22 / 30
遊亀は大きな腕に抱かれて安堵します。
しおりを挟む
「この目でなければ……あの若造に侮られんかったのに‼」
歯噛みしつつ、遊亀の肩を抱き、歩く亀松。
「旦那さま。若奥様と別に……」
「いかん‼遊亀はわしが連れていくんや‼お前らは着いてこい‼気配は感じんが、アホがこんとも限らん‼」
護衛に言い放つ。
「遊亀。大丈夫や。安成はわしの子や。すぐ追い付く」
「お父さん……」
「どうしたんぞ?」
すりすり……
自分の肩を抱いている亀松の力強い腕に、手で触れた遊亀は、
「ありがとう……だんだん。お父さん。うちを守ってくれて、ありがとう……」
「何いよんぞ。遊亀はわしの娘や。礼なんか言うな。それよりも遊亀?」
「はい‼こ、子供のことは……」
「違うわ‼お腹の子供も大事やが、遊亀が大事や‼無理はしたらいかん‼遊亀、お前は荒事はできへんやろが‼」
亀松は、抱いた肩で解る。
遊亀は妻の浪子のように、娘のさきのように、最低限身を守る術すら教わっていない。
それなのに……。
「お、お父さんが、し、心配で……な、何もできんでも……何か出来んでも、お父さんと離れたら……怖くなって……」
震える声で、遊亀が答える。
「おらんなったら……嫌やけん……。や、安成君は、安舍兄上と一緒やけん……一緒に逃げられるだけ逃げられたらって。それに、お父さんの目の代わりに……」
「邪魔んなる‼戦いはそんなに甘ないわ‼」
「……ご、ごめんなさい……」
声を殺し、しゃくりあげようとした遊亀は、くしゃくしゃと頭を撫でられる。
「……泣かんでえぇ。悪かったわ。わしが悪かった……だんだん。遊亀はわしの命の恩人や……」
「お、お父さん……」
「ほれ、行くで。お社に」
護衛は、父娘の様子にホッとする。
そして、社に向かい歩いていくのだった。
「亀松‼真鶴‼」
「大祝職様‼」
「無事か‼」
「鶴と亀で仲よう逃げて来ましたわ」
おどける亀松に安用は、くっと笑い、
「そなたらしいな。真鶴?泣いていたのか?亀松?」
「ち、違います……お父さんが、守ってくれて……兄上と安成く……旦那様が……助けに来てくれました。良かったです。わ、私は無力で……」
泣き出した遊亀に、
「それはそうだ。真鶴?そなたに私は力を求めておらぬ」
「ち……」
目の見えない亀松の腕の中でビクッと震える。
「や、役に……」
立たない人間だから……いらない……?
零れ落ちる言葉を聞き取った父親は、
「何を言う。役に立つのではなく、お前はお腹にややがおるではないか‼体を慈しめと言うのだ‼それに……」
近づいた安用は、頭を撫でる。
「私は、選んだではないか……真鶴。『遊亀』は、私の娘だと。大事だと」
「ち、父上……」
「皆。戻ってくるまで、休むがいい」
安用に導かれ、安全な、神聖な社に入っていく。
しばらくして、数名の怪我人はあったものの、全員が戻ってきたのだった。
「遊亀‼」
「や、やす……旦那さま。ご、ご無事で……?」
「……返り血だよ……近づくな」
穢れになってはと、身を翻そうとする安成に、抱きつき、
「良かった……良かったぁぁ」
わんわんと泣きじゃくる遊亀に、血に染まった手と、見比べおろおろとしていたものの、そっと抱き締める。
「大丈夫……遊亀。心配せんでかまん……生きて戻るけん」
安成は、何度も何度も繰り返し、泣き止むまで囁いたのだった。
歯噛みしつつ、遊亀の肩を抱き、歩く亀松。
「旦那さま。若奥様と別に……」
「いかん‼遊亀はわしが連れていくんや‼お前らは着いてこい‼気配は感じんが、アホがこんとも限らん‼」
護衛に言い放つ。
「遊亀。大丈夫や。安成はわしの子や。すぐ追い付く」
「お父さん……」
「どうしたんぞ?」
すりすり……
自分の肩を抱いている亀松の力強い腕に、手で触れた遊亀は、
「ありがとう……だんだん。お父さん。うちを守ってくれて、ありがとう……」
「何いよんぞ。遊亀はわしの娘や。礼なんか言うな。それよりも遊亀?」
「はい‼こ、子供のことは……」
「違うわ‼お腹の子供も大事やが、遊亀が大事や‼無理はしたらいかん‼遊亀、お前は荒事はできへんやろが‼」
亀松は、抱いた肩で解る。
遊亀は妻の浪子のように、娘のさきのように、最低限身を守る術すら教わっていない。
それなのに……。
「お、お父さんが、し、心配で……な、何もできんでも……何か出来んでも、お父さんと離れたら……怖くなって……」
震える声で、遊亀が答える。
「おらんなったら……嫌やけん……。や、安成君は、安舍兄上と一緒やけん……一緒に逃げられるだけ逃げられたらって。それに、お父さんの目の代わりに……」
「邪魔んなる‼戦いはそんなに甘ないわ‼」
「……ご、ごめんなさい……」
声を殺し、しゃくりあげようとした遊亀は、くしゃくしゃと頭を撫でられる。
「……泣かんでえぇ。悪かったわ。わしが悪かった……だんだん。遊亀はわしの命の恩人や……」
「お、お父さん……」
「ほれ、行くで。お社に」
護衛は、父娘の様子にホッとする。
そして、社に向かい歩いていくのだった。
「亀松‼真鶴‼」
「大祝職様‼」
「無事か‼」
「鶴と亀で仲よう逃げて来ましたわ」
おどける亀松に安用は、くっと笑い、
「そなたらしいな。真鶴?泣いていたのか?亀松?」
「ち、違います……お父さんが、守ってくれて……兄上と安成く……旦那様が……助けに来てくれました。良かったです。わ、私は無力で……」
泣き出した遊亀に、
「それはそうだ。真鶴?そなたに私は力を求めておらぬ」
「ち……」
目の見えない亀松の腕の中でビクッと震える。
「や、役に……」
立たない人間だから……いらない……?
零れ落ちる言葉を聞き取った父親は、
「何を言う。役に立つのではなく、お前はお腹にややがおるではないか‼体を慈しめと言うのだ‼それに……」
近づいた安用は、頭を撫でる。
「私は、選んだではないか……真鶴。『遊亀』は、私の娘だと。大事だと」
「ち、父上……」
「皆。戻ってくるまで、休むがいい」
安用に導かれ、安全な、神聖な社に入っていく。
しばらくして、数名の怪我人はあったものの、全員が戻ってきたのだった。
「遊亀‼」
「や、やす……旦那さま。ご、ご無事で……?」
「……返り血だよ……近づくな」
穢れになってはと、身を翻そうとする安成に、抱きつき、
「良かった……良かったぁぁ」
わんわんと泣きじゃくる遊亀に、血に染まった手と、見比べおろおろとしていたものの、そっと抱き締める。
「大丈夫……遊亀。心配せんでかまん……生きて戻るけん」
安成は、何度も何度も繰り返し、泣き止むまで囁いたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる