君のことを本当に……?

刹那玻璃

文字の大きさ
17 / 50

《足》

しおりを挟む
 何かが聞こえ、キャハキャハと笑い声に、

「ごはーん!」
祐次ゆうじ兄ちゃん、起きろ~!」
「グハァァ! 上に乗るな~! 風早かざはや那岐なぎ。お前たちがすると、だぁぁ! 六花りっかあぁぁ!」

祐次の悲鳴に、観月みづきは目を覚ました。
 すると、女の子たち……いや、その中に穐斗あきと……もいる。

「あ、おはようございます……」
「観月ちゃん。晩御飯だよ~?」
「はい、お姉ちゃん。上に着てねって」
「ありがとう」

 カーディガンを羽織ると微笑む。
 腕に抱いていたテディベアを見ると、

「おはよう……えっと、風遊ふゆさんが作られたから、風月ふうげつ……」
「観月。おはよう」

近くに聞こえる声がどこかで聞こえた声に似ていた気がする……が、はっとすると、隣の布団で子供たちとバタバタ遊んでいる。

「こらぁ! 今日は風早もか! 外で遊んでこんかったんか~!」
「外で遊んだらいかんって、父さんが言ったんだもん! 一応、僕はいいけど、那岐と穐斗がいかんって」
「穐斗がとろくさいんよ」
「……ウッ……ご、ごめんなさい……」
「穐斗はかまんのよ。悪ないで?」

 幼馴染みで年の近い男の子3人のうち、風早はしっかり者、穐斗はおっとり、那岐はやんちゃ坊主らしい。
 他の子は皆女の子だけに、男の子3人で結束は固いのだが、身体能力の面と性格で合わないらしい。

「穐斗くん。この子、風遊さんに戴いたの。初めまして、風月と言います。よろしくお願い致します」

 ベアにぺこんっと頭を下げさせる。
 目をキラキラさせて、いつも抱いているテディベアを寄せると、

「初めまして。弁慶と義経です。よろしくね」

 えへへっ

嬉しそうに照れ笑う。
 その間に祐次が、小さい子供たちをだっこし、手を伸ばす。

「観月。いこや。晩御飯食べな元気でんで?」
「あ、うん!」

 手を握りしめ、隣の部屋に向かう。
 すると、もう終わりになる山菜の料理や、タケノコ料理を初めとして幾つもの料理が所狭しと並んでいる。

「うわぁ……凄いです……」

 呟くと、晴海はるみが、

「家は家族皆で食べるんよ。大丈夫かね? 観月ちゃん」
「あ、はい。よく眠れました」
「それは良かったわ。食べれんかったら、食べれる分だけお食べや? 寝よる間に皆でいよったんやけど、祐次はひなのとこに、葵衣あおいほたるのとこに、観月ちゃんはここにおるといいわ」
「は、はい……でも、申し訳なくて……」
「気にせんでええ」

 蛍の祖父、麒一郎きいちろうは笑う。

「観月は家の子や。おうたことはないけどな、柚月ゆづきさんも家の子や。親が子を守らんでどないするんで。じいちゃんや兄ちゃんらに気兼ねせんで、ここにおりや」
「……ありがとうございます」
「ほら、冷める前にお食べや?」

 蛍に、箸とご飯の入った茶碗を渡される。

「戴きます」

が、驚いたのは、先に手を合わせて食べ始めた祐次の食欲に唖然とする観月である。

「す、凄い……」
「いや、俺より、ひな兄ちゃんみてみいや。滅茶苦茶食べるけん」

 よく見ると3人の青年のなかで、細身で理数系風の日向ひなたは、マナーはとてもいいのだが、バランスよくかなり食べている。
 引き締まっているが3人の中でがっしりした祐也もガッツリ……とは言え、肉類よりも山菜類が好物らしいが食べている。
 醍醐だいごは見た目に反してがっつり肉食である。

「……凄い……」
「ん? あぁ、俺達の食事か?」

 見た目は冷たそうだが、穏やかな性格らしい日向が微笑む。

「俺たちは普段は田畑を耕したり、猟犬の調教や山を見回っているんだ。地域は昔、財産分与で手離した人の土地を他の人が買うんで、あちこちに土地が点在しとって、見えとるだけでも、こっちの山、あっちの山……山を二つ越えた辺りにもじいちゃんの土地もあるし……」
「最近は勝手に山に入って、山菜を根こそぎとったり、自生する山野草や風蘭ふうらんを盗掘するバカがおるんや」

 醍醐はため息をつく。

「あての家にも盗掘されんように、こっちに一時的に移して育てよるんやけど、よう来るわ……この下の……昼間来たやろ? この道を突き当たりまで行くと、祐也の家の土地になるんやけど、そこにようけ山菜や珍しい花が咲きよったのに全滅や。野生の蕗や三つ葉、ゼンマイ、わらび、家で食べる分の畑のわさびも獲られたわ」
「……えぇ!」
「あてらの土地や。一応手入れと言うか、春はタケノコ、ふきのとう、蕗や石蕗つわぶきて、採れるように日当たりよくしたり、冬はあてら3人とじいちゃんが猟銃免許を持っとるけん、猟犬連れて山に入って猪を獲る」
「最近は猪が暖冬が続くせいか、増えていかんのや……一応言うてなかったけど、その肉、猪なんよ」

 観月はきょとんとし、

「美味しいです! それに、思った程癖がないんですね。凄いと言うか……生きているってそういうことなんですね。でも、大変だと思うのですが、かっこいい……えーと、町の生活は目まぐるしいですが、こういった故郷があって、おじいちゃんやおばあちゃんやお兄さんたちがいて、祐次くんも葵衣ちゃんも羨ましいです。暖かくて……初対面で迷惑しかかけない私に、こんなに優しくて……」
「何いよん」

ただすは少女を抱き締める。

「迷惑どころか、私なんて息子しかいないもの……あぁ、こんな可愛い娘が欲しかった……」
「ひなにお頼みや、すぅ先輩」
「いかんのよ~! 醍醐くん。ひなちゃん『もう、風早と俺の苦労も考えてくれ……』だって。酷いでしょ?」
「まぁ、先輩と那岐がおったら……」
「お前の面倒を見る風遊さんと、祐也の苦労に比べたらましやな」

 冷たく日向は告げ、黙々食べている祐次に、

「祐次。明日は俺と祐也が山に入って間伐材や、折れとる木を薪にする為に持って降りるけん、今日はよう寝て明日頑張れよ」
「うん!」
「お前のことだ、考えたところで醍醐程、あくどうなれんわ。頭を使うんは醍醐にさせなあかん。で、観月ちゃんは葵衣と、この下にある小さい店がある。風遊さんや、ばあちゃんたちの手伝いをしてくれんかな?」
「て、手伝いって……」
「ここの下には保育園と隣接して、俺が運営しよる図書館と、風遊さんのテディベアや委託を受けて預かったハンドメイド作品を売りよるんと、テディベアやハンドメイドの作る教室と、祐也の考えたこの地域の野菜などを販売する産直市に喫茶店がある。ドッグランもあって、それに保育園もある言うて、町からお母さんが子供を送りに来て、教室や食事にとなぁ」

観月は口を開ける。

「凄いです……こんな綺麗なとこに、そんなんが……」
「まぁ、試行錯誤を繰り返して、最近軌道に乗り始めたよ」

 祐也が苦笑する。

「手伝う言うか、遊んどいで。皆がどう感じるか気になるけん。お願いするわ」
「はい!」

 観月は頷いたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

バイトの時間なのでお先に失礼します!~普通科と特進科の相互理解~

スズキアカネ
恋愛
バイト三昧の変わり者な普通科の彼女と、美形・高身長・秀才の三拍子揃った特進科の彼。 何もかもが違う、相容れないはずの彼らの学園生活をハチャメチャに描いた和風青春現代ラブコメ。 ◇◆◇ 作品の転載転用は禁止です。著作権は放棄しておりません。 DO NOT REPOST.

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています

木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。 少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが…… 陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。 どちらからお読み頂いても話は通じます。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

結婚する事に決めたから

KONAN
恋愛
私は既婚者です。 新たな職場で出会った彼女と結婚する為に、私がその時どう考え、どう行動したのかを書き記していきます。 まずは、離婚してから行動を起こします。 主な登場人物 東條なお 似ている芸能人 ○原隼人さん 32歳既婚。 中学、高校はテニス部 電気工事の資格と実務経験あり。 車、バイク、船の免許を持っている。 現在、新聞販売店所長代理。 趣味はイカ釣り。 竹田みさき 似ている芸能人 ○野芽衣さん 32歳未婚、シングルマザー 医療事務 息子1人 親分(大島) 似ている芸能人 ○田新太さん 70代 施設の送迎運転手 板金屋(大倉) 似ている芸能人 ○藤大樹さん 23歳 介護助手 理学療法士になる為、勉強中 よっしー課長(吉本) 似ている芸能人 ○倉涼子さん 施設医療事務課長 登山が趣味 o谷事務長 ○重豊さん 施設医療事務事務長 腰痛持ち 池さん 似ている芸能人 ○田あき子さん 居宅部門管理者 看護師 下山さん(ともさん) 似ている芸能人 ○地真央さん 医療事務 息子と娘はテニス選手 t助 似ている芸能人 ○ツオくん(アニメ) 施設医療事務事務長 o谷事務長異動後の事務長 雄一郎 ゆういちろう 似ている芸能人 ○鹿央士さん 弟の同級生 中学テニス部 高校陸上部 大学帰宅部 髪の赤い看護師(川木えみ) 似ている芸能人 ○田來未さん 准看護師 ヤンキー 怖い

処理中です...