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第二章……帰還後、生きる意味を探す
82……zwei und achtzig(ツヴァイウントアハツィヒ)……それから〜イベントと報告
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その後、英語版ゲームの発売の日。
発売イベント会場の舞台にディーデリヒ役の丹生雅臣とテオドール役の一条那岐は、瓜二つ……だが、那岐のパートナーの方が身長が高い……の女性とそれぞれ手を繋いでいた。
カシミール役のウェインは瑠可を、ヴィヴィアンは一人の青年にエスコートして貰っていた。
英語版ゲームは留学経験があり、英語が流暢な二人以外は、別の俳優が声を当てている。
今回は日本での発売イベントである。
「皆、こんばんは~! 今日はお喋りが上手く、ヨイショ役のみっちゃんが育休でいないので、一番芸歴のない俺に押し付けられました~! この分、給料に上乗せして下さいね! 一条那岐でっす!」
「おい、那岐? 普段突っ込まれるまで、黙ったままじゃなかったか?」
「みっちゃんが司会やれって……俺、すっごく緊張してるのに、絶対嫌がらせだよ。な~にが子育てだ。ミルクの作り方が分からない~! おむつはどうすれば良い? 娘が泣くんだ~って、毎日電話がかかってくるんだぞ? 育休無駄に取るなら、俺にくれっての。俺の方が幼なじみの世話してるから、育児得意だっての。それに役に立たない父親はいらないし、仕事行ってこいっつ~の。絶対、臣さんやガヴェインさんが産休取る方がましだし、ガヴェインさんの方が、品のある腹黒感のないカシミールだぞ」
「だ~れ~が、腹黒だ!」
うさぎの着ぐるみロンパースを着せた子供を抱いて現れたのは、高凪光流である。
「どわ~! 何で来てるの? 子守じゃなかったっけ?」
「子守だよ! 可愛いうちの子連れて、出勤だとも! 可愛いだろう~? うちの子」
「あぁ、可愛い。みっちゃんに全然似てないから、とっても可愛い」
「何だと~」
「こら、やめろ」
雅臣はため息をつく。
いつまでたっても、弟分達は変わらないものだ。
一応台本はあるのだが、そこに戻すのも億劫になりつつある。
それに、通訳もしなければならないのだ。
「ねぇねぇ、臣。そっちはお任せするから、こっちのメンバーの紹介するね~?」
「わぁぁ! すみません、すみません! 私がします!」
雅臣は慌てると、手を繋いでいた瞬がくいくいっと手を引く。
そして、
「初めまして。私は一条瞬と申します。今回のゲームには声を当てていませんが、司会進行の一条那岐さんのサポートとして、初めての仕事をさせて頂きます。とても緊張していますので、失敗や噛んだり、詰まったりするかと思いますが、どうぞ笑って流して頂けたらと思います。では、紹介させて頂きます。まずは司会兼テオドール役の一条那岐さんです。その隣が、今回の英語版ゲーム内容の特別イベントなどを付け加えた、作家の結城睛さんです。今回のシナリオは、一条那岐さんと睛さんが中心となり、話し合いながら作り上げました。那岐さん、睛さん、自己紹介をお願いします」
「はい! 一条那岐です。前作、日本語版と同じでテオドール役を担当しています。そして、翻訳しました。どうぞよろしくお願いします」
「結城睛と申します。本日、同時に出版される小説版を書かせて頂き、今回のゲームの新しいイベントを、原作者の糺日向先生と話をさせて頂き、幾つか製作致しました。ゲーム自体も英語が苦手な方でも、分かりやすいようになっていますので、どうぞ楽しんで下さいませ」
二人は頭を下げる。
そして、瞬が顔を上げると雅臣が微笑み、
「前回と同じ、ディーデリヒ役の丹生雅臣です。今回は特別ルートができ、この世界に入り込むだけでなく、ディーデリヒやカシミール、テオドールなど主要な何人かのキャラと旅に出るイベントもあります。その案内役として、前回は声のなかったカシミールの妹であるアストリット、そして初登場のエルフ族の青年がいます。カシミール役のガヴェイン、アストリット役の瑠可、カサンドラ役のヴィヴィアン、エルフの青年、アロイシャス役のイタル、どうぞ」
「こんにちは、腹黒見た目だけ妖精王子役のガヴェインです。本当に……どれだけ役作りしてもダメ出しされ、一番吹き込みに時間がかかりました。光流って凄いって本気で思いました。普段の役作りの五倍は、精神的にガリガリ削られた作品ですので、どうか心優しく見守って下さい」
「何で凄いんですかぁぁ!」
「だって、幾ら役になりきって声を入れても『ダメ! まだ好青年すぎる! もっと悪どい。見た目は王子、中身全部が腹黒だよ。もう一回!』だもん。尊敬するよ。光流」
ウェインはニコニコ笑う。
「『このカシミールは、ニコニコ笑っているけど、その笑顔の裏でテオドールやディーデリヒを、どうやって利用しちゃおっかな~。あぁ、母上やアストリットにはバレないようにしなきゃ』って考えてるから。『うちのテオとアスティは可愛いからなぁ……僕以外が虐めたら、そいつは抹殺』とか考えてる危ない人だよ』って。じゃぁ、昔やってた悪役のキャライメージを、あれこれいじって演じたら一発OKだったよ。やりにくい役だった……」
「まぁ、ウェインさんは普通のイケメン温厚王子系似合うもんね。でも、優しいからアストリットやテオドールのお父さんのエルンスト様とか、ヒュルヒテゴット様とか似合うんじゃないのかな?」
「父親役かぁ……そうだよね。光流も子供いるし。あ、そうでした。紹介しますね。この子は、僕の幼なじみのヴィヴィの末っ子のシェリル・マーキュリー。日本名が安部瑠可です。今回、カシミールの最愛の妹、アストリットの役を演じています。ルカ」
ウェインが手を引いていた少女は、頭を下げる。
「はい。初めまして。私は安部瑠可です。ルカと呼んで下さい。父が日本人です。俳優としてイギリスを中心に活動しています。今回は初めて声だけのお仕事をさせて戴きました。日本のアニメは父や親戚が見せてくれますが、とてもイラストや映像が美しく、そして声優さんと言う仕事に驚きました。初めて演じさせて頂きましたが、前回はキャラクター設定だけでしたが、今回アストリットは特別イベントがあり、とても楽しかったです。どうぞ、アストリットもよろしくお願いします」
ニコッと笑う瑠可に、会場中から、
「可愛い~!」
「ヴィヴィアン・マーキュリーさんの娘さんでしょう? そっくり~!」
と声が上がる。
「では、カサンドラ役のヴィヴィ」
「初めまして、皆さん。ヴィヴィアン・マーキュリーです。カサンドラ役を演じさせて貰って、本当にとてもとても嬉しかったです。私達はイギリス、ユーロ圏に住んでいますが、今のユーロ圏は、このゲームの時代と違い、変化をしています。色々な国に行っていますが、このゲームの時代は、本来のユーロ圏……深い森の中小さな町に住む人々、移動するのは馬車か馬、徒歩。その時代を再現されています。この素晴らしい作品に関われることを嬉しく思います」
微笑む。
そして、横を向く。
「初めまして、僕は安部昶です。ヴィヴィアン・マーキュリーの次男で、ルカの兄です」
エェェェ!
優しげで温厚な青年の告白に驚く。
「僕は緑のエルフのアロイシャスを演じています。僕は元々、イギリスの大学で飛び級をして、現在大学院で世界史や言語学を勉強しています。今年卒業後は研究所にと思っています。元々、妹になるルカに日本語、中国語、台湾語、ハングル、フランス語、ドイツ語、オランダ語、スペイン語、ポルトガル語や、映画に出演するルカに知識や言語を教えることになったのがきっかけで、今回こんな素晴らしい作品に、参加させて頂けてとても嬉しいです」
「年は幾つですか~?」
ファンからの声に、昶は、
「あ、僕の演じるアロイシャスは、エルフ年齢で40歳前ですが、人間年齢は5歳前後です」
真面目な返答に、舞台上でも笑いが起こり、那岐が、
「違う違う、イタルの年だよ」
「あ、そうだったんですか。すみません。僕はもうすぐ20歳です」
顔を赤らめるイタルに、ファンはキャァァと声を上げる。
「可愛い~!」
「あ、ありがとうございます」
丁寧に頭を下げるイタルに、キャーキャーと声が上がる。
「うん、みっちゃんファンが、イタルのファンになったな」
「まぁ、腹黒で偽物妖精王子より、上品で可愛い本物の妖精王子の方がいいと思う」
那岐とガヴェインが話し合う。
「な~ぎ~! ウェインさん!」
その声に、光流の腕の中で動いた赤ん坊がぐずりはじめ、
「ふえ、ふえっ……ふにゃぁ、ふにゃぁ、ふぎゃぁぁぁ……」
泣き始める。
「わぁぁ! ごめんなさい! 藤花ちゃん!」
「光流。もう裏に下がれ、お腹が空いたか、おむつだろう」
「はーい。ごめんなさい。藤花ちゃん、泣かないで!」
光流はあやしながら下がる。
その後は、瞬が台本をめくりながら必死に、色々な今回のイベントの司会をこなしていく。
いつのまにか準司会になった那岐だけでなく、雅臣や睛がサポートする。
「では最後になりました。本当に、私のつたない司会に着いて来て下さった会場の皆様、本当に感謝致しております、ありがとうございました。キャラクターに声を当てて下さった皆様、ありがとうございます」
丁寧に頭を下げる。
「そして、えっと……那岐さんと雅臣さんから皆様にご報告があるそうです。では、那岐さん……」
那岐は睛の手を引き、前に出ると、
「えっと、報告です。俺、一条那岐は、今年6月にこの結城睛さんと結婚します!」
「エェェェ!」
声が響く。
「まだ俺も彼女も若く、まだ自立したと言い難い人間ですが、俺の両親は喜んでくれ、先日、両家の家族の前で結納をし、婚約しました。俺は元々飽きっぽく、努力家である兄や幼なじみたちと違い、何かを集中して学ぶことが苦手な人間でした。でも、父の弟……叔父である雅臣さんや尊敬する先輩方の仕事の様子を見て、近づきたいと思いました。そして、彼女はコツコツと一つ一つをこなして夢を叶えていく、頑張り屋なところと、普段はおっとりしているのに、焦ると失敗するところが可愛いなぁと……」
「惚気なくて良いよ~。那岐。そう言うところ、お父さん似だね~」
「ウェイン兄さん! 俺は父さんに似てません!」
「似てる、似てる」
笑い声が上がる。
「でも、おめでとう!」
「はい、睛ちゃん!」
ヴィヴィアンが大きな花束を渡す。
「あ、ありがとうございます! あの、またお会いできますか?」
「うふふ……私と、私の夫は那岐の両親と親友だもの。那岐は息子みたいなものよ。家族みたいなものね。これからもよろしくね?」
「ぎゃぁぁぁ! ヴィヴィ姉さん~! 言っちゃダメ~!」
「あら? バラしてないの? 貴方のママが日向糺、パパが糺日向だって」
「……じ、実力……幾ら自力で頑張っても、親の七光と言われます……それに、臣兄も叔父……」
涙目の那岐に、
「あら、今回新しく入れた主題歌とか劇中歌を、歌ってるじゃない。ヒナタもスゥも音痴だって歌わないわよ」
「一応、歌えないんですよね……うん」
「ふふふ、一つ勝ったわね」
「はい、頑張ります」
ウェインは頭を撫でる。
「で、臣は?」
雅臣は瞬と手を繋ぎ、那岐の横に並ぶと、
「えと本日4月1日に、私、丹生雅臣は一条瞬さんと入籍致しました。式は落ち着いてからする予定です。これからは二人で頑張ろうと思っています。どうぞよろしくお願いします」
「えっ、エェェェ! もう、入籍したの?」
「えぇ。ここに来る前に。婚約はすでにしていましたので。ちなみに、瞬さんが妊娠したとかと言う事実はありません。そして、瞬さんと那岐の婚約者の睛さんとは姉妹になります。これからも私達は努力していきますので、どうぞよろしくお願いします」
「どうぞよろしくお願いします」
二人で頭を下げる。
すると、拍手が広がっていく。
「臣様、那岐くん、おめでとう!」
「瞬ちゃんも睛ちゃんもおめでとう!」
その言葉に、二組の恋人達は幸せそうに笑ったのだった。
発売イベント会場の舞台にディーデリヒ役の丹生雅臣とテオドール役の一条那岐は、瓜二つ……だが、那岐のパートナーの方が身長が高い……の女性とそれぞれ手を繋いでいた。
カシミール役のウェインは瑠可を、ヴィヴィアンは一人の青年にエスコートして貰っていた。
英語版ゲームは留学経験があり、英語が流暢な二人以外は、別の俳優が声を当てている。
今回は日本での発売イベントである。
「皆、こんばんは~! 今日はお喋りが上手く、ヨイショ役のみっちゃんが育休でいないので、一番芸歴のない俺に押し付けられました~! この分、給料に上乗せして下さいね! 一条那岐でっす!」
「おい、那岐? 普段突っ込まれるまで、黙ったままじゃなかったか?」
「みっちゃんが司会やれって……俺、すっごく緊張してるのに、絶対嫌がらせだよ。な~にが子育てだ。ミルクの作り方が分からない~! おむつはどうすれば良い? 娘が泣くんだ~って、毎日電話がかかってくるんだぞ? 育休無駄に取るなら、俺にくれっての。俺の方が幼なじみの世話してるから、育児得意だっての。それに役に立たない父親はいらないし、仕事行ってこいっつ~の。絶対、臣さんやガヴェインさんが産休取る方がましだし、ガヴェインさんの方が、品のある腹黒感のないカシミールだぞ」
「だ~れ~が、腹黒だ!」
うさぎの着ぐるみロンパースを着せた子供を抱いて現れたのは、高凪光流である。
「どわ~! 何で来てるの? 子守じゃなかったっけ?」
「子守だよ! 可愛いうちの子連れて、出勤だとも! 可愛いだろう~? うちの子」
「あぁ、可愛い。みっちゃんに全然似てないから、とっても可愛い」
「何だと~」
「こら、やめろ」
雅臣はため息をつく。
いつまでたっても、弟分達は変わらないものだ。
一応台本はあるのだが、そこに戻すのも億劫になりつつある。
それに、通訳もしなければならないのだ。
「ねぇねぇ、臣。そっちはお任せするから、こっちのメンバーの紹介するね~?」
「わぁぁ! すみません、すみません! 私がします!」
雅臣は慌てると、手を繋いでいた瞬がくいくいっと手を引く。
そして、
「初めまして。私は一条瞬と申します。今回のゲームには声を当てていませんが、司会進行の一条那岐さんのサポートとして、初めての仕事をさせて頂きます。とても緊張していますので、失敗や噛んだり、詰まったりするかと思いますが、どうぞ笑って流して頂けたらと思います。では、紹介させて頂きます。まずは司会兼テオドール役の一条那岐さんです。その隣が、今回の英語版ゲーム内容の特別イベントなどを付け加えた、作家の結城睛さんです。今回のシナリオは、一条那岐さんと睛さんが中心となり、話し合いながら作り上げました。那岐さん、睛さん、自己紹介をお願いします」
「はい! 一条那岐です。前作、日本語版と同じでテオドール役を担当しています。そして、翻訳しました。どうぞよろしくお願いします」
「結城睛と申します。本日、同時に出版される小説版を書かせて頂き、今回のゲームの新しいイベントを、原作者の糺日向先生と話をさせて頂き、幾つか製作致しました。ゲーム自体も英語が苦手な方でも、分かりやすいようになっていますので、どうぞ楽しんで下さいませ」
二人は頭を下げる。
そして、瞬が顔を上げると雅臣が微笑み、
「前回と同じ、ディーデリヒ役の丹生雅臣です。今回は特別ルートができ、この世界に入り込むだけでなく、ディーデリヒやカシミール、テオドールなど主要な何人かのキャラと旅に出るイベントもあります。その案内役として、前回は声のなかったカシミールの妹であるアストリット、そして初登場のエルフ族の青年がいます。カシミール役のガヴェイン、アストリット役の瑠可、カサンドラ役のヴィヴィアン、エルフの青年、アロイシャス役のイタル、どうぞ」
「こんにちは、腹黒見た目だけ妖精王子役のガヴェインです。本当に……どれだけ役作りしてもダメ出しされ、一番吹き込みに時間がかかりました。光流って凄いって本気で思いました。普段の役作りの五倍は、精神的にガリガリ削られた作品ですので、どうか心優しく見守って下さい」
「何で凄いんですかぁぁ!」
「だって、幾ら役になりきって声を入れても『ダメ! まだ好青年すぎる! もっと悪どい。見た目は王子、中身全部が腹黒だよ。もう一回!』だもん。尊敬するよ。光流」
ウェインはニコニコ笑う。
「『このカシミールは、ニコニコ笑っているけど、その笑顔の裏でテオドールやディーデリヒを、どうやって利用しちゃおっかな~。あぁ、母上やアストリットにはバレないようにしなきゃ』って考えてるから。『うちのテオとアスティは可愛いからなぁ……僕以外が虐めたら、そいつは抹殺』とか考えてる危ない人だよ』って。じゃぁ、昔やってた悪役のキャライメージを、あれこれいじって演じたら一発OKだったよ。やりにくい役だった……」
「まぁ、ウェインさんは普通のイケメン温厚王子系似合うもんね。でも、優しいからアストリットやテオドールのお父さんのエルンスト様とか、ヒュルヒテゴット様とか似合うんじゃないのかな?」
「父親役かぁ……そうだよね。光流も子供いるし。あ、そうでした。紹介しますね。この子は、僕の幼なじみのヴィヴィの末っ子のシェリル・マーキュリー。日本名が安部瑠可です。今回、カシミールの最愛の妹、アストリットの役を演じています。ルカ」
ウェインが手を引いていた少女は、頭を下げる。
「はい。初めまして。私は安部瑠可です。ルカと呼んで下さい。父が日本人です。俳優としてイギリスを中心に活動しています。今回は初めて声だけのお仕事をさせて戴きました。日本のアニメは父や親戚が見せてくれますが、とてもイラストや映像が美しく、そして声優さんと言う仕事に驚きました。初めて演じさせて頂きましたが、前回はキャラクター設定だけでしたが、今回アストリットは特別イベントがあり、とても楽しかったです。どうぞ、アストリットもよろしくお願いします」
ニコッと笑う瑠可に、会場中から、
「可愛い~!」
「ヴィヴィアン・マーキュリーさんの娘さんでしょう? そっくり~!」
と声が上がる。
「では、カサンドラ役のヴィヴィ」
「初めまして、皆さん。ヴィヴィアン・マーキュリーです。カサンドラ役を演じさせて貰って、本当にとてもとても嬉しかったです。私達はイギリス、ユーロ圏に住んでいますが、今のユーロ圏は、このゲームの時代と違い、変化をしています。色々な国に行っていますが、このゲームの時代は、本来のユーロ圏……深い森の中小さな町に住む人々、移動するのは馬車か馬、徒歩。その時代を再現されています。この素晴らしい作品に関われることを嬉しく思います」
微笑む。
そして、横を向く。
「初めまして、僕は安部昶です。ヴィヴィアン・マーキュリーの次男で、ルカの兄です」
エェェェ!
優しげで温厚な青年の告白に驚く。
「僕は緑のエルフのアロイシャスを演じています。僕は元々、イギリスの大学で飛び級をして、現在大学院で世界史や言語学を勉強しています。今年卒業後は研究所にと思っています。元々、妹になるルカに日本語、中国語、台湾語、ハングル、フランス語、ドイツ語、オランダ語、スペイン語、ポルトガル語や、映画に出演するルカに知識や言語を教えることになったのがきっかけで、今回こんな素晴らしい作品に、参加させて頂けてとても嬉しいです」
「年は幾つですか~?」
ファンからの声に、昶は、
「あ、僕の演じるアロイシャスは、エルフ年齢で40歳前ですが、人間年齢は5歳前後です」
真面目な返答に、舞台上でも笑いが起こり、那岐が、
「違う違う、イタルの年だよ」
「あ、そうだったんですか。すみません。僕はもうすぐ20歳です」
顔を赤らめるイタルに、ファンはキャァァと声を上げる。
「可愛い~!」
「あ、ありがとうございます」
丁寧に頭を下げるイタルに、キャーキャーと声が上がる。
「うん、みっちゃんファンが、イタルのファンになったな」
「まぁ、腹黒で偽物妖精王子より、上品で可愛い本物の妖精王子の方がいいと思う」
那岐とガヴェインが話し合う。
「な~ぎ~! ウェインさん!」
その声に、光流の腕の中で動いた赤ん坊がぐずりはじめ、
「ふえ、ふえっ……ふにゃぁ、ふにゃぁ、ふぎゃぁぁぁ……」
泣き始める。
「わぁぁ! ごめんなさい! 藤花ちゃん!」
「光流。もう裏に下がれ、お腹が空いたか、おむつだろう」
「はーい。ごめんなさい。藤花ちゃん、泣かないで!」
光流はあやしながら下がる。
その後は、瞬が台本をめくりながら必死に、色々な今回のイベントの司会をこなしていく。
いつのまにか準司会になった那岐だけでなく、雅臣や睛がサポートする。
「では最後になりました。本当に、私のつたない司会に着いて来て下さった会場の皆様、本当に感謝致しております、ありがとうございました。キャラクターに声を当てて下さった皆様、ありがとうございます」
丁寧に頭を下げる。
「そして、えっと……那岐さんと雅臣さんから皆様にご報告があるそうです。では、那岐さん……」
那岐は睛の手を引き、前に出ると、
「えっと、報告です。俺、一条那岐は、今年6月にこの結城睛さんと結婚します!」
「エェェェ!」
声が響く。
「まだ俺も彼女も若く、まだ自立したと言い難い人間ですが、俺の両親は喜んでくれ、先日、両家の家族の前で結納をし、婚約しました。俺は元々飽きっぽく、努力家である兄や幼なじみたちと違い、何かを集中して学ぶことが苦手な人間でした。でも、父の弟……叔父である雅臣さんや尊敬する先輩方の仕事の様子を見て、近づきたいと思いました。そして、彼女はコツコツと一つ一つをこなして夢を叶えていく、頑張り屋なところと、普段はおっとりしているのに、焦ると失敗するところが可愛いなぁと……」
「惚気なくて良いよ~。那岐。そう言うところ、お父さん似だね~」
「ウェイン兄さん! 俺は父さんに似てません!」
「似てる、似てる」
笑い声が上がる。
「でも、おめでとう!」
「はい、睛ちゃん!」
ヴィヴィアンが大きな花束を渡す。
「あ、ありがとうございます! あの、またお会いできますか?」
「うふふ……私と、私の夫は那岐の両親と親友だもの。那岐は息子みたいなものよ。家族みたいなものね。これからもよろしくね?」
「ぎゃぁぁぁ! ヴィヴィ姉さん~! 言っちゃダメ~!」
「あら? バラしてないの? 貴方のママが日向糺、パパが糺日向だって」
「……じ、実力……幾ら自力で頑張っても、親の七光と言われます……それに、臣兄も叔父……」
涙目の那岐に、
「あら、今回新しく入れた主題歌とか劇中歌を、歌ってるじゃない。ヒナタもスゥも音痴だって歌わないわよ」
「一応、歌えないんですよね……うん」
「ふふふ、一つ勝ったわね」
「はい、頑張ります」
ウェインは頭を撫でる。
「で、臣は?」
雅臣は瞬と手を繋ぎ、那岐の横に並ぶと、
「えと本日4月1日に、私、丹生雅臣は一条瞬さんと入籍致しました。式は落ち着いてからする予定です。これからは二人で頑張ろうと思っています。どうぞよろしくお願いします」
「えっ、エェェェ! もう、入籍したの?」
「えぇ。ここに来る前に。婚約はすでにしていましたので。ちなみに、瞬さんが妊娠したとかと言う事実はありません。そして、瞬さんと那岐の婚約者の睛さんとは姉妹になります。これからも私達は努力していきますので、どうぞよろしくお願いします」
「どうぞよろしくお願いします」
二人で頭を下げる。
すると、拍手が広がっていく。
「臣様、那岐くん、おめでとう!」
「瞬ちゃんも睛ちゃんもおめでとう!」
その言葉に、二組の恋人達は幸せそうに笑ったのだった。
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