1 / 24
01. 旅立ち
しおりを挟む
「みんな! 何かにつかまれ!」
乗せてもらっている船の船長が叫んだ。
航海が始まって数ヶ月、船は酷い嵐の真っ只中にいた。
高い波に翻弄され、まるで天地が逆転するかのようだ……!
もし天から見ることができたなら、この船は、さながら波にもまれる木の葉のようだろう。
荷を固定し直すのを手伝っていた僕は、ひどい揺れで海に放り出されてしまった。そして直後、凄まじい雷鳴が鳴り響き、辺り一面が白い光に包まれ、いつの間にか意識を失っていた――
気がつくと、僕の体は静かな波の中を漂っていた。雲の切れ間からは青空が見える。
全身が痛くて、ぴくりとも動かすことができない――
(僕もここまでか――
すまない……ルミナ、ルシアーノ…………)
目を開けていることもできず閉じると、思い浮かぶのは故郷に残してきた愛しい者たちの顔――――
好奇心旺盛で、なんでもやりたがる息子、ルシアーノが突然の病に襲われたのは五歳になったばかりの時だった。
医者に診てもらうも原因は不明で、僕たち夫婦はただ寄り添うことしかできなかった……。
「元気になったら、お前のやりたがっていた鹿狩りに連れて行ってあげるよ……。だから頑張って治そうな――」
ベッドに横たわり、発熱でぼうっとしているルシアーノに僕は語りかけた。年齢的にはまだ早すぎるけど、これくらいのことはしてやりたい。そう思って――
寝たきりになって数週間経ったある日、心配して見舞いに来た僕の両親が、あることに気がついた。
ルシアーノは先祖返りで、強い力を持つのだと。
黄色い髪を持ち、普通の人間より優れた視力と聴力を持つ一族の力を――
それから僕たちは、さまざまな文献を調べ、その病状が『力が強すぎるためにかかる病』であることを突き止めた。
けれど、肝心の治療法について書かれた箇所は、焼け焦げていて読むことができず……
同時に発見した記録を頼りに、僕は旅に出ることにした。
「ルカ、お願い。ルシアーノを助ける方法を見つけてきて……!」
「必ず……病を治す方法を、薬を手に入れて戻ってくるから! それまでルシアーノを頼む、ルミナ……!」
偶然発見した数百年前の記録。そこには、東の方のある国では、力を持つ者たちを『鬼』と呼ぶこと、異種婚を禁忌とし、原種を守り続けている一族がいるという事が記されていた。
その者達ならば、この病の治療法を知っているかもしれない――
そう信じて、妻と両親にルシアーノを託し、僕は船へと乗り込んだのだ。
乗せてもらっている船の船長が叫んだ。
航海が始まって数ヶ月、船は酷い嵐の真っ只中にいた。
高い波に翻弄され、まるで天地が逆転するかのようだ……!
もし天から見ることができたなら、この船は、さながら波にもまれる木の葉のようだろう。
荷を固定し直すのを手伝っていた僕は、ひどい揺れで海に放り出されてしまった。そして直後、凄まじい雷鳴が鳴り響き、辺り一面が白い光に包まれ、いつの間にか意識を失っていた――
気がつくと、僕の体は静かな波の中を漂っていた。雲の切れ間からは青空が見える。
全身が痛くて、ぴくりとも動かすことができない――
(僕もここまでか――
すまない……ルミナ、ルシアーノ…………)
目を開けていることもできず閉じると、思い浮かぶのは故郷に残してきた愛しい者たちの顔――――
好奇心旺盛で、なんでもやりたがる息子、ルシアーノが突然の病に襲われたのは五歳になったばかりの時だった。
医者に診てもらうも原因は不明で、僕たち夫婦はただ寄り添うことしかできなかった……。
「元気になったら、お前のやりたがっていた鹿狩りに連れて行ってあげるよ……。だから頑張って治そうな――」
ベッドに横たわり、発熱でぼうっとしているルシアーノに僕は語りかけた。年齢的にはまだ早すぎるけど、これくらいのことはしてやりたい。そう思って――
寝たきりになって数週間経ったある日、心配して見舞いに来た僕の両親が、あることに気がついた。
ルシアーノは先祖返りで、強い力を持つのだと。
黄色い髪を持ち、普通の人間より優れた視力と聴力を持つ一族の力を――
それから僕たちは、さまざまな文献を調べ、その病状が『力が強すぎるためにかかる病』であることを突き止めた。
けれど、肝心の治療法について書かれた箇所は、焼け焦げていて読むことができず……
同時に発見した記録を頼りに、僕は旅に出ることにした。
「ルカ、お願い。ルシアーノを助ける方法を見つけてきて……!」
「必ず……病を治す方法を、薬を手に入れて戻ってくるから! それまでルシアーノを頼む、ルミナ……!」
偶然発見した数百年前の記録。そこには、東の方のある国では、力を持つ者たちを『鬼』と呼ぶこと、異種婚を禁忌とし、原種を守り続けている一族がいるという事が記されていた。
その者達ならば、この病の治療法を知っているかもしれない――
そう信じて、妻と両親にルシアーノを託し、僕は船へと乗り込んだのだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる