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お話はちょっとずれちゃいます⁉
パパアレクとエリーさんのお母様は、やっぱりこんなひとです。
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シルベスターは薬をのみ、着替えをさせて貰うと、熱はあるがゆっくり呼吸が安定してきた。
「……ご、ごめんなさい、ヴァーロ兄さま……耐えられなくて……」
「そりゃそうでしょ。あぁ、アン、アール? 大丈夫だよ?」
恐る恐る扉を開けている王女たちに、ヴァーロは手招きをする。
グランドールと共に入っていった二人に、シルベスターは、
「ごめんなさい。アール、アン。心配かけちゃったね? グラン兄様もごめんなさい。大事なお仕事の邪魔を……」
「これ位は何ともない! 安心してくれ、シルゥ。それよりも心配性のその可愛らしい素直な性格を、家の性格悪の一応、主と取り替えてくれ。シルゥ!」
いつも生真面目で誠実で優しいグランドールが、真剣に訴える。
「あれではセインティアが、本当に胃に穴が開く! それでなくともあれは繊細で、おっとりとしていて、芸術肌の可愛い弟なのに! 私がここに詰めている間は、あの父とアリシア、それにあのリュー兄上に着いていなくてはいけないんだ! 特に、あのリュー兄上のせいで、何度血を吐いたか!」
「……俺のせいか? お前の嫁だろうが!」
後ろから現れたのは華やかな金髪を身長以上に伸ばした、純白の聖衣を纏い、腰のベルトには鈍色の金具に吊るされた直剣を携えた青年。
顔立ちは整い、瞳はつり目ぎみだが淡いブルーアイ。
自分の美貌を知りつくし、外面は良いものの、毒舌と手の早い別名『破壊伯爵』カズール伯爵リュシオン・エルドヴァーン……通称リューである。
ちなみにリューの父は、現在のマルムスティーン侯爵エドヴィン・ローウェルの弟ヴィクター・セシリア・リア・ドーヴェンで、リューの母は先月亡くなったエドヴィンの妻セラヴィナの妹セティーナであり、血の近い従兄弟である。
リューもシルゥも母親に似ているのだが、シルゥの母は無邪気と言えば可愛いが、悪気なく毒舌を吐く人で、『毒舌侯爵夫人』と呼ばれていた。
逆に、リューの母は見た目は凛として美しく『白竜姫伯爵』と呼ばれ、男装に剣を持ち、実際に戦場で戦い抜いた伝説の美貌の騎士だった。
しかし、本当の所、セティーナは小さい頃から気が小さく繊細で、臆病で、父親に怒られてよく泣いていた。
しくしく隠れて泣いていたセティーナを、将来夫になる婚約者のヴィクターが探しだし、彼は外交官兼術師だった為、術で次々とおみやげの数々の可愛いものや珍しい花、お人形に絵本、装飾品にドレスを出して見せて喜ばせていた。
爵位を受け継ぎ、正装は男装だったが、その衣装は全てヴィクターが見立て、所々にセティーナが驚くような隠し装飾を施していた。
実際、母のセティーナが第2子妊娠中、王宮で暗殺者に襲われ亡くなった時、ヴィクターは遺品を整理できず、日々泣き続けた。
そしてやんちゃ盛りで、破壊の限りを尽くすリューの、小さい頃はそれは母にそっくりだった顔を見て、
「顔だけは……セティに似たのに、何で、何で破壊活動するのぉぉ! セティのセティの……私が贈り続けた、セティの為のドレスが一枚でも穴が開いたら、装飾が一つでもなくなりでもしたら、この王都のマルムスティーン邸と王宮をぶっ壊す!」
と本気でキレた。
それを聞いた普段はおおらかでにこにこした伯父のエドヴィンと、ふてぶてしい父方の祖父エリファス・レヴィが蒼白になった。
ちなみに、すでに母方の祖父ランスロットはリューが他を破壊しつくし、カズール伯爵領の屋敷チェニア宮も壊そうとしたのを、土下座して壊すことをやめさせた。
リューの前の前、先々代カズール伯爵ランスロットは鬼総長の別名を持つ、長年戦場に立ち続けたシェールドでも5本の指に入るカズール伯爵である。
その彼をしても、土下座をしてやめさせる屋敷『チェニア宮』は、約1600年前に聖王アレクサンダー王が遷都するまで仮の王宮として住んでいた王宮のミニチュア宮廷で、代々の国王も静養に訪れる場所である。
10才の時のリューにはガラクタとしか思えなかったが、それはそれは価値不明のお宝があるらしい。
「ヴィ!それはやめよう! 前に、破壊は何回かしてるだろう!」
「そうだよ! ちびちゃん! 旧都シェールディアを押し潰して、その上に大量の水をぶちこんで、湖にしちゃったでしょ! それに、隕石を数十個もシェールダムに落として、王宮の建物に幾つも穴開けまくったじゃないか! お父さんもしたかった~! 誘ってよ!」
「父上! これ以上破壊しまくって、マルムスティーン侯爵家を破滅させる気ですか! それにヴィをおちびちゃんとか、ちびレヴィとか、可愛い方とか言っちゃダメですってば!」
「エディ坊やも言ってるじゃん」
「……ぶっ潰す!」
本気でキレたヴィクターは王宮を潰し、現在の王都シェールダムのマルムスティーン侯爵邸を、妻の遺品が納められた別館以外を破壊しつくし、リューの一つ上の従兄、現在のマガタ公爵ルドルフがヴィクターを宥め、慰めたのは過去である。
現在ヴィクターは外交官の仕事の為、行方不明である。
親子で壊した物は、国庫274年分だったらしいが、普段は大人しく温厚で愛妻家、妻の喜ぶことなら何でもやる!
普通のデレアマ年の差夫婦の影の薄い方……妻は美女、息子も妻にうり二つの中で童顔でたれ目の瞳の色は濃いめのグリーンと、髪の毛は落ち着かない天然パーマ、普段は控えめで妻と兄の補佐に徹していたので解らなかったが、仕事を再開し10年で完済した。
それを成長して、父が消息不明になり、聞いたリューは、
「親父って、馬鹿じゃなかったんだ!」
と言い、ルドルフにぼこぼこに殴り飛ばされた。
「馬鹿はお前だ! お前は、叔父上のどこを見てたんだ! ど阿呆! 今すぐ、探しに行け!」
「俺は、カズール伯爵!」
「お前程度の仕事で名乗んな! 半分は、叔父上と父上と私がやってるんだぞ! で、その又半分はグランたちが、必死にこなしているって言うのに! グラン!」
ルドルフの声に、一応カズール伯爵家の執事を代々勤めるロイド家の次期当主は、
「は、はい!」
まだ結婚しておらず、シルゥと一つ違いの幼い弟をだっこしていた青年は、尊敬する先輩に返事をする。
「リューの仕事を全部、リューに投げておけ。それか、叔父上を探させに迷いの原に行かせとけ!」
「あ、あの……ま、迷いの原は、王族の方でも特に濃い血を受け継ぐ方以外は、迷って迷って……」
「一応、これも、俺と同じでおばあ様が王族だ! それに、このバカが死ぬか!」
「えっと……」
一応主と、尊敬する先輩を見て判断したのは、
「一応……カズール伯爵家の執事になるので、主の家が絶えたら困るので……」
「チェニア宮は、アヴィに言ってロイド家の物にしてやるぞ?」
「エェェェ! それは嬉しいです!」
グランはヴィクターに可愛がられ、骨董品などに造詣を持ち、主が放置している価値不明の刀、剣等の武具や防具などはお宝! であり、弟のセインティアも同じく可愛がって貰い、芸術が大好きに育ち、ヴィクターが愛妻に贈った衣装や装飾品、世界中から仕事の合間に集めた美術芸術品の数々を見ては喜ぶ。
「おい! グラン!」
「……リュー兄上より貴重です! ついでに、ヴィクターさまの方が優しいし、特にセインは、ヴィクター叔父上大好きでしょう? リュー兄上と、どっちが好き?」
「えっと、えっと……」
チラチラ、成人後主になるリューをみるセインに、ルドルフは優しく、
「お兄ちゃんたちが、いるから大丈夫だぞ?」
その言葉に、
「セ、インティアは、ヴィクター叔父上大好きです! ヴィクター叔父上と、チェニア宮の中を歩きたいです! リュー兄上! 探しに行って下さい! 代わりに、兄上がカズール伯爵します! セインティア! お手伝いします!」
の一言にリューは撃沈し、真面目にしようと思ったものの、知らぬまま押し付けていた仕事のつけは膨大であり現在は必死に仕事をこなして……いるようで、裏では遊んでいる。
「よ、嫁のアリシアは4割!」
「充分じゃねえか」
リューは鼻を鳴らす。
ムッとしたグランは、
「リュー兄上は5割5分! 父は五分! どれだけ負担かお分かりでしょう!」
その一言に、アンネテアが心底不憫そうに、伯父のグランを見て、
「グランお兄様……セインティアお兄様が王宮に出仕出来ないって、リューお兄様のせいだったの?」
「アール、シェインおにいしゃま、お顔知らない~? おじしゃま、どんなお顔?」
アールティーネの言葉に、グランは、
「いえ、どちらかと言うと、ルドルフ兄上に似ていますね」
アールティーネは母の実の兄であるルドルフをみる。
「おかあしゃまににてる?」
「いや、おじちゃんの……ご先祖とグランとセインのご先祖が、遠縁なんだ。ほら、おじちゃんのマガタ公爵領に、小さい国があるだろう?」
「ラディリア公国ですね?」
「そうそう。アンネテアは勉強してるな。どこかの顔だけ男と違うな。偉い偉い」
姪の頭をなで、
「ロイド家は、元々、カズール伯爵領より西にあったラディリアと言う国の、国王の側近だったんだ。本当は最後の当主マルセル王の側にいて、共にと望んだが、王の命令で、王の初めての子供を身ごもっていた王妃を守りつつ逃げたんだ。生まれたのが、ミュリエル王子……この国ではドルフ卿を名乗った方だ」
「あ、おじしゃまの、マガタ公爵!」
手をあげてアールティーネが声をあげる。
「おぉ! アールも賢いなぁ。そう。おじちゃんのご先祖。ずっと守ってくれたロイドの当主に、ドルフ卿の奥方でもあるアレクサンダー王が、これからも国を、私たちを支えて欲しいと……それがこんな馬鹿に!」
「うるっせー!」
リューが叫んだ途端、背後から衝撃を受け吹っ飛んだ。
「子供の前で、汚い言葉を叫ぶな!」
後宮騎士団長ヴァーソロミューである。
その後ろから、国王アヴェラートと王妃セリカは顔を覗かせるが、リューではなくシルゥをみる。
「大丈夫? シルゥ? 御免ね? 解ってたんだけど、一応次のマルムスティーン侯爵の顔が見たいって者がいて、後でエディ叔父上とルード兄上と、グラン兄上に頼んでおくよ」
「それにしても、大丈夫? シルゥ?」
「姉様! お、お久しぶりです。姉様とアール姫に会うのは今日以外難しいと思って、が、頑張ったんですが……姉様の顔に泥を塗ってしまったら……」
「大丈夫よ。その時は、アヴィと兄様とエディお父様に頼んで、リュー兄様をこきつかうから!」
にっこり。
愛らしい美貌は完全に下の娘に瓜二つだが、大国の王妃を務めるだけありしたたかさを持つセリカは言い放つ。
「せ、セリカ? あんなに可愛がってあげたじゃないか!」
「物を次々壊していくのを、片付けてあげていたら、兄様が全部私の責任にして下さった事とか、ヴィクターお父様の大事にしていた、セティーナお母様の遺品をくすねて、飲み代に換えたこととか、見つけた私に黙ってろって……ヴィクターお父様が泣き出して、エディお父様が困っていたので、エリファスお祖父様にお願いして買い戻して頂いたことも……他には……」
指を折って数えていくセリカに、グランは土下座して、
「申し訳ありません! セリカ様! 我が主の不祥事、私が……」
「あら、グランお兄様。大丈夫ですよ。お兄様が騎士団を転々としていた時だったのです。それで、浮気現場を、御姉様に見つけて頂いたのですわ!」
オホホホホ……
セリカの高笑いに、ルドルフが、
「あぁ、お前婚約破棄もう17回目だっけ? いい加減謝って、半殺しの目に遭って、結婚しろ。お前が片付くだけで、グランたちの心労が減る!」
「うるっせー!」
「ボキャブラリーも少ない! それに可愛い王女に変な言葉を教えるな!」
ドカッ!
ヴァーソロミューは窓を開けると、気絶させたリューを投げ飛ばす。
「ナーガ! 迷いの原に捨ててきて!」
『……面倒』
深紅の毛並みのナーガ・デールは嫌そうな顔になる。
「お仕事頑張ってきたら、彼女とデートに最適のデートスポット幾つか教えてあげるよ。ついでに、ルドルフに了承得ておくから」
『わ、解った! ありがとう! ヴァーロ兄上!』
プライドが高く、人間嫌いのナムグであるナーガ・デールも、主よりも初めての恋人とのデートに負けた。
デートの為だけに、普通のナムグなら一昼夜かかる西に飛び続け、王都、金の森、竜河を越え、カズールの街、チェニア宮の向こうまで飛んでいくのだった。
「行ってらっしゃい! さーて、ルドルフ? 前の借りを返してね?」
「くぅぅ! まだ人見知りが激しくて、懐かせているのに! ナーガは賢いが! あれの主が!幼馴染みで従弟! 最悪だ!」
「お兄様……可哀想……」
「セリカ……口ではそう言っているが、扇の下の顔がバレバレだ!」
ルドルフは妹に食って掛かる。
「あら、ばれちゃった! お兄様不幸体質~! お兄様こそ恋人見つけてね? 甥っ子や姪っ子の顔が見たいわ~? 間違っても彼氏は嫌よ?」
「誰が! セリカ! お前は、アンとアールの前でお説教をされたいか!」
「きゃぁぁ! お兄様のドレス姿、もう一回見てみたいわ~! シルゥもお願いね~? アヴィも一緒に、内緒の仮面舞踏会なんて素敵!」
「やめろ~!」
シェールドの宮廷は、当時は平穏……? だった。
「……ご、ごめんなさい、ヴァーロ兄さま……耐えられなくて……」
「そりゃそうでしょ。あぁ、アン、アール? 大丈夫だよ?」
恐る恐る扉を開けている王女たちに、ヴァーロは手招きをする。
グランドールと共に入っていった二人に、シルベスターは、
「ごめんなさい。アール、アン。心配かけちゃったね? グラン兄様もごめんなさい。大事なお仕事の邪魔を……」
「これ位は何ともない! 安心してくれ、シルゥ。それよりも心配性のその可愛らしい素直な性格を、家の性格悪の一応、主と取り替えてくれ。シルゥ!」
いつも生真面目で誠実で優しいグランドールが、真剣に訴える。
「あれではセインティアが、本当に胃に穴が開く! それでなくともあれは繊細で、おっとりとしていて、芸術肌の可愛い弟なのに! 私がここに詰めている間は、あの父とアリシア、それにあのリュー兄上に着いていなくてはいけないんだ! 特に、あのリュー兄上のせいで、何度血を吐いたか!」
「……俺のせいか? お前の嫁だろうが!」
後ろから現れたのは華やかな金髪を身長以上に伸ばした、純白の聖衣を纏い、腰のベルトには鈍色の金具に吊るされた直剣を携えた青年。
顔立ちは整い、瞳はつり目ぎみだが淡いブルーアイ。
自分の美貌を知りつくし、外面は良いものの、毒舌と手の早い別名『破壊伯爵』カズール伯爵リュシオン・エルドヴァーン……通称リューである。
ちなみにリューの父は、現在のマルムスティーン侯爵エドヴィン・ローウェルの弟ヴィクター・セシリア・リア・ドーヴェンで、リューの母は先月亡くなったエドヴィンの妻セラヴィナの妹セティーナであり、血の近い従兄弟である。
リューもシルゥも母親に似ているのだが、シルゥの母は無邪気と言えば可愛いが、悪気なく毒舌を吐く人で、『毒舌侯爵夫人』と呼ばれていた。
逆に、リューの母は見た目は凛として美しく『白竜姫伯爵』と呼ばれ、男装に剣を持ち、実際に戦場で戦い抜いた伝説の美貌の騎士だった。
しかし、本当の所、セティーナは小さい頃から気が小さく繊細で、臆病で、父親に怒られてよく泣いていた。
しくしく隠れて泣いていたセティーナを、将来夫になる婚約者のヴィクターが探しだし、彼は外交官兼術師だった為、術で次々とおみやげの数々の可愛いものや珍しい花、お人形に絵本、装飾品にドレスを出して見せて喜ばせていた。
爵位を受け継ぎ、正装は男装だったが、その衣装は全てヴィクターが見立て、所々にセティーナが驚くような隠し装飾を施していた。
実際、母のセティーナが第2子妊娠中、王宮で暗殺者に襲われ亡くなった時、ヴィクターは遺品を整理できず、日々泣き続けた。
そしてやんちゃ盛りで、破壊の限りを尽くすリューの、小さい頃はそれは母にそっくりだった顔を見て、
「顔だけは……セティに似たのに、何で、何で破壊活動するのぉぉ! セティのセティの……私が贈り続けた、セティの為のドレスが一枚でも穴が開いたら、装飾が一つでもなくなりでもしたら、この王都のマルムスティーン邸と王宮をぶっ壊す!」
と本気でキレた。
それを聞いた普段はおおらかでにこにこした伯父のエドヴィンと、ふてぶてしい父方の祖父エリファス・レヴィが蒼白になった。
ちなみに、すでに母方の祖父ランスロットはリューが他を破壊しつくし、カズール伯爵領の屋敷チェニア宮も壊そうとしたのを、土下座して壊すことをやめさせた。
リューの前の前、先々代カズール伯爵ランスロットは鬼総長の別名を持つ、長年戦場に立ち続けたシェールドでも5本の指に入るカズール伯爵である。
その彼をしても、土下座をしてやめさせる屋敷『チェニア宮』は、約1600年前に聖王アレクサンダー王が遷都するまで仮の王宮として住んでいた王宮のミニチュア宮廷で、代々の国王も静養に訪れる場所である。
10才の時のリューにはガラクタとしか思えなかったが、それはそれは価値不明のお宝があるらしい。
「ヴィ!それはやめよう! 前に、破壊は何回かしてるだろう!」
「そうだよ! ちびちゃん! 旧都シェールディアを押し潰して、その上に大量の水をぶちこんで、湖にしちゃったでしょ! それに、隕石を数十個もシェールダムに落として、王宮の建物に幾つも穴開けまくったじゃないか! お父さんもしたかった~! 誘ってよ!」
「父上! これ以上破壊しまくって、マルムスティーン侯爵家を破滅させる気ですか! それにヴィをおちびちゃんとか、ちびレヴィとか、可愛い方とか言っちゃダメですってば!」
「エディ坊やも言ってるじゃん」
「……ぶっ潰す!」
本気でキレたヴィクターは王宮を潰し、現在の王都シェールダムのマルムスティーン侯爵邸を、妻の遺品が納められた別館以外を破壊しつくし、リューの一つ上の従兄、現在のマガタ公爵ルドルフがヴィクターを宥め、慰めたのは過去である。
現在ヴィクターは外交官の仕事の為、行方不明である。
親子で壊した物は、国庫274年分だったらしいが、普段は大人しく温厚で愛妻家、妻の喜ぶことなら何でもやる!
普通のデレアマ年の差夫婦の影の薄い方……妻は美女、息子も妻にうり二つの中で童顔でたれ目の瞳の色は濃いめのグリーンと、髪の毛は落ち着かない天然パーマ、普段は控えめで妻と兄の補佐に徹していたので解らなかったが、仕事を再開し10年で完済した。
それを成長して、父が消息不明になり、聞いたリューは、
「親父って、馬鹿じゃなかったんだ!」
と言い、ルドルフにぼこぼこに殴り飛ばされた。
「馬鹿はお前だ! お前は、叔父上のどこを見てたんだ! ど阿呆! 今すぐ、探しに行け!」
「俺は、カズール伯爵!」
「お前程度の仕事で名乗んな! 半分は、叔父上と父上と私がやってるんだぞ! で、その又半分はグランたちが、必死にこなしているって言うのに! グラン!」
ルドルフの声に、一応カズール伯爵家の執事を代々勤めるロイド家の次期当主は、
「は、はい!」
まだ結婚しておらず、シルゥと一つ違いの幼い弟をだっこしていた青年は、尊敬する先輩に返事をする。
「リューの仕事を全部、リューに投げておけ。それか、叔父上を探させに迷いの原に行かせとけ!」
「あ、あの……ま、迷いの原は、王族の方でも特に濃い血を受け継ぐ方以外は、迷って迷って……」
「一応、これも、俺と同じでおばあ様が王族だ! それに、このバカが死ぬか!」
「えっと……」
一応主と、尊敬する先輩を見て判断したのは、
「一応……カズール伯爵家の執事になるので、主の家が絶えたら困るので……」
「チェニア宮は、アヴィに言ってロイド家の物にしてやるぞ?」
「エェェェ! それは嬉しいです!」
グランはヴィクターに可愛がられ、骨董品などに造詣を持ち、主が放置している価値不明の刀、剣等の武具や防具などはお宝! であり、弟のセインティアも同じく可愛がって貰い、芸術が大好きに育ち、ヴィクターが愛妻に贈った衣装や装飾品、世界中から仕事の合間に集めた美術芸術品の数々を見ては喜ぶ。
「おい! グラン!」
「……リュー兄上より貴重です! ついでに、ヴィクターさまの方が優しいし、特にセインは、ヴィクター叔父上大好きでしょう? リュー兄上と、どっちが好き?」
「えっと、えっと……」
チラチラ、成人後主になるリューをみるセインに、ルドルフは優しく、
「お兄ちゃんたちが、いるから大丈夫だぞ?」
その言葉に、
「セ、インティアは、ヴィクター叔父上大好きです! ヴィクター叔父上と、チェニア宮の中を歩きたいです! リュー兄上! 探しに行って下さい! 代わりに、兄上がカズール伯爵します! セインティア! お手伝いします!」
の一言にリューは撃沈し、真面目にしようと思ったものの、知らぬまま押し付けていた仕事のつけは膨大であり現在は必死に仕事をこなして……いるようで、裏では遊んでいる。
「よ、嫁のアリシアは4割!」
「充分じゃねえか」
リューは鼻を鳴らす。
ムッとしたグランは、
「リュー兄上は5割5分! 父は五分! どれだけ負担かお分かりでしょう!」
その一言に、アンネテアが心底不憫そうに、伯父のグランを見て、
「グランお兄様……セインティアお兄様が王宮に出仕出来ないって、リューお兄様のせいだったの?」
「アール、シェインおにいしゃま、お顔知らない~? おじしゃま、どんなお顔?」
アールティーネの言葉に、グランは、
「いえ、どちらかと言うと、ルドルフ兄上に似ていますね」
アールティーネは母の実の兄であるルドルフをみる。
「おかあしゃまににてる?」
「いや、おじちゃんの……ご先祖とグランとセインのご先祖が、遠縁なんだ。ほら、おじちゃんのマガタ公爵領に、小さい国があるだろう?」
「ラディリア公国ですね?」
「そうそう。アンネテアは勉強してるな。どこかの顔だけ男と違うな。偉い偉い」
姪の頭をなで、
「ロイド家は、元々、カズール伯爵領より西にあったラディリアと言う国の、国王の側近だったんだ。本当は最後の当主マルセル王の側にいて、共にと望んだが、王の命令で、王の初めての子供を身ごもっていた王妃を守りつつ逃げたんだ。生まれたのが、ミュリエル王子……この国ではドルフ卿を名乗った方だ」
「あ、おじしゃまの、マガタ公爵!」
手をあげてアールティーネが声をあげる。
「おぉ! アールも賢いなぁ。そう。おじちゃんのご先祖。ずっと守ってくれたロイドの当主に、ドルフ卿の奥方でもあるアレクサンダー王が、これからも国を、私たちを支えて欲しいと……それがこんな馬鹿に!」
「うるっせー!」
リューが叫んだ途端、背後から衝撃を受け吹っ飛んだ。
「子供の前で、汚い言葉を叫ぶな!」
後宮騎士団長ヴァーソロミューである。
その後ろから、国王アヴェラートと王妃セリカは顔を覗かせるが、リューではなくシルゥをみる。
「大丈夫? シルゥ? 御免ね? 解ってたんだけど、一応次のマルムスティーン侯爵の顔が見たいって者がいて、後でエディ叔父上とルード兄上と、グラン兄上に頼んでおくよ」
「それにしても、大丈夫? シルゥ?」
「姉様! お、お久しぶりです。姉様とアール姫に会うのは今日以外難しいと思って、が、頑張ったんですが……姉様の顔に泥を塗ってしまったら……」
「大丈夫よ。その時は、アヴィと兄様とエディお父様に頼んで、リュー兄様をこきつかうから!」
にっこり。
愛らしい美貌は完全に下の娘に瓜二つだが、大国の王妃を務めるだけありしたたかさを持つセリカは言い放つ。
「せ、セリカ? あんなに可愛がってあげたじゃないか!」
「物を次々壊していくのを、片付けてあげていたら、兄様が全部私の責任にして下さった事とか、ヴィクターお父様の大事にしていた、セティーナお母様の遺品をくすねて、飲み代に換えたこととか、見つけた私に黙ってろって……ヴィクターお父様が泣き出して、エディお父様が困っていたので、エリファスお祖父様にお願いして買い戻して頂いたことも……他には……」
指を折って数えていくセリカに、グランは土下座して、
「申し訳ありません! セリカ様! 我が主の不祥事、私が……」
「あら、グランお兄様。大丈夫ですよ。お兄様が騎士団を転々としていた時だったのです。それで、浮気現場を、御姉様に見つけて頂いたのですわ!」
オホホホホ……
セリカの高笑いに、ルドルフが、
「あぁ、お前婚約破棄もう17回目だっけ? いい加減謝って、半殺しの目に遭って、結婚しろ。お前が片付くだけで、グランたちの心労が減る!」
「うるっせー!」
「ボキャブラリーも少ない! それに可愛い王女に変な言葉を教えるな!」
ドカッ!
ヴァーソロミューは窓を開けると、気絶させたリューを投げ飛ばす。
「ナーガ! 迷いの原に捨ててきて!」
『……面倒』
深紅の毛並みのナーガ・デールは嫌そうな顔になる。
「お仕事頑張ってきたら、彼女とデートに最適のデートスポット幾つか教えてあげるよ。ついでに、ルドルフに了承得ておくから」
『わ、解った! ありがとう! ヴァーロ兄上!』
プライドが高く、人間嫌いのナムグであるナーガ・デールも、主よりも初めての恋人とのデートに負けた。
デートの為だけに、普通のナムグなら一昼夜かかる西に飛び続け、王都、金の森、竜河を越え、カズールの街、チェニア宮の向こうまで飛んでいくのだった。
「行ってらっしゃい! さーて、ルドルフ? 前の借りを返してね?」
「くぅぅ! まだ人見知りが激しくて、懐かせているのに! ナーガは賢いが! あれの主が!幼馴染みで従弟! 最悪だ!」
「お兄様……可哀想……」
「セリカ……口ではそう言っているが、扇の下の顔がバレバレだ!」
ルドルフは妹に食って掛かる。
「あら、ばれちゃった! お兄様不幸体質~! お兄様こそ恋人見つけてね? 甥っ子や姪っ子の顔が見たいわ~? 間違っても彼氏は嫌よ?」
「誰が! セリカ! お前は、アンとアールの前でお説教をされたいか!」
「きゃぁぁ! お兄様のドレス姿、もう一回見てみたいわ~! シルゥもお願いね~? アヴィも一緒に、内緒の仮面舞踏会なんて素敵!」
「やめろ~!」
シェールドの宮廷は、当時は平穏……? だった。
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