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アルスの調べ物
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「確かこれは詩を写したものだと言っていたな……グランディアには情緒的な文化があるのだな」
『小倉百人一首』も詩の一種。
三十一文字という数の中で、情景や心情を巧みに描写する。
短い文字だというのに複雑な解釈もできるのだと言っていたので、次はこれを読もうと決めていたのだが……。
「えと……」
読み初めの全く虫ののたくったような印象ではなく、柔らかい優しい文字でしっかり読めた。
この人物は女性。
しかも書や文学に才能を持っていた女性らしい。
日記の隅には筆で絵が描かれている。
猫だったり、ナムグもいた。
ドラゴンだったり、花の絵……そして……。
「……『きよらと大好きな親友』……」
人の絵は苦手らしい……少し不恰好な人形のような二人。
黒く塗りつぶした瞳と髪のにっこり笑う二人の横に、首を傾げたような寂しげな髪に色のない少女の絵。
ここにだけ赤が使われていて、瞳に塗られている。
その後書かれていたのは百人一首の中の望郷の歌。
「『遠く離れたこの地で見上げる空にある月は、故郷の空に登っている月と同じでしょうか?』 そんな感じだろうか?」
【うーん、アタシはもうちょっと複雑だと思うわよぉ?】
「あぁ、桜智来てたのか?」
【まぁ、アホドラが心配ってわけじゃないわよ! それより、アンタ何日寝てないの?】
目の下のクマを指摘する。
「あぁ、三日は眠らなくても大丈夫。それ以上なら細かくちょっとずつ寝るさ」
【無理はしないでね? バカドラとはソリは合わないけど、アタシはアンタ嫌いじゃないから……】
ツンツンの桜智の物言いに、アルスは笑う。
「あぁ、ありがとう。俺も桜智を友人であり家族だと思ってるよ」
ちなみにアルスは家族の中で、見た目こそキツめの巨人だが、一番温和で一番優しく誠実で寛大である。
働き者で、まださほど経っていないのにこの家では父、兄の地位を盤石にしている。
「ところで、この詩の訳が違うというのは……」
【えっと、この和歌……詩はこういう時代背景なんだけどね?】
桜智は、トコトコ近づいてくると何故かヴァーロの腹の上にどすんと腰を下ろし説明を始める。
【グランディアとここって違いすぎるのよ~。というか、アンタが読んでるその冊子の人がどんな人かわからないけど、アタシと琴葉のいた世界は月は一つ。太陽も一つ! この世界三つ月あるじゃない。多分、この人は、『遠く離れたこの地で見上げる空は、故郷とは全く違うのね。世界は隔てられ、私はもう家族とも友とも逢えないのだわ』と悲しみつつ覚悟を決めたっていう意味ね。複雑だけどこんな解釈ができるわ】
アルスは目を丸くし、慌ててメモをとる。
「……そういう解釈もあるのか……」
【まぁ、これは極論よ。百人一首って時代ごとに使われている文法とかも変わるのよ。技巧も磨かれていると言えばいいけれど、逆に後世になるにつれ言葉遊び化しちゃって、技術のみで中身がちょっとねって思っちゃうのもあるの……アタシが感じるだけかもだけど。アタシは、ギリギリ中期くらいまでが好きね。で、時代背景を調べて、歴史も調べて読むとこれがめちゃくちゃ面白いのよ! かるた遊びもいいけれど、こっちがアタシは好きね】
「かるた?」
【あぁ、この歌の上の句……17文字を読む間に、下の句の書いてある札を取り合うのよ。競技になってるわ。ほとんどが最初の一文字を読み上げるだけで勝負が決まるからね。見てて気持ちいいわよ】
「ん? 上の句を読み、下の句の札を取るのか?」
【そう。つまり全部覚えてないとできません。ちなみに百人一首の箱は持ってますので、今度勝負しましょう!】
ニヤニヤ……
ドールなので笑えないはずだが、なんとなく意地悪げに笑う。
「負けないように覚えてやろうじゃないか!」
こちらも楽しくなり、返すと、桜智の下のヴァーロが苦しげに呻いたのだった。
~*~~*~~*~~*~~*~
※一応、和歌は、
小倉百人一首第七番
天の原ふりさけ見れば春日なる
三笠の山に出でし月かも
安倍仲麻呂
を参考にしています。
解釈は自己流ですのでご了承ください。
そして、桜智の好き嫌い論も、桜智は初期の技巧より言葉を大事にする和歌が好みだと思っていただければと思います。
『小倉百人一首』も詩の一種。
三十一文字という数の中で、情景や心情を巧みに描写する。
短い文字だというのに複雑な解釈もできるのだと言っていたので、次はこれを読もうと決めていたのだが……。
「えと……」
読み初めの全く虫ののたくったような印象ではなく、柔らかい優しい文字でしっかり読めた。
この人物は女性。
しかも書や文学に才能を持っていた女性らしい。
日記の隅には筆で絵が描かれている。
猫だったり、ナムグもいた。
ドラゴンだったり、花の絵……そして……。
「……『きよらと大好きな親友』……」
人の絵は苦手らしい……少し不恰好な人形のような二人。
黒く塗りつぶした瞳と髪のにっこり笑う二人の横に、首を傾げたような寂しげな髪に色のない少女の絵。
ここにだけ赤が使われていて、瞳に塗られている。
その後書かれていたのは百人一首の中の望郷の歌。
「『遠く離れたこの地で見上げる空にある月は、故郷の空に登っている月と同じでしょうか?』 そんな感じだろうか?」
【うーん、アタシはもうちょっと複雑だと思うわよぉ?】
「あぁ、桜智来てたのか?」
【まぁ、アホドラが心配ってわけじゃないわよ! それより、アンタ何日寝てないの?】
目の下のクマを指摘する。
「あぁ、三日は眠らなくても大丈夫。それ以上なら細かくちょっとずつ寝るさ」
【無理はしないでね? バカドラとはソリは合わないけど、アタシはアンタ嫌いじゃないから……】
ツンツンの桜智の物言いに、アルスは笑う。
「あぁ、ありがとう。俺も桜智を友人であり家族だと思ってるよ」
ちなみにアルスは家族の中で、見た目こそキツめの巨人だが、一番温和で一番優しく誠実で寛大である。
働き者で、まださほど経っていないのにこの家では父、兄の地位を盤石にしている。
「ところで、この詩の訳が違うというのは……」
【えっと、この和歌……詩はこういう時代背景なんだけどね?】
桜智は、トコトコ近づいてくると何故かヴァーロの腹の上にどすんと腰を下ろし説明を始める。
【グランディアとここって違いすぎるのよ~。というか、アンタが読んでるその冊子の人がどんな人かわからないけど、アタシと琴葉のいた世界は月は一つ。太陽も一つ! この世界三つ月あるじゃない。多分、この人は、『遠く離れたこの地で見上げる空は、故郷とは全く違うのね。世界は隔てられ、私はもう家族とも友とも逢えないのだわ』と悲しみつつ覚悟を決めたっていう意味ね。複雑だけどこんな解釈ができるわ】
アルスは目を丸くし、慌ててメモをとる。
「……そういう解釈もあるのか……」
【まぁ、これは極論よ。百人一首って時代ごとに使われている文法とかも変わるのよ。技巧も磨かれていると言えばいいけれど、逆に後世になるにつれ言葉遊び化しちゃって、技術のみで中身がちょっとねって思っちゃうのもあるの……アタシが感じるだけかもだけど。アタシは、ギリギリ中期くらいまでが好きね。で、時代背景を調べて、歴史も調べて読むとこれがめちゃくちゃ面白いのよ! かるた遊びもいいけれど、こっちがアタシは好きね】
「かるた?」
【あぁ、この歌の上の句……17文字を読む間に、下の句の書いてある札を取り合うのよ。競技になってるわ。ほとんどが最初の一文字を読み上げるだけで勝負が決まるからね。見てて気持ちいいわよ】
「ん? 上の句を読み、下の句の札を取るのか?」
【そう。つまり全部覚えてないとできません。ちなみに百人一首の箱は持ってますので、今度勝負しましょう!】
ニヤニヤ……
ドールなので笑えないはずだが、なんとなく意地悪げに笑う。
「負けないように覚えてやろうじゃないか!」
こちらも楽しくなり、返すと、桜智の下のヴァーロが苦しげに呻いたのだった。
~*~~*~~*~~*~~*~
※一応、和歌は、
小倉百人一首第七番
天の原ふりさけ見れば春日なる
三笠の山に出でし月かも
安倍仲麻呂
を参考にしています。
解釈は自己流ですのでご了承ください。
そして、桜智の好き嫌い論も、桜智は初期の技巧より言葉を大事にする和歌が好みだと思っていただければと思います。
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