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悪役令嬢学園編
悪役令嬢はタローを哀れに思う
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私たちはお兄様の後ろについて入学式の会場である第一体育館へ向かった。
道中何回かレオン殿下が私のエスコートを申し出たが全てお断りした。王子よ、そういうのはヒロインにしてやってくれ。
第一体育館に着くと新入生は家の爵位順でその中では当着順に整列させられているようだった。
私は公爵令嬢なので最前列でレオン殿下の隣だった。なんか嫌だ。
新入生代表挨拶はレオン殿下かと思いきやアルムでとても短くて聴きやすい内容で助かった。
しかし、締めの学園長の話が長く、私は何度か夢の国へ旅立ちそうになってしまった。
「……でありますから皆、精進するように! それから明日の試験に向けて今日はしっかりと復習すること! 以上」
待ってくれ校長。私、試験があるなんて聞いてない。
学園長の話は明日、試験があるという爆弾を投下して締めくくられた。
この8年間は絵を描いていただけで勉強など全くしていなかった。
もしかして、この後ヴォルグ様と喫茶店に行っている場合ではないのではなかろうか。
「それでは新入生の皆さん、学舎の案内をしますのでついてきてくださいね」
入学式が終わってからは強制参加の学舎案内があり、学園の先輩が案内役として先導してくれた。
まず最初に歴代学園長像がある場所に連れていかれた。
学園長像のブロンズは4体あり、先輩は一体ずつ紹介してくれた。
一体目の像は少し丸みのある顔で肩幅が広く遠くを見つめているようなパンチパーマのどこかで見かけたような気がした。
「こちらは初代学園長のゲッタン様です」
「ゲタじゃん」
そうだ、ゲタだ。石膏像課題でよく出されるゲタ。確か、ローマ皇帝でカラカラ帝の弟だった気がする。カラカラ帝は名前の響きやら強面めのイケメンだったため結構好きだった。市民のために大浴場も作ってくれたいい人だしね。
それなのに弟のゲタは丸くてむすっとした顔をした像。無機質に見える石膏像ではなくブロンズだと案外可愛いかもしれない。顎が饅頭みたいで。
「こちらが2代目のモーリー様です」
「……モリエール」
時代も人種も全く違うじゃないか。これは乙女ゲーム製作陣が石膏像からそれらしそうな見た目の人物を選んで並べているだけな気がしてきた。
モリエールは俳優で作家の人だ。
フワッフワのロングヘアが特徴的だが、後頭部は帽子をかぶっているのかハゲているのかは分からないが、毛がない。
「そしてこちらが3代目のブルルタス様です」
「And you, Brutus?」
ブルータス、お前もか。
カエサルじゃなくてブルータスとはなかなかセンスが良いと思う。
「最後に4代目のタロー様です」
「最後の最後でやる気無くしたね?!」
「どうかしましたかインヴィディア嬢」
「あ、いえ。なんでもありません」
名前がタローなのに像はジョルジョだった。ジョルジョは眉間にシワを寄せた若い顔のイケメンというよりは美人さんというような顔立ちをしている。
他の石膏像たちは名前を少しいじられた程度に抑えられていたが、タローは原型を全くとどめていない。
かわいそうにジョルジョ、いや、タロー。せめてジョルジョーンとかジョージとかにしてあげればよかったのに。
ちなみに像はまだ無いが、現学園長の名前はラオゴン先生という。
天然パーマにもじゃもじゃの髭が特徴的で服の上からもゴリマッチョだと分かる体型で強面気味の顔立ち。
現学園長もどこかで見かけたような気がする。
あれはラオコ……これ以上はやめておこう。
「これで学舎案内は終わりになります。もっと見て行っても構いませんし帰っても構いません。明日は遅刻しないようにしましょうね」
学舎案内は、学園長像の後は学生寮、中庭、食堂、各教室を周り、学園長像の前で解散となった。
「エル」
ヴォルグ様が行こうか、と声をかけてくれたのだが私は試験のことが心配で、遊んでいる暇はないかもしれないということを話した。
「俺でよかったら教えようか?」
「本当ですか!」
やっぱり言ってみるもんだね。
私はヴォルグ様に昔話がてら勉強を教えてもらうことになったため、私は一旦家にノートと教本を取りに戻ることになった。
ヴォルグ様は喫茶店の近くの噴水広場で待っていると言ったので私は急いで家に戻った。
私の家はインヴィディア領と王都に一つずつある。もっと詳しく言えば別荘やら何やらで他にもたくさんあるらしいが私は行ったことがない。
社交シーズンは王都の家、それ以外はインヴィディア領の家に住む。
インヴィディア領は王都のすぐ隣にあるため、王都の家とインヴィディア領の家は馬車で30分くらいしか離れていない。
王都に家、いらない気がする。
今は学園に入るために王都の家に滞在している。学園から王都の家までは徒歩10分なのだが、学園は全寮制のため、残念ながら明日からは寮生活だ。
まあ、いざとなればすぐに帰れる距離だしホームシックにはならなそう。
家に着くなり私は勉強道具をカバンに詰め、走って家を出た。
お父様とハンナが話しているのを途中で見かけたため、行ってきますを言うとお父様が鬼の形相をした。
私の娘は渡さんと聞こえたのは気のせいだろうか。
道中何回かレオン殿下が私のエスコートを申し出たが全てお断りした。王子よ、そういうのはヒロインにしてやってくれ。
第一体育館に着くと新入生は家の爵位順でその中では当着順に整列させられているようだった。
私は公爵令嬢なので最前列でレオン殿下の隣だった。なんか嫌だ。
新入生代表挨拶はレオン殿下かと思いきやアルムでとても短くて聴きやすい内容で助かった。
しかし、締めの学園長の話が長く、私は何度か夢の国へ旅立ちそうになってしまった。
「……でありますから皆、精進するように! それから明日の試験に向けて今日はしっかりと復習すること! 以上」
待ってくれ校長。私、試験があるなんて聞いてない。
学園長の話は明日、試験があるという爆弾を投下して締めくくられた。
この8年間は絵を描いていただけで勉強など全くしていなかった。
もしかして、この後ヴォルグ様と喫茶店に行っている場合ではないのではなかろうか。
「それでは新入生の皆さん、学舎の案内をしますのでついてきてくださいね」
入学式が終わってからは強制参加の学舎案内があり、学園の先輩が案内役として先導してくれた。
まず最初に歴代学園長像がある場所に連れていかれた。
学園長像のブロンズは4体あり、先輩は一体ずつ紹介してくれた。
一体目の像は少し丸みのある顔で肩幅が広く遠くを見つめているようなパンチパーマのどこかで見かけたような気がした。
「こちらは初代学園長のゲッタン様です」
「ゲタじゃん」
そうだ、ゲタだ。石膏像課題でよく出されるゲタ。確か、ローマ皇帝でカラカラ帝の弟だった気がする。カラカラ帝は名前の響きやら強面めのイケメンだったため結構好きだった。市民のために大浴場も作ってくれたいい人だしね。
それなのに弟のゲタは丸くてむすっとした顔をした像。無機質に見える石膏像ではなくブロンズだと案外可愛いかもしれない。顎が饅頭みたいで。
「こちらが2代目のモーリー様です」
「……モリエール」
時代も人種も全く違うじゃないか。これは乙女ゲーム製作陣が石膏像からそれらしそうな見た目の人物を選んで並べているだけな気がしてきた。
モリエールは俳優で作家の人だ。
フワッフワのロングヘアが特徴的だが、後頭部は帽子をかぶっているのかハゲているのかは分からないが、毛がない。
「そしてこちらが3代目のブルルタス様です」
「And you, Brutus?」
ブルータス、お前もか。
カエサルじゃなくてブルータスとはなかなかセンスが良いと思う。
「最後に4代目のタロー様です」
「最後の最後でやる気無くしたね?!」
「どうかしましたかインヴィディア嬢」
「あ、いえ。なんでもありません」
名前がタローなのに像はジョルジョだった。ジョルジョは眉間にシワを寄せた若い顔のイケメンというよりは美人さんというような顔立ちをしている。
他の石膏像たちは名前を少しいじられた程度に抑えられていたが、タローは原型を全くとどめていない。
かわいそうにジョルジョ、いや、タロー。せめてジョルジョーンとかジョージとかにしてあげればよかったのに。
ちなみに像はまだ無いが、現学園長の名前はラオゴン先生という。
天然パーマにもじゃもじゃの髭が特徴的で服の上からもゴリマッチョだと分かる体型で強面気味の顔立ち。
現学園長もどこかで見かけたような気がする。
あれはラオコ……これ以上はやめておこう。
「これで学舎案内は終わりになります。もっと見て行っても構いませんし帰っても構いません。明日は遅刻しないようにしましょうね」
学舎案内は、学園長像の後は学生寮、中庭、食堂、各教室を周り、学園長像の前で解散となった。
「エル」
ヴォルグ様が行こうか、と声をかけてくれたのだが私は試験のことが心配で、遊んでいる暇はないかもしれないということを話した。
「俺でよかったら教えようか?」
「本当ですか!」
やっぱり言ってみるもんだね。
私はヴォルグ様に昔話がてら勉強を教えてもらうことになったため、私は一旦家にノートと教本を取りに戻ることになった。
ヴォルグ様は喫茶店の近くの噴水広場で待っていると言ったので私は急いで家に戻った。
私の家はインヴィディア領と王都に一つずつある。もっと詳しく言えば別荘やら何やらで他にもたくさんあるらしいが私は行ったことがない。
社交シーズンは王都の家、それ以外はインヴィディア領の家に住む。
インヴィディア領は王都のすぐ隣にあるため、王都の家とインヴィディア領の家は馬車で30分くらいしか離れていない。
王都に家、いらない気がする。
今は学園に入るために王都の家に滞在している。学園から王都の家までは徒歩10分なのだが、学園は全寮制のため、残念ながら明日からは寮生活だ。
まあ、いざとなればすぐに帰れる距離だしホームシックにはならなそう。
家に着くなり私は勉強道具をカバンに詰め、走って家を出た。
お父様とハンナが話しているのを途中で見かけたため、行ってきますを言うとお父様が鬼の形相をした。
私の娘は渡さんと聞こえたのは気のせいだろうか。
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