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第二章
名前は……。
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その後、抱かれてきた赤ん坊は全身を真っ赤にして、ヒィヒィと泣いていた。
その手足は折れそうなほど細く、小さかった。
「うわぁ……可愛い! 妹? 僕たちの妹だよね?」
母親が抱く赤ん坊を、背伸びしながら覗き込むマティアーシュ。
「そうよ……急いで生まれてきたのね……ちょっと身体が小さいわ。マティアーシュ。抱いてみる?」
「うん!」
ダボダボの産着の中に沈むような小さい赤ん坊は、小さい指を動かしている。
抱いてみると本当に小さい。
「可愛い……お兄ちゃんだよ? お名前早く決めなきゃね」
声をかけると、口の方に握った拳を持っていく。
「マグダレーナ。どうしようかな……さっきも、マティアーシュに指摘されていたんだけど、男の子の名前しか思い浮かばなかったんだ」
「なんて?」
「スラヴォミールとか……スラヴァーナ……とかどうだろうか」
「そうね……」
どうしようかしら……。
と、娘を見下ろす。
「……確か、聞いたのだけど、ある国では身体が小さかったり、病弱な赤ん坊に元気で成長するようにと、女の子だったら男の子の名前を、男の子だったら女の子の名前をつけるのですって」
「そうなの? 母さま」
「えぇ。どうしようかしら? お父さまの言われたスラヴォミールがいいかしら? スラヴァーナがいいかしら?」
「うーん……」
考えるマティアーシュの腕の中で、まだ見えていないはずだが目を開ける。
「可愛い! スラヴァーナがいい?」
「……」
「うーん、じゃぁ、スラヴォミールがいい?」
小さい手が動く。
「……スラヴォミールがいいって」
「そうなの?」
「うん。多分? 母さま。呼ぶ時はスラヴァーナでもいい?」
「そうね。そう呼んであげましょうか」
その言葉にイェレミアーシュは内心ほっとするのだった。
その日、ブレイハ公爵家から王家に、マグダレーナが子供を出産したこと、女の子だということを内々に伝え、国王夫妻と先代国王は喜んだのだった。
その手足は折れそうなほど細く、小さかった。
「うわぁ……可愛い! 妹? 僕たちの妹だよね?」
母親が抱く赤ん坊を、背伸びしながら覗き込むマティアーシュ。
「そうよ……急いで生まれてきたのね……ちょっと身体が小さいわ。マティアーシュ。抱いてみる?」
「うん!」
ダボダボの産着の中に沈むような小さい赤ん坊は、小さい指を動かしている。
抱いてみると本当に小さい。
「可愛い……お兄ちゃんだよ? お名前早く決めなきゃね」
声をかけると、口の方に握った拳を持っていく。
「マグダレーナ。どうしようかな……さっきも、マティアーシュに指摘されていたんだけど、男の子の名前しか思い浮かばなかったんだ」
「なんて?」
「スラヴォミールとか……スラヴァーナ……とかどうだろうか」
「そうね……」
どうしようかしら……。
と、娘を見下ろす。
「……確か、聞いたのだけど、ある国では身体が小さかったり、病弱な赤ん坊に元気で成長するようにと、女の子だったら男の子の名前を、男の子だったら女の子の名前をつけるのですって」
「そうなの? 母さま」
「えぇ。どうしようかしら? お父さまの言われたスラヴォミールがいいかしら? スラヴァーナがいいかしら?」
「うーん……」
考えるマティアーシュの腕の中で、まだ見えていないはずだが目を開ける。
「可愛い! スラヴァーナがいい?」
「……」
「うーん、じゃぁ、スラヴォミールがいい?」
小さい手が動く。
「……スラヴォミールがいいって」
「そうなの?」
「うん。多分? 母さま。呼ぶ時はスラヴァーナでもいい?」
「そうね。そう呼んであげましょうか」
その言葉にイェレミアーシュは内心ほっとするのだった。
その日、ブレイハ公爵家から王家に、マグダレーナが子供を出産したこと、女の子だということを内々に伝え、国王夫妻と先代国王は喜んだのだった。
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