物入れてるからね」
「えっ! うわーん、当たった~」

 一番早く、最後の一個をぱくんと口にしたヴァーロが半泣きになる。

「それはそんなに癖がないでしょ? 人参も入れてないよ? 頑張って食べてね?」
「ご褒美ちょうだいね!」

 しばらく噛みそして飲み込んだヴァーロは、上目遣いでおねだりする。

「はいはい……じゃぁ、私のを一個」
「やったぁ! 芋餡、芋餡! 大好き~!」

 もらったオヤキを美味しそうにもぐもぐ食べるヴァーロに、呆れつつ呟く。

「兄貴が完全に餌付けされてる……」
「あ、コレは大体のレシピです。中の具材はその時あるものですね。もし入らなくても、皮を広げて焼いた後に、具材を挟んで食べてもいいですし」

 エプロンのポケットに入れていたメモを手渡す。
 簡単なアラビア数字と、アルファベットの表記、辞書や単語帳を前もって渡しているので、わからない言葉があれば後で聞いてくるだろう。

「ありがとう。助かるよ」
「それに量というのはその時の温度や湿度……雨の多い時期や乾燥した場所での料理だと感じ方が変わるので絶対とは言えません」
「あぁ、わかってるとも。それに麦の粉も挽き方によって舌触りも違うんだろう?」
「はい」

 琴葉の念の押し方にアルスは舌を巻く。
 生活を共に始めて思ったのは、琴葉が若い割にとても知識が豊富で、その上それを鼻にかけることなくおおらかで穏やかなこと。
 ヴァーロのワガママにもニコニコと諭しつつそれを押し付けず……桜智とヴァーロの言い合いも見守るのみ。
 そして、

「あ、ソフィアさん。こんなの作ってみました!」

言いながらいそいそ出して見せたのは、動物をデフォルメしたぬいぐるみという人形。

「この間、桜智さんのテディとチャチャのおもちゃを順番に作ってたのですが、昨日仕上がったので、今度はうさぎです! ソフィアさんにと思って! どうぞ!」
「えっ? 私にですか?」
「はい! 手足が動かせるので、服も着せられますよ。垂れ耳なのも可愛いと思います」

 渡されたうさぎに驚いていたものの、青い瞳とちょっと灰色がかった毛色のうさぎに瞳を潤ませる。

「……可愛い。ありがとう。コトハさん」
「いいえ、この間から編み物を教えてもらっているので、お礼です。でも、すごいです。編み物の本や、図面見ても私はちんぷんかんぷんなのに、編み棒持ってすぐ編めて、その上綺麗! 羨ましいです……私は編み目飛ばすのしょっちゅうなのに」

 琴葉はぼやく。
 ソフィアは身体が弱いものの、編み物や繕い物が得意で、刺繍も上手かった。
 琴葉の持っていた刺繍の糸や針、簡単なモチーフ図集などを渡すと、すぐにハンカチなどを縫い始めた。
 編み物の針と糸は琴葉が用意して渡している。
 今、マフラーをあんでいるが、ソフィアは最終的にアルスのベストを作りたいらしい。

「あ、そうだ。ソフィアだけじゃなく、コトハも無理するなよ? なんか聞いたが、ここで喫茶店をするとかどうとか……だけど、無理して店しなくても、俺が作ったポーションをギルドに卸すついでにお菓子とか何かあれば、その一角に置きに行くから。ギルドの登録さえしてれば、ちょっとの置き賃で構わないぞ? 一応俺と兄貴と俺の父に言えばいいんだし」
「えっ?」

 初耳の情報に、琴葉と桜智はアルスを見る。
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