竜と王と剣と盾~改訂版

刹那玻璃

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神聖な閉鎖空間から、現実世界へ帰還です。

六槻ちゃんもアルドリーも、ビックリのお兄ちゃんたちです。

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 グランディアの長の幸矢こうやたちの祖父、清影せいえいとヴィクトローレの術によって、時空が繋がった道を渡っていく。

 ちなみにフィアは、六槻むつきと手を繋ぎ、もう片方は六槻の祖父ヴィクターが繋いでいる。

「フィアちゃん。向こうは何があるの? んっと、んっと……そ、それに、お洋服スースーする」

 少し不安げに六槻は問いかける。



 少し時間を遡る。
 グランディアでは質素な生活をしており、出発前に着替えを出してきたヴィクトローレに、

「何でおじいさま……サイズがお分かりです?」

と冷たく彗に言われ、

「と言うか、エドワード? そこにいる義弟のように変態とか、お前、このおじいさまを思ってないよね?」
「思ってますが? それに、周囲の皆もおじいさまを『残念変態ショタコン』認定済みです」
「私は、可愛い甥と姪に、孫。そして兄上を愛でること! 『ショタコン』『アレコン』ではありません! 『ブラコン』だけど!」
「威張るな! ……その可愛い孫って、僕じゃありませんよね?」

無表情の彗がうすら寒そうに祖父を見ると、

「お前も孫だから入ってるよ。それに今はお転婆盛りのお前の妹もいるし。もう、口はたつし、誰に似たのかねぇ?」
「……ぶ、無事だった……エラン……エランティエ……」

震える声で囁く彗。
 その第二次反抗期に入りつつある孫を引き寄せ、頭をくしゃくしゃと撫でながら、

「お前の髪って、マルムスティーン家って、良くわかるくしゃくしゃ髪だねぇ。それに、こちらとは、道は繋ぐのに地軸、地表同士が偶然の瞬間で近づき重ならないと難しいのだけれど、時々道ではなくお前とアルドリー、そしてセイラの両親、ヴィクター叔父上の力を探せば、力技で、情報通信をすることができるんだよ。本当は、シエラが落ち着いた能力者であれば、六槻の力を使うこともなかったんだけどね……。アルドリーも安定してないし、お前は暴発するし……使ったこともあるけど。緊急に」
「ちょっと待って! 聞き捨てならないこと、聞いたよ!」

 蒼記あおきが叫ぶ。

「何? 皆の力を使ったこと?」
「それもあるけど、彗に幸矢に六槻の力使うんなら、どーして僕の力使わないの?」
「え?」
「僕だって役に立つし! 無理に力使ったって言ったよね? 幸矢と六槻は体弱いんだよ~! 彗のはバンバン使って良いし、祖父様は繊細で寝込んだら困るって青い顔してるから、なるべくやめて欲しいし、おばあ様の破壊的要素とセイラさんの怪力! そっち使ってよ! 邪魔なんだから! 二人が一、二週間でも寝込んだら、シエラ父さんの破壊だけで済むでしょ?」

 呆気に取られるヴィクトローレ。

「あのさぁ、蒼記。うざっ! 僕と蒼記の術力の差は、生まれつきだって言ったじゃないか。それに、この時空を繋ぐのも、本来はしてはいけない禁じ手なの! 認められないの! それに術師に負担がかかるの。現在のこの場にいる術師は、僕とこの変態お祖父様とヴィクターお祖父様、フィアちゃんにルゥ姉様。術師の勉強はしてないけど、のろのろしてるシエラ父さんもシルゥ伯父上も、向こうの術師の能力も総動員だよ! それでも足りないから、幸矢の力を使ってるんじゃないか!」
「えぇぇ! 幸矢普通だけど?」
「さっきの、蒼水晶あおすいしょうのお陰だよ。一時的に安定しているだけで、帰ったら一月は、最奥の王太子の間で静養だろうね」

 ヴィクトローレは告げる。

「アーサー。お前の術師の能力は術師が大勢いるこの中でも、厳しいことを言うけれど、最下位。シェールドの術師の中では中の上だけれど、お前が当たり前のように見ている術は、本当に高度な術が多いんだ。お前がもし使いたいとするなら、かなりの努力が必要だ。それに、お前の一番よく知っているだろう、叔父上の術師としての能力でも、上の中でも下になる。その代わり叔父上は努力して力がないのなら、術を覚えようと……そしてその術の荒さを取り去り、扱いやすく精度を上げて使ったものが多い。叔父上は他の術力はほぼ平均値だけれど、光の術力が圧倒的に高いんだ。光は本当に扱いにくい。それを扱えるからこそ、素晴らしい術師として生きていける」
「……! ……じゃぁ、伯父上は……僕は役に立たない人間?」
「術師としては平均より少し上。それに、性格上セイラに似ていると思うから、荒くなる。その荒さを取り去り、精度を上げるように努力すれば、お前もそこそこの術師になれる。それと、シェールドの王家は基本的に精霊の守護を持つ。お前は、もう一人の王太子だから、精霊に愛されている。その精霊に助けを求めれば術の補助をしてくれる。でも、基本的に精霊は気紛れで、頑固だからそれをどうなだめるかだね。六槻は生まれながらに精霊に愛された姫だから、あの子はなだめたりしなくても、精霊が全部やってくれるけど」
「……む、六槻? 何で?」
「さぁ?私はアルドリーのように、生まれつき精霊を配下に従える能力ないし……解らないよ。兄さまも生まれつき、水の精霊と風の精霊に愛されているけど、それはカズールとマルムスティーンの直系だからって、あのいつ死んでも良い、お祖父様も言ってたからね」

 あっさりと告げる言葉に、蒼記は、

「お、お祖父様って、ヴィクトローレ叔父上のおじいちゃんまで生きてるの? 家のおおじいさまのお父さんだよね?」
「不本意ながら生きてるよ。おばあさまのアリアンロード王女殿下もお元気。おばあ様は別名『シェールドの女王』とも呼ばれているからね。お祖父様はヴィクター叔父上のことを『ちびヴィ』ってからかう上に、私のことを『ちびヴィ二号』って呼んでくれるものだから……エドワード、良かったね。お前のあだ名は『3号』決定だよ」
「そんなのいるか~!」

と叫ぶエドワードだった。



「で、話は戻るけれど、セイラに色々情報を貰っていたし、グランディアの女性は小柄だからね」
「で、これは……」
「緊急にお願いした、ウェイト兄さまのお姉さんのカリナ、サレーヌ、ターニャ、ナーニャ姉さまの力作だよ?」

 ウキウキと六槻のドレスの最後にリボンを結び、靴下から靴、手袋に髪飾りにと嬉しそうに飾り立てるフィアが声をかける。

「えーと、フィアちゃん。何で、六槻にそこまで熱心なの?」

 清夜さやのドレスの手伝いをしていた幸矢は問いかける。
 振り返ったフィアは、キョトンと、

「あれ? シエラ兄さまに聞いてないの? 僕、六槻ちゃんの婚約者なんだけど?」
「……エェェェェ! こ、婚約者? いつ決まったの?」
「ん? えっと、18年前!」
「六槻、生まれてないじゃない!」

蒼記の声に、

「うん。でも、カズールでは多いんだよね。少子女系の一族だから。生まれる前から婚約者決まってるの。ヴィクターお祖父様もそうでしたよね?」
「そうだね……こら! 大人しくしなさい! お前の着たがっていたドレスだよ! コルセットを締めるから柱に掴まって、息を吐きなさい!」
「ギャァァ! 父さま! 死ぬ~! 苦しい!」

 悲鳴をあげるのは、清雅せいがである。

「綺麗に着こなして、グランディアの王妃で私の娘、ひいては、幸矢たちの祖母としてお披露目があるんだよ! 我慢しなさい!」
「も、もう二度と……こんなの着ないわ……!」
「何を言っているのか……幾つも行事があるんだよ。これを着るか、五衣いつつぎぬか選びなさい! それか、こちらの正式装束だよ!」
「そ、そんな酷な選択……酷すぎる……」

 泣き言を言う娘に、

「それだけ遊んでいた証拠だよ。権威の象徴の人間としての自覚を思い出しなさい! 野性児!」
「……おおじいちゃま? さーと、むーちゃんはそんなの着ないの?」

清夜の問いかけにヴィクターは、

「正式なレディとしてのお披露目をしてからだね。今はまだそういう可愛いドレスで十分だよ。良く似合ってるよ?」
「本当? にーちゃ、あ~ちゃん。似合う?」

一応ヴィクターの厳しいマナーレッスンもあり、それなりに修めている清夜はスカートの裾をつまみ、優雅にお辞儀をすると、ニコッと笑いかける。

「似合うよ! さーやも六槻も可愛い! それに、月歩つきほ……わぁぁ、可愛い良く似合ってるね?」

 幼児服、しかも着ぐるみ姿である。

「それ、パタパタさんがついてて、本当に可愛いね!」

 ナムグの着ぐるみの月歩はテテテっと歩くと、裾を引っ張り、

「にゃぁう?」

と問いかけたのは、シルゥ。
 シルゥは、セイラのドレスを娘のルゥに任せて振り返ったところで、小さい、しかも美少女間違いなしの可愛い姪に、

「わぁぁ、月歩ちゃんだよね。可愛いよ! とっても似合うね」
「シルゥ、ちゃんも、にゃーう!」
「本当? ありがとう~! シルゥちゃん嬉しい!」

シルゥは姪を抱き上げる。

「新しいお家に行こうね? みーんな一緒」
「ととしゃんも?」
「お父さんも一緒だよ? ほら、着替えてきたね?」

 現れた祖父たちに、月歩は目を丸くする。

「ととしゃん……しゅごい!」
「えっ? 似合わない?」

 月歩の父の隼人はおろおろとするが、

「かっこいいって言いたかったんだよね? 月歩ちゃんは」
「うん!」

の言葉に頬を赤くし、

「き、着なれなくて、大丈夫かなと思ったのですが……シュウ兄上程体格が良い方ではありませんし……」
「いや、お前のサイズで十分だ! 何なんだ! このハデハデは!」

出てきたシュウに、シルベスターとフィア、ヴィクターにヴィクトローレが目を見開く。

「うわぁ~! リュー兄さまの正装! 一応大柄なものも用意してたのに、それより似合ってるよ!」
「いえ、似合うと言われると複雑なんですが……シルゥ兄上」
「ううん、良く似合ってるよ! その金髪。瞳の色は違うけど、剣をつけてるから本当に、カズール家の!」
「お前は、体格が良いからね。それに家の息子より落ち着いてはいるけれど、整った顔だし、下品に見えないのは本当に良いことだよ」

 感心する。
 セイラもへとへとになりつつ正装をまとったのだが、寝付いている妊娠中の瑞波みずはは兎も角、シエラの妻の清泉いずみはジュリエットドレススタイルであり、

「何でぇ? いっちゃんはこれなの!」

と訴えたセイラに、恥ずかしそうに、

「セイラ姉様……あの、実は、同じようなドレスを用意して頂いていたのですが、サイズが合わずに……恥ずかしいです」

頬どころか、首筋まで真っ赤にする清泉は色白である。
 その後ろからルゥが出てきて、やれやれと首を振る。

「悪かった。セイラ。言うのを忘れていたが、王都での正装はセイラと同じだが、カズールのドレスは基本これだ。それに……」

 まじまじとセイラの胸を見つめたルゥは、

「良かったな、セイラ。姉上方のドレスが似合うぞ。本性を隠して、一応見られる姿だ。で、清泉ちゃんはカズールのシエラの奥方だ。だからこちらにしたんだ。それに、国王の王妃が正装でなくてどうする! 自分の身分を考えろ」
「……言いながら、私の胸を見たわね!」
「同性だし下品ではないだろう? それよりも、セイラ?」

ニヤリ、ルゥは何かをたくらんだ顔になる。

「良かったな。丁度、成長したシエラやアル達に会いたいと、大おばあさまがアン叔母上とお待ちだ。とてもとても、お二人はセイラのことを待ってくれているだろう」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って! ルゥ! ルゥ様!」
「特に大おばあさまは、可愛い可愛いアル達に、さーやと六槻のことを楽しみにされている。清泉ちゃんは先程少し確認したが、流石はカズールのシエラの奥方だ。それに、着替えの時に手伝わせて頂いた、瑞波(みずは)ちゃんも上品で……とても嬉しがるだろう……で、セイラは……」
「ギャァァ! じ、地獄が待ってるわ!」



 そんなどたばたがあったのだが、不安定な『道』を歩いていった六槻たちの前には、

「お帰りなさいませ。王太子殿下」
「お待ちしておりました。アーサー殿下」
「そして、王女殿下、騎士の一族の姫様。ようこそ、お帰り下さいました」

と言う、超絶美形の青年たちが揃いの正装で待っていた、シェールドに帰ったのだった。
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