宮廷画家は悪役令嬢

悪役令嬢幼女編

悪役令嬢は店舗をデザインしたといえるのだろうか

私は草汁画に合う額縁を探してもらうことにして草汁画を干しているところに書き置きを残し、ハンナとともに部屋を出て、支度を済ませ、移動用の馬車に乗り込んだ。

さて、これからは店舗の内装確認だ。まさか昨日の今日でここまでことが進むとは思ってはいなかったため、すでに店舗が確保されているということが驚きだ。
店舗は王都の城下町の二番街、雑貨屋などが多く立ち並ぶ区画で開店一週間で店が潰れることがあるくらい店同士の競争が激しい場所ならしい。
はたしてヴェーラ商会は生き残ることができるのだろうか。
馬車が止まったので私は馬車を降りるとヴェーラ商会の店舗らしき建物があった。
ヴェーラ商会の記念すべき一号店は前世の某ジュエリー店のような、某本屋のような、少しお屋敷に近い風貌をしていた。
外壁は年季が入って少しくすんでいるところやひびが入っているところがある白い壁で、屋根は藍色。扉は深いこげ茶色だ。
さっそく扉を開け、中に入るとすでにお母様がオーキッドさんと話し合いを始めているようだった。


「お待たせしました」


「あら、良いのよ。約束していた時間まではまだ余裕があるのだから。早めに到着できるなんてエルちゃんは偉い子だわ」


出た。インヴィディア家のエルヴェラール良い子良い子可愛い子攻撃。こういう扱いのせいでゲームのエルヴェラールはわがままになったんだよな。私も気をつけないと。


「ところで話し合いはどこまで進んでいましたか？」


「これから始まるところですよ、お嬢様」


それなら、お母様とオーキッドさんはさっきまで何を話していたというんだ。結構真面目なお話をしているように見えたんだけど。


「エルちゃんが来るまでは次のシーズンの流行の話をしていたのよ」


シーズンというのは社交シーズンのことだ。ローゼンシュヴァリエ王国の貴族は夏から秋にかけてを王都の別邸に住み、他の領地やら人間関係やらの情報を交換するために、各々の家で夜会を開き、社交する。
次のシーズンは二週間後あたりから始まるため、王都から離れたところに領地がある貴族はすでに王都に移住し始めている。


「オーキッドには申し訳ないのだけど次のシーズンまでに新しいドレスを仕立ててもらって、ヴェーラ商会の商品を流行にしたいと思っているの、という話よ」


確か昨日私のメイド服セットと一緒にお母様のドレスが届いていたような気がするのは気のせいだろうか。


「この間仕立ててもらったものは別の日に着るわ。シーズン初めのドレスはヴェーラ商会が印象に残るようなものがいいのよ。せっかくエルちゃんの宝石を自慢できるんだもの」