君のことを本当に……?

刹那玻璃

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《呼び掛け》……「観月!」

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 今日は日曜日である。
 昨日よりも今日は天気もよく、お客は増えるだろうと見越している。
 それに、地域の人々は外に出て戻ってきた親類と和気あいあいとしている。
 午後から、地域の子供たちが練習してきたダンスや、地域の郷土芸能の披露など、人が昨日よりも多い。
 明日は月曜日だが、子供たちは明日は臨時休校であり、地域の住人は普段の生活に戻る。
 その前に、今日のお祭りで売るのである。

 今日も観月みづきは、可愛らしく髪を結い上げ、ヴィヴィたちがほんのりと化粧をさせる。
 眼鏡で少しシャープな印象の大人びたメイドさんになる。
 代わりに葵衣あおいはきつい印象の瞳を、優しい淡い色で化粧をして貰っている。

「はい! 写真! ウェイン。御姫様だっこ!」
祐次ゆうじが怒るよ~?」
「良いのよ。ね?」
「お、重くてすみません」
「いや、軽いから……ヴィヴィは痩せてるけど、やっぱり公表してないけど、ある女優さんは抱き上げるの厳しかったなぁ……」

 ウェインは呟く。

「あ、私はこれでもある程度武術や、実家の猟をしたりできる範囲をしてるんだけどね」
「猟、ですか?」
「あぁ、私の家は代々昔ながらの荘園を持っていて、母はそこで主に暮らしているんだ。私も仕事が忙しくないときは荘園で家族と暮らしている。くれないも、今回は両親が見てくれると言うから連れてこなかったけれど子供たちも、ロンドンよりも荘園暮らしが良いと言ってるんだ」
「前にテレビで、イングランドの荘園の一年と言うのをしていましたが……」
「あぁ、父の友人の荘園だね。あんな感じだよ」

 ニッコリと笑う。

「でも、そう言えば前に、テレビでウェインお兄ちゃんがラフなデニムで……」
「あれ普段着。羊を育ててるし、家族の食事である野菜や麦畑、ハーブを育てているよ」
「はぁ。凄いですね」
「貴族だから、俳優だからと気取ったりはしないよ。迷惑をかけない程に自分らしく生きることにしているんだ。10年前に弟と縁を切ったんだ。兄弟だけではなく、私は貴族としてと言うだけではなく公にも生きていく。家族だけでなく屋敷や荘園を守っていく為には、周囲に支えてくれる人がいる。そう言った人を大切にしなくてはと思ったんだよ」

 ウェインを見つめ、観月は微笑む。

「ウェインお兄ちゃんは、私のお父さんの次にかっこいいです。家族や周囲の人を大事にする、素敵です」
嵯峨さがさんは観月ちゃん可愛いって言ってたけど、本当に解るよ~! 今度、イングランドに来たら、遊びにおいでー?」
「ウェイン兄ちゃん! いい加減に、観月ベタベタするなよ!」
「あはは~! お父さんがわりです」

 祐次が食って掛かるのをにこにこと返す。

「全く……観月、大丈夫か? 嵯峨さんたち、俺たちが寝てる間に行っちゃったけど」
「大丈夫です。お父さんたちお仕事と、それにお父さん、おじいちゃんとおばあちゃんに挨拶を早めにしたいって言ってましたよ」



 昨晩は麒一郎きいちろう伊佐矢いさや嵐山らんざん、そして祐也ゆうやたちの父である朔夜さくやと兄の一平、嵐山の息子の特に標野しめのたちが酔い潰れ、凄まじかったらしい。
 今日は運転をする予定だった嵯峨と、さほど飲まなかった紫野むらさきの、祐也に醍醐だいご日向ひなたが寝かせたらしいが、心痛もあり伊佐矢は寝こみ、その横で亜沙子あさこも寝込んでいた。
 標野は二日酔いでひめに怒られたらしい……が、一番ビックリしたのは、

「そやさかいに言うたやないか。雛菊ひなぎく

呆れ気味に布団に横になっている妻に、紫野はため息をつく。

「雛菊は飲むと体質が変わるさかいに、て」
「気持ち悪い……全身かゆいどす」

 雛菊は生まれつきの体質で、発疹が出ていた。
 アルコールが抜けるまでは薬も効かないらしく、ただ大人しく水分をとって寝ているしかできないらしい。

ほたるお姉ちゃんは大丈夫?」
「え? 私は大丈夫だけど、祐也が飲むなって言うの。すぅ姉さんは強いのよ?」

とコロコロと笑っていたが、祐也に聞くと、

「……飲むとテンションが上がって、暴れるんだ……」
「と言うよりも、『祐也~抱っこ!』とか言うて、甘え出すんや。祐也は怒れんけん。俺が叱る」

日向が言う。

「まぁ、酒乱ではないが、基本、祐也が甘いんだ」
「今晩は皆で飲む予定やけん、見とうみや」

と苦笑していた。
 驚いたのは酒豪の多いこと……特に麒一郎はけろっとして、

「あれ位で、潰れへんわ」

と笑っていた。

 今日は、午前中にだけお手伝いをする。
 もう、昨日のうちに品物は売れてしまい、持ち帰ったミニチュアハウスも、観月の寝起きする部屋に置かれている。
 昨日の残りと、予備に追加した小物を中心に売っていく。

 途中、電話で話していた醍醐がやって来て、

「観月ちゃん。おかあはんから電話があって、おじいちゃんとおばあちゃんに挨拶を済ませたから、もんてくるていわはっとったわ。4人で来るさかいにまっとってな言うて」
「えっ! おじいちゃんとおばあちゃん? 嬉しいです」
「それよりも、注意してや? 何かあったら、隣のばあちゃんや皆に声をかけること」
「は、はい」
「それに、なるべく一人になられんで? かまんかな?」

醍醐の言葉遣いは出身の京都と、こちらの地域の方言が混じっているのだが、それは味のある優しい言葉である。

「はい。醍醐お兄ちゃん。なるべく一緒にいます」
「かまんかまん。じゃぁ、お昼にはおとうはんたちとおあがりや」
「はい」

 観月は本当にワクワクしていた。



 そして、醍醐を追いかける車には彪流たけるが乗っており、

「なぁ、親父。どこ? ここ」
「知らんわ」
「確か、大原嵯峨の幼馴染みが、引きこもっとる田舎や。全く、こんなところで何をしよるんか……」

宮原は嘲るように呟くが、実は彼らの車の後ろから、タクシーが追いかけているのを4人は全く気がついていなかった。
 タクシーには大原宇治おおはらひろはるが、何かを吹っ切ったように穏やかに運転手と話していた。

「……そう言えば、あてとこの住んどるところは、昔はこんなところでしたわ。のどかで山が綺麗で、水も……そう言えば蛍は飛んどるんですか?」
「えぇ。この地域の蛍は大乱舞……見事ですよ。京都のぼんがここが美しい言うて移ってきたんですわ。昔は限界集落、もう老人ばかりと言われとったのに、ぼんはここの娘を嫁にして、その友人夫婦が移住、もう一人のボンも……子供も増えて、他にも移住する所や、子供や孫が戻ってきた言うて、人口も増えてきてますよ。空気は綺麗、水も山から小川が流れて、ないのは大型スーパーと病院位ですわ」
「そうでっか……えぇとこですなぁ……」

 宇治は、車のガラスの向こうの風景を見る。
 ここ最近は、病院の理事長室と病院、年老いてより頑固になった母親と二人で喧嘩ばかりである。
 その上、母親はかくしゃくとしているが、お手伝いを頼む女性によると物忘れが酷いらしい。

「……私の生き方はどうだったのだろうな……美園みその伏見ふしみ……今更だが、嵯峨に伝えられるだろうか?」



 車を駐車場に停めて、会場に降りていた嵯峨たちは、堂々と会場に乗り込んでいく車に顔色を変える。

「なっ! 無理矢理侵入するなんて!」
「あ、観月!」



 今日は倉庫整理だけでなく、マイク担当になった祐次は、制止する地域の人を無視して入ってくる車に、

『この会場は、車の進入禁止です! 誘導員の指示に従って下さい! 繰り返します! 警告します!』

とマイクで声をあげた。

 出てきたのは、彪流に3人の男……。
 一瞬視線で探す……いない。
 ブースにいるはずなのに……。

『観月! 逃げろ~! 兄ちゃんたち、不審者だ!』

 マイクで怒鳴り、観月を探しに走り出したのだった。
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