力の欠片のペンダント

河原由虎

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第10話 自分のしてしまったことに、胸が痛くなる

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「それにしても、願いが叶えられるだなんて、すごい力ね」

 お母さんの、仕事の期限がのびて早く帰ってこれたり、電車が止まってしまったのにお父さんが早く帰ってこれたのも、ペンダントが光ったことを考えると、その力のおかげで。さらに雨にぬれたくないと思った時に雨が止み、空が晴れていったことも。どれもこれも魔法みたい、と華奈は思ったのです。

「なんでもできるってわけじゃないけどな。死んだ者を生き返らせるとか、神様にもできないことは無理だから」
「それでも!」

 華奈は目をキラキラさせて、改めて言いました。
 そんな華奈を見て、再びシオンは笑顔で説明してくれます。

「貯めた力で、いろんな世界を行き来きすることもできるんだぞ」
「そっか……」

 貯めた力で、ということは。力が貯まるまでシオンは元の世界に帰れないということです。
 それに、まず体が元の大きさに戻るまで力を集めないといけないでしょう。その全てがどれだけ大変なことなのか、華奈には想像もできません。

「その力は……課題をこなすことでしか戻ってこないの?」
「いいや、時間がたつことで、少しずつは自然に戻ってくるはずだ……」

 けれども、それではとても間に合わないだろうことは、シオンの様子からわかりました。

「……私が使ってしまった力……どうやったら返せるかしら……?」

 華奈がそう聞くと、シオンは難しそうな顔をして答えます。

「返すって言われてもなぁ……結局は課題をこなすしかないし……」
「何か方法があるなら教えて! 私、やるわ」

 何かしたい。
 わざとではないけれど、私のしてしまったことでシオンが大変になってしまっている。ならば、手伝わなければいけないと思うし、何より手伝いたい。
 そう思って、華奈は言いました。

「やれないことはないと思うが……人間には難しいぞ?」
「教えて」

華奈の真剣な眼を見て、シオンはほんの少しため息をつきます。

「……じゃあ一応教えるけど……」

 言いにくそうにしていた、シオンの口から出てきたその方法とは。

「俺の課題でもある『良い行い』の手伝いをするんだ」

 その、もったいぶっていた様子に。一体どんな難しい方法なのだろうと考えていた華奈は、キョトンとした顔でシオンを見つめます。
 『良い行い』とはゴミを拾ったり、誰か困っている人を助けたりする事かしら? と、考えながら華奈は聞きます。

「私がその『良い行い』を手伝ったなら、早く『力』が貯められる?」
「そうだな、でもやりすぎて、お前だけで『良い行い』をしてしまうと、俺の力にはならないから。もし本当に手伝ってくれるなら、俺が頼んだことだけをやってもらいたい」

 全部やってしまってはいけない、と。そうなると一体どんなことをしたらいいのだろう?華奈は少し考えてみました。ですがいまいち想像がつきません。

「例えば……具体的にどんなことをしたらいいのかしら?」
「ん……困ってる人を見つけてくるとか……?」

 シオンに聞いてみるものの、彼もあまり良い例が思いつかないらしく、自分自身に確認するようにそうつぶやきました。

「ちなみに、その力はどれくらい集めたらいいの?」

 それを教えてもらっても、何をどうしたらよいのか、わからないかもしれないけれど、と思いながらも華奈は聞いてみました。

「できる限り、たくさんだ!」

 何故か元気にそう答えるシオン。じゃあ、なおのこと飛び回っている場合ではなかったのでは、と華奈は思いました。ですが、またしょんぼりしてしまったらかわいそうだなと思って、その言葉は飲み込みます。

「もし、期限までに元の大きさにも戻れなかったらどうなるの……?」
「さあな……王子の資格はなくなるかもしれないな。力を集めるどころか、減らしたなんて話、聞いたこともないし。
 けど大丈夫だ。そうなったらそうなったで、自分で勝手に役に立てるように仕事するだけだから」

 心から楽しい話しではないだろうに、シオンはそう言いながら笑っていました。その様子を見た華奈は、胸がいたくなります。
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