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第二章……帰還後、生きる意味を探す
76……sechs und siebzig(ゼクスウントズィープツィヒ)……同年代からの厳しい指摘
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車椅子を囲むように、食事をできるようテントの下に長いテーブルと長椅子を並べたところに、瞳は那岐の兄、風早と明るい茶髪の青年に少女と楽しげに話している。
「あー! ほらほら~! ロニーとクリス、見てよ! 私の可愛い妹達! せいちゃん、まーちゃん! ほら、一平伯父さんの子供だって」
瞬は戸惑うが、雅臣が、
「一平さんの奥さんが、イギリスの俳優のヴィヴィアン・マーキュリー。長男のロナウドと長女のクリスティーンだよ。ロナウドが確か那岐と同じ歳だから、あいちゃんとせいちゃんと同じ歳。クリスティーンはその二つ下。昶は、その一つ下になるのかな。で、ほら、昶と手を繋いでいるのが、シェリル」
風船や綿飴を買って貰って嬉しそうな少女は、昶と手を繋いでいる。
上の二人は茶髪で栗色の瞳に、顔立ちは父親似だが、シェリルは完全に母親に似た妖精のような愛らしい少女である。
「可愛いです。シェリルちゃん」
『あ、アストリット姫とテオドール様、ディーデリヒ様。そして、睛お姉ちゃん。改めて初めまして。安部シェリル・瑠可です。よろしくお願いします』
『初めまして。結城睛と言います。この子が妹の瞬。ルカちゃんでいいかな?』
睛は微笑む。
『はい!』
えへへ……
笑う顔は、氷の女神の異名を持つ母に似ているが、春の花の妖精のようである。
しかし、大騒ぎしている姉兄を見て、
「お姉ちゃん、お兄ちゃん。ビールとお酒を混ぜて飲んじゃダメ。ママとウェインお兄ちゃんが言ってるでしょ? パパはザル。安部のおじいちゃんは酒はお水の家系だけど、お姉ちゃんもお兄ちゃんも下戸なんだから」
「大丈夫、大丈夫」
「そう言ってる人程ダメなの。アルコール中毒になったらどうするの?」
「あの……ルカちゃん。どうして、せいちゃんと話した時は英語で、お姉さん達は日本語なの?」
瞬は問いかける。
すると、ルカは、
「お姉ちゃんとお兄ちゃんは、生まれも育ちもイギリスなのに、英語が喋れないのです」
「えっ?」
「ちょうどママが忙しくて、小さい時一時的にお父さんと一緒に日本に帰って育ったのです。そうしたら、英語が全く……パパは喋らないし……グランパや媛ちゃんは熱心に教えてくれたのです。でも全く物にならなかったそうです」
「喋れなくても生きていけるとも。死なないから」
赤い顔をしたロナウドは笑う。
「アホね」
瞳は缶を置き、焼肉をつつきながら告げる。
「あんた、死にかけたことないでしょ? 死に物狂いで逃げた怖い体験や、行方不明になった家族を毎日泣きながら探し続けたり、周囲は妹を殺したとか冷たい目で見られたことも」
「何だよ。瞳」
「そうよ」
こちらの方が双子に見える兄妹を見る。
「まーちゃんが行方不明になって、最初は周囲は心配してくれてるんだと思った。でも、本当は違ってた。裏でコソコソとパパやママ、せいちゃんがまーちゃんを殺したんだって噂になった。警察にも何回か呼び出された」
「えっ……」
瞬は目を見開き、言葉を失う。
「何度も違うって言った。でも言えば言う程周囲は冷たくなった。パパは『気にするな。自分達はしていないんだ。いつか分かって貰える』って。……まーちゃんを恨んだりしてない。憎いのは周囲だった。友達もいなくなった。バイトも辞めさせられた。学校に行く気もなくなった。単位がなくなっても退学したらいいと思った」
「あいちゃん……ご、ごめんなさい、ごめん……なさい、せいちゃん。パパ、ママ……ごめんなさい……」
泣きじゃくる妹を抱きしめ、睛は、
「あいちゃん! まーちゃんは何も悪くないんだよ! 何でそんなこと今更言うの! パパとママと約束したじゃない!」
「だから、まーちゃんは悪くないって言ってる。悪いのは周囲だよ。それに、この二人が本気になればいいって言いたかったの。ロニーもクリスも環境がいいのに、甘ったれだよ。なーにが英語は喋れません、だ。お父さんが連れて帰ったのは、お母さんが有名人だから外で自由に遊べないから。それに、二人にお父さんの故郷を知ってほしい。叔父さんの家で遊ばせたい。ただそれだけ。それを言い訳に、喋れませんとか言うな! お父さんの責任じゃない。あんた達が甘えてんだよ! 20歳過ぎで、環境も最高のあんた達が、ルカちゃんだってできることができないのか……馬鹿だよ、バーカ!」
缶を持って一気飲みする。
「まーちゃんは、悪くない! それに自由でいいんだよ。まだ高校生なのに、独学でドイツ語を勉強してる私の自慢の妹だもん! 私達のおばあちゃんが、海外でアンティークショップしてるから、私もせいちゃんも、大学で英語とドイツ語とフランス語とイタリア語勉強してる。ネットが繋がったら、それなりにできるもの。イギリスに住んでながらそれすらしないのは、勉強を放棄してるって思ってもいいよね。シェリルちゃんは、どれだけ努力してるんだろうね? あんた達はどれだけ甘ったれてんだろうね……まぁいいけど」
立ち上がる。
「じゃぁ、私は向こう行ってくる。愛来ちゃんとお話しするよ」
ゴミを分別して捨て、しかも缶のプルタブは外して置かれていた箱に入れて、歩いて行く。
その背を見つめ、那岐は、
「馬鹿ロナウド! 馬鹿クリス! あいちゃん達を泣かせるなよ! 絶対、絶対あいちゃんは泣いてるぞ! それにここは初めてだ。道に迷ったらどうするんだ!」
ロナウドとクリスティーンは慌てて立ち上がると、追いかけていったのだった。
「あー! ほらほら~! ロニーとクリス、見てよ! 私の可愛い妹達! せいちゃん、まーちゃん! ほら、一平伯父さんの子供だって」
瞬は戸惑うが、雅臣が、
「一平さんの奥さんが、イギリスの俳優のヴィヴィアン・マーキュリー。長男のロナウドと長女のクリスティーンだよ。ロナウドが確か那岐と同じ歳だから、あいちゃんとせいちゃんと同じ歳。クリスティーンはその二つ下。昶は、その一つ下になるのかな。で、ほら、昶と手を繋いでいるのが、シェリル」
風船や綿飴を買って貰って嬉しそうな少女は、昶と手を繋いでいる。
上の二人は茶髪で栗色の瞳に、顔立ちは父親似だが、シェリルは完全に母親に似た妖精のような愛らしい少女である。
「可愛いです。シェリルちゃん」
『あ、アストリット姫とテオドール様、ディーデリヒ様。そして、睛お姉ちゃん。改めて初めまして。安部シェリル・瑠可です。よろしくお願いします』
『初めまして。結城睛と言います。この子が妹の瞬。ルカちゃんでいいかな?』
睛は微笑む。
『はい!』
えへへ……
笑う顔は、氷の女神の異名を持つ母に似ているが、春の花の妖精のようである。
しかし、大騒ぎしている姉兄を見て、
「お姉ちゃん、お兄ちゃん。ビールとお酒を混ぜて飲んじゃダメ。ママとウェインお兄ちゃんが言ってるでしょ? パパはザル。安部のおじいちゃんは酒はお水の家系だけど、お姉ちゃんもお兄ちゃんも下戸なんだから」
「大丈夫、大丈夫」
「そう言ってる人程ダメなの。アルコール中毒になったらどうするの?」
「あの……ルカちゃん。どうして、せいちゃんと話した時は英語で、お姉さん達は日本語なの?」
瞬は問いかける。
すると、ルカは、
「お姉ちゃんとお兄ちゃんは、生まれも育ちもイギリスなのに、英語が喋れないのです」
「えっ?」
「ちょうどママが忙しくて、小さい時一時的にお父さんと一緒に日本に帰って育ったのです。そうしたら、英語が全く……パパは喋らないし……グランパや媛ちゃんは熱心に教えてくれたのです。でも全く物にならなかったそうです」
「喋れなくても生きていけるとも。死なないから」
赤い顔をしたロナウドは笑う。
「アホね」
瞳は缶を置き、焼肉をつつきながら告げる。
「あんた、死にかけたことないでしょ? 死に物狂いで逃げた怖い体験や、行方不明になった家族を毎日泣きながら探し続けたり、周囲は妹を殺したとか冷たい目で見られたことも」
「何だよ。瞳」
「そうよ」
こちらの方が双子に見える兄妹を見る。
「まーちゃんが行方不明になって、最初は周囲は心配してくれてるんだと思った。でも、本当は違ってた。裏でコソコソとパパやママ、せいちゃんがまーちゃんを殺したんだって噂になった。警察にも何回か呼び出された」
「えっ……」
瞬は目を見開き、言葉を失う。
「何度も違うって言った。でも言えば言う程周囲は冷たくなった。パパは『気にするな。自分達はしていないんだ。いつか分かって貰える』って。……まーちゃんを恨んだりしてない。憎いのは周囲だった。友達もいなくなった。バイトも辞めさせられた。学校に行く気もなくなった。単位がなくなっても退学したらいいと思った」
「あいちゃん……ご、ごめんなさい、ごめん……なさい、せいちゃん。パパ、ママ……ごめんなさい……」
泣きじゃくる妹を抱きしめ、睛は、
「あいちゃん! まーちゃんは何も悪くないんだよ! 何でそんなこと今更言うの! パパとママと約束したじゃない!」
「だから、まーちゃんは悪くないって言ってる。悪いのは周囲だよ。それに、この二人が本気になればいいって言いたかったの。ロニーもクリスも環境がいいのに、甘ったれだよ。なーにが英語は喋れません、だ。お父さんが連れて帰ったのは、お母さんが有名人だから外で自由に遊べないから。それに、二人にお父さんの故郷を知ってほしい。叔父さんの家で遊ばせたい。ただそれだけ。それを言い訳に、喋れませんとか言うな! お父さんの責任じゃない。あんた達が甘えてんだよ! 20歳過ぎで、環境も最高のあんた達が、ルカちゃんだってできることができないのか……馬鹿だよ、バーカ!」
缶を持って一気飲みする。
「まーちゃんは、悪くない! それに自由でいいんだよ。まだ高校生なのに、独学でドイツ語を勉強してる私の自慢の妹だもん! 私達のおばあちゃんが、海外でアンティークショップしてるから、私もせいちゃんも、大学で英語とドイツ語とフランス語とイタリア語勉強してる。ネットが繋がったら、それなりにできるもの。イギリスに住んでながらそれすらしないのは、勉強を放棄してるって思ってもいいよね。シェリルちゃんは、どれだけ努力してるんだろうね? あんた達はどれだけ甘ったれてんだろうね……まぁいいけど」
立ち上がる。
「じゃぁ、私は向こう行ってくる。愛来ちゃんとお話しするよ」
ゴミを分別して捨て、しかも缶のプルタブは外して置かれていた箱に入れて、歩いて行く。
その背を見つめ、那岐は、
「馬鹿ロナウド! 馬鹿クリス! あいちゃん達を泣かせるなよ! 絶対、絶対あいちゃんは泣いてるぞ! それにここは初めてだ。道に迷ったらどうするんだ!」
ロナウドとクリスティーンは慌てて立ち上がると、追いかけていったのだった。
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