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第一章
もう生きている意味はありませんわ
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……まず悔やまれるのは、噂好きのスズメたちです。
何故、お父様やお兄さまたち、そして国王陛下といったこの国の一握りの人が処理した……もみ消した情報が歪められ、広がっているのでしょう?
誰が好き好んであの腹が出た、お父様より年上のおっさんと、駆け落ちなんかするものですか。
王宮でのパーティーや舞踏会で会う程度、話もしないのにベタベタ触ろうとする男です。
何かあると酒臭い顔を近づけられ、卑猥な言葉をかけられて、嫌な思いをするのです。
好きになれるはずはありません。
誘拐されましたが、無事に保護されたのに、悪意ある噂を流されたのです。
ちなみにハゲも遠慮ですわ。
まぁ、白髪が少々あるのはいいですけどね。
わたくしは、公爵家の末娘スティファーリアと申します。
兄は大勢いますが、みんな自慢の兄たち。
お顔立ちから性格まで評判がいいのです。
一の兄はマティアーシュ、未来の宰相候補。
二の兄はカシュパル、外交官としてすでに飛び回っておりますわ。
三の兄はラディスラフ、未来の将軍候補有力者。
四の兄はスラヴォミール、天才魔法使い。
わたくしは母が先代国王陛下の娘だったこともあり、将来は他国に王女扱いで嫁ぐことになるか、いとこに当たる王子と予定でしたわ。
それなのに……。
何もされていないのに、傷モノと呼ばれるようになったわたくし。
婚約も決まりかけていたのになくなり、その婚約者候補だった王子はわたくしが親友と思っていた子爵令嬢と婚約が決まりそうだと聞きました。
悲しくて、泣き続けるお母様に申し訳なくて……相談するのとおめでとうと伝えたくて、質素な服を着て三の兄に連れられ、大きな複合施設にいるという友人の元に向かったわたくしの前で、聞こえてきたのは笑い声でしたわ。
子爵令嬢は、わたくしを誘拐した男とテラスで笑っておりました。
見たこともない歪んだ顔で、聞いたこともない汚い言葉でわたくしを罵っておりました。
「アイツ、死ねば良かったのに!」
と言っておりました。
「アンタに金渡したんだから、やっておけば良かったのよ! 最後の最後に怖気づいて最悪だわ!」
「仕方ねぇだろ? あれでも、公爵家の娘だ。でも、この噂のおかげで、俺はあの女を迎えられる。お前だって、王子と結婚だ。祝杯をあげようじゃないか!」
「……まぁね! これで私が王子妃。そして未来の王妃!」
足がすくみます。
頭がガンガンします。
どうして?
わたくしを連れ去った男が捕まっていないのでしょう?
どう言うこと?
何故、この人の多いところでお茶を飲んでいるのでしょう?
なんで?
わたくしが何をしたのでしょうか?
憎まれるようなことなんて、一つも……。
ふらっとよろめきそうになります。
「リリー」
抱きしめてくれるお兄さま。
「帰ろう。大丈夫。魔具を持ってる。録音済みだ」
揺れていたのはわたくしなのか、怒っているお兄さまなのか……その後のことはわかりません。
お兄さまが馬車を呼んでいた間に、施設の最も高い塔に登ったわたくしはそのまま身を投げたのです。
……怖くなんて……ありませんわ。
ただ苦しかったのです。
お父様、お母様、親不孝な娘でごめんなさい。
お兄さまたち……馬鹿な妹で、ごめんなさい。
叔父上、叔母上、許してください。
何故、お父様やお兄さまたち、そして国王陛下といったこの国の一握りの人が処理した……もみ消した情報が歪められ、広がっているのでしょう?
誰が好き好んであの腹が出た、お父様より年上のおっさんと、駆け落ちなんかするものですか。
王宮でのパーティーや舞踏会で会う程度、話もしないのにベタベタ触ろうとする男です。
何かあると酒臭い顔を近づけられ、卑猥な言葉をかけられて、嫌な思いをするのです。
好きになれるはずはありません。
誘拐されましたが、無事に保護されたのに、悪意ある噂を流されたのです。
ちなみにハゲも遠慮ですわ。
まぁ、白髪が少々あるのはいいですけどね。
わたくしは、公爵家の末娘スティファーリアと申します。
兄は大勢いますが、みんな自慢の兄たち。
お顔立ちから性格まで評判がいいのです。
一の兄はマティアーシュ、未来の宰相候補。
二の兄はカシュパル、外交官としてすでに飛び回っておりますわ。
三の兄はラディスラフ、未来の将軍候補有力者。
四の兄はスラヴォミール、天才魔法使い。
わたくしは母が先代国王陛下の娘だったこともあり、将来は他国に王女扱いで嫁ぐことになるか、いとこに当たる王子と予定でしたわ。
それなのに……。
何もされていないのに、傷モノと呼ばれるようになったわたくし。
婚約も決まりかけていたのになくなり、その婚約者候補だった王子はわたくしが親友と思っていた子爵令嬢と婚約が決まりそうだと聞きました。
悲しくて、泣き続けるお母様に申し訳なくて……相談するのとおめでとうと伝えたくて、質素な服を着て三の兄に連れられ、大きな複合施設にいるという友人の元に向かったわたくしの前で、聞こえてきたのは笑い声でしたわ。
子爵令嬢は、わたくしを誘拐した男とテラスで笑っておりました。
見たこともない歪んだ顔で、聞いたこともない汚い言葉でわたくしを罵っておりました。
「アイツ、死ねば良かったのに!」
と言っておりました。
「アンタに金渡したんだから、やっておけば良かったのよ! 最後の最後に怖気づいて最悪だわ!」
「仕方ねぇだろ? あれでも、公爵家の娘だ。でも、この噂のおかげで、俺はあの女を迎えられる。お前だって、王子と結婚だ。祝杯をあげようじゃないか!」
「……まぁね! これで私が王子妃。そして未来の王妃!」
足がすくみます。
頭がガンガンします。
どうして?
わたくしを連れ去った男が捕まっていないのでしょう?
どう言うこと?
何故、この人の多いところでお茶を飲んでいるのでしょう?
なんで?
わたくしが何をしたのでしょうか?
憎まれるようなことなんて、一つも……。
ふらっとよろめきそうになります。
「リリー」
抱きしめてくれるお兄さま。
「帰ろう。大丈夫。魔具を持ってる。録音済みだ」
揺れていたのはわたくしなのか、怒っているお兄さまなのか……その後のことはわかりません。
お兄さまが馬車を呼んでいた間に、施設の最も高い塔に登ったわたくしはそのまま身を投げたのです。
……怖くなんて……ありませんわ。
ただ苦しかったのです。
お父様、お母様、親不孝な娘でごめんなさい。
お兄さまたち……馬鹿な妹で、ごめんなさい。
叔父上、叔母上、許してください。
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