夜が長いこの世界で

柿沼 ぜんざい

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-第9夜- 若い女性ばかりが狙われる村

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 トナードに続き、閉鎖された大都市レイクの集団移住型人狼を倒した私はまた一人の任に着いていた。あの後、サリーは正直に仲間の人数と居場所を教え、その2日以内に教会が全てを殺したらしい。サリーに度々会いに来ていたカルムも彼女の処公開処刑を目の当たりにし、その現実を漸く受け入れることが出来たそうだ。レイクの街は2週間して閉鎖が解かれ、街にはもう人狼がいないと発表したそうだ。こうして聖職者らは本部へと帰還する事が出来たらしい。

 全く羨ましい限りだ。私にはまだあと2つ程仕事が残っていると言うのに。

「ここか」

 またしてもやって来たのは森山にある田舎の小さな村だ。コリダク村と呼ばれる地に私はやって来たのだ。

「聖導協会の本部から人狼調査の為に派遣されて来たサテライト=ヴィル・アストレア」

 レイクシティの時と同じように関所の門番に証のペンダントを見せる。

「君が聖職者?しかもたった一人でこんな所に?」

 こう言った事は言われ慣れている。この程度で苛立ちを見せる私ではない。

「一人ですが何か?」

「いや、珍しいなって」

 門番は笑いながらそう答える。少し不愉快だ。

「役場から村入りの許可が下りた。入っていいぞ。えーと、サテライト=ヴィル・アストレア……」

「私に階級は無い。早く入れてくれ」

「あぁ」

 役場からの確認を取ってくれた中年番人の横顔を横目に少し見てから私は村入りを果たした。

「……トナードより田舎か」

 コリダクの村はトナードと違い、レンガ造りの家が一つもなかった。その殆どが、からぶき屋根で出来ていた。

(少し、肌寒い。早く行かなきゃ村役場へ)

 役場に着いた私は調査要請をした役員の人に話を聞く。

「それで人狼の犯行と思しき事件とは?」

「えーっと、貴女が?」

「本部から派遣された聖職者。サテライト=ヴィル・アストレア」

「そうですか、貴女が……一先ず、こちらへ」

 案内された場所は役場の地下倉庫だった。そこには9名の遺体が袋に包まれた状態でズラリと並んでいた。麻袋には黒く血が滲んでいる。

「4日前程でしょうか。若い女性の悲鳴が聞こえてきましてね。それでたまたま近くを歩いていた私が最初の遺体を見つけたのです。それからというもの毎晩遅くに若い女性ばかりが……」

「なるほど。遺体の方を見ても?」

「どうぞ」

 私は足先から、全ての遺体の隅々までを確認した。

 (どれもこれも少しかじり付いた程度。死因は首を強く絞められた事によるものか)

「あの、訊いても?」

「はい?」

「何故、教会への連絡をすぐに?」

「あぁ、それはですね……」

 話によるとこの村の村長であるグレモリーが大事おおごとにしたくないという事と、我が村には人狼など存在しないと主張を繰り返す為に調査依頼が遅くなったという。最も彼は今でも人狼の存在を否定しているらしいが。

 役場の人が今日の泊まり宿を提供してくれた為、心にゆとりが出来た私は宿に寄る前に村長の邸宅を訪れていた。

「調査依頼を受け教会本部より派遣されたサテライト=ヴィル・アストレアです。貴方がここの村長であるグレモリー氏ですね?」

「あぁ、そうじゃがぁ?」

 私はこの時、感じていた。微かに感じる、彼の周りに隠れたおぞましい“何か”を。

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 
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