【鬼シリーズ:第四弾】黄鬼の子孫の物語 〜忘れられた大切なコト〜

河原由虎

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02. 嵐の後に

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 波の音に混じって遠くの方から何かが聞こえる……誰かが砂をふみしめ走ってくる音、だろうか――

「にいちゃん! こっちこっち!」

 しばらくすると、小さな子供の声が聞こえてきた。

「ほら! あそこに黄色い人が落ちてるよ!」
「走るな茶子! 流木が多いから転ぶぞ!」

 声変わりしていない様子から、兄と呼ばれた少年もまだ子供と呼べる年頃なのだろう。僕はその姿を確認しようと、重いまぶたを動かした。

「あ、動いてる!」

 茶色い髪の幼子が、髪と同じ色でどんぐりのように大きな目を輝かせて言った。

「生きてるが、怪我がひどそうだ……。浜に上がってる木々……残骸から察するに昨日まで荒れ狂ってた嵐に巻き込まれた船の者か」
鳶之介えんのすけにいちゃん、運べる?」
「俺にお前ほどの力はないが、大丈夫だろう」

 幼子の倍以上背のある、焦茶色の髪と目の少年が答える。
 その見た目とセリフの違和感を吟味する思考力すら保てず、僕の意識はそこでまた途切れた――



「…………から、何か聞かれても隠すんじゃないよ」
「わかってるよ。父様が本土に行ってる間は長代理をちゃんとたてるよ」

 気の強そうな女性の声と、あの少年の声が聞こえる。そうか、僕はどこかに運ばれたのか……

 重たいまぶたを何とか開けると、先ほどの少女が僕を覗き込んでいた。

「母様、目を開けたよ!」

 嬉しそうに輝く瞳は、母と呼んだ者の方を見てから再び僕の瞳を覗き込んでくる。

「あなた、目の色は空の色なのね。綺麗」
「こら茶子、あまり覗き込むな。びっくりしちゃうだろ?」

 ふふ……この茶子という少女、おそらく同じくらいの歳だろう。ルシアーノのことを思い出し、思わず笑顔がもれる。

「あ、笑った! 笑ったよ!」
「はいよ、ちょっとおどき、茶子」

 言われて茶子が退くと、深緑の色の髪と目を持つ女性が僕の横に座った。
 よくみると三人とも灰緑色の着物に身を包んでいて。その形状から、自分が全く知らない土地にいるのだろうと予測がつく。

 ここはどこなんだろうか……?

「あんた、私の言葉が理解できるかい?」

 問いかけられ返事をしようと思うも、うまく声が出ない。仕方なく目を閉じ、ほんの少し頷くことで返答する。

「そうかい、外国とつくにの者は私達とは違う言葉を喋ると聞いていたんで心配したが、よかった。
 あんたの着ていた服はボロボロだったんで、私の旦那の服を着せてる。少し小さいが我慢しておくれよ」

 どうりで、染み付いていたはずの塩の香りがしないはずだ……

「さて、じゃぁもう少し治療しようかね」

 治療……?

「鳶之介、茶子、良い機会だからようく見ておきなさい。力の流れと感覚を――」
「「はい!」」

 二人の子供は元気に返事をし、僕を挟んで女性の向かい側へとやってきて座った。
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