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空の雲〜天界の天使の物語シリーズ〜

空の雲 11.エドウィンの旧友達

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「お前まだ雲絵師やってるんだって?」

 連れの天使達もいるようで、全員が少しづつ違うシンプルだけれど美しい金色の額飾りをし、金のベルトのバックルには荘厳な彫りが入っていて、階級を表す薄めのカボションが付いている。

 彼等の装束から天使の中でも一番人気の仕事、お迎え部署の者達だとビハールにはわかった。

 全員片手に飲み物を持っており、これから飲み会でもするのだろうかといった雰囲気で……

「むー!」

 口にいっぱいのイチゴを咀嚼しながら手を上げ、彼らに向かって何かを言うエドウィン。

「お前程の飛翔力と魂の気持ちを読み取る力なら、俺たちと同じ、天使の梯子エンジェルロードを渡って下界へお迎えに行くっていう花形の仕事だって出来るのに、なんでこないんだ?」

「そうだぞ? オレたちと一緒に声がかかった時も、その後も断ってるって聞くし……」

 エドウィンは何度もスカウトをされているのかと驚くビハール。エドウィンはムグムグと言いながらイチゴを飲み込み、口を軽く拭いてから彼らに向かって言った。

「前も言ったけどな、俺のやりたい仕事はソレじゃないんだよ。
 俺のエンジェルロードは地上じゃなくて上を向いてるからな」

 そう言って、満面の笑みを浮かべながらその場所からは見えないが空の方を指差す。

「お前達こそ、戻ってこないか? 相変わらずうちは手が足りないんだぞ?」

 エドウィンの言葉に、彼等は顔を見合わせて苦笑してから口々に言った。

「……ははは、そりゃー無理だな……」

「あそこは重労働だからなぁ……。オレには今の方がやりがいもあるし、給料もいいしな……」

「そっか…………じゃぁお前達と俺の天職は違った、ってことだな……。
 残念だけど……」

少し寂しげな顔で「あんなに練習してたのにもったいねぇけどな」と呟いたエドウィンに天使達は告げる。

「俺たちのあそこでの役割は、きっと橋渡しだったんだよ。次の天使達に繋ぐまでの。
 お前はまだ頑張れるならそこで頑張れ。な?」

「お迎え部署ではいつでも歓迎してるけどな」

 どうやら、その天使達はエドウィンと良い関係だけど、お迎え部署から声がかかって栄転していった天使達らしい。

 同期だったのかな、と考えながら黙って聞いていると、初めに声をかけてきた天使がチラリとビハールに視線を投げつつ聞いてくる。

「ところでそっちの……お前よりでかいけどクリクリ毛のカワイイボウヤは?」

「俺の弟分で、今は同僚のビハールだよ。良い空描くんだぜ~?」

 『良い空を描く』と言われ嬉しくて、モジモジしてしまうビハールを、取り囲むようにして天使達は嬉しそうに言った。

「へぇ~そうか! じゃぁオレたちの弟分でもあるってことだな!」

「すごいな、お前。頑張れよー?」

 失敗ばかりでしぼんでいた気持ちは、その天使達のお言葉でだいぶ回復してきて、普段は天使ひと見知り気味なビハールは少し勇気を出してみることにした。

「ありがとうございます……あの……聞いても良いですか……?」
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