待ち合わせはモリスで

翼 翔太

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プールとガーラントプール2

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 プールで洗濯機を楽しんだ、その週の土曜日。京とほうかちゃんは『モリス』に集まった。今日は京が先に着いた。
 京はビーズが入っているケースと本をテーブルの上に出す。今日はなにをつくろうか。
 三島さんの四つ葉のクローバーを修理して以来、京は再びビーズでなにかつくることを楽しめるようになった。ページをめくりながらつくるものを決める。今は夏だが雪の結晶をつくることにした。夏だけれど。
 京がワイヤーの長さを測ろうとしたとき、ほうかちゃんがやってきた。
「ごめん、お待たせっ」
「ううん、だいじょうぶだよ」
 ほうかちゃんはいすに座ると、テーブルの上に裁ほう箱などを広げた。
「今日はなにつくるの?」
 京はほうかちゃんに尋ねた。ほうかちゃんはにっこり笑って教えてくれた。
「星のマスコット。クラスの子がね、もうすぐ誕生日なんだ。その子、宇宙とか星座とか好きなの。こういうのにするつもり」
 ほうかちゃんは完成図を見せてくれた。大きな星と小さな星がくっついており、その二つの下にも星が一つぶら下がっている。
「かわいいね」
「ありがとう。でもなんだかきらきら具合が足りない気がして……」
 ほうかちゃんは両うでを組んで、考えているようだった。京も知恵をしぼる。
「スパンコールは?」
「それも思ったんだけど、なんかダサくなっちゃう気がするんだ」
 京は頭の中で、スパンコールが星の表面にたくさんついたマスコットを想像する。確かにあまりかわいいとは思えなかった。京は店内を見回した。なにかヒントがあるかもしれない。レジン液、パーツ、レジン液を固めるときに使う型、ボタンなど。
ふと思った。ボタンもキラキラしているものはある。ただボタンは値段が高いのだ。
 テーブルの上を見る。そこには色とりどりのビーズ。京はひらめいた。
「ねえ、ほうかちゃん。これは? ビーズ。これならきらきらしてるし」
 ほうかちゃんの表情が明るくなっていく。
「京ちゃん、ナイスアイディアっ。ここに……」
 ほうかちゃんはその場に置いていたチャコペンで完成図に描き足した。星のあいだに一つずつ、つぶの大きなビーズを使えばかわいくなりそうだ。しかしほうかちゃんはなんとなく不満そうだ。
「でももっと、こう、星のよさが出せる気がするんだよね。でもこれ以上星の数増やすと、マスコットとしては大きくなり過ぎちゃうし……」
 ほうかちゃんはうなりながら考えている。京はふと思った。
「星って一つでもかわいいけど、たくさんあったほうがすてきだと思う。だからキーホルダーみたいにどこかにつけるんじゃなくって、こう……かべにかざったりとか」
 京は部屋にいくつもの星がくっついているのを想像した。かべが濃い青だと本当に夜空のように思える。するとほうかちゃんは「それだっ」と大きな声を出した。
「ガーランドにすればいいんだっ」
「ガーランドってなに?」
 京がほうかちゃんに尋ねると教えてくれた。ひもにかざりがついていて、かべにかざるインテリアだそうだ。
「えっとね一階の入口に、かざりがついたひもがあるのわかる? 逆三角形の布とか、花とかついてて、こう、笑ったときの口みたいにたるませてるやつ」
 たしかにこのお店に入ってすぐのかべにかかっている。パーティーみたいなふんいきで、使われている布が鳥と植物でかわいらしいと、京は思っていた。
「あれってガーランドっていうんだ」
「うん。わたしの部屋にもかざってるんだ。かざりを星にして……。ああ、ちゃんとした描くもの持ってきたらよかった」
「店員さんに借りたら?」
「今日の京ちゃん、すごい。名案続出だよ」
 ほうかちゃんは一階にいる店員さん――今日いたのは洋服づくりが得意な山坂さんだったらしい――にボールペンを借りてもどってきた。マスコットの完成図を裏返し新たなイメージ図を描きはじめる。
「ええっと、まずひもはタコ糸にするでしょ。それで、かざりは星。二つのかざりのあいだにビーズ入れたらきらきらしてきれいだと思うんだ」
「ねえ、その子宇宙が好きなんだよね?」
「うん、宇宙飛行士になりたいんだって」
「じゃあ、かざりの一つはロケットとかどうかな? その子が宇宙飛行士になって、星空を旅してるイメージ。この、一番右端かその次くらいに」
 京のアイディアを聞いたほうかちゃんは、なにか思いついたのか、借りたボールペンを紙の上で走らせる。
「じゃあさっじゃあさ、ガーランドを二つにして、上のほうは星とビーズだけ、下のほうにロケットをつけて、こう、むこうに進んでる感じにするの」
 簡単に完成図が描かれる。下のガーランドの右から二番目にロケットがある。
「うん、すてきだと思う。そうだ」
 京はケースのふたを開け、新品のビーズ一袋を手にとる。それは黄色で一センチくらいの大きさのものだった。
「これ、開けてないの。だからよかったらこのガーランドづくりに使って」
「え、いいの? ほんとうに? ありがとうっ。よーし、がんばるぞーっ」
 ほうかちゃんはそう言うと、ロケットの絵を描きはじめた。どんなパーツがいるか、何色のフェルトを使うかなどを考えるようだ。京も雪の結晶をつくりはじめた。

 木曜日、学校に着き自分の席につくと、ほうかちゃんが「京ちゃん」と京を呼んだ。ろうかに行くと、ほうかちゃんは「じゃーんっ」と言って、背中の後ろからガーランドを二つ出してきた。ならんだ星のあいだにある黄色いビーズがきらきらして、遠くにある星のようにも見える。ロケットの屋根はオレンジ色、どう体は白にしたらしい。きちんと水色の窓もついている。
「すごい。これならきっとよろこんでくれるよ」
「えへへ、だといいな」
 ほうかちゃんはガーランドを、持っていた青色の袋に入れて、ふうをした。
「それで今から渡すんだけど、いっしょにきてくれない? 今回のプレゼントができたのって、京ちゃんのおかげだから」
 京は「もちろん」とうなずいた。ほうかちゃんのクラスである四組にむかう。ほうかちゃんだけ教室に入ると、ポニーテールの女の子を連れてこちらにやってきた。
「みかちゃん、誕生日おめでとうっ」
 ほうかちゃんはみかちゃんと呼んだ女の子に、ガーランドが入った袋をわたした。みかちゃんがうれしそうに受けとったあとに「開けていい?」と尋ねたので、ほうかちゃんはうなずいていた。
「わあ、かわいいっ」
 ガーランドを見たみかちゃんは明るい声を上げた。ほうかちゃんはガーランドのつけ方を説明したあとに、京のことを紹介してくれた。
「この子、三組の京ちゃん。この子のおかげでそのガーランドつくれたんだ」
「転校生の子でしょ。うれしいっ。アタシ、宇宙好きだから、こういうデザインのやつすごく好き。二人ともありがとう」
 そのときチャイムが鳴った。京は教室にもどる。
あんな風によろこんでもらえてよかった。京はうれしくて一日中笑顔だった。
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