君のことを本当に……?

刹那玻璃

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《呼び掛け》

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 早朝、柚月ゆづき嵯峨さがと共に実家に戻った。
 柚月と孫の観月みづきを心配していた両親は、息子……観月の実父が色々と問題を起こしていることと、すでに自分達にも内緒で結婚しており、子供もいること、その上放置しておいた観月に対する嫌がらせに怒り狂った。

「ど、どないなっとんぞ! あのバカ息子が! もう、あいつは、東矢とうやはこの家の敷居をまたがせん!」
「お父さん!」
「もう、かまん! 柚月。お前の娘として観月は引き取り、養女にすればえぇ!」
「そのつもりで育てたいと思っているの。お父さん、賛成してくれてありがとう」

 柚月は頭を下げる。
 そして、

「あの、お父さん、お母さん。実は紹介したい方がいるの」

今まで静かに座っていた嵯峨さがが、

「5年前に何度かお会いしたと思いますが、大原嵯峨と申します」
「あ、あぁ! 前に、柚月が! お久しぶりですなぁ」

柚月の両親は嬉しそうに頬を緩める。
 元々、心優しく定期的に孫と戻ってくる娘を可愛がっており、離婚問題にお世話になった嵯峨を覚えていたのである。

「柚月? お会いしたんか?」
「あ、あのね? お父さん、お母さん。実は嵯峨さんは、観月の同級生の不知火しらぬいくんの遠縁なの」
「不知火くん……あぁ、今回本当に大変な目にあった子やなぁ? そうだったんですか」
「あ、祐次ゆうじくんの従姉が、私の幼馴染みと結婚しているんです」

 嵯峨は苦笑する。

「10年前から見ているので、本当にやんちゃな弟のようで……」
「そうなんですか。観月は、強くて優しいと言っていました」

 祖母は微笑む。
 嵯峨は、二人を見ると礼儀正しく頭を下げる。

「と、突然ですが、お願いがあります。柚月さんとの結婚を認めて戴けないでしょうか? 観月……観月ちゃんを娘として、共に暮らしたいのです。3人で仲良く……家族として過ごしたいと思っています。どうぞよろしくお願い致します」
「あの……結婚……ですか?」
「あの、柚月は……」
「お父さん、お母さん。あの、実はプロポーズをして戴いて……観月にも伝えたの。喜んでくれたのよ」

 柚月は頬を染め微笑む。

「嵯峨さんは、観月を本当に可愛がってくれて、観月はもう、私と嵯峨さんをお母さん、お父さんと呼んでくれているの。報告が最後になってしまったのは本当にごめんなさい。でも、兄さんが観月をこれ以上傷つけるなら、私が母として、嵯峨さんが父として守ってあげたいの。よろしくお願い致します。私は観月の為だけじゃなく、私も嵯峨さんと3人で幸せになりたいの」
「……柚月と観月が幸せであればいい。それに、嵯峨さんが責任とか、重荷とかを背負わず、ただ、わしらがおると思ってくれたらいいと思う」
「仲良くね? それと、嵯峨さんも頼りないと思いますが、両親だと思ってくれたら……」

 嵯峨は目を丸くし、そして照れくさそうに、うっすらと頬を赤くする。

「ありがとうございます。私は20の時に母が……5年前に弟が逝って……家族に縁遠いので……本当に嬉しいです」
「そうだったんですか……」
「あ、あのね? お父さん、お母さん。観月が作ってくれたのよ。写真だけど」

 柚月は両親にスマホを見せる。

「テディベアなの。観月が自分で作ってくれたのよ? 私と嵯峨さんと観月なの。可愛いでしょ?」
「本当だな……お前と観月が幸せになれれば、私は、私たちは何も言わない」
「そ、それは、もっと口を挟んで下さい! 柚月のお父さんやお母さんは私の両親です。ですから、よろしくお願い致します!」

 嵯峨は頭を下げる。

「今、実は私は、祐次くんの件で弁護士として動いていますが、先日こちらに来たと思いますが、私の同僚の北山錦きたやまにしきが、観月の親権の主任弁護士として動いてくれています。裁判になると、仕事もなく自分は不利だと柚月は言っていましたが、5年間もほぼ父親からの入金もなく、育ててきた柚月が有利です。それに先日、観月にかけてきた電話の音声も録音しています。ですので、向こうはきっと焦るはずです」
「焦る?」
「……幼馴染みと、友人たちにお願いしています。観月を。これから折り返し、観月の元に戻ります。実は、お父さんやお母さんには辛いことになるかもしれないと思いまして……前もって何か起こった時の為にと、お伝えしたかったのです。観月は守ります。でも、守れない人が……」

 言葉を濁す嵯峨に、柚月の母は嵯峨を見つめ、優しく告げる。

「嵯峨さん。貴方は柚月の夫になる人で、私たちの息子です。観月の父親として生きると言ってくれた、柚月と共にあると言ってくれた貴方の思うようにして下さい。大丈夫です。ね? 貴方」
「あぁ、そうだとも。嵯峨さん……嵯峨はわしらの息子や。孫の観月を、娘をお願いします」
「……ありがとうございます」

 嵯峨と柚月は両親に深々と頭を下げたのだった。



 折り返し、二人は車で向かうが、柚月の両親も共に乗っていく。

「祐次くんも、それに、皆さんもいますから大丈夫ですよ」

 柚月は微笑むが、ミラーをちょっと見た嵯峨は、

「後ろに車が着いてきているんですよ。あぁ、柚月。それにお父さんたちも振り返らないで下さい。バレバレですけどね。乗っているのは、京都の宮坂さんとその婿ですね。それにその後ろには、武田大和たけだやまと、その息子の彪流たけるくんですか? 手を組んだんでしょう」
「あっ! 本当に兄さんだわ」

ミラー越しにちらっと見た柚月は呟く。

「柚月。悪いのですが、電話を。この電話の醍醐だいごにかけてくれませんか?」
「えぇ」

 操作し、電話を掛ける。



 醍醐は二日目は特に、祐次と観月に注意しようと、周囲にそれとなく情報を流していた。
 すると電話が鳴り、嵯峨と載っていたので取ると、

「もしもし、醍醐さんですか? 柚月です。今、嵯峨さんが車を運転していて……」
「あぁ、柚月はんでしたか。ちょっとビックリでしたわ……何かありましたか?」
「あの、実は私の両親に会いに行って、そちらに戻っているのですが、私の兄と、観月と祐次くんのクラスメイトの武田くんとそのお父さんが、私たちの車を追跡しているんです。観月と祐次くんをお願いします」
「そうでしたか。解りましたわ。皆に伝えときます。それよりも嵯峨にいはんと柚月はん、気を付けて。にいはんは裏道やのうて、真っ直ぐきなはれと、伝えてくらはいや。追いかけているのをまくんも大変やろし、こっちにはちゃんとおるさかいに」
「はい。あ、あの、私の両親も実は来ているんです。ご挨拶させて下さい」

柚月は告げると、

「柚月はんのご両親ですか。それはお会いするんは楽しみです。にいはんは運転に気を付けてと伝えてくらはい」
「はい。よろしくお願い致します」

電話を切ると、

「醍醐さんが、向こうは注意しているそうです。嵯峨さんはもう、普通に気付かないふりで真っ直ぐ来て下さいだそうですよ?」
「まぁ、小道は本当にあちこちあって迷うんですよね。では、行きましょうか」

嵯峨は、話し始めたのだった。
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