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はた迷惑な国王陛下のむかし話
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それからルゥは、本格的にうたた寝を始めたシュティーンを伯父に預け、乗獣たちのブラッシングをし、身綺麗に整え満足する。
特にコーウェルはシュティーンが多忙のため、手が回っていないようである。
普段から父たちの乗獣の面倒を見ているルゥにとっては造作もないことであり、明日からコーウェルのブラッシングも自分の日課に加えようと考える。
「うん、可愛い」
「ルゥ。もうすぐ到着だよ」
エドヴィンの言葉に、ルゥは足元に広がる大森林の向こう……まだ指先にポツンとしか見えない街並みにワクワクとする。
その街は、可愛い弟のフィアが騎士団長として、領主の代理として統治も兼ねている。
王都に比べたら十分の一程度だが、最も古い街並みが残されており、観光客が多い。
そして街の外れの桟橋から船に乗り、二つの上流が結びつく場所には騎士の卵が寮生活をする学校があり、その生徒たちが定期的に必要なものを買いに来たり、家族と会ったりしている。
今、フィアは後輩の指導に忙しく、もう4ヶ月近く会っていない。
顔立ちは瓜二つだが、髪はストレートで白金と瞳は淡いグリーンの父に対し、フィアは天然パーマで濃い蜂蜜色に、キラキラとした大きな瞳は鮮やかなグリーンで、姉バカだが本当に可愛い。
「あぁ……フィアに可愛いお嫁さんを探さないと……」
「お前の嫁の方が先だろ?」
「誰が嫁だ!」
せっかくのメルヘンの世界をぶち壊す声に、咄嗟に言い返す。
フィアは可愛い!
そんなフィアには小さくて可愛い、素直でおっとりとしたお嫁さんがお似合いだ!
「……お前の義妹、絶対苦労する」
「アレクに言われたくない! フン! セイラに逃げられたくせに!」
「お前が逃がしたんだろうが!」
「当たり前だ! お前、アルとセディを別々に預けて、セイラは自分のそばに監禁して、束縛してただろう!」
「悪いか?」
束縛監禁のセリフに、無表情で返した叔父に寒気がする。
「なんで束縛監禁なんだよ……」
「……セイラが怒るから」
「はぁぁ?」
「普段は無視だけど、怒るんだ。その表情が面白くて。かまってくれるし」
「……」
眠るシュティーン以外は顔を背け、聞くんじゃなかったと首を振る。
一応、アレクは先代国王の末っ子で、一人息子。
母親は産後の肥立ちが悪く亡くなり、先代国王も生来身体が弱かったため、一番上の姉夫婦に育てられた。
先代王太女であり、自分にもアレクの2歳上の息子を育てていた彼女は、執務と子育てに手が回らず、夫の実家で生活した。
だが、彼女が悔やむのは、
「……子育てに失敗したわ。教育者としては自信があるけど、もっとしつけをしておけば良かった……なんで、一緒に育ったシュティーンはいい子なのに、一つ下の息子やアレクはこんななの!」
「まぁまぁ……」
「ヴィク! 多忙なあなたにこれ以上重荷は背負わせたくないけど、あの子たち、なんとかしてちょうだい!」
「……無理」
ヴィクも手をあげる悪童コンビである。
幼い頃はかなり周囲を悩ませていたが、成長すると王孫の方はコントロールするようになったが、アレクは城や屋敷を飛び出し、戻ってこなくなった。
シュティーンが顔色を変えて探しにいくが、そのたびに騒動になり、シュティーンが大怪我をするか、騎士に捕まり連行されるかで、まだ若く当時、騎士として働いていたシュティーンにかなり負担になった。
そこで、先代国王……アレクの父は体調を崩していたが、身体を起こし連行された息子に初めてお説教した。
「いい加減にしなさい! お前は次の王だ。嫌でもなんでも、お前以外に継がせる予定はない! 私だって病弱ですぐ死ぬって言われていたのに今のお前と同じ歳で、先代から譲られたんだ! お前は健康で、王太女だったアンが小さい頃から帝王学を叩き込み、ものになってるって聞いてる。腹括って素直に跡を継げ!」
「なりたくない! アンディールがいるじゃないか!」
「顔は似ててもあれは孫! 無理!」
「嫌だ!」
面倒だと言う息子に、先代国王は、
「お前が次の王だ。文句ばかり言ってないでやりなさい。お前の息子がその次の王だ」
「じゃぁ、その息子に継がせればいい!」
「そこまで待てないんだよ。私は孫の顔見られない」
「そんなわけ……」
「あるんだよ。いいね? まぁ、私が死んでも、お前にはおじいさまたちがいるから心配していないよ。あ、可愛い孫を期待してるよ」
疲れたから出て行って……とアレクを追い出した父王はそのあと意識を失い、そのまま目を覚ますこともなく、一月後に息を引き取った。
アレクは自分が父を死なせたと心を痛めたが、側近の一人だったルドルフは、幼い頃から何度も死にかけ生き延びた彼にとって天寿だっただろうと慰めた。
それから嫌々王位に就いたものの、すぐに飽き、次の王である子供というのはどんな人間なのだろうと思った。
自分に似ていたら可愛くないだろうな……だの、でも早く結婚すれば王位を譲れるから……とも考えていたが、
「あ、よく考えたら、俺、婚約者も恋人もいないんだった」
と我に帰る。
それから6年後、セイラに会ったのだった。
特にコーウェルはシュティーンが多忙のため、手が回っていないようである。
普段から父たちの乗獣の面倒を見ているルゥにとっては造作もないことであり、明日からコーウェルのブラッシングも自分の日課に加えようと考える。
「うん、可愛い」
「ルゥ。もうすぐ到着だよ」
エドヴィンの言葉に、ルゥは足元に広がる大森林の向こう……まだ指先にポツンとしか見えない街並みにワクワクとする。
その街は、可愛い弟のフィアが騎士団長として、領主の代理として統治も兼ねている。
王都に比べたら十分の一程度だが、最も古い街並みが残されており、観光客が多い。
そして街の外れの桟橋から船に乗り、二つの上流が結びつく場所には騎士の卵が寮生活をする学校があり、その生徒たちが定期的に必要なものを買いに来たり、家族と会ったりしている。
今、フィアは後輩の指導に忙しく、もう4ヶ月近く会っていない。
顔立ちは瓜二つだが、髪はストレートで白金と瞳は淡いグリーンの父に対し、フィアは天然パーマで濃い蜂蜜色に、キラキラとした大きな瞳は鮮やかなグリーンで、姉バカだが本当に可愛い。
「あぁ……フィアに可愛いお嫁さんを探さないと……」
「お前の嫁の方が先だろ?」
「誰が嫁だ!」
せっかくのメルヘンの世界をぶち壊す声に、咄嗟に言い返す。
フィアは可愛い!
そんなフィアには小さくて可愛い、素直でおっとりとしたお嫁さんがお似合いだ!
「……お前の義妹、絶対苦労する」
「アレクに言われたくない! フン! セイラに逃げられたくせに!」
「お前が逃がしたんだろうが!」
「当たり前だ! お前、アルとセディを別々に預けて、セイラは自分のそばに監禁して、束縛してただろう!」
「悪いか?」
束縛監禁のセリフに、無表情で返した叔父に寒気がする。
「なんで束縛監禁なんだよ……」
「……セイラが怒るから」
「はぁぁ?」
「普段は無視だけど、怒るんだ。その表情が面白くて。かまってくれるし」
「……」
眠るシュティーン以外は顔を背け、聞くんじゃなかったと首を振る。
一応、アレクは先代国王の末っ子で、一人息子。
母親は産後の肥立ちが悪く亡くなり、先代国王も生来身体が弱かったため、一番上の姉夫婦に育てられた。
先代王太女であり、自分にもアレクの2歳上の息子を育てていた彼女は、執務と子育てに手が回らず、夫の実家で生活した。
だが、彼女が悔やむのは、
「……子育てに失敗したわ。教育者としては自信があるけど、もっとしつけをしておけば良かった……なんで、一緒に育ったシュティーンはいい子なのに、一つ下の息子やアレクはこんななの!」
「まぁまぁ……」
「ヴィク! 多忙なあなたにこれ以上重荷は背負わせたくないけど、あの子たち、なんとかしてちょうだい!」
「……無理」
ヴィクも手をあげる悪童コンビである。
幼い頃はかなり周囲を悩ませていたが、成長すると王孫の方はコントロールするようになったが、アレクは城や屋敷を飛び出し、戻ってこなくなった。
シュティーンが顔色を変えて探しにいくが、そのたびに騒動になり、シュティーンが大怪我をするか、騎士に捕まり連行されるかで、まだ若く当時、騎士として働いていたシュティーンにかなり負担になった。
そこで、先代国王……アレクの父は体調を崩していたが、身体を起こし連行された息子に初めてお説教した。
「いい加減にしなさい! お前は次の王だ。嫌でもなんでも、お前以外に継がせる予定はない! 私だって病弱ですぐ死ぬって言われていたのに今のお前と同じ歳で、先代から譲られたんだ! お前は健康で、王太女だったアンが小さい頃から帝王学を叩き込み、ものになってるって聞いてる。腹括って素直に跡を継げ!」
「なりたくない! アンディールがいるじゃないか!」
「顔は似ててもあれは孫! 無理!」
「嫌だ!」
面倒だと言う息子に、先代国王は、
「お前が次の王だ。文句ばかり言ってないでやりなさい。お前の息子がその次の王だ」
「じゃぁ、その息子に継がせればいい!」
「そこまで待てないんだよ。私は孫の顔見られない」
「そんなわけ……」
「あるんだよ。いいね? まぁ、私が死んでも、お前にはおじいさまたちがいるから心配していないよ。あ、可愛い孫を期待してるよ」
疲れたから出て行って……とアレクを追い出した父王はそのあと意識を失い、そのまま目を覚ますこともなく、一月後に息を引き取った。
アレクは自分が父を死なせたと心を痛めたが、側近の一人だったルドルフは、幼い頃から何度も死にかけ生き延びた彼にとって天寿だっただろうと慰めた。
それから嫌々王位に就いたものの、すぐに飽き、次の王である子供というのはどんな人間なのだろうと思った。
自分に似ていたら可愛くないだろうな……だの、でも早く結婚すれば王位を譲れるから……とも考えていたが、
「あ、よく考えたら、俺、婚約者も恋人もいないんだった」
と我に帰る。
それから6年後、セイラに会ったのだった。
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