可愛いいとこがイケメン(?)に成長していました?

刹那玻璃

文字の大きさ
4 / 6

良く効く胃腸薬を用意してください!

しおりを挟む
「うっ……うわぁぁん! おじいさま! アレクがぁぁ!」

 ルゥは祖父に抱きつく。
 しかし、張り飛ばされた当人はバランスを崩し、竜の上から転がり落ちた。
 それも、レディに失礼なことを言ったのだから放置しておけばいいものの、シュティーンが竜に頼み、落ちる先に回り込み、救い上げられた。

「私だって! 胸が気になっているのに! これでも騎士の端くれです! 武器が持てなくなったら困ると思っているのに!」
「分かってるよ。でもね? 悪気はなかったんだと……」
「なかったならなお悪いです! 女の子の私に、太ったって言ったんですよ? 失礼です!」
「そうだね。やっぱりアレクが悪い!」

……エドヴィンは、溺愛する二男夫婦とその子供たちにはとてつもなく甘い。

「父さま……」
「……見なかったことにしなさい。それよりアレク! どうして待ってないんだ! あの後シルゥを迎えにヴィクが王宮に行ったんだぞ? 大人しく待っていれば、水鏡ですぐだったのに」
「うえっ? シュティーン!」

 頬をさすりながら幼なじみを睨む。
 だが今度ばかりは冷たく、

「私は待てって何度も止めただろう! 聞かなかったのはお前だ!」
「水鏡って言ってない!」
「言った! 絶対言った! 場所も覚えてる! お前の私室から出たすぐの廊下! 最初に角を曲がる位置! お前が私の言葉を拾ってないんだ!」
「……そこまで細かく言わなくてもいいんだぞ? シュティーン」

そこまで神経質に……と呟いた父の言葉に必死に訴える。

「アレクは場所まで指摘しないと、絶対聞いてない、お前の幻想だとか言うんだ! ……もう嫌だ! 仕事したくない……」

 嘆く従兄に、ルゥは、

「シュティーン、可哀想……アレクの側近って一番過酷な職場だよね……ヴィーおじいさまって、こんなに苦労してたの?」
「……叔父上は、エリファスおじいさまとリューの二人に苦労させられていたからな……胃潰瘍とかなってたと思う」

ルドルフは遠い目をする。

「結構繊細な人だったんだ。そこら辺はシュティーンも似てるな」
「大変だねぇ……」
「そう思うなら助けてくれ!」
「よしよし」

 必死に訴えるシュティーンの頭を二人で撫でる。

「おぉぉ! もふもふだ!」
「見た目は硬そうだが、まとまりのない髪は俺に似てるんだ」
「そっか……これは、フィア並みに手入れが大変だ」
「……父さま、ルゥ……やめてくれない?」

 毎日夜遅くまで書類整理に執務の采配で、無精髭が少々マイナス点だが、ちゃんと髪だけは結んできている。
 これ以上もふられたら整えられるだろうか?

「いいないいなぁ……この色は珍しいし、綺麗な色じゃないか。服選びは大変かもしれないけど、この毛並みは絶対喜ばれるぞ」
「誰に?」

 ルゥの言葉に突っ込んだシュティーンは、髪の束を取り戻すと、リボンをほどき手で直していくのだが、その動きはぎこちない。

「あ、こっち、落ちてる……こっちも」
「もう、ルゥ、頼む!」

 リボンを渡すと、ルゥは楽しげに整え、思いついたように編み込んでいく。

「わぁぁ、遊ぶな!」
「おさげじゃあるまいし、一つにまとめてるんだよ。両側に落ちるんだから、編み込んだ方がまとまるんだから」
「……じゃぁ、それで頼む」

 少々納得いかないが、器用な従妹に頼んだシュティーンは、早朝からの仕事と疲れでうとうとし始める。

「大丈夫?」
「あー……うん。ここ最近、夜遅くまで残業に、早朝から仕事で……」

 あくびを噛み殺し、目をこすりかけ、目頭を長い指で押さえる。

「あぁ……ヒゲも剃りたいのに、その時間もない……髪も乾かさずに寝てるし……」
「髪痛むよ?」
「枝毛とか白髪あるか?」
「ハゲはない」

 その言葉に慌ててルゥを振り返る。

「やめろ! それは絶対に嫌だ!」
「ないよ」
「絶対だな?」
「ないない」

 リボンを結び、ルゥは手を離した。
 プラチナグリーンの髪に、白いリボンは鮮やかに映える。

「それは良かった……やっぱり仕事の量を減らそう、この年で髪の心配は絶対に嫌だ! でも、フィアに頼んでいい胃薬を教えてもらおう」

 ぞくぞくっとしたのか、髪を確認したシュティーンは首を振り、自分のことを考えるのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。

しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。 友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。 『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。 取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。 彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...