Geschichte・Spiel(ゲシヒテ・シュピール)~歴史ゲーム

刹那玻璃

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第二章……帰還後、生きる意味を探す

75……fünf und siebzig(フュンフウントズィープツィヒ)……テディベアに想いを

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 雅臣まさおみは、テディベアのブースのところに戻っていた。

 ハンドメイドのテディベアの中、まどかが気にしていたのは、風遊ふゆ達のハンドメイドのベアだけではなく、例年置かれたことのない、シュタイフ社やメリーソートと言った有名メーカーのヴィンテージテディベア。

愛来あきちゃん。このベアは何でここにいるの? 風遊さんや蛍さんのベアじゃないよね?」
「うん。さすが、臣お兄ちゃん。これは、はーくんの大学のお友達のおばあちゃんの集めてたベアで、おばあちゃんが亡くなったから捨てるって。だから慌てておばあちゃんがそのお家に行って、全部買い取ったの。今日はこの五体だけど、明日と明後日で欲しい人に譲る予定」
「じゃぁ、ここにいないベアも、一緒に全部買い取りたいんだけど」
「えっ? 全部?」
「あぁ。お金は幾らかなぁ? 足りなかったら銀行から引き出してくるから」

 財布を出そうとする雅臣に、近づいてきた風遊が、

「臣くん。本当にええんかね? 結構珍しい、ビンテージもおるんよ?」
「でも、譲るってことは、同じベアをもう風遊さん達持ってるってことでしょう? 皆バラバラにするより、まとめて引き取りたいです」
「……うーん。そうやねぇ……臣くんなら大事にしてくれそうやけん、かまんよ。愛来。ここのミニチュアベアやシュタイフ社のベアとチーキーなどを全部下げてや」
「はーい!」

愛来は一つ一つ丁寧に箱に収めると段ボールに入れ、風遊がそれを後ろの台に置き、売約済みとメモを貼る。
 風遊は、一つの箱を開け、

「向こうの人は価値が分からんかったみたいで、タダでくれようとしたんよ。でも、後で問題になっても嫌やし、最低限のお金をお渡ししたんよ。シュタイフのこのベアは、タグが白で、文字が黒やろ~? 昔のベアの限定再販なんよ。濃いネイビーの1909年のベアのレプリカ。多分、当時の販売価格は10万弱やね。今はそんな値段はないと思うけれど、それでも、茶色とかベージュが多いのに、このネイビーは綺麗やろ?」
「はい。瞬ちゃんは、特にそのネイビーの子を気にしていました」
「あら、瞬ちゃんは見る目があるねぇ」
「で、すぐに戻したんですけど、うちの母もテディベア好きでしょう? 少しですが教えて貰ってて、気になったので……」
「うちらも、普段は自分のテディベアを販売するだけなんよ。でも、今回はどうしても家に置いておけなくて……」

 祖母と孫は顔を見合わせ苦笑する。

「臣くん。瞬ちゃんにあげるんかね?」
「全部一度にあげたりすると、逆に重荷になると思うので、他のベアは家に飾ろうかと思います。前に愛来ちゃんに貰ったベアから、とても気になってたんです。祐也さんみたいに自分で作るのは難しいと思いますけど」
「あら、器用そうやと思うんやけど?」
「あの。お幾らになるんでしょう?」
「えぇと、確か、売って貰ったんが50万円ね。でも、そのうちの半分を私と蛍と愛来が、選んだんよ。だから20万円くらいやねぇ」

 雅臣は財布を出し、札を手渡す。

「じゃぁ、これを。一応領収書を頂けますか?」
「えぇと……臣お兄ちゃん。これ30万円あるよ?」
「包装分込みだよ。素人の俺が包装したら、傷がついたりする可能性もあるから、愛来ちゃんもお願いするね」

 風遊は苦笑する。

 雅臣は、昔から気を使うのがうまい。
 育ての親や、兄姉にちゃんとしつけられたおかげだろう。
 包装道具など、百均やホームセンターにあり、普段からテディベアの包装の為に風遊は準備しているし、包装など慣れたものだ。
 それなのに……。

「臣くんは、変わらんね」
「そうですか?」
「すぅちゃんとひなくんによう似とる。送料はここから払うけんね」

 風遊は孫からお金を受け取ると、金庫に仕舞い込んだ。



 そして、瞬達の元に戻ると、

「あ、臣さん、臣さん! お帰りなさい」
「ただいま。はい、瞬ちゃん、せいちゃん。あいちゃんの分も」

雅臣が差し出したのは、柄は違うがお揃いの2way肩掛けバッグ。
 戻る途中で見つけた、ハンドメイドの大きながま口を使った可愛い柄の物である。

「ほら、瞬ちゃんとせいちゃんのテディベアを入れられるよ。そんなに重くないし、瞬ちゃんのは俺が持つから」
「うわぁ! 可愛い! まーちゃん。どの柄がいい?」
「えっと、『不思議の国のアリス』風と、原作の『くまのプーさん』柄と、あぁ! せいちゃんの好きな『Elements』だね」
「うん。私は『Elements』がいいなぁ。まーちゃんは?」
「えへへ……『不思議の国のアリス』可愛い」

 睛の珍しい希望と、可愛い柄を選ぶ瞬に、雅臣は微笑む。

「じゃぁ、はい」
「ありがとうございます!」
「瞬ちゃんは、ベアを入れておく? 那岐。この後、うどんと飲み物飲もうか?」
「そうやね。臣兄。せいちゃんも行こうか」

 睛は瞳のバッグを一緒に肩にかけ、那岐と手を繋いで歩いて行ったのだった。
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