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6.新しい宿泊客 その1
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カーテンのすき間から入ってきた太陽の光が、まゆかの顔に当たった。ゆっくり目を開ける。
「まゆかちゃん、おはよう」
「おはよう、ミルク」
まゆかは壁にかかっている時計を見た。七時だ。
「ふわああ……」
大きくあくびをしたまゆかは、服を着替えて食堂にむかうために部屋を出た。
「ねえねえ、まゆかちゃん。今日はどんなことする?」
「そうだね、どうしようか」
これといって思い浮かばないまま、食堂に着き、朝ごはんを食べた。今日はオムレツと食パン、コンソメスープと、見たことがないフルーツだった。とてもあまくて、食感はパイナップルに似ていた。
一度部屋にもどったけれど、すぐに掃除の時間になったので、まゆかはフロントの近くのソファー席に行った。昨日と同じ女の人が座っている。なにをするわけでもなく、ぼうっとしている。
「サナ様」
イタチのぬいぐるみが、女の人のむかいに座った。どうやら、昨日もいたあの女の人は、サナさんというらしい。イタチのぬいぐるみ――ジェックやケリーと同じ服を着ているので、フロントにいるぬいぐるみかもしれない――が話しかけると、女の人は少しほほえんだ。
そのときフロントから「遠藤様」と名前を呼ばれた。ジャックだ。
「おはよう、ジャック」
「おはようございます。遠藤様あてに、お手紙がきています。どうぞ」
「ありがとう。だれだろう?」
まゆかは手紙を裏返した。そこにはお父さんとお母さんの名前が書かれていた。まゆかは昨日行った、二階の窓辺へむかった。
二階の窓辺には、だれもいなかった。まゆかはミルクをテーブルの上にのせると、座って封筒を開けた。四枚の手紙が入っていて、まずはお母さんの手紙を見ることにする。
『まゆかへ
ホテル・コットンフラワーの居心地はどうですか?
お母さんはまゆかがいなくなって、本当を言えばさみしいし、心配です。でもホテルのパンフレットを見て、まゆかの心が傷ついているのを初めて知りました。気づけなくって、ごめんね。
学校には、しばらく行かないと伝えました。だからゆっくりして、だいじょうぶだからね。
お母さんは今、少し変わったぬいぐるみをつくっています。なんと、ペガサスです! ハンドメイドのサイトをとおして、つくってくださいって言われました。なんでも、昔の教科書の表紙だったペガサスが、わすれられないんだって。すてきな教科書だったんだなあって、お母さんちょっとうらやましくなっちゃった。
ペガサスのぬいぐるみは、手足を動かせるようにする予定で、どんな風につくればいいか、いろいろ試してます。
もし、まゆかがよかったらお返事ください。待ってます。
お母さんより
追伸 外に行くときはジートさんといっしょにね』
お母さんのつくったぬいぐるみなら、ペガサスもきっとかわいくなるだろう。
まゆかは次に、お父さんの手紙を読んだ。
『まゆかへ
ホテルはどんな感じですか? ベッドはふかふかですか?
ぬいぐるみがたくさんいるホテルなんて、うらやましいなあ。実はお父さん、ぬいぐるみが好きなんだ。だからお母さんのつくる子たちはみんな好きだし、ミルクのことも大好きだよ。
だから、ミルクのこと、ずっと抱っこしたかったんだ。だから、帰ったら抱っこさせてくれると、うれしいな。
ホテルのぬいぐるみたちは、どんな子たちかな? お父さんからすると、夢みたいなホテルだなあ。よかったら、ホテルの子たちのことも、教えてくれるとうれしいな。
それじゃあ、怪我に気をつけてね。
お父さんより』
まゆかが手紙を折りたたんでいると、ミルクが声をかけた。
「ママさんとパパさん、なんて?」
「ホテルの生活どう? って。あと、お父さんがぬいぐるみが好きなんだって。だからミルクをだっこしたいらしいけど、帰ってからお父さんがぎゅってしてもだいじょうぶ?」
「もちろんだよお。ぼく、パパさんのこと、もっと知りたいな。あんまり会えないんだもん。そうだ、まゆかちゃん、ママさんとパパさんにお返事書くでしょ? ぼくも書いていい?」
「もちろん。どうやって返事書こう? ハガキも、ペンもないや」
「フロントに聞きにいったらどうかな?」
「そうだね、そうしよっか」
まゆかとミルクはフロントに尋ねに行くことにした。
フロントには変わらずジャックがいた。
「遠藤様、どうかされましたか?」
「あのね、さっきの手紙、お母さんとお父さんだったの。それで返事を書きたいから、ハガキとかないかなって思って」
「びんせんがありますよ。……よいしょっと。どうぞ、お使いください。すべて使ってもらって、だいじょうぶです」
ジャックはカウンターにある引き出しから、一束のびんせんと五まいの封筒をくれた。
「ありがとう」
まゆかはびんせんと封筒を受けとる。
「よかったね、まゆかちゃん」
「うん、ミルクのおかげだよ」
「えへへ」
部屋からボールペンを持ってきて、まゆかはミルクといっしょに二階の窓辺にもどった。ミルクが見守るなか、手紙を書く。
『お母さん、お父さんへ
あたしは元気です。突然出ていって、ごめんなさい。でも、泊まっていいって言ってくれて、ありがとう。
昨日はジートさんと、散歩に出かけました。モロンの実っていう、そっちにはない木の実をたくさん拾って、マシュマロをつくってもらいました。こっちのマシュマロは、モロンの実っていうのが材料なんだって。夏の木の実だから、夏といえばマシュマロだって教えてもらいました。あと殻もジュースにできるらしいです。
あと、ミルクといっしょに来たんだけど、こっちの世界ではミルクが動けるの! だから一人じゃないです。ミルクもいっしょにモロンの実を拾いました。歩く姿がかわいいです。
またお手紙書きます。
まゆか』
まゆかが手紙を二つ折りにしたとき、ミルクが言った。
「まゆかちゃん、ぼくもママさんとパパさんにお手紙書きたい」
「いいけど、ミルク、文字書ける?」
「まゆかちゃんの宿題とかも見てたから、だいじょうぶ。それにまゆかちゃん、昔ぼくに字を教えてくれたでしょ?」
「そうだったっけ?」
「そうだよ。だからぼく、なんとなく書けると思う」
「わかった。はい、ペンとびんせん」
「ありがとう」
ミルクはペンを抱えるようにして持ち、全身を使って文字を書きはじめた。ところどころゆがんでいる大きな文字で、『ママさん パパさん ぼくが まゆかちゃんを まもるからね』と書かれている。ペンを置いてまゆかと同じように、びんせんを二つに折った。
「はい、まゆかちゃん」
ミルクから手紙を受けとり、封筒に家の住所を書いてから、二通の手紙を入れた。もう一度フロントに行く。
まゆかはジャックに声をかける。
「ジャック、書いた手紙を出したいんだけど、ポストってこの辺りある?」
「遠藤様のおうちということは、こことはちがう世界ですね。異世界に手紙を出すときは、特別な切手が必要なんです。こちらで手続きを行なっておきますね。こちらのノリで、封筒だけ閉じてください」
「わかった。おねがいします」
まゆかはノリで封筒を閉じ、ジャックに渡した。時計を見ると掃除が終わる時間だった。
「ミルク、部屋にもどろうか」
「うん、そうしよう」
まゆかとミルクは自分たちの部屋に一度帰った。
【コットンフラワー】にやってきて、二週間が経った。今日のお昼ごはんは、オムレツの中にたくさんの野菜とクリームソースが入った、不思議な料理だった。半熟の卵と濃厚なクリームソースがおいしかった。おそらく、こちらの世界だけの料理だろう。
まゆかはふと、フロントのほうを見た。すると一人の女の子がいた。足元には白い犬のぬいぐるみがいて、カウンターではジャックが女の子の対応をしている。
(もしかして、新しいお客さん?)
手続きが終わったのか、白い犬のぬいぐるみが「こちらです」と言いながら、まゆかのほうにやってきた。本の形をしたキャリーケースを引っぱっている女の子と、目が合う。
(ど、どうしたらいいんだろう?)
まゆかが迷っていると、女の子はにっこり笑って、まゆかの前で立ちどまった。
「こんにちは」
「こ、こんにちは……」
「こんにちはっ。ぼくはミルク。こっちはまゆかちゃんだよ」
ミルクが代わりに名乗ってくれたので、まゆかは内心ほっとした。
「こんにちは、ミルクくん、まゆかちゃん。アタシはミカラ。ミルクくんとまゆかちゃんも、このホテルに泊まってるの?」
「う、うん。ちょっと前に」
「わあ、同じくらいの子がいてくれて、うれしいな。荷物置いたら、いろいろ話さない?」
「ぼくはいいよ。でもどこで話そう?」
まゆかではなく、ミルクが返事をした。するとミカラちゃんのそばにいた、白い犬のぬいぐるみが提案してきた。
「それでしたら、食堂はどうでしょうか。ジュースもケーキもありますよ」
「やったあ。じゃあ、食堂で話そう」
「ちなみに食堂はあそこですよ」
白い犬のぬいぐるみが指し示した。
「あそこね、わかった。じゃあ、まゆかちゃん、ミルクくん、あとでね」
「あとでねー」
ミカラちゃんとミルクは手をふり合った。ミカラちゃんの背中が小さくなる。
「ミルクッ。なんで勝手に約束したの?」
「え、でも、まゆかちゃんもお話したかったでしょ?」
「……わかんない。だってミカラちゃんも、きっと助けてくれない。だれも、助けてくれないよ」
まゆかはズボンの太ももあたりを、ぎゅっとにぎりしめた。
「まゆかちゃん……ごめんね。ぼく、まゆかちゃんに新しいお友達ができたらいいなって思ったから。またまゆかちゃんの、楽しいお話が聞きたくて」
「ミルク……」
まゆかはミルクを持ち上げ、そのまま抱きしめた。
「とりあえず、約束はやぶっちゃいけないから、食堂にいよっか」
「うん」
まゆかはミルクを抱き上げたまま、食堂にむかった。
「まゆかちゃん、おはよう」
「おはよう、ミルク」
まゆかは壁にかかっている時計を見た。七時だ。
「ふわああ……」
大きくあくびをしたまゆかは、服を着替えて食堂にむかうために部屋を出た。
「ねえねえ、まゆかちゃん。今日はどんなことする?」
「そうだね、どうしようか」
これといって思い浮かばないまま、食堂に着き、朝ごはんを食べた。今日はオムレツと食パン、コンソメスープと、見たことがないフルーツだった。とてもあまくて、食感はパイナップルに似ていた。
一度部屋にもどったけれど、すぐに掃除の時間になったので、まゆかはフロントの近くのソファー席に行った。昨日と同じ女の人が座っている。なにをするわけでもなく、ぼうっとしている。
「サナ様」
イタチのぬいぐるみが、女の人のむかいに座った。どうやら、昨日もいたあの女の人は、サナさんというらしい。イタチのぬいぐるみ――ジェックやケリーと同じ服を着ているので、フロントにいるぬいぐるみかもしれない――が話しかけると、女の人は少しほほえんだ。
そのときフロントから「遠藤様」と名前を呼ばれた。ジャックだ。
「おはよう、ジャック」
「おはようございます。遠藤様あてに、お手紙がきています。どうぞ」
「ありがとう。だれだろう?」
まゆかは手紙を裏返した。そこにはお父さんとお母さんの名前が書かれていた。まゆかは昨日行った、二階の窓辺へむかった。
二階の窓辺には、だれもいなかった。まゆかはミルクをテーブルの上にのせると、座って封筒を開けた。四枚の手紙が入っていて、まずはお母さんの手紙を見ることにする。
『まゆかへ
ホテル・コットンフラワーの居心地はどうですか?
お母さんはまゆかがいなくなって、本当を言えばさみしいし、心配です。でもホテルのパンフレットを見て、まゆかの心が傷ついているのを初めて知りました。気づけなくって、ごめんね。
学校には、しばらく行かないと伝えました。だからゆっくりして、だいじょうぶだからね。
お母さんは今、少し変わったぬいぐるみをつくっています。なんと、ペガサスです! ハンドメイドのサイトをとおして、つくってくださいって言われました。なんでも、昔の教科書の表紙だったペガサスが、わすれられないんだって。すてきな教科書だったんだなあって、お母さんちょっとうらやましくなっちゃった。
ペガサスのぬいぐるみは、手足を動かせるようにする予定で、どんな風につくればいいか、いろいろ試してます。
もし、まゆかがよかったらお返事ください。待ってます。
お母さんより
追伸 外に行くときはジートさんといっしょにね』
お母さんのつくったぬいぐるみなら、ペガサスもきっとかわいくなるだろう。
まゆかは次に、お父さんの手紙を読んだ。
『まゆかへ
ホテルはどんな感じですか? ベッドはふかふかですか?
ぬいぐるみがたくさんいるホテルなんて、うらやましいなあ。実はお父さん、ぬいぐるみが好きなんだ。だからお母さんのつくる子たちはみんな好きだし、ミルクのことも大好きだよ。
だから、ミルクのこと、ずっと抱っこしたかったんだ。だから、帰ったら抱っこさせてくれると、うれしいな。
ホテルのぬいぐるみたちは、どんな子たちかな? お父さんからすると、夢みたいなホテルだなあ。よかったら、ホテルの子たちのことも、教えてくれるとうれしいな。
それじゃあ、怪我に気をつけてね。
お父さんより』
まゆかが手紙を折りたたんでいると、ミルクが声をかけた。
「ママさんとパパさん、なんて?」
「ホテルの生活どう? って。あと、お父さんがぬいぐるみが好きなんだって。だからミルクをだっこしたいらしいけど、帰ってからお父さんがぎゅってしてもだいじょうぶ?」
「もちろんだよお。ぼく、パパさんのこと、もっと知りたいな。あんまり会えないんだもん。そうだ、まゆかちゃん、ママさんとパパさんにお返事書くでしょ? ぼくも書いていい?」
「もちろん。どうやって返事書こう? ハガキも、ペンもないや」
「フロントに聞きにいったらどうかな?」
「そうだね、そうしよっか」
まゆかとミルクはフロントに尋ねに行くことにした。
フロントには変わらずジャックがいた。
「遠藤様、どうかされましたか?」
「あのね、さっきの手紙、お母さんとお父さんだったの。それで返事を書きたいから、ハガキとかないかなって思って」
「びんせんがありますよ。……よいしょっと。どうぞ、お使いください。すべて使ってもらって、だいじょうぶです」
ジャックはカウンターにある引き出しから、一束のびんせんと五まいの封筒をくれた。
「ありがとう」
まゆかはびんせんと封筒を受けとる。
「よかったね、まゆかちゃん」
「うん、ミルクのおかげだよ」
「えへへ」
部屋からボールペンを持ってきて、まゆかはミルクといっしょに二階の窓辺にもどった。ミルクが見守るなか、手紙を書く。
『お母さん、お父さんへ
あたしは元気です。突然出ていって、ごめんなさい。でも、泊まっていいって言ってくれて、ありがとう。
昨日はジートさんと、散歩に出かけました。モロンの実っていう、そっちにはない木の実をたくさん拾って、マシュマロをつくってもらいました。こっちのマシュマロは、モロンの実っていうのが材料なんだって。夏の木の実だから、夏といえばマシュマロだって教えてもらいました。あと殻もジュースにできるらしいです。
あと、ミルクといっしょに来たんだけど、こっちの世界ではミルクが動けるの! だから一人じゃないです。ミルクもいっしょにモロンの実を拾いました。歩く姿がかわいいです。
またお手紙書きます。
まゆか』
まゆかが手紙を二つ折りにしたとき、ミルクが言った。
「まゆかちゃん、ぼくもママさんとパパさんにお手紙書きたい」
「いいけど、ミルク、文字書ける?」
「まゆかちゃんの宿題とかも見てたから、だいじょうぶ。それにまゆかちゃん、昔ぼくに字を教えてくれたでしょ?」
「そうだったっけ?」
「そうだよ。だからぼく、なんとなく書けると思う」
「わかった。はい、ペンとびんせん」
「ありがとう」
ミルクはペンを抱えるようにして持ち、全身を使って文字を書きはじめた。ところどころゆがんでいる大きな文字で、『ママさん パパさん ぼくが まゆかちゃんを まもるからね』と書かれている。ペンを置いてまゆかと同じように、びんせんを二つに折った。
「はい、まゆかちゃん」
ミルクから手紙を受けとり、封筒に家の住所を書いてから、二通の手紙を入れた。もう一度フロントに行く。
まゆかはジャックに声をかける。
「ジャック、書いた手紙を出したいんだけど、ポストってこの辺りある?」
「遠藤様のおうちということは、こことはちがう世界ですね。異世界に手紙を出すときは、特別な切手が必要なんです。こちらで手続きを行なっておきますね。こちらのノリで、封筒だけ閉じてください」
「わかった。おねがいします」
まゆかはノリで封筒を閉じ、ジャックに渡した。時計を見ると掃除が終わる時間だった。
「ミルク、部屋にもどろうか」
「うん、そうしよう」
まゆかとミルクは自分たちの部屋に一度帰った。
【コットンフラワー】にやってきて、二週間が経った。今日のお昼ごはんは、オムレツの中にたくさんの野菜とクリームソースが入った、不思議な料理だった。半熟の卵と濃厚なクリームソースがおいしかった。おそらく、こちらの世界だけの料理だろう。
まゆかはふと、フロントのほうを見た。すると一人の女の子がいた。足元には白い犬のぬいぐるみがいて、カウンターではジャックが女の子の対応をしている。
(もしかして、新しいお客さん?)
手続きが終わったのか、白い犬のぬいぐるみが「こちらです」と言いながら、まゆかのほうにやってきた。本の形をしたキャリーケースを引っぱっている女の子と、目が合う。
(ど、どうしたらいいんだろう?)
まゆかが迷っていると、女の子はにっこり笑って、まゆかの前で立ちどまった。
「こんにちは」
「こ、こんにちは……」
「こんにちはっ。ぼくはミルク。こっちはまゆかちゃんだよ」
ミルクが代わりに名乗ってくれたので、まゆかは内心ほっとした。
「こんにちは、ミルクくん、まゆかちゃん。アタシはミカラ。ミルクくんとまゆかちゃんも、このホテルに泊まってるの?」
「う、うん。ちょっと前に」
「わあ、同じくらいの子がいてくれて、うれしいな。荷物置いたら、いろいろ話さない?」
「ぼくはいいよ。でもどこで話そう?」
まゆかではなく、ミルクが返事をした。するとミカラちゃんのそばにいた、白い犬のぬいぐるみが提案してきた。
「それでしたら、食堂はどうでしょうか。ジュースもケーキもありますよ」
「やったあ。じゃあ、食堂で話そう」
「ちなみに食堂はあそこですよ」
白い犬のぬいぐるみが指し示した。
「あそこね、わかった。じゃあ、まゆかちゃん、ミルクくん、あとでね」
「あとでねー」
ミカラちゃんとミルクは手をふり合った。ミカラちゃんの背中が小さくなる。
「ミルクッ。なんで勝手に約束したの?」
「え、でも、まゆかちゃんもお話したかったでしょ?」
「……わかんない。だってミカラちゃんも、きっと助けてくれない。だれも、助けてくれないよ」
まゆかはズボンの太ももあたりを、ぎゅっとにぎりしめた。
「まゆかちゃん……ごめんね。ぼく、まゆかちゃんに新しいお友達ができたらいいなって思ったから。またまゆかちゃんの、楽しいお話が聞きたくて」
「ミルク……」
まゆかはミルクを持ち上げ、そのまま抱きしめた。
「とりあえず、約束はやぶっちゃいけないから、食堂にいよっか」
「うん」
まゆかはミルクを抱き上げたまま、食堂にむかった。
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連載時、HOT 1位ありがとうございました!
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