婚約者を陥れ処刑した王子が、自らの言葉によって永遠をループすることになる物語

刹那玻璃

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第9章

女性枢機卿ミリアムの日々

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 出血が多かったミリアムは、すぐに客間に案内され、休むことになる。
 しかも、ミリアムの手を握ったまま眠ってしまったアルフィナを抱いて何故か、アーティスが椅子に座っている。

「全く……ミリアム。君、解ってるの? 足の傷、歩けないように腱が斬られてたんだよ? アルフィナは元に戻す能力もあったから、治っているはずだけど、しばらく静養して歩く練習からしなくちゃいけないと思うよ」
「解っているわ! しばらくは大人しくするわ。パッチワークをしているから、完成させたいの」
「君……あの細々しく、ずーっとチクチクしてるの楽しいの? それに器用だよね?」

 キョトンと自分を見るアーティスに、

「私は貴方に聞きたいわ。色々なところに行って文献探して、楽しいの? 手当たり次第って感じがするわ。一点集中できない人ね」
「うーん……それはそうだね。でも、文献読んでた時に、例えば『翼ある獣舞い降りる』だったら、君の国のエメルランドのペガサスとか、この国のドラゴン、そして僕の国の……ケツァール……もあるでしょ? だから、ハッと思って、次々取り寄せちゃうんだよね。で、門外不出とか言って面倒な時は、集めてた裏ネタで取り引き。そう言うのって後ろ暗いもの持ってるもんね」
「……貴方に言われたくないと思うわ」

 溜め息を吐く。

「貴方ほどふざけている人はいないし、天才もいない。貴方は今こそ心があるように見えるわ。でも、アソシアシオンでは氷の様だったわ。無表情でそれでいて微笑みを浮かべたら、氷柱で貫くって……」
「まぁ、本気出したらここにいないし、ここにいたいんだ……毎日墓参りに行けるように……」
「お墓参り?」
「うん、息子夫婦のお墓は行ったけれど、数日中に恋人の遺品とお骨を引き取りに行くから……」
「えぇぇぇぇ! 貴方、子供いたの?」

 ミリアムは目を見開く。

「うん。先会ったでしょ? あの子がイザーク。長男かなぁ……イザークにはセリアーナって言う娘と最近生まれたラファエルがいるんだ。で、イザークの妹のセリナっていう子が次男の嫁。次男はアルキールって言って……この国の最後の処刑執行人。馬鹿王子の命令で聖女をギロチンで……その日の晩、二人は命を絶ったんだ。アルキールの母親は僕が初めて結婚したいと思った。枢機卿なんて辞めようと思ったよ。一度別れて、迎えに行こうと思った時、探しても見つからなかったんだ……」
「枢機卿辞める……」
「うん。辞めたかった。姿を消した彼女を追いかけて、探し続けた。でも、もう生きていないって……」

 ボーッとと言うより、心が失われたような瞳に息を呑む。

「……もう、面影はここにしかないから、戻らないの」
「……そうなの。貴方のしたいようにすればいいと思うわ」
「……えっ? 帰れって言わないの?」
「言っても無理でしょ? 貴方は頑固で決めたら絶対、教皇様が止めても出て行って、9割以上無理だって言うやり取りすら、幾つもまとめたわ。しかもその交渉に嘘は言わなかった。ちゃんとこちら側の意見を聞いて貰ったら、向こう側の難題を全部……。貴方、頑張っていたものね。それなら余計に帰れなんて言えない。だって、失った家族を取り戻すなんて、失われた闇魔法にしかないわ」
「やだよ……もう会えないなら、恋人と子供たちは穏やかに眠っていてほしい」

 目を閉じボロボロと涙を流す。

「わがままだけど、酷い男だけど……」
「……貴方がそんなに泣くなんて知らなかったわ」
「僕も泣き虫だなんて思ってなかったよ」

 後ろにいたジェイクが顔を拭う。

「坊っちゃま。そろそろ、ミリアム様もお疲れでしょう。アルフィナ様は私がお抱きしますので、帰りませんか?」
「あ、うん。じゃぁ、ミリアム。無理は駄目だよ。それに、君は第二枢機卿という次の教皇に一番近い存在。僕のように信心深くないものより、君は純粋で最もアソシアシオンの教皇にふさわしいと思う。純粋な力、日々の仕事に取り組む姿……一番だとおもうよ。だから、推薦状も送るから……」
「……解りましたわ。では、私休みたいですわ」
「あ、じゃぁ、アルフィナと下がるね」

 立ち上がるアーティスに、ジェイクは慌ててアルフィナを抱き取る。

「お嬢様ねんね中ですよ。抱き方を考えて下さい!」
「はーい。じゃぁ、ミリアム安静にするんだよ」

 と言い、部屋を出て行った。

「ミリアム様。後で娘のセアラを来させますので、失礼致します」

 ジェイクは頭を下げて出て行ったのだった。
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