メモリーズ・メロディーズ

翼 翔太

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六、お泊り修業開始

お泊り修業4

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 次の日、朝の七時ごろ。早起きのせみが鳴いていた。かなでは六時に起きて通信教育の教材で理科の勉強をしてから庭にむかった。
 庭は広くて花だんにはさまざまな花が咲いている。ちょっとした畑では野菜が生き生きとしている。花だんと野菜畑のあいだにはブルーベリーの木が二本植えられている。さらに野菜畑のとなり、庭の北西にハイビスカスに似た花、ノウゼンカズラが咲いていた。昨日はここまで見ていなかったので知らなかったが、ノウゼンカズラの先にも大きな花だんがあった。
「わあ、すごい」
「カナデ、おはようございます」
 窓から顔を出してかなでにあいさつをしたのはアノーだった。
「おはよう、アノー」
「今日の水やりはあなたが?」
「うん。夏休みのあいだはわたしがすることになったんだ」
「あら、だったらこうやってお話することもふえますわね」
 かなではホースやじょうろを持って水やりをはじめた。花や野菜はご飯がもらえてうれしそうに見えた。葉に乗った水が丸い水滴になった。
「リツはいつもよさそうな野菜とかを収穫していますよ」
「じゃあ、律さんに聞いてくるね」
 かなでは一度律に確認しに行った。そして野菜のしゅうかくをたのまれた。
 かなではかがんで野菜を見る。ナス、きゅうり、ミニトマト。きゅうりのいぼは痛いくらいで、ミニトマトはルビーのようだった。ナスもツヤとハリがある。
「そういえばアノーは修想館を歩き回ったりしないの?」
 かなではふと疑問に思ったことをアノーに尋ねた。
「ワタクシがピアノの魂ということも関係あるのかもしれないけれど、それほど外に出たいっていう気持ちがありませんの。ピアノは持ち運びする楽器ではありませんから。でも動けないわけではありませんのよ」
「へえ、そうなんだ」
 そのとき律が「かなでー、終わったー?」と部屋の中から声をかけてきた。かなではあわてて野菜を収穫して、アノーと別れた。
 水やりを終えて朝ごはんを食べた。パンとスクランブルエッグ、厚切りのハムが同じ皿にのせられていた。ほかにはサラダときのうのおみそしるがあった。
 かなでは午前中二時間ほど夏休みの宿題をして、その後一時間はオカリナをふいた。ぽーうと、はとに似た低くてやわらかい音が心地よい。
 お昼ごはんを食べ終わって、かなでは屋根裏部屋にもどろうとしたそのとき、りりいいんっとけたたましい音がした。おどろいたかなではかたを小さくはね上がらせた。律がリビングからやってきて、電話の受話器をとった。律についてきたイオに手招きされてかなでは彼のとなりに立った。
「はい、修想館です。……はい、ご予約ですね」
 律はそばに置かれている羽ペン風のボールペンを手にとった。そして慣れた様子でメモになにやら書きはじめた。
「……はい、七月二十八日に一名様ですね。かしこまりました。お時間は……午後一時ですね。思い出をこめる品ものはお持ちでしょうか? ……承知いたしました。お待ちしております。失礼します」
 律は電話を切った。その場に立っていたかなでに気がついたイオは笑いかけた。
「よかったね、カナデ。さっそくリツの仕事が見られるよ」
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