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□ 現実世界
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□ 現実世界
桜の花びらが風に流され散っていく季節。
あの不可解な出来事が始まる日。
神夜はいつも通り学校に行き、授業を受け、解るはずもないプリントの問題式を解いていた。
それもそのはず、神夜は小中ともに学校にろくに行かずいつも、奇妙な絵ばかり描いていたからである。そんな神夜でももう高校2年生だ。
高校2年生にもなって学校をボイコットするほど世間知らずな人間ではないし、神夜は馬鹿じゃない。
《馬鹿じゃない》の定義は、神夜自身にあったのだが、大人になると勉強ができる頭の良さと、世の中をうまく渡り歩く頭の良さは違う。
神夜の頭の良さは、「世の中を上手く渡り歩く」頭の良さである。
だが、その賢さは学校において、発揮できるような万能な思考能力ではないし、人に話しても、「そんなの理想論でしかないよね」と言われてしまう。
先を予想して行動よりも言葉や思考が先行するのが、神夜なのだ。
大衆から見れば、口ばっかりの意見が先行する「やってもいないのに」「結果が出てないのに」の一点張りで「信用できない」と同じ。
つまり、口ばっかりの人間と同等に見られがちなのが神夜だが、本当は思考した上で総発言しているのをほとんどのクラスメイトは知らなかった。
つまり、世の中を上手く渡り歩く視点から見た時、賢い分類に該当する。
だが、勉強での頭の良さとは別の話になる。
そして、神夜は、勉強をろくにしてこなかった。
神夜の成績は良いと言えるレベルではない。
成績は下の中。
そんな神夜の日常はというと、学校の窓から、外を眺める日々。
授業を終え、下校時刻になると神夜は学校指定のカバンに教科書や筆箱を詰め込むと、教室を後にした。
学校も後にする神夜の背後からツンツン頭の毛先が鋭い金髪男子高校生が神夜の背後から飛びかかってきた。
「一緒に帰ろうぜ!」
「ああ、帰るか!」
いつも通り幼馴染であり、親友の玄芳暁斗(くろば あきと)と帰ることにした。
学校から、神夜の家までの帰り道に、パン屋があり、そこのパン屋に度々寄っては、パンをごちそうになるのがいつもの下校後の定番ルートであった。
なぜ、そんなに神夜に対して、度々パンをごちそうしてくれるかと言うと、何を隠そう幼馴染の親友でもある玄芳暁斗の、ご両親はパン屋さんなのだ。
「おっ! そうだ。今日も俺っちよらないか。奢るぜ!」
下校途中に前方を歩いていた暁斗が、急に思い出したような口調で言った。
神夜はそのことを言われるだろうと薄々言ってくるのではないかという予感していた。
「あ……あぁ、別に断る理由はないけど、昨日も、その前も、クロワッサンだったじゃん……もしかして今日もか?(まじで、ありがたいんだけど……飽きてきた)」
暁斗は、嬉しそうに飛び跳ね答えた。
「あたり前のこと言うなよ~! 俺がクロワッサン大好きなのを知っているだろ~。うまいからだろ! あとな、その独特のサクサクした食感は、生地を伸ばして、バターを均一にはさんで折りたたみ、それを、また、伸ばしては折りたたむことで、生地とバターが、それぞれ多重に薄い層をなし、それを焼き上げることで生み出される…………」
暁斗は得意げに話す。
暁斗は、パンの話になるといつもこうだ。
大好物のクロワッサンを汚そうもんなら、どんな相手であろうと、文句を訂正する。
性格は、かなりの頑固者だ。
パンの悪口を発言してしまった人は、2時間も放課後に説教をされたことがある。
変な所で人の上に立てる変わった才を持つ存在だ。
神夜は、そんなことを思い出して、ここは大人しくしていようと思い、クロワッサンの自慢話を黙って聞いていた。その間にパン屋玄芳工房に着いた。
暁斗はすぐさまパン屋に入り、華麗なステップを神夜に見せつけながら、カウンターまで行き父親に了承を得る。
「クロワッサン2つもらうよ~‼」
と言い出てきた。
神夜はあまり、お金を使わないため、タダでほぼ毎日パンを貰えるのは、嬉しかったが、ほぼ毎日パンの種類は変わらず。
―――クロワッサン……―――。
クロワッサンを見つめたあと、ふと玄芳工房の入り口付近を見ると、同学年で、同じクラスメイトの光野 愛果(こうの まなか)がスマホ片手にパンを品定めしていた。
光野とは、同じクラスと言うだけの関係だったが、玄芳工房のパンが気に入ったらしくよく見かけることがあった。
今日もそんな一日常の風景として神夜には映る。とても平和な学生生活だ。
神夜達はクロワッサンを袋から出し、豪快に齧りながら、電車が通る踏み切りの線の、前まで来た。
「やっぱクロワッサン……うめ~なぁ~……」
暁斗がいつも通り、クロワッサンを味わっている時だった。
踏切の信号が、ピカピカ光り、「カーン! カーン! カーン! カーン!」と、鳴り始まったのと同時に神夜と暁斗は足を止めた。
なぜ、神夜はともかくとして、暁斗がこの踏切まで来るのか疑問を抱く。
だが暁斗は、この踏切を通る必要はないのだ。
とっくに、暁斗の家は通り過ぎたはずなのに、なぜ、俺と同じ踏切を通過しようとしているのか……。
一瞬、神夜は疑問に思ったが、最近暁斗といて暁斗が新しくクロワッサン以外の事に熱中している事を思い出した神夜はすぐに理解した。
パンの雑誌だ。
その理由は、とても単純だが神夜には、理解しがたいことだった。
そう、神夜達は書店に行こうとしていたのだ。
神夜達は、電車が通り過ぎ、この道が通れるようになるのを待った。
暁斗はなぜ、自分の家でもある玄芳工房を通り過ぎ、神夜とはるばる近くの書店へ行くのかというと、同じことをゆうようだが神夜には理解しがたい。
毎週発売されるパンの事がいろいろ詳しく書いてある雑誌を、暁斗は十二月頃、書店で発見し、その時から、その雑誌がやたら気に入ったらしい。
その雑誌をその日から、毎週かかさず、発売日当日に買っていたのだ。
そして何を隠そうその発売日が今日である。
電車が神夜達の前を通過する。
神夜は、電車が通り過ぎるのを待たずに大声で暁斗に言った。
「なぁ~! 暁斗~そのパン俺の分だよな~!」
と、言ってみたが、……暁斗に届いたか分らない。
そんな時だ。
だが、暁斗の頭上から、一筋の雷のような半透明だが、かすかに青白い光が、ほんの一瞬だけ確認できた。
「⁉」
だが、電車が通る線路や光の反射など、電気が一瞬見えたのかどうかはわからないし、そんな場面に出くわしたこともないし、聞いたこともない神夜は、自分の体調が優れないのではと考え、あまり気にもとめなかった。
不思議に思ったが、何気ない日常がいつもどおり流れていく。
神夜の思考とは裏腹に、先程の一瞬で、どことなく周囲の雰囲気が変わる。
本当に少しの違和感から、徐々に変化していく。
電車が過ぎる前に、暁斗も気づいたのか「二コリッ」として話しかけてきた。
「……は、お前と会へ……本当に……よ……た、ありがとう……」
暁斗の声は、電車の車輪と、線路のかみ合い走る音にあっけなく掻き消された。
そのあと悲しげな顔をしてクロワッサンの袋の中をモゾモゾあさり初めた。
少しすると、クロワッサンを一つ手に取り、自分の口へと運び一口噛み切る。
「やっぱうまいなぁ~クロワッサン……この生地の層がたまんね―んだよなぁ~」
そう言いながら、暁斗は神夜に紙でできたパンの袋を差し出してきた。
その奇妙な暁斗の行動に、少しの間、神夜は黙り込み固まってしまった。
「……急に、どうしたんだよ……お前……なんか今日のお前変だぞ」
「!」
神夜は暁斗の表情を見て再び驚く。
その表情は、今まで暁斗が神夜に見せてきた表情の中でもダントツで奇妙な表情を浮かべていた。
なぜか悲しげでいながらも、寂しげでいて、その眼の奥の瞳は正反対な、楽しそうな、嬉しそうな、眼にもなぜか見えた。
―――不気味だ……―――。
人間の感情表現の仕方から、かけ離れたとても奇妙な感じの雰囲気にその場は包まれる。
いつもの暁斗からは、感じられなかった異様な雰囲気をその時の暁斗からは感じられた。
電車の最後尾が見えてきた。
最後尾の車両が、奇妙な暁斗の横を通り過ぎる。
それと同時にいつもの暁斗が見せる笑顔で……。
「またな……」
と、神夜を見て小さく……。……神夜の所には聞こえる音量で一言呟く。
その一言の言葉と同時に小さなノイズがかかる。
「‼」
神夜は自分の目を疑った。
音のノイズではなく、目に見える目の前で起きたありえないノイズだ。
これは確実におかしいと感じる神夜。
その雰囲気に自然と合わせるかのように、風が吹き、木の葉っぱがザワザワと音を立てて揺れ動く。
そのノイズは足元から頭の先まで、暁斗を歪ませていた。
暁斗は、有り得ないような目で見ている神夜を見て、悲しそうに横を向き、踏切の棒を擦り抜けて線路の上に立った。
その時の一瞬の中にあまりにも信じられない出来事が起きた。
見ての通り、暁斗が踏切の棒を擦り抜けたことだった。
完全に人間技ではない……。
途端に暁斗の足元から細かい青白い光の粒子が見えた。
その光が、頭まで到達するのには、さほど時間はかからなかった。
その青白い不信な光の粒子は、小さな粒のようにも見えたが、よく見ると、確かな正方形型の小さな青白い光の粒子として認識できた。
その正方形型の青白い光の粒子は、暁斗を包み込んだ。
それと同時に、暁斗を包み込んだ青白い光の正方形型の粒子から、
《転送中です》
と、どこからともなく、PCの表示で見る転送画面が、暁斗の前に現れた。
神夜は、絶句してしまった。
そしてすぐさまこうも思った。
有り得ないことが起きても神夜の親友であることには変わりない。
―――なのに、俺が暁斗に対しての、向ける目は人を見る《眼》ではなかった―――。
自分が情けないことに気づく。
―――何してんだ……俺……―――。
―――怖くったって、有り得なくたって、こいつは俺の親友……親友なんだぞ‼―――。
神夜は、この数秒で、暁斗が親友で、大切な存在だということに気づいた。
そう思えるようになった神夜は、急いで暁斗に駆け寄り、恐る恐る肩に手を伸ばした。
その途端に暁斗と神夜は、眩い光を放ってこの世から消滅した。
「‼」
◇◇◇
桜の花びらが風に流され散っていく季節。
あの不可解な出来事が始まる日。
神夜はいつも通り学校に行き、授業を受け、解るはずもないプリントの問題式を解いていた。
それもそのはず、神夜は小中ともに学校にろくに行かずいつも、奇妙な絵ばかり描いていたからである。そんな神夜でももう高校2年生だ。
高校2年生にもなって学校をボイコットするほど世間知らずな人間ではないし、神夜は馬鹿じゃない。
《馬鹿じゃない》の定義は、神夜自身にあったのだが、大人になると勉強ができる頭の良さと、世の中をうまく渡り歩く頭の良さは違う。
神夜の頭の良さは、「世の中を上手く渡り歩く」頭の良さである。
だが、その賢さは学校において、発揮できるような万能な思考能力ではないし、人に話しても、「そんなの理想論でしかないよね」と言われてしまう。
先を予想して行動よりも言葉や思考が先行するのが、神夜なのだ。
大衆から見れば、口ばっかりの意見が先行する「やってもいないのに」「結果が出てないのに」の一点張りで「信用できない」と同じ。
つまり、口ばっかりの人間と同等に見られがちなのが神夜だが、本当は思考した上で総発言しているのをほとんどのクラスメイトは知らなかった。
つまり、世の中を上手く渡り歩く視点から見た時、賢い分類に該当する。
だが、勉強での頭の良さとは別の話になる。
そして、神夜は、勉強をろくにしてこなかった。
神夜の成績は良いと言えるレベルではない。
成績は下の中。
そんな神夜の日常はというと、学校の窓から、外を眺める日々。
授業を終え、下校時刻になると神夜は学校指定のカバンに教科書や筆箱を詰め込むと、教室を後にした。
学校も後にする神夜の背後からツンツン頭の毛先が鋭い金髪男子高校生が神夜の背後から飛びかかってきた。
「一緒に帰ろうぜ!」
「ああ、帰るか!」
いつも通り幼馴染であり、親友の玄芳暁斗(くろば あきと)と帰ることにした。
学校から、神夜の家までの帰り道に、パン屋があり、そこのパン屋に度々寄っては、パンをごちそうになるのがいつもの下校後の定番ルートであった。
なぜ、そんなに神夜に対して、度々パンをごちそうしてくれるかと言うと、何を隠そう幼馴染の親友でもある玄芳暁斗の、ご両親はパン屋さんなのだ。
「おっ! そうだ。今日も俺っちよらないか。奢るぜ!」
下校途中に前方を歩いていた暁斗が、急に思い出したような口調で言った。
神夜はそのことを言われるだろうと薄々言ってくるのではないかという予感していた。
「あ……あぁ、別に断る理由はないけど、昨日も、その前も、クロワッサンだったじゃん……もしかして今日もか?(まじで、ありがたいんだけど……飽きてきた)」
暁斗は、嬉しそうに飛び跳ね答えた。
「あたり前のこと言うなよ~! 俺がクロワッサン大好きなのを知っているだろ~。うまいからだろ! あとな、その独特のサクサクした食感は、生地を伸ばして、バターを均一にはさんで折りたたみ、それを、また、伸ばしては折りたたむことで、生地とバターが、それぞれ多重に薄い層をなし、それを焼き上げることで生み出される…………」
暁斗は得意げに話す。
暁斗は、パンの話になるといつもこうだ。
大好物のクロワッサンを汚そうもんなら、どんな相手であろうと、文句を訂正する。
性格は、かなりの頑固者だ。
パンの悪口を発言してしまった人は、2時間も放課後に説教をされたことがある。
変な所で人の上に立てる変わった才を持つ存在だ。
神夜は、そんなことを思い出して、ここは大人しくしていようと思い、クロワッサンの自慢話を黙って聞いていた。その間にパン屋玄芳工房に着いた。
暁斗はすぐさまパン屋に入り、華麗なステップを神夜に見せつけながら、カウンターまで行き父親に了承を得る。
「クロワッサン2つもらうよ~‼」
と言い出てきた。
神夜はあまり、お金を使わないため、タダでほぼ毎日パンを貰えるのは、嬉しかったが、ほぼ毎日パンの種類は変わらず。
―――クロワッサン……―――。
クロワッサンを見つめたあと、ふと玄芳工房の入り口付近を見ると、同学年で、同じクラスメイトの光野 愛果(こうの まなか)がスマホ片手にパンを品定めしていた。
光野とは、同じクラスと言うだけの関係だったが、玄芳工房のパンが気に入ったらしくよく見かけることがあった。
今日もそんな一日常の風景として神夜には映る。とても平和な学生生活だ。
神夜達はクロワッサンを袋から出し、豪快に齧りながら、電車が通る踏み切りの線の、前まで来た。
「やっぱクロワッサン……うめ~なぁ~……」
暁斗がいつも通り、クロワッサンを味わっている時だった。
踏切の信号が、ピカピカ光り、「カーン! カーン! カーン! カーン!」と、鳴り始まったのと同時に神夜と暁斗は足を止めた。
なぜ、神夜はともかくとして、暁斗がこの踏切まで来るのか疑問を抱く。
だが暁斗は、この踏切を通る必要はないのだ。
とっくに、暁斗の家は通り過ぎたはずなのに、なぜ、俺と同じ踏切を通過しようとしているのか……。
一瞬、神夜は疑問に思ったが、最近暁斗といて暁斗が新しくクロワッサン以外の事に熱中している事を思い出した神夜はすぐに理解した。
パンの雑誌だ。
その理由は、とても単純だが神夜には、理解しがたいことだった。
そう、神夜達は書店に行こうとしていたのだ。
神夜達は、電車が通り過ぎ、この道が通れるようになるのを待った。
暁斗はなぜ、自分の家でもある玄芳工房を通り過ぎ、神夜とはるばる近くの書店へ行くのかというと、同じことをゆうようだが神夜には理解しがたい。
毎週発売されるパンの事がいろいろ詳しく書いてある雑誌を、暁斗は十二月頃、書店で発見し、その時から、その雑誌がやたら気に入ったらしい。
その雑誌をその日から、毎週かかさず、発売日当日に買っていたのだ。
そして何を隠そうその発売日が今日である。
電車が神夜達の前を通過する。
神夜は、電車が通り過ぎるのを待たずに大声で暁斗に言った。
「なぁ~! 暁斗~そのパン俺の分だよな~!」
と、言ってみたが、……暁斗に届いたか分らない。
そんな時だ。
だが、暁斗の頭上から、一筋の雷のような半透明だが、かすかに青白い光が、ほんの一瞬だけ確認できた。
「⁉」
だが、電車が通る線路や光の反射など、電気が一瞬見えたのかどうかはわからないし、そんな場面に出くわしたこともないし、聞いたこともない神夜は、自分の体調が優れないのではと考え、あまり気にもとめなかった。
不思議に思ったが、何気ない日常がいつもどおり流れていく。
神夜の思考とは裏腹に、先程の一瞬で、どことなく周囲の雰囲気が変わる。
本当に少しの違和感から、徐々に変化していく。
電車が過ぎる前に、暁斗も気づいたのか「二コリッ」として話しかけてきた。
「……は、お前と会へ……本当に……よ……た、ありがとう……」
暁斗の声は、電車の車輪と、線路のかみ合い走る音にあっけなく掻き消された。
そのあと悲しげな顔をしてクロワッサンの袋の中をモゾモゾあさり初めた。
少しすると、クロワッサンを一つ手に取り、自分の口へと運び一口噛み切る。
「やっぱうまいなぁ~クロワッサン……この生地の層がたまんね―んだよなぁ~」
そう言いながら、暁斗は神夜に紙でできたパンの袋を差し出してきた。
その奇妙な暁斗の行動に、少しの間、神夜は黙り込み固まってしまった。
「……急に、どうしたんだよ……お前……なんか今日のお前変だぞ」
「!」
神夜は暁斗の表情を見て再び驚く。
その表情は、今まで暁斗が神夜に見せてきた表情の中でもダントツで奇妙な表情を浮かべていた。
なぜか悲しげでいながらも、寂しげでいて、その眼の奥の瞳は正反対な、楽しそうな、嬉しそうな、眼にもなぜか見えた。
―――不気味だ……―――。
人間の感情表現の仕方から、かけ離れたとても奇妙な感じの雰囲気にその場は包まれる。
いつもの暁斗からは、感じられなかった異様な雰囲気をその時の暁斗からは感じられた。
電車の最後尾が見えてきた。
最後尾の車両が、奇妙な暁斗の横を通り過ぎる。
それと同時にいつもの暁斗が見せる笑顔で……。
「またな……」
と、神夜を見て小さく……。……神夜の所には聞こえる音量で一言呟く。
その一言の言葉と同時に小さなノイズがかかる。
「‼」
神夜は自分の目を疑った。
音のノイズではなく、目に見える目の前で起きたありえないノイズだ。
これは確実におかしいと感じる神夜。
その雰囲気に自然と合わせるかのように、風が吹き、木の葉っぱがザワザワと音を立てて揺れ動く。
そのノイズは足元から頭の先まで、暁斗を歪ませていた。
暁斗は、有り得ないような目で見ている神夜を見て、悲しそうに横を向き、踏切の棒を擦り抜けて線路の上に立った。
その時の一瞬の中にあまりにも信じられない出来事が起きた。
見ての通り、暁斗が踏切の棒を擦り抜けたことだった。
完全に人間技ではない……。
途端に暁斗の足元から細かい青白い光の粒子が見えた。
その光が、頭まで到達するのには、さほど時間はかからなかった。
その青白い不信な光の粒子は、小さな粒のようにも見えたが、よく見ると、確かな正方形型の小さな青白い光の粒子として認識できた。
その正方形型の青白い光の粒子は、暁斗を包み込んだ。
それと同時に、暁斗を包み込んだ青白い光の正方形型の粒子から、
《転送中です》
と、どこからともなく、PCの表示で見る転送画面が、暁斗の前に現れた。
神夜は、絶句してしまった。
そしてすぐさまこうも思った。
有り得ないことが起きても神夜の親友であることには変わりない。
―――なのに、俺が暁斗に対しての、向ける目は人を見る《眼》ではなかった―――。
自分が情けないことに気づく。
―――何してんだ……俺……―――。
―――怖くったって、有り得なくたって、こいつは俺の親友……親友なんだぞ‼―――。
神夜は、この数秒で、暁斗が親友で、大切な存在だということに気づいた。
そう思えるようになった神夜は、急いで暁斗に駆け寄り、恐る恐る肩に手を伸ばした。
その途端に暁斗と神夜は、眩い光を放ってこの世から消滅した。
「‼」
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