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第三部「凛廻」(連載中)
11 邪をもって悪を退く
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それは突然訪れた間隙だった。
慈圓と東雨が右衛房へ向かい、緑権が足りなくなった食材を仕入れに、朱市へ出かけていった。
偶然、五亨庵には、犀星と玲陽の二人が残された。
しんとした中を、わずかに心地よい風が吹き抜けてゆく。風の道筋を追って、玲陽は顔を上げた。天井の近くをぐるりと囲む明かり取りの欄間から、春空が覗く。風は静かにそこから吹き込み、広間の中を回遊して、床と壁の隙間に作られた通風口から放たれて行く。風の流れが見えるようだと、玲陽は思った。
特に、料理の匂いが染み付いた今は、それが唯一呼吸のできる空気のようにも思われた。
朝から色々と食べさせられ、玲陽は満腹でぼんやりと時を数えていた。もう、一口も飲み込めそうにない。頬杖をつき、うつろな目を正面に向けた。相変わらず緑権の机の周りは騒がしい。何故か五段梯子が立て掛けられていた。
何に使うつもりだったんだろう。
玲陽は好奇心が湧いたが、緑権のする事は考えてもわからなかった。そっと横を見ると、そこは慈圓の席である。彼はよく、多くの竹簡を抱え、予算の捻出のために人々を脅しに行く。慈圓の幅広い人脈は、あらゆる場面で五亨庵の政治的な助けとなる。ときには、政治だけではなく、貰い物の米や野菜、豆類が手に入ったりもする。どことなく犀遠に雰囲気も似ている。慈圓は玲陽にとって良き師である。
さらに視線を動かすと、中庭の扉がわずかに空いているのが見えた。少しでも空気を入れ替えるため、最近は開け放したままだ。
中庭から、東雨の短い掛け声が聞こえてくる気がした。一生懸命稽古はするのだが、どういうわけか彼の剣術の腕はさっぱり上がらない。物覚えが良く機転もきき、発想も豊かで感受性が強く、誰にも優しい。一見、完璧に見える東雨だが、人は何かしら苦手なものがある。東雨にとって、それは剣術だった。
近侍という立場から考えると致命的である。犀星は気にしていないが、東雨自身は、どうにかしようと必死だった。
私も少し剣を振らなければ。
玲陽は、最近すっかり文官が板についてしまった自分を嘆いた。
犀遠は玲陽に、文武両道であることを求めていた。それは二兎を追えということではなく、幅広く学べという意図だ。砦での劣悪な生活の中ですっかり体を痛めてしまったが、玲陽はもともと動き回ることが好きだった。
視界の中に、自然と犀星の姿が入った。周りの景色に溶け込むように、じっと動かず、少しうつむいたままである。てっきり何かに集中しているものと思っていたが、その目は焦点を失っている。玲陽と同じように肘をつき、向けるとはなしに几案の上に注がれていた。
玲陽は息をつめ、犀星を見つめた。
きれい。
全身でそう思った。柔らかい光の中で、犀星の整った面立ちに、より一層の儚さが宿る。儚いばかりか、芯の強い美しさまでが共存する。
こんな人は他にいない。
玲陽は惚けた。顔形を褒めても、犀星は喜ばない。それどころか、逆に疎む素振りまである。それを知っていて、玲陽は決してあれこれ言うことはない。それでもやはり、本心では美しいと思う。それは玲陽の贔屓目だけではないはずだ。前に東雨が言っていたように、誰が見ても犀星はやはり美しいのだ。
何よりも、犀星の心が尊いのだと玲陽は思っている。自分たちが絶望の淵に立たされ、途方にくれた時も、犀星はただ一人、希望を見出していた。声を荒げるでもなく、ただ静かに自分たちを促し、導いてくれた。その心の全てを知ることはできず、寡黙の中に、繊細な知恵と、限りない可能性を秘めている。
時折見せる感情的な一面が、自分にだけ許した甘えなのだと思うだけで、玲陽は幸福感に満たされる。
二人きりの時、自分にだけ見せる素顔。
それがたまらなく嬉しい。
思わず口元が緩み、にやにやとしてしまう。玲陽は、そっと袖で顔を覆った。隠れて、思いきり笑顔になる、そうして気持ちを整えてから、改めて澄まし顔を作ると、首をかしげて犀星を見た。やはり表情が動いていない。視点が定まらぬまま、微かに眉間に皺が寄っている。
「星……」
そっと声をかける。珍しく、犀星は気がつかない。玲陽はそっと席を立ち、そばに寄った。
「大丈夫ですか?」
その声にようやく犀星は顔を上げた。何を言われたかわからないという表情だ。
「どうしたんです。さっきから、ずいぶんぼんやりして」
犀星の目がふらりと揺れた。こういう時、彼の心は何か一つのことにとらわれているのだ。玲陽は、犀星の横にかがむと、その膝に腕を乗せて、顔を見上げた。ぴたりと寄り添って甘えるようでもある。
犀星は、かすかに震えていた。
「どうしたんです……?」
犀星のまぶたがピクリと動く。玲陽の顔が歪む。心細そうな金の目を見て、犀星は苦しそうに笑った。
「心配ない。少し……」
「少し、なんです?」
「少し、頭が痛い」
犀星の顔がふっと曇る。右の側頭部に激しい痛みが巣食っていた。波打つように、頭を締め付けてくる。
「もしかして、頭痛だけじゃなくて、声も、ですか?」
玲陽の問いかけに、犀星は目元を一層、歪めた。
「聞こえるんですね?」
膝にあった玲陽に腕を、犀星は撫でるように両手で包んだ。小さく、頷く。
「教えてください。その声は、なんと言っているんです?」
「…………」
黙って、犀星は玲陽を悲しげに見つめた。玲陽はそれ以上、聞けなかった。
互いに顔を寄せ、自然と頬が近づく。目を閉じると、こつりと額が当たった。優しさが染みてくる。玲陽は思わず鼻をすり寄せた。普段ならこのような場所では決してしないことだ。二人きりだという心の油断が玲陽を大胆にさせた。
その瞬間、犀星の体が大きく震えた。それは何か鋭い痛みのような衝撃だった。じっと何かをこらえている。明らかな動揺が顔に走った。
玲陽の胸がぎゅっと締まった。辛そうな姿を見ると、自分が体を裂かれるよりも苦しい。巨大な不安感が玲陽の中に弾けた。
飲み込まれてはならない。
そう思いながら、犀星の手を強く握る。
犀星は迷った表情で玲陽を伺った。唇が動いて何かを言おうとしたが、そのたびにぐっとこらえてしまう。
玲陽は、蒼い瞳を覗き込んだ。
「言ってください。私に隠す必要はない。どんなことでも、あなたと共に……」
犀星の指に力が入る。
「怖いこと、聞こえてくるんですね?」
玲陽は、わずかな変化から犀星の心を掴む。犀星は素直に頷いた。
「…………」
吐息だけで囁くように、犀星は言葉を伝えた。
一語一語が鋭く、短く、抉るように耳の奥に刺さる。
玲陽は逃げずに受け止めた。犀星の声のほかは、自分には何も聞こえない。
「ここには誰もいない。俺たちだけだ。なのに……」
一瞬戸惑い、それから少し呆れたように犀星は笑った。
「俺はやっぱり、どうにかなったんだ……」
「待って」
玲陽は、じっと犀星を見つめた。
蒼い瞳があまりに透きとおり、心の底まで覗けそうなほどまっすぐに、見つめ返してくる。
玲陽は手を重ねたまま、耳を澄ませた。ゆっくりと、五亨庵の中を見回す。その行方を追って、犀星もまた、視線を巡らせた。柔らかな春の光が、うっすらと銀粉のように差し込み、揺れている。
その中に、わずかに黒く細いものが漂った気がして、玲陽は目を凝らした。
空中の一点。
中に舞う黒髪のごとき何かは、人の情念の結晶の前触れだ。
「まさか、傀儡……傀儡の声……?」
玲陽の呟きに、犀星は身震いした。
「……陽、今……!」
「なに?」
犀星の目が、玲陽を捉え、さらにその後ろへ向く。
玲陽が振り返ったとき、視界を覆う黒い霧が一瞬、見えた。
犀星は素早く玲陽を抱き寄せた。背中のやけどに腕が触れ、ぎしりと痛む。
「星……!」
震える玲陽の声と重なるように、内扉を叩く音がした。続いて、詰所にいた近衛の声がこちらを呼ぶ。
「歌仙様。紀宗陰陽官がお見えです」
顔を上げたとき、犀星の視界に曇りはなく、傀儡の気配は消え失せていた。
代わりに、内扉の前に立つ、陰陽官の姿がぽつん、とあった。
独特の、紫色の法衣を長めに垂らし、帯の結び目には魔除けの白い石の玉を下げている。目深にかぶった巾が、その小さな顔を余計にこじんまりと見せていた。巾の後ろには細い銀の飾り紐が垂れ、紐の先に黒曜石の小珠が結ばれている。
手は常に袖の中に隠れていることが多いが、出したときには指に銀と骨を組み合わせた細い指輪がいくつか見える。
「かようになっておったとは……」
何を見て何を言ったのか判然としない口調で、紀宗は口の中で呟いた。クンクンと鼻を利かせる。
「悪気の焼ける匂いがしおる」
いや、それは緑権の魚なのだが……
犀星は腕の中の玲陽を、しっかりと抱いたまま、その肩越しに紀宗の細い目を見つめた。
「失礼いたしまする」
紀宗は形ばかりの礼をして、いつもの通り、五亨庵の中をうろつき始めた。薄革の草履は、ほとんど足音を立てない。動くたびに法衣の裾や袖がわずかに揺れ、その影が奇妙に長く伸びる。
この風変わりな陰陽官は、五亨庵建設当時から、月に一度程度、こうして唐突に訪れては、中を見て回るのが習慣だった。
時折小さな声でぶつぶつと何かを呟くだけで、邪魔にもならない。犀星も何も言わずに好きにさせていた。
だが、今回は少々、事情が違いそうだった。
紀宗は床から突き出している石を順に回り、そしてそのたびに、玲陽を振り返った。犀星はその視線から守るように、玲陽の頭を自分の肩に引き寄せ、振り向かせまいと抱え込んでいた。玲陽も、その気配を感じ、犀星の意図も察して、おとなしく目を閉じ、身を預けている。
足音を立てず、紀宗は順に石をたどり、最後に、最初の位置に戻ってきた。金色の筋の走った白い巨石の前で、手を揃えてこちらに向いて立つ。わずかに顎を引いて、上目遣いの様子である。細い目の中に、きらりと光る何かがあった。
「歌仙様」
紀宗はじっと犀星に目を向けたまま、聞き取れるか否かの声で言った。
「最近、お体のご様子におかわりはありませんか?」
犀星は眉を寄せた。紀宗がこのようなことを伺うのは初めてだった。そして、よりによって今、犀星の身には明らかな変調の兆しがある。
犀星は黙って、紀宗を見下ろすだけである。何を言っても、真実を見透かされてしまいそうな鋭さが、この偏屈な陰陽官にはある。
「よからぬものの、障りがございましょう」
その声も、視線も、まっすぐに玲陽を示している。
紀宗の声は、犀星の神経を露骨に逆撫でした。
犀星は他者に干渉する性格ではない。大切なものを傷つられない限りは。
紀宗の声はその、最も踏み込んではならない線を越えてきた。
珍しく、犀星は露骨に顔を歪めた。
腕の中で震えるただ一人の愛しい人のために、犀星の苛立ちと怒りはまっすぐに紀宗に向いた。
言うべきことは言う。それが自分にできる守り方だ。
犀星は玲陽の頭を自分に押し付けたまま、決して振り向かせようとはしなかった。
「何も聞くな。何も考えるな。俺だけを感じていろ」
小さな囁きで、玲陽を励まし、腕に力を込める。玲陽の体がわずかに軋んだ。玲陽にもまた、犀星の気持ちがよくわかっていた。
自分を守るために、今、全てを賭けてくれている。だからこそ、自分はただ黙って素直に委ねる。
だが、玲陽はただ守られるだけの存在ではない。もし、少しでも、自分を抱く腕が震えたならば、その時は自らが盾とも矛ともなって、ともに戦うつもりだ。
玲陽の覚悟も、犀星の覚悟も、お互いに知り尽くした上での時が流れた。
ただ一人、紀宗だけはじっと動かず、五亨庵を眺め、石を眺め、二人を見比べた。
「歌仙様におかれましては、見えざる力と見えざる声と、その全てが、今まさにその御前に現れておいでかと存じます」
紀宗は珍しく長く話した。それは陰陽官としての矜持であるか、それとも人としての忠言であるか、定かではない。
「その御身の身辺に悪しきものある限り、お心の優れること叶わぬかと」
「…………」
「取り除かぬ限り、五亨庵の力は食いつくされ、負に転じ、宮中も都も、ひいては国をも脅かす存在となり果てましょう」
犀星は静かに、しかし揺るぎなく、目を据えて紀宗に相対した。
「紀宗、おまえが言う『悪しきもの』とは何のことだ」
それは核心だった。避けて通ることはできぬ。
紀宗の目が、犀星の肩のあたりを撫でた。突き刺すのではなく、まさに撫で回す目線で玲陽を見ている。
それは犀星にもはっきりとわかった。自分が最も手放すことのできない相手を、手放せというのだ。
わずかな時間に、犀星の思考がめまぐるしく展開し、飛び交う。どの言葉を用いれば望む答えが引き出せるのか。
ただ玲陽を守ることだけが全てだ。
だが、その答えへの道のりは見えない。どの道を行っても、紀宗の言葉に絡めとられてしまいそうで、犀星は道を選ぶことをやめた。
代わりに、猛禽が狙いを定めた鼠を狩るごとく、天空から一直線に獲物に向かう。
「紀宗。私の心はただ一つ。たとえ国を滅ぼそうとも、決して手放しはせぬ」
犀星の腕が、強く玲陽を抱き、呼吸が長く漏れた。それは玲陽の不安を解くよりも、自らを勇気づける力だった。
紀宗は予見していたと見えて、眉ひとつ動かさず、小さな口を細かく震わせた。
「たとえ歌仙様が、いかにお考えであろうと、わたくしは役目を負うまでのこと」
紀宗の声はぼそぼそと途切れ、しかし、不気味なほどに聞き取れるのだ。それはまるで、心のわずかなひび割れに染み込んでくる湿気のようでもある。
「陰陽をつかさどる身として、見過ごすわけには参りません」
紀宗はいつになく強気だった。
怒りを表す事は、冷静さを欠く第一歩である。犀星は、ただ玲陽を抱きしめることによって、心を抑えていた。玲陽もまた、抱き返すことによって犀星の怒りを飲み込んでいた。
かつて玲陽は一度、紀宗と会ったことがある。その時、彼が言った言葉が蘇る。
『面白いものをお持ちだ』
紀宗が言ったのは、何のことであったのだろうか。傀儡を喰らう力なのか、それとも玲家の血そのものか。
または、自分も知らぬ何か別のものなのか。
何にせよ、紀宗は今、玲陽を追放せよと言うのである。
そしてそれは犀星にとって、決して受け入れることのできない条件である。
「手放す気はない」
犀星は低く繰り返した。
紀宗は動じない。いかに親王と言えど、国の吉兆を司り、その特殊性を持って皆に恐れられる陰陽官を服従させることは難しかった。
国において、皇帝が表を牛耳るならば、裏を支配するのが陰陽の者たちだ。紀宗は次席ながら、その影響力は大きかった。
自信の表れか、または彼の生来の性格か、紀宗はまったく動揺することなく、小さな体をそのままに、背を少し丸めて立っていた。
「なれど……」
唸るように、しわがれた声が言った。
「……わたくしといたしましては、陰陽官として、それをこのまま放置するわけには参りませぬ」
紀宗の言葉は宣戦布告だった。
「……親王殿下には……いずれ、諦めていただかねばなりますまい。平穏を得るには、命を絶つ以外に、手立てはございませぬ」
玲陽はぞっと背中が冷えた。本人を前にして、紀宗の言葉には容赦がない。
「……この国において、わたくしより術に通じた者は、まずおりますまい。しかし……そのわたくしをもってしても、生かしたまま浄化することは……不可能にございます」
犀星の腕が玲陽の腰を周り、自らの刀の柄に伸びる。それを感じて、玲陽は犀星の肩に埋めた首を小さく振った。
追い打ちをかけるように、紀宗は言い放った。
「殺すしか、ございません」
破裂するような犀星の躍動を、玲陽は咄嗟に押し戻した。壁に押し付け、体重をかけて動きを止める。触れ合う体が震え、冷静さを欠いた蒼の瞳が焦点を失って闇雲にあたりを睨んだ。
「星!」
非礼を承知で、玲陽は名を呼んだ。全身で抱きしめ、痺れるほどに腕に力を込める。
「駄目です! どうか!」
犀星の激しい衝動は、怒りか、恐怖か、判断がつかない。
明らかに紀宗は、犀星の逆鱗に触れた。玲陽のこととなると、冷静さを失う犀星の気質は、己にも止めようがない。
紀宗はそれすら想定していた、というふうに、静かに見守っている。紀宗の静けさと相反し、犀星の呼吸は荒く、玲陽を掴む指が深く食い込む。
どうしたら……
刻一刻と熱を帯びる犀星の身体に戸惑いながら、玲陽は必死に考えた。自分が何か言えば、余計に犀星を煽るだけだとわかっていたが、助けを求められる相手もいない。
玲陽の緊張が頂点に達したとき、
「ただいま戻りましたぁ」
場違いに明るく能天気な声が、緊迫した糸を断ち切った。
「あれ、紀宗様、いらっしゃってたんですか?」
内扉が突然に開き、両腕に食材の籠を抱えた緑権が入ってきた。
犀星の体がピクっと動く。目の奥で何かが瞬時に瞬き、ぴたり、と未来を見定める。玲陽は恐る恐る、紅潮した犀星の頬を見た。
何か、企んだ顔だ。
こうなれば、流されてみるのが一番良い。
玲陽は覚悟した。
事情を知らない緑権は、さっさと荷物を厨房へ運び入れると、ひと息をついた。
ふと見ると、犀星の様子がいつになく険しい。しかも、人前にも関わらず、しっかりと玲陽を抱きしめている。
緑権の穏やかな真顔に、ふんわりと疑問が浮かんだ。
「謀児」
突然、犀星が口を開いた。その声は凪のようだ。
玲陽は息ひそめ、緑権は首を傾げ、紀宗は黙って立っていた。
「おまえの実力は、五亨庵の者ならばすべて知るところ。紀宗どのにも、陽を癒やすおまえの腕前、お見せしろ」
玲陽は目を閉じ、緑権は笑顔を浮かべ、紀宗はいぶかしんだ。
「もちろんです! ちょうど、材料を仕入れてきたんですよ」
緑権は意気揚々と、荷物を解きにかかる。
わずかに緩んだ犀星の腕の中で、玲陽は息をした。
犀星の肌は汗ばみ、いまだ緊張にさらされているが、それでも、その目には明らかな意志がある。
「謀児、陽に巣食う悪い気を、確かに払えるのだろうな?」
犀星は、静かに緑権に話しかけた。
「お任せください! その辺の連中より、よほど結果を出して見せますとも!」
自信満々で、緑権は袖をまくった。紀宗がゆっくりと緑権を振り返る。いつもはぼんやりと無為無策に過ごしているこの文官が、今日はやけに生き生きとし、別人のようである。
「悪気を祓う、とな?」
紀宗は緑権を見つめた。
「容易いことではない。これほどに執拗なもの、命を絶つ以外に方法はない」
「ハァ?」
素っ頓狂な声を発し、緑権は首を傾げた。
「何、馬鹿なことをおっしゃってるんですか? これくらい何でもありません。私なら、ちゃんと光理どのをお助けできます」
「まさか、わたくしにも出来ぬことを……」
「そりゃそうです。陰陽官じゃ無理です。せっかくですから、紀宗様も、しっかりとご覧ください」
にやりと笑い、緑権はずしりと重い木桶を厨房から抱えてきた。中には見事な赤黒い錦鯉が一尾。目はぎょろりと生きており、桶の中でぐるりと渦を描いて泳いでいる。
犀星はわずかに眉をひそめた。
どうせまた、八穣園の池からとってきたに違いない。
「この色、どうですか? いかにも効きそうでしょう?」
緑権は交椅の間に五段梯子を渡した。
玲陽は、梯子の使い道が知れて少しホッとした。
梯子はそのまま、即席の広い調理台になった。緑権はそこに砧を置き、やたらと光沢のある包を三本、柄から布でぬぐって並べた。形から入る緑権が揃えた自慢の包である。横目に見ていた紀宗の肩が、かすかに震える。
これは、何かの呪術刀か?
無意味な考察に、紀宗は翻弄され始めた。
黒い鯉は精力が強く、霊的にも高貴とされる。それゆえに扱いも難しい。しかし緑権は難なく黒鯉を取り出し、ぐっと押さえ込むと、干した蓬をつかんで鰓の中へと押し込んだ。手際が良い。鯉は暴れ、水が散った。
「こうすることで、蓬の効能が鯉の肉に染み渡るんです」
「……!」
紀宗は小さく、ごくりと喉を鳴らした。
蓬は邪を取り払うにはよく用いられる素材である。大抵は乾燥させて焚き上げたり、周囲に撒いて利用するが、まさか、このような使い方があったとは、紀宗も知らぬことであった。
緑権は、何十にも布で包んでいた樽を開いた。中には、宮中のどこかで溶け残っていた雪が入っている。
「こうして、雪を使って水を冷やし、そこに鯉を入れて、失神させます」
鯉は時折、ひれを震わせたが、それ以上暴れることはない。
「鯉の魂を体に繋ぎ止める秘術か……」
紀宗のつぶやきは、鼻歌まじりの緑権には聞こえていない。
持ち出した炉の上に鍋を載せると、紀宗の目の前に何やら黒いものを差し出した。
「紀宗様、これ、何かわかりますか?」
紀宗は、緑権の手のひらに乗る、丸いものに心当たりがなかった。
「こいつは、炭焼きにした梅の実です」
緑権は、にやりとした。
「梅には、腐敗を防ぐ力が込められています。こいつを一緒に炭にくべて、ゆっくりと燻すんです。そうすると、鯉だけじゃなく、この空間にも効果が満ちて、より効き目が高まります」
さすがこだわって調べただけのことはあって、緑権の説明は立板に水だ。
緑権は鍋の中に、蓬、紫蘇、陳皮をもみほぐしながら、少しずつ加えていく。
紀宗はただ、奇妙な匂いを発しながらぐつぐつと沸き立ち始めた鍋を覗いた。ただの鍋料理が、紀宗には別の意味に思われる。まるで、呪符や呪具に力を施すような厳粛さと気迫が立ち込めている。
緑権は仰々しく、二度手を打ち合わせて手のひらを擦り合わせた。満を持して、一本の包を手に取った。
もったいぶって何度か空を切り、それから、鍋の中の煮汁に浸す。温まった刃で、氷水の中の鯉を、ぶすりと突き刺した。血は、ほとんど出なかった。冷水で身がしまっている上、下ごしらえのために桶にはあらかじめ塩が入れられている。
紀宗にはそれが、妖しい術と見えた。
犀星が、優しく、玲陽の背に手を置いた。ふたりの目が合う。
陽、出番だ。
玲陽は意図を察し、唇を引き結んで、小さく頷いた。恐る恐る振り返ると、鍋に近づいていく。その歩みは、救いを求める弱者のように弱々しかった。
「謀児様」
震える声で、呼びかける。
「どうぞ、私をお救いください」
「もちろんです!」
力強く、緑権は受けあった。
玲陽は一瞬、言い淀んでから、意を決して、
「私は……死にたくありません」
「当然です! 私の腕をお信じください!」
「おぬし……いつの間に」
ついに、紀宗は一歩後退った。その乾いた顔は、呆然と緑権に向けられている。
犀星がそっと歩み寄り、玲陽の肩を抱き寄せた。そうしながら、目線は紀宗に向ける。
「紀宗。そなたは優秀な陰陽官だ。だが、上には上がいるもの。謀児は、そなたより先に異変に気付き、こうして陽を生かしたまま救う道を見つけ、習得した。これも、五亨庵の意思。此度は、そなたの出る幕はない」
玲陽は思わず、体が震えた。
犀星の語り口調は冷静で、恐ろしいほどに堂々としていた。見方によってはあながち嘘とも言えないところがまた、奇妙だった。
紀宗の目には、目の前の光景が呪術の一端に見えている。
緑権はひたすら、料理に耽っている。
「それでもって、鯰の心臓と肝臓も使います。こいつらを練り合わせて、そこに麹を加える。そして軽く炙って、ある呪文を伝えます」
「呪文だと……?」
「やはり、最後の仕上げは、心の有り様、ですから」
「そなた……かような術を……?」
ここにきて初めて、紀宗の声に感情が見えた。緑権が余裕の笑みを浮かべ、
「光理どのは、国家の要。私が国を救って見せます」
紀宗が細い目を精一杯に開いて緑権を見ている。満足そうに、緑権は玲陽に向かって料理を盛りつけながら、
「天陽を一匙に封じ、地陰を一椀に鎮め、これを受くる者の身魂と化しますよう。五気と五行を廻らせ、脈に満ち、骨に染み、香気を以て門を開き、滋味を以て魂を結び、邪を千里の外へ逐え」
明らかに異様な匂いのする料理を器によそい、緑権は笑顔で玲陽に差し出した。
「さぁ、できた! これを一口食べればスッキリ、悪い気なんか全部流れる!」
玲陽は震える手で椀を受け取った。湯気とともに立ち上る醜悪な匂いに胸がむかつき、嘔吐感が沸き起こる。犀星は、玲陽の震えを敏感に察知した。素早く、傍にあった空の桶を玲陽の口元に寄せる。
朝から食べ過ぎて苦しかったところに、さらなる怪料理の臭気を受けて、玲陽はたまらず吐き戻した。犀星はそっと背中をさすり、紀宗に視線を向けた。
「見ての通り、悪気は流れた」
目に涙を浮かべながら、断続的に嘔吐する玲陽を、紀宗は怯えた様子で見つめ、首を振った。
「どうやら、歌仙様のおっしゃる通りの様子」
紀宗は後ろ向きに下がりつつ、犀星を見た。
「されど、御油断なさらぬよう。悪しきものはいつなんとき、力を増すやもしれませぬゆえ」
「いかなることがあろうとも、我が意志は変わらぬ」
ひたすら吐く玲陽、困った顔で固まる緑権、理解の及ばぬ現実から目を背けたい紀宗。
そして、悠然と場を制する犀星の沈黙。
紀宗は唸り、それ以上の追及を避けて、五亨庵を足早に出て行った。
扉が閉まるのを見届けて、犀星はフッと緊張を解いた。
「謀児」
「え? あ、はい」
苦しむ玲陽を見ていた緑権は、不安そうに犀星を振り返った。
叱られる、と目を歪ませる。だが、犀星は静かだった。
「よくやってくれた。さすがは五亨庵一の……食わせ者だ」
とくん、と玲陽の心臓が鳴る。
それは、あなたでしょう!
最悪な体調と戦いながら、玲陽は恨めしげに心で叫んだ。
慈圓と東雨が右衛房へ向かい、緑権が足りなくなった食材を仕入れに、朱市へ出かけていった。
偶然、五亨庵には、犀星と玲陽の二人が残された。
しんとした中を、わずかに心地よい風が吹き抜けてゆく。風の道筋を追って、玲陽は顔を上げた。天井の近くをぐるりと囲む明かり取りの欄間から、春空が覗く。風は静かにそこから吹き込み、広間の中を回遊して、床と壁の隙間に作られた通風口から放たれて行く。風の流れが見えるようだと、玲陽は思った。
特に、料理の匂いが染み付いた今は、それが唯一呼吸のできる空気のようにも思われた。
朝から色々と食べさせられ、玲陽は満腹でぼんやりと時を数えていた。もう、一口も飲み込めそうにない。頬杖をつき、うつろな目を正面に向けた。相変わらず緑権の机の周りは騒がしい。何故か五段梯子が立て掛けられていた。
何に使うつもりだったんだろう。
玲陽は好奇心が湧いたが、緑権のする事は考えてもわからなかった。そっと横を見ると、そこは慈圓の席である。彼はよく、多くの竹簡を抱え、予算の捻出のために人々を脅しに行く。慈圓の幅広い人脈は、あらゆる場面で五亨庵の政治的な助けとなる。ときには、政治だけではなく、貰い物の米や野菜、豆類が手に入ったりもする。どことなく犀遠に雰囲気も似ている。慈圓は玲陽にとって良き師である。
さらに視線を動かすと、中庭の扉がわずかに空いているのが見えた。少しでも空気を入れ替えるため、最近は開け放したままだ。
中庭から、東雨の短い掛け声が聞こえてくる気がした。一生懸命稽古はするのだが、どういうわけか彼の剣術の腕はさっぱり上がらない。物覚えが良く機転もきき、発想も豊かで感受性が強く、誰にも優しい。一見、完璧に見える東雨だが、人は何かしら苦手なものがある。東雨にとって、それは剣術だった。
近侍という立場から考えると致命的である。犀星は気にしていないが、東雨自身は、どうにかしようと必死だった。
私も少し剣を振らなければ。
玲陽は、最近すっかり文官が板についてしまった自分を嘆いた。
犀遠は玲陽に、文武両道であることを求めていた。それは二兎を追えということではなく、幅広く学べという意図だ。砦での劣悪な生活の中ですっかり体を痛めてしまったが、玲陽はもともと動き回ることが好きだった。
視界の中に、自然と犀星の姿が入った。周りの景色に溶け込むように、じっと動かず、少しうつむいたままである。てっきり何かに集中しているものと思っていたが、その目は焦点を失っている。玲陽と同じように肘をつき、向けるとはなしに几案の上に注がれていた。
玲陽は息をつめ、犀星を見つめた。
きれい。
全身でそう思った。柔らかい光の中で、犀星の整った面立ちに、より一層の儚さが宿る。儚いばかりか、芯の強い美しさまでが共存する。
こんな人は他にいない。
玲陽は惚けた。顔形を褒めても、犀星は喜ばない。それどころか、逆に疎む素振りまである。それを知っていて、玲陽は決してあれこれ言うことはない。それでもやはり、本心では美しいと思う。それは玲陽の贔屓目だけではないはずだ。前に東雨が言っていたように、誰が見ても犀星はやはり美しいのだ。
何よりも、犀星の心が尊いのだと玲陽は思っている。自分たちが絶望の淵に立たされ、途方にくれた時も、犀星はただ一人、希望を見出していた。声を荒げるでもなく、ただ静かに自分たちを促し、導いてくれた。その心の全てを知ることはできず、寡黙の中に、繊細な知恵と、限りない可能性を秘めている。
時折見せる感情的な一面が、自分にだけ許した甘えなのだと思うだけで、玲陽は幸福感に満たされる。
二人きりの時、自分にだけ見せる素顔。
それがたまらなく嬉しい。
思わず口元が緩み、にやにやとしてしまう。玲陽は、そっと袖で顔を覆った。隠れて、思いきり笑顔になる、そうして気持ちを整えてから、改めて澄まし顔を作ると、首をかしげて犀星を見た。やはり表情が動いていない。視点が定まらぬまま、微かに眉間に皺が寄っている。
「星……」
そっと声をかける。珍しく、犀星は気がつかない。玲陽はそっと席を立ち、そばに寄った。
「大丈夫ですか?」
その声にようやく犀星は顔を上げた。何を言われたかわからないという表情だ。
「どうしたんです。さっきから、ずいぶんぼんやりして」
犀星の目がふらりと揺れた。こういう時、彼の心は何か一つのことにとらわれているのだ。玲陽は、犀星の横にかがむと、その膝に腕を乗せて、顔を見上げた。ぴたりと寄り添って甘えるようでもある。
犀星は、かすかに震えていた。
「どうしたんです……?」
犀星のまぶたがピクリと動く。玲陽の顔が歪む。心細そうな金の目を見て、犀星は苦しそうに笑った。
「心配ない。少し……」
「少し、なんです?」
「少し、頭が痛い」
犀星の顔がふっと曇る。右の側頭部に激しい痛みが巣食っていた。波打つように、頭を締め付けてくる。
「もしかして、頭痛だけじゃなくて、声も、ですか?」
玲陽の問いかけに、犀星は目元を一層、歪めた。
「聞こえるんですね?」
膝にあった玲陽に腕を、犀星は撫でるように両手で包んだ。小さく、頷く。
「教えてください。その声は、なんと言っているんです?」
「…………」
黙って、犀星は玲陽を悲しげに見つめた。玲陽はそれ以上、聞けなかった。
互いに顔を寄せ、自然と頬が近づく。目を閉じると、こつりと額が当たった。優しさが染みてくる。玲陽は思わず鼻をすり寄せた。普段ならこのような場所では決してしないことだ。二人きりだという心の油断が玲陽を大胆にさせた。
その瞬間、犀星の体が大きく震えた。それは何か鋭い痛みのような衝撃だった。じっと何かをこらえている。明らかな動揺が顔に走った。
玲陽の胸がぎゅっと締まった。辛そうな姿を見ると、自分が体を裂かれるよりも苦しい。巨大な不安感が玲陽の中に弾けた。
飲み込まれてはならない。
そう思いながら、犀星の手を強く握る。
犀星は迷った表情で玲陽を伺った。唇が動いて何かを言おうとしたが、そのたびにぐっとこらえてしまう。
玲陽は、蒼い瞳を覗き込んだ。
「言ってください。私に隠す必要はない。どんなことでも、あなたと共に……」
犀星の指に力が入る。
「怖いこと、聞こえてくるんですね?」
玲陽は、わずかな変化から犀星の心を掴む。犀星は素直に頷いた。
「…………」
吐息だけで囁くように、犀星は言葉を伝えた。
一語一語が鋭く、短く、抉るように耳の奥に刺さる。
玲陽は逃げずに受け止めた。犀星の声のほかは、自分には何も聞こえない。
「ここには誰もいない。俺たちだけだ。なのに……」
一瞬戸惑い、それから少し呆れたように犀星は笑った。
「俺はやっぱり、どうにかなったんだ……」
「待って」
玲陽は、じっと犀星を見つめた。
蒼い瞳があまりに透きとおり、心の底まで覗けそうなほどまっすぐに、見つめ返してくる。
玲陽は手を重ねたまま、耳を澄ませた。ゆっくりと、五亨庵の中を見回す。その行方を追って、犀星もまた、視線を巡らせた。柔らかな春の光が、うっすらと銀粉のように差し込み、揺れている。
その中に、わずかに黒く細いものが漂った気がして、玲陽は目を凝らした。
空中の一点。
中に舞う黒髪のごとき何かは、人の情念の結晶の前触れだ。
「まさか、傀儡……傀儡の声……?」
玲陽の呟きに、犀星は身震いした。
「……陽、今……!」
「なに?」
犀星の目が、玲陽を捉え、さらにその後ろへ向く。
玲陽が振り返ったとき、視界を覆う黒い霧が一瞬、見えた。
犀星は素早く玲陽を抱き寄せた。背中のやけどに腕が触れ、ぎしりと痛む。
「星……!」
震える玲陽の声と重なるように、内扉を叩く音がした。続いて、詰所にいた近衛の声がこちらを呼ぶ。
「歌仙様。紀宗陰陽官がお見えです」
顔を上げたとき、犀星の視界に曇りはなく、傀儡の気配は消え失せていた。
代わりに、内扉の前に立つ、陰陽官の姿がぽつん、とあった。
独特の、紫色の法衣を長めに垂らし、帯の結び目には魔除けの白い石の玉を下げている。目深にかぶった巾が、その小さな顔を余計にこじんまりと見せていた。巾の後ろには細い銀の飾り紐が垂れ、紐の先に黒曜石の小珠が結ばれている。
手は常に袖の中に隠れていることが多いが、出したときには指に銀と骨を組み合わせた細い指輪がいくつか見える。
「かようになっておったとは……」
何を見て何を言ったのか判然としない口調で、紀宗は口の中で呟いた。クンクンと鼻を利かせる。
「悪気の焼ける匂いがしおる」
いや、それは緑権の魚なのだが……
犀星は腕の中の玲陽を、しっかりと抱いたまま、その肩越しに紀宗の細い目を見つめた。
「失礼いたしまする」
紀宗は形ばかりの礼をして、いつもの通り、五亨庵の中をうろつき始めた。薄革の草履は、ほとんど足音を立てない。動くたびに法衣の裾や袖がわずかに揺れ、その影が奇妙に長く伸びる。
この風変わりな陰陽官は、五亨庵建設当時から、月に一度程度、こうして唐突に訪れては、中を見て回るのが習慣だった。
時折小さな声でぶつぶつと何かを呟くだけで、邪魔にもならない。犀星も何も言わずに好きにさせていた。
だが、今回は少々、事情が違いそうだった。
紀宗は床から突き出している石を順に回り、そしてそのたびに、玲陽を振り返った。犀星はその視線から守るように、玲陽の頭を自分の肩に引き寄せ、振り向かせまいと抱え込んでいた。玲陽も、その気配を感じ、犀星の意図も察して、おとなしく目を閉じ、身を預けている。
足音を立てず、紀宗は順に石をたどり、最後に、最初の位置に戻ってきた。金色の筋の走った白い巨石の前で、手を揃えてこちらに向いて立つ。わずかに顎を引いて、上目遣いの様子である。細い目の中に、きらりと光る何かがあった。
「歌仙様」
紀宗はじっと犀星に目を向けたまま、聞き取れるか否かの声で言った。
「最近、お体のご様子におかわりはありませんか?」
犀星は眉を寄せた。紀宗がこのようなことを伺うのは初めてだった。そして、よりによって今、犀星の身には明らかな変調の兆しがある。
犀星は黙って、紀宗を見下ろすだけである。何を言っても、真実を見透かされてしまいそうな鋭さが、この偏屈な陰陽官にはある。
「よからぬものの、障りがございましょう」
その声も、視線も、まっすぐに玲陽を示している。
紀宗の声は、犀星の神経を露骨に逆撫でした。
犀星は他者に干渉する性格ではない。大切なものを傷つられない限りは。
紀宗の声はその、最も踏み込んではならない線を越えてきた。
珍しく、犀星は露骨に顔を歪めた。
腕の中で震えるただ一人の愛しい人のために、犀星の苛立ちと怒りはまっすぐに紀宗に向いた。
言うべきことは言う。それが自分にできる守り方だ。
犀星は玲陽の頭を自分に押し付けたまま、決して振り向かせようとはしなかった。
「何も聞くな。何も考えるな。俺だけを感じていろ」
小さな囁きで、玲陽を励まし、腕に力を込める。玲陽の体がわずかに軋んだ。玲陽にもまた、犀星の気持ちがよくわかっていた。
自分を守るために、今、全てを賭けてくれている。だからこそ、自分はただ黙って素直に委ねる。
だが、玲陽はただ守られるだけの存在ではない。もし、少しでも、自分を抱く腕が震えたならば、その時は自らが盾とも矛ともなって、ともに戦うつもりだ。
玲陽の覚悟も、犀星の覚悟も、お互いに知り尽くした上での時が流れた。
ただ一人、紀宗だけはじっと動かず、五亨庵を眺め、石を眺め、二人を見比べた。
「歌仙様におかれましては、見えざる力と見えざる声と、その全てが、今まさにその御前に現れておいでかと存じます」
紀宗は珍しく長く話した。それは陰陽官としての矜持であるか、それとも人としての忠言であるか、定かではない。
「その御身の身辺に悪しきものある限り、お心の優れること叶わぬかと」
「…………」
「取り除かぬ限り、五亨庵の力は食いつくされ、負に転じ、宮中も都も、ひいては国をも脅かす存在となり果てましょう」
犀星は静かに、しかし揺るぎなく、目を据えて紀宗に相対した。
「紀宗、おまえが言う『悪しきもの』とは何のことだ」
それは核心だった。避けて通ることはできぬ。
紀宗の目が、犀星の肩のあたりを撫でた。突き刺すのではなく、まさに撫で回す目線で玲陽を見ている。
それは犀星にもはっきりとわかった。自分が最も手放すことのできない相手を、手放せというのだ。
わずかな時間に、犀星の思考がめまぐるしく展開し、飛び交う。どの言葉を用いれば望む答えが引き出せるのか。
ただ玲陽を守ることだけが全てだ。
だが、その答えへの道のりは見えない。どの道を行っても、紀宗の言葉に絡めとられてしまいそうで、犀星は道を選ぶことをやめた。
代わりに、猛禽が狙いを定めた鼠を狩るごとく、天空から一直線に獲物に向かう。
「紀宗。私の心はただ一つ。たとえ国を滅ぼそうとも、決して手放しはせぬ」
犀星の腕が、強く玲陽を抱き、呼吸が長く漏れた。それは玲陽の不安を解くよりも、自らを勇気づける力だった。
紀宗は予見していたと見えて、眉ひとつ動かさず、小さな口を細かく震わせた。
「たとえ歌仙様が、いかにお考えであろうと、わたくしは役目を負うまでのこと」
紀宗の声はぼそぼそと途切れ、しかし、不気味なほどに聞き取れるのだ。それはまるで、心のわずかなひび割れに染み込んでくる湿気のようでもある。
「陰陽をつかさどる身として、見過ごすわけには参りません」
紀宗はいつになく強気だった。
怒りを表す事は、冷静さを欠く第一歩である。犀星は、ただ玲陽を抱きしめることによって、心を抑えていた。玲陽もまた、抱き返すことによって犀星の怒りを飲み込んでいた。
かつて玲陽は一度、紀宗と会ったことがある。その時、彼が言った言葉が蘇る。
『面白いものをお持ちだ』
紀宗が言ったのは、何のことであったのだろうか。傀儡を喰らう力なのか、それとも玲家の血そのものか。
または、自分も知らぬ何か別のものなのか。
何にせよ、紀宗は今、玲陽を追放せよと言うのである。
そしてそれは犀星にとって、決して受け入れることのできない条件である。
「手放す気はない」
犀星は低く繰り返した。
紀宗は動じない。いかに親王と言えど、国の吉兆を司り、その特殊性を持って皆に恐れられる陰陽官を服従させることは難しかった。
国において、皇帝が表を牛耳るならば、裏を支配するのが陰陽の者たちだ。紀宗は次席ながら、その影響力は大きかった。
自信の表れか、または彼の生来の性格か、紀宗はまったく動揺することなく、小さな体をそのままに、背を少し丸めて立っていた。
「なれど……」
唸るように、しわがれた声が言った。
「……わたくしといたしましては、陰陽官として、それをこのまま放置するわけには参りませぬ」
紀宗の言葉は宣戦布告だった。
「……親王殿下には……いずれ、諦めていただかねばなりますまい。平穏を得るには、命を絶つ以外に、手立てはございませぬ」
玲陽はぞっと背中が冷えた。本人を前にして、紀宗の言葉には容赦がない。
「……この国において、わたくしより術に通じた者は、まずおりますまい。しかし……そのわたくしをもってしても、生かしたまま浄化することは……不可能にございます」
犀星の腕が玲陽の腰を周り、自らの刀の柄に伸びる。それを感じて、玲陽は犀星の肩に埋めた首を小さく振った。
追い打ちをかけるように、紀宗は言い放った。
「殺すしか、ございません」
破裂するような犀星の躍動を、玲陽は咄嗟に押し戻した。壁に押し付け、体重をかけて動きを止める。触れ合う体が震え、冷静さを欠いた蒼の瞳が焦点を失って闇雲にあたりを睨んだ。
「星!」
非礼を承知で、玲陽は名を呼んだ。全身で抱きしめ、痺れるほどに腕に力を込める。
「駄目です! どうか!」
犀星の激しい衝動は、怒りか、恐怖か、判断がつかない。
明らかに紀宗は、犀星の逆鱗に触れた。玲陽のこととなると、冷静さを失う犀星の気質は、己にも止めようがない。
紀宗はそれすら想定していた、というふうに、静かに見守っている。紀宗の静けさと相反し、犀星の呼吸は荒く、玲陽を掴む指が深く食い込む。
どうしたら……
刻一刻と熱を帯びる犀星の身体に戸惑いながら、玲陽は必死に考えた。自分が何か言えば、余計に犀星を煽るだけだとわかっていたが、助けを求められる相手もいない。
玲陽の緊張が頂点に達したとき、
「ただいま戻りましたぁ」
場違いに明るく能天気な声が、緊迫した糸を断ち切った。
「あれ、紀宗様、いらっしゃってたんですか?」
内扉が突然に開き、両腕に食材の籠を抱えた緑権が入ってきた。
犀星の体がピクっと動く。目の奥で何かが瞬時に瞬き、ぴたり、と未来を見定める。玲陽は恐る恐る、紅潮した犀星の頬を見た。
何か、企んだ顔だ。
こうなれば、流されてみるのが一番良い。
玲陽は覚悟した。
事情を知らない緑権は、さっさと荷物を厨房へ運び入れると、ひと息をついた。
ふと見ると、犀星の様子がいつになく険しい。しかも、人前にも関わらず、しっかりと玲陽を抱きしめている。
緑権の穏やかな真顔に、ふんわりと疑問が浮かんだ。
「謀児」
突然、犀星が口を開いた。その声は凪のようだ。
玲陽は息ひそめ、緑権は首を傾げ、紀宗は黙って立っていた。
「おまえの実力は、五亨庵の者ならばすべて知るところ。紀宗どのにも、陽を癒やすおまえの腕前、お見せしろ」
玲陽は目を閉じ、緑権は笑顔を浮かべ、紀宗はいぶかしんだ。
「もちろんです! ちょうど、材料を仕入れてきたんですよ」
緑権は意気揚々と、荷物を解きにかかる。
わずかに緩んだ犀星の腕の中で、玲陽は息をした。
犀星の肌は汗ばみ、いまだ緊張にさらされているが、それでも、その目には明らかな意志がある。
「謀児、陽に巣食う悪い気を、確かに払えるのだろうな?」
犀星は、静かに緑権に話しかけた。
「お任せください! その辺の連中より、よほど結果を出して見せますとも!」
自信満々で、緑権は袖をまくった。紀宗がゆっくりと緑権を振り返る。いつもはぼんやりと無為無策に過ごしているこの文官が、今日はやけに生き生きとし、別人のようである。
「悪気を祓う、とな?」
紀宗は緑権を見つめた。
「容易いことではない。これほどに執拗なもの、命を絶つ以外に方法はない」
「ハァ?」
素っ頓狂な声を発し、緑権は首を傾げた。
「何、馬鹿なことをおっしゃってるんですか? これくらい何でもありません。私なら、ちゃんと光理どのをお助けできます」
「まさか、わたくしにも出来ぬことを……」
「そりゃそうです。陰陽官じゃ無理です。せっかくですから、紀宗様も、しっかりとご覧ください」
にやりと笑い、緑権はずしりと重い木桶を厨房から抱えてきた。中には見事な赤黒い錦鯉が一尾。目はぎょろりと生きており、桶の中でぐるりと渦を描いて泳いでいる。
犀星はわずかに眉をひそめた。
どうせまた、八穣園の池からとってきたに違いない。
「この色、どうですか? いかにも効きそうでしょう?」
緑権は交椅の間に五段梯子を渡した。
玲陽は、梯子の使い道が知れて少しホッとした。
梯子はそのまま、即席の広い調理台になった。緑権はそこに砧を置き、やたらと光沢のある包を三本、柄から布でぬぐって並べた。形から入る緑権が揃えた自慢の包である。横目に見ていた紀宗の肩が、かすかに震える。
これは、何かの呪術刀か?
無意味な考察に、紀宗は翻弄され始めた。
黒い鯉は精力が強く、霊的にも高貴とされる。それゆえに扱いも難しい。しかし緑権は難なく黒鯉を取り出し、ぐっと押さえ込むと、干した蓬をつかんで鰓の中へと押し込んだ。手際が良い。鯉は暴れ、水が散った。
「こうすることで、蓬の効能が鯉の肉に染み渡るんです」
「……!」
紀宗は小さく、ごくりと喉を鳴らした。
蓬は邪を取り払うにはよく用いられる素材である。大抵は乾燥させて焚き上げたり、周囲に撒いて利用するが、まさか、このような使い方があったとは、紀宗も知らぬことであった。
緑権は、何十にも布で包んでいた樽を開いた。中には、宮中のどこかで溶け残っていた雪が入っている。
「こうして、雪を使って水を冷やし、そこに鯉を入れて、失神させます」
鯉は時折、ひれを震わせたが、それ以上暴れることはない。
「鯉の魂を体に繋ぎ止める秘術か……」
紀宗のつぶやきは、鼻歌まじりの緑権には聞こえていない。
持ち出した炉の上に鍋を載せると、紀宗の目の前に何やら黒いものを差し出した。
「紀宗様、これ、何かわかりますか?」
紀宗は、緑権の手のひらに乗る、丸いものに心当たりがなかった。
「こいつは、炭焼きにした梅の実です」
緑権は、にやりとした。
「梅には、腐敗を防ぐ力が込められています。こいつを一緒に炭にくべて、ゆっくりと燻すんです。そうすると、鯉だけじゃなく、この空間にも効果が満ちて、より効き目が高まります」
さすがこだわって調べただけのことはあって、緑権の説明は立板に水だ。
緑権は鍋の中に、蓬、紫蘇、陳皮をもみほぐしながら、少しずつ加えていく。
紀宗はただ、奇妙な匂いを発しながらぐつぐつと沸き立ち始めた鍋を覗いた。ただの鍋料理が、紀宗には別の意味に思われる。まるで、呪符や呪具に力を施すような厳粛さと気迫が立ち込めている。
緑権は仰々しく、二度手を打ち合わせて手のひらを擦り合わせた。満を持して、一本の包を手に取った。
もったいぶって何度か空を切り、それから、鍋の中の煮汁に浸す。温まった刃で、氷水の中の鯉を、ぶすりと突き刺した。血は、ほとんど出なかった。冷水で身がしまっている上、下ごしらえのために桶にはあらかじめ塩が入れられている。
紀宗にはそれが、妖しい術と見えた。
犀星が、優しく、玲陽の背に手を置いた。ふたりの目が合う。
陽、出番だ。
玲陽は意図を察し、唇を引き結んで、小さく頷いた。恐る恐る振り返ると、鍋に近づいていく。その歩みは、救いを求める弱者のように弱々しかった。
「謀児様」
震える声で、呼びかける。
「どうぞ、私をお救いください」
「もちろんです!」
力強く、緑権は受けあった。
玲陽は一瞬、言い淀んでから、意を決して、
「私は……死にたくありません」
「当然です! 私の腕をお信じください!」
「おぬし……いつの間に」
ついに、紀宗は一歩後退った。その乾いた顔は、呆然と緑権に向けられている。
犀星がそっと歩み寄り、玲陽の肩を抱き寄せた。そうしながら、目線は紀宗に向ける。
「紀宗。そなたは優秀な陰陽官だ。だが、上には上がいるもの。謀児は、そなたより先に異変に気付き、こうして陽を生かしたまま救う道を見つけ、習得した。これも、五亨庵の意思。此度は、そなたの出る幕はない」
玲陽は思わず、体が震えた。
犀星の語り口調は冷静で、恐ろしいほどに堂々としていた。見方によってはあながち嘘とも言えないところがまた、奇妙だった。
紀宗の目には、目の前の光景が呪術の一端に見えている。
緑権はひたすら、料理に耽っている。
「それでもって、鯰の心臓と肝臓も使います。こいつらを練り合わせて、そこに麹を加える。そして軽く炙って、ある呪文を伝えます」
「呪文だと……?」
「やはり、最後の仕上げは、心の有り様、ですから」
「そなた……かような術を……?」
ここにきて初めて、紀宗の声に感情が見えた。緑権が余裕の笑みを浮かべ、
「光理どのは、国家の要。私が国を救って見せます」
紀宗が細い目を精一杯に開いて緑権を見ている。満足そうに、緑権は玲陽に向かって料理を盛りつけながら、
「天陽を一匙に封じ、地陰を一椀に鎮め、これを受くる者の身魂と化しますよう。五気と五行を廻らせ、脈に満ち、骨に染み、香気を以て門を開き、滋味を以て魂を結び、邪を千里の外へ逐え」
明らかに異様な匂いのする料理を器によそい、緑権は笑顔で玲陽に差し出した。
「さぁ、できた! これを一口食べればスッキリ、悪い気なんか全部流れる!」
玲陽は震える手で椀を受け取った。湯気とともに立ち上る醜悪な匂いに胸がむかつき、嘔吐感が沸き起こる。犀星は、玲陽の震えを敏感に察知した。素早く、傍にあった空の桶を玲陽の口元に寄せる。
朝から食べ過ぎて苦しかったところに、さらなる怪料理の臭気を受けて、玲陽はたまらず吐き戻した。犀星はそっと背中をさすり、紀宗に視線を向けた。
「見ての通り、悪気は流れた」
目に涙を浮かべながら、断続的に嘔吐する玲陽を、紀宗は怯えた様子で見つめ、首を振った。
「どうやら、歌仙様のおっしゃる通りの様子」
紀宗は後ろ向きに下がりつつ、犀星を見た。
「されど、御油断なさらぬよう。悪しきものはいつなんとき、力を増すやもしれませぬゆえ」
「いかなることがあろうとも、我が意志は変わらぬ」
ひたすら吐く玲陽、困った顔で固まる緑権、理解の及ばぬ現実から目を背けたい紀宗。
そして、悠然と場を制する犀星の沈黙。
紀宗は唸り、それ以上の追及を避けて、五亨庵を足早に出て行った。
扉が閉まるのを見届けて、犀星はフッと緊張を解いた。
「謀児」
「え? あ、はい」
苦しむ玲陽を見ていた緑権は、不安そうに犀星を振り返った。
叱られる、と目を歪ませる。だが、犀星は静かだった。
「よくやってくれた。さすがは五亨庵一の……食わせ者だ」
とくん、と玲陽の心臓が鳴る。
それは、あなたでしょう!
最悪な体調と戦いながら、玲陽は恨めしげに心で叫んだ。
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ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
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