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奥方様の愛は重すぎます!〜乳兄弟は疲れてる〜2
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手紙を届けてさほどせず、ジークヴァルトは呼ばれて行った。
まだ体調は万全ではなく、事件前より体重は減り痩せている。
その身体に先日退団を申し出た騎士の略装を纏い、出かけていく。
どうなることかと心配していたのだが、夕方、ぼんやりとした顔で戻ってきた。
「お帰り。どうだった?」
「……」
「何があった?」
頬を赤くして俯き、小声で告げる。
「……公爵閣下が、ケイトリン姫と結婚してほしいって」
「えっ? お前……あの公爵家のレスラートとゲートルード王女の痴話喧嘩に巻き込まれたんだろ? お前死にかけた……」
「分かってるよ! でも……姫は関係ないし……」
「関係なくても、また巻き込まれたらどうするんだ?」
一応生まれてからの付き合いだし、今後のことも心配である。
「えっと、婿養子になることに決まったんだ」
「婿養子?」
「……うん。やっぱり……僕があの事件の被害者だから、最初はお金と新しい仕事……養子先をって言われたけど、そこが大変だったんだ……」
物憂げにため息をつく。
「どこだよ」
「……北の辺境伯の養子になるのはどうかって……この腕だし、馬に乗るのも大変だし、寒いのはね……」
「まぁな」
二人とも元々、国の南部に位置する王都近郊出身である。
寒さに強いとは言いづらい。
「こっちはお金だけ受け取るつもりだったんだ。でも、気になって聞いたんだよね。ゲートルード王女とレスラート卿のこと」
「あっ、それだ! あの侍女はどうなったんだ?」
「えと、その人は……身分剥奪で、西の修道院に送られたらしいよ」
「可哀想だな。貴族の娘だったんだろ?」
「確か子爵令嬢だったらしいよ」
一般人だったら処刑相当で、命あるのはありがたいだろうと言えるが、それでも、西の修道院は断崖絶壁の上に建ち、水すら事欠く場所。
数日に一回崖を上り下りして、食料と水を運ぶ。
逃げ出そうにも抜け道はなく、死ぬまで出られない。
「きついな……」
「まぁね。でも、あいつらだよ」
「……その嬉しそうな顔はなんだ?」
本当は、その『腹黒そうな』と言わなかっただけマシだろう。
その裏が分かったのか、ニコニコと笑う。
「嫌だなぁ……僕は、優しい温厚な人間だよ? あいつらに直接手を出さないんだから優しいと思わない? こんな目にあったんだよ? 百年はある人生のまだ4分の1も過ぎてないのに! 未来の道絶たれたんだし、3倍返しとか考えたっていいよね?」
「……やっぱりそこか」
「当たり前だよ! それに、僕が後で逆恨みされたら嫌でしょ?」
「……まぁな」
仕返し返しとかしそうなジークヴァルトだが、死にかけたのは本当であり、駆けつけた男爵家近辺がかなり不穏な空気になった。
身分は低いが、最愛の妻によく似た次男を溺愛している男爵と、見た目は愛らしいが実家は国でも一二を争う大商人の娘である夫人、弟を妻よりも美人だと言い張る文官の長男は、王家と公爵家を裏から潰そうと本気で動いたのだとカールは、実家の母から聞いていた。
カールの祖父は頭の回転が早い上に、数十歩先を見据え、時にはバクチを打つことも考えられるジークヴァルトを養子に迎えて、店を継がせようとも思っていたらしい。
そうか、それがこの国の王族、貴族のやり方か……ならば、こちらはこちらのできうる全力で向き合おうではないか!
と、俄然やる気になってくれたらしい。
ちなみに、王女の侍女の実家は王都中の商店から買い物拒否の憂き目に遭い、領地からの物流も止まり、謝罪めぐりだったらしい。
「で、レスラート卿夫妻は、僕の代わりに北の辺境伯になるんだって。で、功績に応じてそのまま残るか、王都に戻れるそうだよ」
「……戻ってくんな」
吐き捨てる。
二人からは謝罪は一切なかった。
お金だけで済むと思ったら大間違いである。
まだ体調は万全ではなく、事件前より体重は減り痩せている。
その身体に先日退団を申し出た騎士の略装を纏い、出かけていく。
どうなることかと心配していたのだが、夕方、ぼんやりとした顔で戻ってきた。
「お帰り。どうだった?」
「……」
「何があった?」
頬を赤くして俯き、小声で告げる。
「……公爵閣下が、ケイトリン姫と結婚してほしいって」
「えっ? お前……あの公爵家のレスラートとゲートルード王女の痴話喧嘩に巻き込まれたんだろ? お前死にかけた……」
「分かってるよ! でも……姫は関係ないし……」
「関係なくても、また巻き込まれたらどうするんだ?」
一応生まれてからの付き合いだし、今後のことも心配である。
「えっと、婿養子になることに決まったんだ」
「婿養子?」
「……うん。やっぱり……僕があの事件の被害者だから、最初はお金と新しい仕事……養子先をって言われたけど、そこが大変だったんだ……」
物憂げにため息をつく。
「どこだよ」
「……北の辺境伯の養子になるのはどうかって……この腕だし、馬に乗るのも大変だし、寒いのはね……」
「まぁな」
二人とも元々、国の南部に位置する王都近郊出身である。
寒さに強いとは言いづらい。
「こっちはお金だけ受け取るつもりだったんだ。でも、気になって聞いたんだよね。ゲートルード王女とレスラート卿のこと」
「あっ、それだ! あの侍女はどうなったんだ?」
「えと、その人は……身分剥奪で、西の修道院に送られたらしいよ」
「可哀想だな。貴族の娘だったんだろ?」
「確か子爵令嬢だったらしいよ」
一般人だったら処刑相当で、命あるのはありがたいだろうと言えるが、それでも、西の修道院は断崖絶壁の上に建ち、水すら事欠く場所。
数日に一回崖を上り下りして、食料と水を運ぶ。
逃げ出そうにも抜け道はなく、死ぬまで出られない。
「きついな……」
「まぁね。でも、あいつらだよ」
「……その嬉しそうな顔はなんだ?」
本当は、その『腹黒そうな』と言わなかっただけマシだろう。
その裏が分かったのか、ニコニコと笑う。
「嫌だなぁ……僕は、優しい温厚な人間だよ? あいつらに直接手を出さないんだから優しいと思わない? こんな目にあったんだよ? 百年はある人生のまだ4分の1も過ぎてないのに! 未来の道絶たれたんだし、3倍返しとか考えたっていいよね?」
「……やっぱりそこか」
「当たり前だよ! それに、僕が後で逆恨みされたら嫌でしょ?」
「……まぁな」
仕返し返しとかしそうなジークヴァルトだが、死にかけたのは本当であり、駆けつけた男爵家近辺がかなり不穏な空気になった。
身分は低いが、最愛の妻によく似た次男を溺愛している男爵と、見た目は愛らしいが実家は国でも一二を争う大商人の娘である夫人、弟を妻よりも美人だと言い張る文官の長男は、王家と公爵家を裏から潰そうと本気で動いたのだとカールは、実家の母から聞いていた。
カールの祖父は頭の回転が早い上に、数十歩先を見据え、時にはバクチを打つことも考えられるジークヴァルトを養子に迎えて、店を継がせようとも思っていたらしい。
そうか、それがこの国の王族、貴族のやり方か……ならば、こちらはこちらのできうる全力で向き合おうではないか!
と、俄然やる気になってくれたらしい。
ちなみに、王女の侍女の実家は王都中の商店から買い物拒否の憂き目に遭い、領地からの物流も止まり、謝罪めぐりだったらしい。
「で、レスラート卿夫妻は、僕の代わりに北の辺境伯になるんだって。で、功績に応じてそのまま残るか、王都に戻れるそうだよ」
「……戻ってくんな」
吐き捨てる。
二人からは謝罪は一切なかった。
お金だけで済むと思ったら大間違いである。
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