もう行き詰まったので、逃亡したい私〜異世界でこの中途半端な趣味を活かしてお金を稼ぎたいと思います〜

刹那玻璃

文字の大きさ
67 / 102

ぷるんじゃなくプリンです

しおりを挟む
「わーちゃん、じゅるい!」

 ぷんぷん!

 拗ねるフィーアに、ヴァーロが、

「だって、ボクの名前はヴァーソロミューだもん。八文字だから八歩なんだよ~」
「じゅるい! ふぃーもいっぱいあゆく!」

フィーアは階段を一歩一歩登ると、上に立っていたヴァーロの足にしがみついて引っ張って訴える。
 フィーアは最初勝っていて、最後あと四歩だったのだが、下にいたヴァーロに追い抜かされたのだった。

「じゅるい! トントンしゃきいっちゃめ!」
「えっと……フィーアちゃん。1番に到着したのはヴァーロくんだったけど、一番ジャンケンに勝ったのはフィーアちゃんだから、フィーアちゃんにもプレゼント出します!」
「ほんと? ねえたま!」

 ヴァーロの足に抱きついたまま、琴葉を見上げる。

「うんうん。だから、ぷんぷんやめようね?」
「ほーら、フィーア。降りるぞ~。ジュースあるからな」

 アルスが苦笑しながら近づき抱き上げる。
 階段を降りていくと、一人待っていたソフィアが微笑む。

「お茶とジュースをどうぞ。コトハ。プリンも丁度出したところよ」
「ありがとうございます! ソフィアさん」
「プリン?」
「えぇ。蒸しプリンもいいのだけれど今日は、ゼラチンを使ったプリンなの」

 お皿には何も置かれていないのだが、まず子供用の椅子に座らせたフィーアの前の皿をとり、持っていたグラスのようなものをひっくり返す。
 そうすると、ぷるんとした黄色のものが現れ、フィーアとヴァーロが目を輝かせる。

「しゅごい! ぷるん!」
「すごいでしょう? 魔法みたいよね。そしてここに……甘いシロップと美味しいシロップ漬けの果物を飾って……出来上がりです!」
「しゅごい!」

 スプーンを持たせてもらったフィーアは、ワクワクしている。

「魔法には少しお時間がかかりますので、魔法が解けないうちに食べてください~」
「だそうだ。フィーア、いただきます、しようか」
「ましゅっ!」

 アルスに促され、大きい声でそういったフィーアは、スプーンで必死にすくおうとするものの蜜柑のシロップ漬けに逃げられる。
 仕方ないなぁとアルスがフォークで手伝い、食べさせる。

「いいなぁ……」
「もうすぐだよ。えっと、ヴァーロくんはシロップとカラメルどっちがいいかな? カラメルはお砂糖を煮詰めたもので、ちょっと苦味があるんだ。果物を漬けていたシロップにする?」
「うーん……苦いのよりシロップ!」

 ヴァーロのプリンを席に運ぶと、ニコニコご機嫌な様子で見ている。

「あ、チャチャは前に味見として食べてるので、今日はお芋のおやきです。そして、ラハシアさんはシロップとカラメルどちらがいいですか?」
「えっと……カラメルというのをお願いします」
「はい。あ、これはちょっと砂糖を煮詰めて黒っぽくなっただけですよ。この苦味が逆にプリンの甘さを強くしますので」

 目の前に置かれたプリンに目を輝かせる。

「いただきます」

 スプーンですくったプリンを恐る恐る口に運ぶ。
 カラメルの甘苦い感覚と、プルプルのプリンの冷たさ……。

「美味しい!」
「よかった。アルスさんとソフィアさんもどうぞ」
「ありがとう。俺もカラメルにしてくれるか?」
「あ、アルスさんはカラメルより苦味のあるコーヒーシロップにしました。苦いのですが、プリンが甘いのできっと気にいると思うんです。ソフィアさんはカラメルにしています」
「……あ、これ俺好きだわ……うん。ちょうどいい」

 アルスは最初黒い液体にギョッとしたものの香りに驚き、そして舌に感じる苦味と旨みに笑った。

「このコーヒーというのは、ダンデライオン茶に似ているのですが、確かちょっと仕事が立て込んだ時に飲むと疲労回復や眠気を覚ます効果があったり、香りにリラックス効果などもあります。でも飲みすぎると内臓を傷つけたり、眠れなくなったり、トイレに行く回数も増えるという逆効果もあるそうです。あ、この間このコーヒーのタネをラインさまにいただいたのです。今度植えようと思っています」
「……お、おうっ! 薬と一緒で適量ってことか……」
「はい、一日多くて3杯までですね。おすすめは朝昼と夕方です。夜寝る前は眠れなくなりますから。それに、妊娠中のお母さんや小さい子供は飲まない方がいいです」
「そうか……また今度飲ませてもらってもいいか?」
「あ、すぐに出せますよ。本格的なものじゃなくて、私がのんでいたものですが」

 そういうと、台所に向かいしばらくして、六つのマグカップを持って戻ってくる。

「フィーアちゃんはホットミルクです。そして、私とアルスさん以外はホットミルクにコーヒーを混ぜたカフェオレを持ってきました。お砂糖はカフェオレにはきかせてます」
「……おぉ、黒いんだな」

 受け取ったマグカップを見つめ呟く。

「でも、結構香りが強い……それに、美味いな……」
「よかったです。お茶の代わりにこのコーヒーとお菓子もいいんですよ」
「うん……俺はこのままでいい。生臭くてえぐい薬草に比べたらこれの苦味なんてすぐ消える」

 アルスは満足そうに微笑む。



 しばらくして、遊んで食べてお腹いっぱいのフィーアがうとうととし始めたのに気がついた琴葉は、

「あ、そろそろお部屋に案内しますね。フィーアちゃんもお昼寝のお時間ですから」

と立ち上がったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

神スキル【絶対育成】で追放令嬢を餌付けしたら国ができた

黒崎隼人
ファンタジー
過労死した植物研究者が転生したのは、貧しい開拓村の少年アランだった。彼に与えられたのは、あらゆる植物を意のままに操る神スキル【絶対育成】だった。 そんな彼の元に、ある日、王都から追放されてきた「悪役令嬢」セラフィーナがやってくる。 「私があなたの知識となり、盾となりましょう。その代わり、この村を豊かにする力を貸してください」 前世の知識とチートスキルを持つ少年と、気高く理知的な元公爵令嬢。 二人が手を取り合った時、飢えた辺境の村は、やがて世界が羨む豊かで平和な楽園へと姿を変えていく。 辺境から始まる、農業革命ファンタジー&国家創成譚が、ここに開幕する。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

嘘つきな君の世界一優しい断罪計画

空色蜻蛉
ファンタジー
誰も傷つけないよう付いた嘘が暴かれる時、誰よりも優しい青年の真実が明らかになる。 悪逆非道な侯爵家に生まれたリトスは、王太子妃を狙っている妹の野望を阻止し、実家を良い感じに没落させて、自分は国外追放されたいな~と考えていた。 軟派で無能な侯爵令息を装い、妹の対抗馬である庶民出身のテレサ嬢を支援したり、裏でいろいろ画策していた。 しかし、リトスの完璧な計画は、国外から招聘された有名な魔術師レイヴンによって徐々に暴かれていく。 リトスとレイヴン、二人の【星瞳の魔術師】が織りなす、オリジナル世界観の異世界ファンタジー物語。 ※女性向けハイファンタジー&ブロマンス作品です  恋愛がメインではないので既存の女性向けカテゴリに分類できず・・主役二人の関係性はBLに近いです。  主人公最強、かつ相方も最強で、対等に戦うライバル&相棒です。  主役二人が水戸黄門よろしく事件を恰好よく解決していくお話になります。いっそ文芸の方がいいのかも? ※カクヨム、エブリスタ、Talesで連載中。掲載サイトによって進行がちがいます。  また、番外編の掲載の仕方も各サイトの仕様に合わせて変えています。

処理中です...