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第二部 第一章 新たなる目標
62・私のワンオペレーション
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フォウがあらかじめ、旅に必要なものは準備してくれていました。
そのため私が用意するものは、着替えなどの私物のみで、野営で使うテントやベッドなどの大き目のものとかは、全部フォウの袖口に収まっているとの事でした。
寝袋ではなく、ベッドらしいです。
テントも本当にテントなのでしょうか。
もしかしたら小さ目の家の間違いなのでは、と疑うレベルです。
とは言えお金には困っていないので、近くに街があればそこに寄って宿に泊まるつもりです。
道中、街に寄れない時など仕方のない時にだけ野営をすればいいだけの話で、それも都合が悪ければ転移で家に帰るか、適当な街の宿まで戻ってしまえばいいのです。
でもそれだと旅の気分が台無しですね。……やはり宿に加えて野営も挟み、家に帰ってくる事はやめておきましょう。
サーラたちを迎えに行った後、私の家に一泊してもらい、そういっただいたいの事は一晩だけのミーティングで決定しました。
なんだか旅行を決めてからは、あっという間でした。
旅立ちの前の緊張で眠れないという事は一切なく、ぐっすりと眠れました。
そして朝を迎え、私たちはもう、出発をしようとしています。
「じゃあ、気を付けて行くんだよ。サオリ」
「うん、ランドルフも元気でね」
ランドルフと騎士団のメンバー数人も、駆けつけてくれました。
私たちを見送るために、今日の仕事は遅らせたそうです。
「ご武運を。サオリ様」
「ありがとう。あなたは確か……ダルカスさんね。覚えてるわ」
「道中のご無事をお祈り申し上げます」
「まあトゥーリさん! あなたまで来てくれたの?」
シルバニア家の馬を管理している、トゥーリさんまでもが見送りに来てくれました。
「みなさんお忙しい所をわざわざありがとう。……ランドルフも毎日お見舞いに来てくれてありがとうね。凄く嬉しかった。まだ本調子じゃないけど、旅行で気分転換してくるね」
「ああ、ゆっくり行くといいさ。魔王の事は無理するなよ」
結局魔王討伐のメンバーは私とサーラ、それに四人の天使だけです。
エリオットとランドルフは参加しません。
ランドルフは自分が行っても足手まといにしかならないと遠慮していましたが、エリオットは参加する気満々だったようです。
お留守番を言い渡した時の彼の反応は「信じられない!」と、憤っていました。
そんなに旅行がしたかったのでしょうか。
エリオットには申し訳ありませんが、せっかく女性だけでパーティーが完成しているというのに、わざわざ一人だけ男性を入れる必要はないと判断しました。
「お店は頼みますよ、エリオット」
「ああ、それは任せておけ。とっくにワンオペってやつには慣れたからな」
エリオットには発注のやり方も教えてあるので、お店に出す商品の補充も大丈夫でしょう。
既に相当な額を稼いでいるので、特にやらなければ生活できないという事は無いのですが、それではエリオットも暇を持て余してしまいますし、私のお店に居る理由も無くなってしまうというものです。
エリオットは定期的に私の回復魔法が必要なので、近くに居てくれた方がこちらも楽なのです。
エリオットの賞味期限――活動限界はだいたい一年間なので、魔王討伐が終わったらすぐにまた処置を施す事になるでしょう。
そうしなければ食用アンデッドの彼は、腐ってスライム状になってしまうのです。
私がエリオットに教えたワンオペ――『ワンオペレーション』という言葉は、“一人で作業を行う”というものです。
お店に関してはエリオットが今回、その役割を担うという事です。
コンビニ勤めの私には『ワンオペ』という言葉は馴染みのあるものでしたが、実際にワンオペだった事はありません。
勤めていたお店は、どの時間帯でも二人体勢でしたから。
ただ、この世界に来てから、この世界で生きる上で、こう解釈するようになりました。
この世界にたった一人、異世界から転移してきた私こそ、この過酷な環境で生き残るという『ワンオペレーション』を試されているのだ。――と。
天使たちが仲間になって傍に居てくれるおかげで生き延びてはいますが、誰が何人傍に居ようとも、この異世界で私はたった一人きりの異邦人なのだという思いは拭えません。
だから――ずっと――『ワンオペレーション』
まあ、彼女たちが居なければ、私などとっくに生きては居ないと思いますけれど。
「とりあえず北に向かうわ。何かあったらすぐに転移して戻るから、心配しないで。……では、行ってきます」
私たちを乗せた幌馬車が、ゆっくりと動き出します。
御者台に乗って馬を操るのは、フォウです。
ゆっくり、ゆっくりと、コンビニから遠ざかって行きます。
どこまでも続く青い空が、先日見た元の世界の空の青と重なります。
同じようで、まったく違う空。
溢れてきそうな寂寥感は、胸の奥に無理やり押し込みました。
「まだやる事はある。……頑張らなきゃ」
このように、勇者パーティー一行の出立は、身内だけで静かに済まされました。
私たちが魔王討伐に向かう事を知ったシルバニア国の国王は、国を挙げて派手に勇者パーティーを送り出そうと計画したそうですが、ランドルフを通して丁重にお断りしました。
だって、そんな事をされても、恥ずかしいだけですから。
そのため私が用意するものは、着替えなどの私物のみで、野営で使うテントやベッドなどの大き目のものとかは、全部フォウの袖口に収まっているとの事でした。
寝袋ではなく、ベッドらしいです。
テントも本当にテントなのでしょうか。
もしかしたら小さ目の家の間違いなのでは、と疑うレベルです。
とは言えお金には困っていないので、近くに街があればそこに寄って宿に泊まるつもりです。
道中、街に寄れない時など仕方のない時にだけ野営をすればいいだけの話で、それも都合が悪ければ転移で家に帰るか、適当な街の宿まで戻ってしまえばいいのです。
でもそれだと旅の気分が台無しですね。……やはり宿に加えて野営も挟み、家に帰ってくる事はやめておきましょう。
サーラたちを迎えに行った後、私の家に一泊してもらい、そういっただいたいの事は一晩だけのミーティングで決定しました。
なんだか旅行を決めてからは、あっという間でした。
旅立ちの前の緊張で眠れないという事は一切なく、ぐっすりと眠れました。
そして朝を迎え、私たちはもう、出発をしようとしています。
「じゃあ、気を付けて行くんだよ。サオリ」
「うん、ランドルフも元気でね」
ランドルフと騎士団のメンバー数人も、駆けつけてくれました。
私たちを見送るために、今日の仕事は遅らせたそうです。
「ご武運を。サオリ様」
「ありがとう。あなたは確か……ダルカスさんね。覚えてるわ」
「道中のご無事をお祈り申し上げます」
「まあトゥーリさん! あなたまで来てくれたの?」
シルバニア家の馬を管理している、トゥーリさんまでもが見送りに来てくれました。
「みなさんお忙しい所をわざわざありがとう。……ランドルフも毎日お見舞いに来てくれてありがとうね。凄く嬉しかった。まだ本調子じゃないけど、旅行で気分転換してくるね」
「ああ、ゆっくり行くといいさ。魔王の事は無理するなよ」
結局魔王討伐のメンバーは私とサーラ、それに四人の天使だけです。
エリオットとランドルフは参加しません。
ランドルフは自分が行っても足手まといにしかならないと遠慮していましたが、エリオットは参加する気満々だったようです。
お留守番を言い渡した時の彼の反応は「信じられない!」と、憤っていました。
そんなに旅行がしたかったのでしょうか。
エリオットには申し訳ありませんが、せっかく女性だけでパーティーが完成しているというのに、わざわざ一人だけ男性を入れる必要はないと判断しました。
「お店は頼みますよ、エリオット」
「ああ、それは任せておけ。とっくにワンオペってやつには慣れたからな」
エリオットには発注のやり方も教えてあるので、お店に出す商品の補充も大丈夫でしょう。
既に相当な額を稼いでいるので、特にやらなければ生活できないという事は無いのですが、それではエリオットも暇を持て余してしまいますし、私のお店に居る理由も無くなってしまうというものです。
エリオットは定期的に私の回復魔法が必要なので、近くに居てくれた方がこちらも楽なのです。
エリオットの賞味期限――活動限界はだいたい一年間なので、魔王討伐が終わったらすぐにまた処置を施す事になるでしょう。
そうしなければ食用アンデッドの彼は、腐ってスライム状になってしまうのです。
私がエリオットに教えたワンオペ――『ワンオペレーション』という言葉は、“一人で作業を行う”というものです。
お店に関してはエリオットが今回、その役割を担うという事です。
コンビニ勤めの私には『ワンオペ』という言葉は馴染みのあるものでしたが、実際にワンオペだった事はありません。
勤めていたお店は、どの時間帯でも二人体勢でしたから。
ただ、この世界に来てから、この世界で生きる上で、こう解釈するようになりました。
この世界にたった一人、異世界から転移してきた私こそ、この過酷な環境で生き残るという『ワンオペレーション』を試されているのだ。――と。
天使たちが仲間になって傍に居てくれるおかげで生き延びてはいますが、誰が何人傍に居ようとも、この異世界で私はたった一人きりの異邦人なのだという思いは拭えません。
だから――ずっと――『ワンオペレーション』
まあ、彼女たちが居なければ、私などとっくに生きては居ないと思いますけれど。
「とりあえず北に向かうわ。何かあったらすぐに転移して戻るから、心配しないで。……では、行ってきます」
私たちを乗せた幌馬車が、ゆっくりと動き出します。
御者台に乗って馬を操るのは、フォウです。
ゆっくり、ゆっくりと、コンビニから遠ざかって行きます。
どこまでも続く青い空が、先日見た元の世界の空の青と重なります。
同じようで、まったく違う空。
溢れてきそうな寂寥感は、胸の奥に無理やり押し込みました。
「まだやる事はある。……頑張らなきゃ」
このように、勇者パーティー一行の出立は、身内だけで静かに済まされました。
私たちが魔王討伐に向かう事を知ったシルバニア国の国王は、国を挙げて派手に勇者パーティーを送り出そうと計画したそうですが、ランドルフを通して丁重にお断りしました。
だって、そんな事をされても、恥ずかしいだけですから。
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