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《瞳》
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祐次と葵衣と共に観月は着いていくが、遅れがちになり、気がついた青年が、
「祐次。観月ちゃんだっけ? 手を引いて着いてこい。車にはもうすぐだから」
「あ、ごめん。観月」
「あ、じゃぁ、私が祐也お兄ちゃんと!」
「はいはい。葵衣。行くぞ?」
「わーい」
手を握り歩いていく。
そして大型のワゴンに乗せると、走り出す。
ワゴンには外から見えないように、シートが貼られていた。
「窓、暗いんですね……?」
「あぁ。10年前に事件があって、家族を守りたいからね。あ、紹介を忘れてた。俺は、祐次や葵衣の従兄の清水祐也。後ろでかくれんぼしてるのは……」
「わーい! 祐次おにーちゃぁぁん!」
運転席は祐也、助手席は葵衣、その後ろに観月と祐次が並んでいたが、その後ろに、大きな二体のテディベアをだっこしている、ふわふわの金茶色の髪と栗色の大きな瞳の、セーラーカラーのシャツに半ズボンの可愛い女の子が現れる。
「穐斗! 来てたのか?」
「うん! 祐次お兄ちゃん! だっこ!」
「ちょっと待て、穐斗。転んだら大変だ、それに観月、奥の方がいいからこっち」
祐次に手を引かれ、後ろのシート席に、天使のように可愛い穐斗を挟んで座る。
「うわぁぁ……お姉ちゃん、可愛い~! あ、初めまして。清水穐斗です!」
テレテレと頬を赤くして笑う美少女……いや、穐斗と言うからには美少年に、観月は、
「初めまして。大塚観月です。祐次くんのお友達です」
「違う、彼女」
「えっ! えぇぇ!」
頬を真っ赤にする観月に、こちらも照れ臭そうに、穐斗に言い聞かせる。
「穐斗? 観月は兄ちゃんの彼女。仲良くしてくれるよな?」
「うんっ! 観月ちゃんと穐斗、仲良しだよ!」
「えらいえらい。でも、一人で、よくここにいたな? 穐斗……。兄ちゃん。杏樹は兎も角、穐斗は一人でいるの無理だろ?」
「着いてきてたんだよ。で、あの場所に連れていけないから、祐次が車に乗るまでじっとしているんだぞ? で、ビックリさせてやろうって言ってかくれんぼしてたんだ」
祐也は、ミラー越しに笑う。
「穐斗、偉いなー?」
「うん! 穐斗、泣き虫じゃないもん! 那岐ちゃんに負けないもん!」
「那岐ちゃん?」
「うん。風早お兄ちゃんの弟。穐斗よりひとつ年下なの……」
「あー、俺の大学の先輩達の息子で、隣の家の幼馴染み。風早が長男で9才、那岐が7才。穐斗は早生まれで、来年の3月に8才。風早はひな兄さんに似て、穏やかな方なんだが、那岐はやんちゃ坊主。穐斗は見ての通りおっとりしてて、だっこしているのは……」
穐斗が自慢げに観月に見せる。
「観月ちゃん! この子ね? 穐斗のお友達の弁慶で、この子が義経! お友達なの!」
「弁慶に義経? かっこいいお名前ね。穐斗くんの大事なお友達なのね」
「うん! 風遊ちゃんが作ってくれたの! おじいちゃんにね、お願いしたの。えっと、お洋服……き、着物を、京都のおばあちゃまに作って貰ったの」
「まぁ……本当に器用ね。確か狩衣……」
驚くのも無理はない。
羽織袴のベアはウェディングベアでごく稀にあるのだが、狩衣は平安時代の私服、もしくは時代が下り、武士の平装になるものである。
「んーと、おばあちゃまのお家『まつのお』でね? でね、『糺の森』なの!」
「穐斗、ちょっと違うぞ?」
祐也は笑っている。
「穐斗のおじいちゃんの実家が『まつのお』で、おじいちゃんのお母さんであるおばあちゃまの実家が『糺の森』の近くのお家だよ」
「あ、そうだったの! おじいちゃんね、パパより一歳上なの。でね?穐斗と杏樹と結愛のおじいちゃんなの」
「えっ?」
観月は首を傾げる。
どう見ても祐也は若い。
この前会った……先程、媛と来ていたが見ていなかった……標野より若い筈……。
祐次は苦笑する。
「穐斗の言っているおじいちゃんは、穐斗のお母さんのお母さんの旦那さんで、今年30だ。どちらも初婚ではあるけれど、醍醐兄ちゃんは兄ちゃんの先輩で、風遊おばさんに一目惚れして結婚したんだよ。風遊おばさんの娘が、兄ちゃんの奥さんの蛍(ほたる)姉ちゃん。兄ちゃんと同じ年。兄ちゃんの両親のことは……」
「わんわんのおじいちゃまと、せとかちゃん! 祐次お兄ちゃんのお家は寛ちゃんおじいちゃんと愛ちゃん!」
「俺と葵衣の母さんと、兄ちゃんの父さんが兄妹。だから是非呼んでくれ! って、特に父さんが穐斗にベタ甘で……伯父さんは獣医」
「はぁ、そうだったんですか……良いなぁ……」
観月は視線をさ迷わせる。
「……お母さんが死んでから、お父さんが追い詰められているみたいで……小さい私の面倒に家のこと、仕事に……大変そうで、眠ってた時にドンって音がして、目が覚めたら、壁を殴り付けてるお父さんがいて……転勤が決まった時に、別の所に行きたくないって……お父さんの妹の柚月お姉ちゃんの所に……」
首を下げ俯く。
「でも、最近、連絡しても電話を取ってくれない……それに多分……柚月お姉ちゃんに、私の生活費を送ってくれてないみたい……柚月お姉ちゃんと暮らし始めた頃は、お姉ちゃん土日に仕事を入れてなかった……お姉ちゃん。私のせいで……無理してたらどうしよう……。嫌われたら……お父さんみたいに……」
「それはないと思う。観月ちゃん」
葵衣が声をかける。
「柚月お姉ちゃん、すごくすごく観月ちゃん大好きだと思う。観月ちゃんの為なら、頑張れるんだと思う。私がもし、柚月お姉ちゃんだったら、そんなお兄ちゃん見捨てて、観月ちゃんと生きていくと思う。あ、そう言えば、観月ちゃん。柚月お姉ちゃんに電話かけた?」
「あっ! す、済みません。電話を掛けます」
スマホを操作する。
すると、すぐに電話が繋がる。
『観月? どうしたの?』
「あ、お姉ちゃん。あの……」
「貸して、観月」
祐次が電話をとると、
「済みません。祐次です」
『あ、祐次くん。何かあったの?』
「あの、実は……」
事件の経緯を説明する。
そして、
「本当に申し訳ありません。Twitterには俺の顔だけが載っているようなのですが、俺は観月以外に親しい女の子がいないので、もし誰かが書き込んだら、観月や柚月さんを巻き込むかもしれません。なので一旦、俺と観月は俺の親戚の家に身を隠そうと思います。観月も柚月さんを心配しています。俺は一応、従姉の旦那さんの友人が弁護士なので、その人にお任せしています。電話番号をお伝えします。ちょっと待って下さい……葵衣、嵯峨さんの……」
「うん、番号言うよ?」
妹の言う番号を繰り返す。
「この番号です。名前は大原嵯峨さんです」
『え? 大原嵯峨さん?』
「お知り合いですか?」
『えぇ。私は離婚歴があって、その時に相談に乗って頂いたわ』
「そ、そうだったんですか……」
離婚相談……返答のしようがなく、口ごもるが、
『ありがとう。祐次くん。私も、嵯峨さんにお願いしようと思っていることがあるの。すぐに電話をさせて貰うわね?』
「はい。こちらは俺が、今度こそ守ります」
『大丈夫よ。本当に頼りにしているわ。それと、観月をお願いするだけじゃなく、祐次くん。貴方も辛い思いをしているんだから、我慢してはいけないわ。ご家族に愚痴を言うと良いわ……私は、観月の相談に乗れないおばさんだから……』
「何いってるんですか! 観月言ってますよ! 柚月さんが大好きだって。今日は会えませんけど、後で会ったらちゃんと二人で話して下さいね?」
『……ありがとう』
「では、あ、観月……」
祐次は観月にスマホを返す。
「お、お姉ちゃん……又、迷惑……」
『観月は悪くないでしょう? それに、観月が謝ると祐次くんが悪者になっちゃうわ。ちゃんとしなさい。観月はお姉ちゃんが育てたんだからね?』
「う、うん!」
『それに、祐次くんが、朝は名字で貴方を呼んでたのに、名前で呼ばれてるのね?』
「アッ! そ、それは……」
ブッシュ~と顔を赤くする観月。
『今度会ったら、教えてね? 観月』
「は、はーい。お姉ちゃん」
スマホを切ると、祐次は顔を近づける。
「どうしたんだ? 観月」
「えっ? な、何でもない……」
二人の様子に、間の穐斗が、
「祐次お兄ちゃん、観月ちゃん。穐斗も!」
と邪魔をしたのだった。
「祐次。観月ちゃんだっけ? 手を引いて着いてこい。車にはもうすぐだから」
「あ、ごめん。観月」
「あ、じゃぁ、私が祐也お兄ちゃんと!」
「はいはい。葵衣。行くぞ?」
「わーい」
手を握り歩いていく。
そして大型のワゴンに乗せると、走り出す。
ワゴンには外から見えないように、シートが貼られていた。
「窓、暗いんですね……?」
「あぁ。10年前に事件があって、家族を守りたいからね。あ、紹介を忘れてた。俺は、祐次や葵衣の従兄の清水祐也。後ろでかくれんぼしてるのは……」
「わーい! 祐次おにーちゃぁぁん!」
運転席は祐也、助手席は葵衣、その後ろに観月と祐次が並んでいたが、その後ろに、大きな二体のテディベアをだっこしている、ふわふわの金茶色の髪と栗色の大きな瞳の、セーラーカラーのシャツに半ズボンの可愛い女の子が現れる。
「穐斗! 来てたのか?」
「うん! 祐次お兄ちゃん! だっこ!」
「ちょっと待て、穐斗。転んだら大変だ、それに観月、奥の方がいいからこっち」
祐次に手を引かれ、後ろのシート席に、天使のように可愛い穐斗を挟んで座る。
「うわぁぁ……お姉ちゃん、可愛い~! あ、初めまして。清水穐斗です!」
テレテレと頬を赤くして笑う美少女……いや、穐斗と言うからには美少年に、観月は、
「初めまして。大塚観月です。祐次くんのお友達です」
「違う、彼女」
「えっ! えぇぇ!」
頬を真っ赤にする観月に、こちらも照れ臭そうに、穐斗に言い聞かせる。
「穐斗? 観月は兄ちゃんの彼女。仲良くしてくれるよな?」
「うんっ! 観月ちゃんと穐斗、仲良しだよ!」
「えらいえらい。でも、一人で、よくここにいたな? 穐斗……。兄ちゃん。杏樹は兎も角、穐斗は一人でいるの無理だろ?」
「着いてきてたんだよ。で、あの場所に連れていけないから、祐次が車に乗るまでじっとしているんだぞ? で、ビックリさせてやろうって言ってかくれんぼしてたんだ」
祐也は、ミラー越しに笑う。
「穐斗、偉いなー?」
「うん! 穐斗、泣き虫じゃないもん! 那岐ちゃんに負けないもん!」
「那岐ちゃん?」
「うん。風早お兄ちゃんの弟。穐斗よりひとつ年下なの……」
「あー、俺の大学の先輩達の息子で、隣の家の幼馴染み。風早が長男で9才、那岐が7才。穐斗は早生まれで、来年の3月に8才。風早はひな兄さんに似て、穏やかな方なんだが、那岐はやんちゃ坊主。穐斗は見ての通りおっとりしてて、だっこしているのは……」
穐斗が自慢げに観月に見せる。
「観月ちゃん! この子ね? 穐斗のお友達の弁慶で、この子が義経! お友達なの!」
「弁慶に義経? かっこいいお名前ね。穐斗くんの大事なお友達なのね」
「うん! 風遊ちゃんが作ってくれたの! おじいちゃんにね、お願いしたの。えっと、お洋服……き、着物を、京都のおばあちゃまに作って貰ったの」
「まぁ……本当に器用ね。確か狩衣……」
驚くのも無理はない。
羽織袴のベアはウェディングベアでごく稀にあるのだが、狩衣は平安時代の私服、もしくは時代が下り、武士の平装になるものである。
「んーと、おばあちゃまのお家『まつのお』でね? でね、『糺の森』なの!」
「穐斗、ちょっと違うぞ?」
祐也は笑っている。
「穐斗のおじいちゃんの実家が『まつのお』で、おじいちゃんのお母さんであるおばあちゃまの実家が『糺の森』の近くのお家だよ」
「あ、そうだったの! おじいちゃんね、パパより一歳上なの。でね?穐斗と杏樹と結愛のおじいちゃんなの」
「えっ?」
観月は首を傾げる。
どう見ても祐也は若い。
この前会った……先程、媛と来ていたが見ていなかった……標野より若い筈……。
祐次は苦笑する。
「穐斗の言っているおじいちゃんは、穐斗のお母さんのお母さんの旦那さんで、今年30だ。どちらも初婚ではあるけれど、醍醐兄ちゃんは兄ちゃんの先輩で、風遊おばさんに一目惚れして結婚したんだよ。風遊おばさんの娘が、兄ちゃんの奥さんの蛍(ほたる)姉ちゃん。兄ちゃんと同じ年。兄ちゃんの両親のことは……」
「わんわんのおじいちゃまと、せとかちゃん! 祐次お兄ちゃんのお家は寛ちゃんおじいちゃんと愛ちゃん!」
「俺と葵衣の母さんと、兄ちゃんの父さんが兄妹。だから是非呼んでくれ! って、特に父さんが穐斗にベタ甘で……伯父さんは獣医」
「はぁ、そうだったんですか……良いなぁ……」
観月は視線をさ迷わせる。
「……お母さんが死んでから、お父さんが追い詰められているみたいで……小さい私の面倒に家のこと、仕事に……大変そうで、眠ってた時にドンって音がして、目が覚めたら、壁を殴り付けてるお父さんがいて……転勤が決まった時に、別の所に行きたくないって……お父さんの妹の柚月お姉ちゃんの所に……」
首を下げ俯く。
「でも、最近、連絡しても電話を取ってくれない……それに多分……柚月お姉ちゃんに、私の生活費を送ってくれてないみたい……柚月お姉ちゃんと暮らし始めた頃は、お姉ちゃん土日に仕事を入れてなかった……お姉ちゃん。私のせいで……無理してたらどうしよう……。嫌われたら……お父さんみたいに……」
「それはないと思う。観月ちゃん」
葵衣が声をかける。
「柚月お姉ちゃん、すごくすごく観月ちゃん大好きだと思う。観月ちゃんの為なら、頑張れるんだと思う。私がもし、柚月お姉ちゃんだったら、そんなお兄ちゃん見捨てて、観月ちゃんと生きていくと思う。あ、そう言えば、観月ちゃん。柚月お姉ちゃんに電話かけた?」
「あっ! す、済みません。電話を掛けます」
スマホを操作する。
すると、すぐに電話が繋がる。
『観月? どうしたの?』
「あ、お姉ちゃん。あの……」
「貸して、観月」
祐次が電話をとると、
「済みません。祐次です」
『あ、祐次くん。何かあったの?』
「あの、実は……」
事件の経緯を説明する。
そして、
「本当に申し訳ありません。Twitterには俺の顔だけが載っているようなのですが、俺は観月以外に親しい女の子がいないので、もし誰かが書き込んだら、観月や柚月さんを巻き込むかもしれません。なので一旦、俺と観月は俺の親戚の家に身を隠そうと思います。観月も柚月さんを心配しています。俺は一応、従姉の旦那さんの友人が弁護士なので、その人にお任せしています。電話番号をお伝えします。ちょっと待って下さい……葵衣、嵯峨さんの……」
「うん、番号言うよ?」
妹の言う番号を繰り返す。
「この番号です。名前は大原嵯峨さんです」
『え? 大原嵯峨さん?』
「お知り合いですか?」
『えぇ。私は離婚歴があって、その時に相談に乗って頂いたわ』
「そ、そうだったんですか……」
離婚相談……返答のしようがなく、口ごもるが、
『ありがとう。祐次くん。私も、嵯峨さんにお願いしようと思っていることがあるの。すぐに電話をさせて貰うわね?』
「はい。こちらは俺が、今度こそ守ります」
『大丈夫よ。本当に頼りにしているわ。それと、観月をお願いするだけじゃなく、祐次くん。貴方も辛い思いをしているんだから、我慢してはいけないわ。ご家族に愚痴を言うと良いわ……私は、観月の相談に乗れないおばさんだから……』
「何いってるんですか! 観月言ってますよ! 柚月さんが大好きだって。今日は会えませんけど、後で会ったらちゃんと二人で話して下さいね?」
『……ありがとう』
「では、あ、観月……」
祐次は観月にスマホを返す。
「お、お姉ちゃん……又、迷惑……」
『観月は悪くないでしょう? それに、観月が謝ると祐次くんが悪者になっちゃうわ。ちゃんとしなさい。観月はお姉ちゃんが育てたんだからね?』
「う、うん!」
『それに、祐次くんが、朝は名字で貴方を呼んでたのに、名前で呼ばれてるのね?』
「アッ! そ、それは……」
ブッシュ~と顔を赤くする観月。
『今度会ったら、教えてね? 観月』
「は、はーい。お姉ちゃん」
スマホを切ると、祐次は顔を近づける。
「どうしたんだ? 観月」
「えっ? な、何でもない……」
二人の様子に、間の穐斗が、
「祐次お兄ちゃん、観月ちゃん。穐斗も!」
と邪魔をしたのだった。
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