【一旦完結】回想モブ転生~ヒロインの過去回想に登場するモブに転生した~

ファスナー

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過去回想に映りこむモブ編

第33話 第2の分岐点

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side:エドワード

世渡 流のプレイしたゲーム「レインボーワールド」。
そのゲームに出てくるヒロインは様々だが、共通している点がある。
家族や友人、従者や主人など立場や規模の違いはあるが、と言う点だ。

とある雑誌に載っていたレインボーワールド製作サイドのインタビューでもそのことに言及されている。

記者:魅力的なヒロインが多いですが、彼女達って過去に暗い背景を持つ人多いですね。過酷な運命を背負っているというか、過去回想で思わず胸が苦しくなるキャラもいましたよ。

製作:そうなんですよ。ヒロイン達は過酷な運命を背負ってるんです(笑)。ヒロインを魅力的にするには奥行きが必要だって思ったんですよ。

記者:奥行きですか?

製作:はい。どんなに美人なキャラでも普通の人だと物語的には魅力は弱いですよね。それだとただの美人なモブキャラと変わらないんで。
なので個性を与えるわけですけど、ただ取って付けただけだと違和感しかないですよね。
例えばヒロインの一人である先輩キャラのリコリア。彼女は元々ヒロインじゃなかったんです。主人公をフォローするお助けキャラでした。

記者:そうだったんですか。お助けキャラからヒロインて大抜擢じゃないですか。

制作:確かに。実は彼女、システム開発の人気が高くてシナリオ作れーって抗議されまして。
記者:(笑)

制作:ただ、彼女平凡なパラメータなんですよ。そつなくなんでも出来るけど突出してない。平均点なんです。

記者:それはヒロインとして弱いですね。

制作:でしょう。なのでキャラ付けの為に過去設定を新しく付け加えたんですよ。

記者:ああ、なるほど。それが奥行きということなんですね。

制作:その通りです。それで手っ取り早いのがヒロインの近しい人が死ぬ設定だったんです。だから過去回想ではよく人が死にます。ただ、詳細に書いてないです。一応あるんですがそっちがメインじゃないんで省いてるんです。

記者:鬼畜じゃないですか。モブキャラにだって人生があるんですよ。

製作:あはは、すいません。ヒロインの為に犠牲になりました。


僕もその記事を読んで製作サイドは鬼畜だなーなんて思ったものだ。

先輩キャラのリコリアの場合は確か、過去に信頼していたメイドが原因不明の病に倒れてやがて亡くなったという話だった気がする。

昨日、僕はそのリコリア先輩達と出会った。
そして今、その彼女が目の前にいる。レインが明日確認したいと言ったからだ。
あ、ちなみに給仕業務バイトは今日休みだ。
なんでも昨日業務に就いた人は一部の人を除き翌日休みになるようシフト調整してくれたらしい。

「どうですか?」
リコリアさんが聞いてくる。
レイン以外のヒロインと交流出来るのは感慨深いなぁ。なんて思いながらも真顔で接する。僕は紳士だからねって痛い痛い。
なんで無言でつねってくるんですかね、レインさん。

「なんか邪な感情が出てた。」
レインは僕の心を読んだかのような返答をしてきた。エスパーかな。

「で、どうだったの?」
レインに促されて僕はリコリアさんに向かって話す。

「〈鑑定〉の結果、セルビーさんはいたって健康です。ただ、昨日〈鑑定〉した時と違う点がありました。
 それは魔力総量です。昨日<鑑定>で確認した時は410あったものが今は370に減っています。」

僕の言葉にレインとヘカテがやっぱりというような顔をした。
一方で、リコリアさんとセルビーさんはよく分からないのか首を傾げている。

「この魔力総量というのはその人が体内に持てる魔力の値です。普通に魔力量と呼ぶものはこれを指します。
貴族の方ならご存じだと思いますが、基本的に増えることはあっても減ることはありません。」

「減らないはずの魔力量が減った。鑑定の儀で計測した時には500を超えていたはずなのに、それが今は370しかない。ひょっとして私の魔力はこのまま減っていくのか?」
セルビーさんもリコリアさんも不安そうな顔をしている。
だが、僕は何も言えないでいた。

「そういえば昨日、似た症例があると言ってましたがその人は?」
リコリアは昨日の言葉を思い出し、縋るようにレインの方に向いた。

「ああ、彼は生きてますよ。死にかけましたけどね。
 ただ、魔力使えなくなりました。」
ホッとしたのも束の間、リコリア達はレインの後半の言葉に固まった。

貴族と一般人の違いは魔力量だと言われている。それは彼らのアイデンティティなのだから。

魔力が無くなるということは貴族である証のひとつを失うということ。
爵位によっては家から籍を抜くことになる。

「わ、私はどうなるのでしょう?」
セルビーは震える声でお嬢様に尋ねるが答えは返ってこない。

「ちゃんとした方に診てもらったほうが良いですよ。僕はあくまで〈鑑定〉でセルビーさんを診ただけですから。」

「ええ、セルビーのことは教会にも診てもらうつもりです。」
そう言い残して、リコリアさんとセルビーさんは帰っていった。

この世界では回復や治療に関することは教会が管轄している。
だが、僕が<鑑定>でセルビーさんを診ている以上、普通の検査ではこれ以上の情報は掴めないだろう。
教会の方で、今回のような症例が過去にあれば参考になるかもしれないが、イーレ村の書庫にはそう言った情報は無かった。
まぁ都会であればイーレ村よりも情報があるかもしれないが。

ただ、ニジゲンのシナリオ通りであればおそらくセルビーさんは
ゲーム中では病死と書かれていたが、貴族の家系なら表向きの発表と真実が異なる事は往々にしてある。それが本当とは限らない。

イーレ村の襲撃事件の時もそうだったけど、ゲームの情報は概要レベルしか書かれていない。蓋を開けてみれば違うなんてことはあり得そうだ。

さて、ここで僕はどうするべきだろうか?
セルビーさんは今、死亡フラグが立っている。そのことが分かるのはニジゲンの知識を持つ僕だけだ。

僕たちイーレ村の人間はシナリオから逸脱している。下手に関わらずにいれば死亡フラグが立つ可能性は低い。心情的に罪悪感は残るけど。

一方で関わった場合、僕達に死亡フラグが立つ可能性が上がる。それにセルビーさんの死亡フラグを回避できるかは分からない。メリットがあるとすれば、貴族との縁ができるくらいのリスクだらけの選択肢。

「何を迷ってる?どうせ答えは決まってるんだろ?」
その言葉に僕はドキッとした。
ダリウスはたまに核心を突く発言をする。それが僕の決断を後押ししてくれる。

だから、僕はヒロイン達に関わることを決断した。

 ***

とある教会の懺悔室。そこに一人の男が座っていた。
そこに新たな男が入って隣に座る。

「報告します。研究していた毒の件ですが、治験は無事開始できました。
 被験者には息のかかった者を派遣して経過観察を行います。」

「そうか。実行者は?」

「は、闇ギルドを通じて雇い入れた5名の内、4名は既に対処済みです。
 残り1名については現在音信不通になっています。引き続き捜索を続けます。」

「頼んだぞ。私はこのことを主人あるじ様に報告しておく。」
「はっ」
「「すべては天たる神の御心のままに」」

彼らはそう言うと懺悔室を出て行った。
懺悔室を照らす蝋燭の火が怪しく揺れていた。



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