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第一章……ゲームの章
39……neun und dreißig(ノインウントドライスィヒ)
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ヒュルヒテゴットの膝の上にちょこんと座るアストリットに、周囲はざわめく。
一応侍女が席を用意したのだが、ヒュルヒテゴットが何かあるといけないからと、離さなかったのである。
「伯父様。大丈夫です。ちゃんと食べられますし、ディーデリヒさまやイタルさんのお手伝いを……」
「アストリット……伯父様と一緒は嫌かな?」
慌てて首を振る。
伯父は滅多に会えないが、時々行き来したりした時には可愛がって貰っていたし、定期的に父とやり取りをする便りとともに、贈り物も届いていた。
母と瓜二つ……つまり長兄のカシミールとも良く似ている伯父は、アストリットにとっては近しい大人である。
「い、いえ、そんなことは。でも、伯父様……重くありませんか?」
小さく華奢な少女の一言に、珍しくヒュルヒテゴットは楽しげに声を上げて笑う。
側近や護衛の騎士たちは驚くが、ディーデリヒは目をそらす。
ヒュルヒテゴット役の先輩、久我直之は、業界内では笑い上戸で知られている。
「アストリットのように愛らしい姪を膝に乗せる位、楽なものだよ。それよりもディーデリヒ、何だい?」
「いいえ、ヒュルヒテゴットさまの珍しいご様子は、伯父に伺っておりましたが……今日は相当珍しいと。明日は雨かもしれないと、心配していただけです」
「ほぉぉ……で、明日は雨かな?」
「多分。部分的に嵐となるかと」
答える。
「ほぉ、どの辺りかな?」
「この先でアスティを中心に、いがみ合うヒュルヒテゴットさまとエルンストさま、カーシュとテオが見えますね」
「ディーデリヒは参加しないのかな?」
「カサンドラとエリーザベトさまと、妹のフィーと一緒にイタルと話があります」
アストリットはきょときょととイタルと2人を見て、自分はどうしようといった顔をする。
イタルが見ても可愛い姿である。
「アスティはフィーとカサンドラと仲良しですから、一緒に連れて行きますね。ね? アスティ」
「は、はい、ディさま」
返事をしたものの、自分を抱いている伯父に気づきハッとする。
「あ、えと、伯父様……」
「大丈夫だよ。怒ってないから」
穏やかに笑うが、ホッとして、自分の元に届いた食事に気が逸れた瞬間、ヒュルヒテゴットは、
『臣……後で締める……』
その口パクに、ニヤッと笑い、
『未布留に言いますよ……あの例のこと……』
『チッ! テメェのことを、アストリットにチクる!』
『へぇ……直之さん……そんなに俺、ミスとかありましたっけ? それよりヒュルヒテゴット様は、そう言う言葉は使いませんよ』
と口パクで返し、そして、炙っていた肉をひっくり返す。
すると、ディーデリヒの後ろがガサガサと揺れて、猟犬たちとその後ろから一回り大きな狼が姿を見せた。
護衛が剣を握るが、ディーデリヒは、
「あぁ、先行していたのに戻って貰って悪かった。アナスタージウス」
「アナスタージウス! おかえりなさい!」
叔父の膝から立ち上がったアストリットは駆け寄り、ムギュッと抱きつく。
アストリットは大柄な狼が大好きで、怖くないのである。
しかも、冬毛のもふもふの身体を、幸せそうに堪能する。
「どうだったですか? アナスタージウス」
『アスティ。主人が拗ねるぞ?』
「私はアナスタージウスが大好きだからいいのです。アナスタージウス。何か変なところありました?」
『背中のリューンとラウが、飛ぼうとするので困る』
「飛ぶ?」
リューンは背中の翼がある。
ラウはまだ小さく広げることが出来る位である。
それなのに……。
「リューンもラウも飛びたいの?」
ウンウン、
頷く二匹に、アストリットは、
「遠くに行っちゃうの? 寂しい……」
「と言うか、アスティ。確かドラゴンは、主人や親だと思い定めた存在からは余り遠く離れないはずだよ。ラウは聞いたけど親がディで、主人をアスティと思ってるみたいだ。そんなに離れないよ」
「それに、リューンだったか? そちらのドラゴンは攻撃に適したドラゴン。遠くに行くこともあるだろうが、その青いドラゴンは主人達から離れることはない。と言うか、攻撃は出来ない上に、防御や回復に特化したドラゴンだから無理だ」
「そうなのですか?」
イタルと伯父の言葉を聞き、ディーデリヒを見る。
「あぁ、確かリューンはもう少ししたら鱗が現れる。鎧のようなものだろう。でもラウはそういったものは成長しても現れない。だから防御魔法と回復に特化しているんだ」
「そうなのですね。じゃぁ、ラウちゃん、一緒にいてくれる?」
トコトコと自分の側に来るラウを抱きしめる。
アナスタージウスにもたれかかり、ラウと遊ぶ少女にふっと笑う。
「アスティ。食事は?」
「あ、た、食べます」
少女は立ち上がると、キョロキョロと自分の座る所を探し、ヒュルヒテゴットが手招きするのをゆっくりと近づいたのだった。
一応侍女が席を用意したのだが、ヒュルヒテゴットが何かあるといけないからと、離さなかったのである。
「伯父様。大丈夫です。ちゃんと食べられますし、ディーデリヒさまやイタルさんのお手伝いを……」
「アストリット……伯父様と一緒は嫌かな?」
慌てて首を振る。
伯父は滅多に会えないが、時々行き来したりした時には可愛がって貰っていたし、定期的に父とやり取りをする便りとともに、贈り物も届いていた。
母と瓜二つ……つまり長兄のカシミールとも良く似ている伯父は、アストリットにとっては近しい大人である。
「い、いえ、そんなことは。でも、伯父様……重くありませんか?」
小さく華奢な少女の一言に、珍しくヒュルヒテゴットは楽しげに声を上げて笑う。
側近や護衛の騎士たちは驚くが、ディーデリヒは目をそらす。
ヒュルヒテゴット役の先輩、久我直之は、業界内では笑い上戸で知られている。
「アストリットのように愛らしい姪を膝に乗せる位、楽なものだよ。それよりもディーデリヒ、何だい?」
「いいえ、ヒュルヒテゴットさまの珍しいご様子は、伯父に伺っておりましたが……今日は相当珍しいと。明日は雨かもしれないと、心配していただけです」
「ほぉぉ……で、明日は雨かな?」
「多分。部分的に嵐となるかと」
答える。
「ほぉ、どの辺りかな?」
「この先でアスティを中心に、いがみ合うヒュルヒテゴットさまとエルンストさま、カーシュとテオが見えますね」
「ディーデリヒは参加しないのかな?」
「カサンドラとエリーザベトさまと、妹のフィーと一緒にイタルと話があります」
アストリットはきょときょととイタルと2人を見て、自分はどうしようといった顔をする。
イタルが見ても可愛い姿である。
「アスティはフィーとカサンドラと仲良しですから、一緒に連れて行きますね。ね? アスティ」
「は、はい、ディさま」
返事をしたものの、自分を抱いている伯父に気づきハッとする。
「あ、えと、伯父様……」
「大丈夫だよ。怒ってないから」
穏やかに笑うが、ホッとして、自分の元に届いた食事に気が逸れた瞬間、ヒュルヒテゴットは、
『臣……後で締める……』
その口パクに、ニヤッと笑い、
『未布留に言いますよ……あの例のこと……』
『チッ! テメェのことを、アストリットにチクる!』
『へぇ……直之さん……そんなに俺、ミスとかありましたっけ? それよりヒュルヒテゴット様は、そう言う言葉は使いませんよ』
と口パクで返し、そして、炙っていた肉をひっくり返す。
すると、ディーデリヒの後ろがガサガサと揺れて、猟犬たちとその後ろから一回り大きな狼が姿を見せた。
護衛が剣を握るが、ディーデリヒは、
「あぁ、先行していたのに戻って貰って悪かった。アナスタージウス」
「アナスタージウス! おかえりなさい!」
叔父の膝から立ち上がったアストリットは駆け寄り、ムギュッと抱きつく。
アストリットは大柄な狼が大好きで、怖くないのである。
しかも、冬毛のもふもふの身体を、幸せそうに堪能する。
「どうだったですか? アナスタージウス」
『アスティ。主人が拗ねるぞ?』
「私はアナスタージウスが大好きだからいいのです。アナスタージウス。何か変なところありました?」
『背中のリューンとラウが、飛ぼうとするので困る』
「飛ぶ?」
リューンは背中の翼がある。
ラウはまだ小さく広げることが出来る位である。
それなのに……。
「リューンもラウも飛びたいの?」
ウンウン、
頷く二匹に、アストリットは、
「遠くに行っちゃうの? 寂しい……」
「と言うか、アスティ。確かドラゴンは、主人や親だと思い定めた存在からは余り遠く離れないはずだよ。ラウは聞いたけど親がディで、主人をアスティと思ってるみたいだ。そんなに離れないよ」
「それに、リューンだったか? そちらのドラゴンは攻撃に適したドラゴン。遠くに行くこともあるだろうが、その青いドラゴンは主人達から離れることはない。と言うか、攻撃は出来ない上に、防御や回復に特化したドラゴンだから無理だ」
「そうなのですか?」
イタルと伯父の言葉を聞き、ディーデリヒを見る。
「あぁ、確かリューンはもう少ししたら鱗が現れる。鎧のようなものだろう。でもラウはそういったものは成長しても現れない。だから防御魔法と回復に特化しているんだ」
「そうなのですね。じゃぁ、ラウちゃん、一緒にいてくれる?」
トコトコと自分の側に来るラウを抱きしめる。
アナスタージウスにもたれかかり、ラウと遊ぶ少女にふっと笑う。
「アスティ。食事は?」
「あ、た、食べます」
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