君のことを本当に……?

刹那玻璃

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《腕》

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 一方、祐也ゆうやの車で移動していた5人は、

「あ、祐次ゆうじ葵衣あおいは時々来るけれど、最低限のものを買いに行こう」

と大型ショッピングセンターに向かった。

観月みづきちゃん。ちょっと来て。祐次と葵衣はここで待ってろ、絶対に出るな」

と言い聞かせ、息子の穐斗あきとに、

「穐斗? 弁慶と義経、祐次に持っててってお願いしような? 観月ちゃんのお洋服と穐斗の欲しがってた本を選びに行こう」
「うん!」

 テディベアを祐次と葵衣に手渡し、父親に抱き上げて貰った穐斗はご機嫌である。

「必要なものは、観月ちゃんの最低限でも一週間分の服と、スニーカーにつっかけ……サンダル。葵衣はよく来るから服はあるし、祐次も余り着るもの気にしないから……帽子だな。それと、祐次は伊達眼鏡」
「えっ? あ、服代……」
「カードで払うから。それに、これは費用に当たるから、提出するんだよ」

 祐也はエスカレーターを降りて、女性ものの服売り場に行くと、

「下着売り場とかで選んできて、服のサイズは……失礼だけどSで良いのかな?」
「あ、はい!」
「じゃぁ、幾つか見繕ってくるから、しばらくしたらここで、良いかな? 支払いを纏めるから、いい?」
「はい」

 レジの前で待ち合わせることを約束し、下着売り場に向かう。
 スリーサイズに自信のない観月だが、店員が近づいてきて、

「どうされましたか?」
「あ、えっと、旅行に行くんですが、洗濯もできないかもしれないので、一週間程のし、下着を……」
「そうだったのですね。ではお兄さんと甥っ子さんでしたか」
「は、はい!」
「では、今のサイズは?」

 説明し、店員は見ただけでサイズは合っていると思ったらしく、上下お揃いで、可愛らしい下着を選んでいく。
 それをレジに持っていくと、祐也はカートに一杯の服を乗せてくる。

「これをカードで」

とカードで支払い、

「次は、靴。サイズは?」
「えっと、21です……」
「そうなんだ……じゃぁ、そのサイズの靴を……」

祐也は靴ブースに向かい、3足の靴とサンダル、祐次と葵衣のものらしい靴を買い、祐次に合いそうな帽子を二つと、伊達眼鏡を幾つか購入し、穐斗が差し出す3冊の本を、

「穐斗? 一冊だぞ?」
杏樹あんじゅ結愛ゆめの! 一緒!」
「解った解った」

と苦笑しつつ受けとり、それも支払う。
 そしてカートを引いて車に向かうと、荷物を入れていく。

「後ろに服を入れておいたから、祐次、帽子に眼鏡。それに、櫛とか日用品も買っておいたから、葵衣は良いけれど、観月ちゃんも用心の為に眼鏡をお勧めするよ」
「えっと、お詳しいんですね……」

 祐次に眼鏡を選んで貰っていた観月は呟く。
 シートベルトを締めて運転を始めた祐也は、首をすくめる。

「あぁ、多分観月ちゃんは知らないと思うけど、10年前かな? 大学に通ってた時に、誤った情報を流されて、俺と俺の嫁のほたるの双子の兄、標野さんの弟の醍醐だいごさんたちが巻き込まれて、大騒動になったんだ。マスコミに追いかけられて、俺は退学させられて、イングランドに留学してた。それからも何かあるとやって来る。だから俺は今では逆に堂々としてる。でも、祐次や観月ちゃんは今、その事件の渦中にある。だから、眼鏡に帽子は必要だよ。悪いことはしてないけれど、本当に……俺もあの時辛かったから……」
「あのさ、観月。兄ちゃんは通っていた大学でサークルの先輩たちと部屋にいたら、元アイドル? って言う人間が兄弟に会うとかって言うテレビのお騒がせ番組に、生放送で扉蹴破って入ってこられて、注意したら、学長が『学校紹介になったのに!』とか言ってさ……『個人情報はどうなるんだ!』って言い返しただけで退学させられたんだ」
「……あっ! 聞いたことがあります。お姉ちゃんが酷い話よねって……。祐也さんだったんですか……だから、急いで来て下さったんですか……」
「まぁ、祐次が心配だったし。それに、10年前よりも情報はあちこちに広がって大変だぞ、今回の方が……もっと。だから、身を隠した方がいい」

 祐也は町から、山々の重なる細い道路に入っていく。

「で、でも……祐也さん。私は、祐也さんたちにご迷惑に……」
「ならないならない。逆に大歓迎だよ。祐次。すぅさんに取材申し込まれるぞ~? 覚悟しとけ」
「あぁぁ! そうだったぁぁ! スゥ姉ちゃんもいたんだ!」

 頭を抱える。

「スゥさん?」
「あぁ、俺の先輩で醍醐さん……俺の嫁のお母さんの旦那さん……の親友の日向ひなたさんの奥さん。職業が特殊だから。でも、うちの皆は仲ええけんなぁ。心配せられん」
「観月ちゃん。つっかけ……サンダルにしておいた方がいいわよ? 革靴汚れるから」
「あ、ありがとう」

 靴を納め、サンダルにはきかえると、ふと薄暗いものの外を見る。

「……あ、川がある……」
「川に沿って道ができとって、その道から上に上ったら、家が点在しとるんよ。途中、小さいお店や何かもあるけど、さっき行ったような大きいもんはない。農協よ。で、郵貯銀行や交番があるんよ。で、保育園や小学校やなぁ……」
「あぁ、すごい! 可愛い学校……」
「やろ? でも、最盛期に比べてすくのうなって、一旦閉校しとったんやけど、穐斗たちが入学する頃には再び開校したんよ……ここ登るけん」

 急にカーブを切る。
 大きな車なので、何回かバックするのかと思いきや、一回で一気に上っていく。
 運転がうまいらしい。

「ついてきとったらいけん。じゃぁ、ここ曲がったらもうすぐやけん」

と、左に折れ進んでいくと、集落に出る。
 そして右に折れるとすぐに大きな家がある。

「祐也、もんたか?」
「あぁ、ひなさん。もんてきたわ」
「やったら、祐次は家に預かるわ。後で迎えにいかぁい」
「えぇ」

車から外を窺うと、細身の眼鏡をかけた男性がいる。
 祐次が、

「あの兄ちゃんが、一条日向いちじょうひなたさん。ひな兄ちゃん。祐也兄ちゃんの一つ上で、あ、おったおった」

一条家の斜め後ろに現れた家の前に、浴衣姿が良く似合う青年。

「思たより、早かったなぁ。祐也」
「醍醐さん。ただいま帰りました。悪いんですけど、荷物持ちお願いできませんか? 祐次たちは早めに入らせときたいんで……」
「かまんよ」

 小道を降りてきた青年は、扉を開けると、

「おじいちゃん! ただいま~!」
「穐斗~? いっとったんかいな。どこ行ったか思とったで? おじいちゃんは」

手を伸ばす穐斗を抱き締めるのは、温厚そうな青年……。

「穐斗? 転ばんように、風遊ふゆさんや隠居のおじいちゃんとおばあちゃんのおる母屋おもやに、祐次とお客さんといっといで」
「うん! お兄ちゃん、観月ちゃん行こう?」
「観月。足元気を付けて。手を繋いでいこう」

 祐次は転びかねない穐斗を捕まえると、観月に手を差し出す。

「大丈夫。行こう」
「う、うん。ありがとう。あの、よろしくお願い致します」

 観月は醍醐に深々と頭を下げた後、祐次と手を握り、歩いていったのだった。



「えろうべっぴんはんな子やな……」
「お兄ちゃんの彼女の観月ちゃんなの! お兄ちゃんと同じ年よ? 可愛いでしょ?」
「葵衣もいっといでや」
「だって、私の着替えはあるけど、祐也お兄ちゃん、観月ちゃんの着替えを買ったんでしょ? 女性ものを見ちゃうとダメダメ」

 中学生になったばかりのおませな従妹に、祐也と醍醐は苦笑する。

「葵衣もえろう大きゅうなったわ」
「いつまでも子供じゃないのよ」

 葵衣はてきぱき動くと、荷物を運ばせるのだった。
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