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第2章
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真理亜は2杯目のマールを飲みながら、午後に課長に呼び出された内容を思い出していた。
3時頃に軽く休憩を兼ねて自販機でカフェオレを買って席に戻ろうとした時だった。
課長がひょっこり廊下に顔を出して真理亜を見つけると、ちょっといいかと会議室に連れていかれたのだ。
決算も監査も終わって、来月のボーナスの準備が始まるまで取り立てて至急の仕事はないはずだ。
軽い打ち合わせだったら同じフロアのミーティングテーブルを使うはずだし、
そのほかにもガラスで仕切った小部屋もあるのに、
わざわざ別の階の会議室を使うのはよほど大事な用なんだろう。
真理亜は覚悟して話を聞こうと勧められた椅子に座った。
ところが課長の話は意外なものだった。
いずれ真理亜に総合職の試験を受ける気はないかと言うのだ。
最初は結婚の予定がないのか聞くので、お局様になる前に肩をたたかれるのかと思ったら、
総合職の試験とは真理亜は思ってもみなかっただけに驚いた。
真理亜が会社の制度を利用して勉強し、いくつかの資格を取得していること、
先日の営業部との調整に奔走したことなども考慮していると言っていた。
このことは課長だけではなく部長も同じように思っているとも言われた。
とりあえず結婚する予定はありませんと答えると、
急ぐ話ではなく、2~3年後に受けてみたらどうかと言われた。
今時、結婚しても働くことを辞めない人も居る。
しかし総合職となると転勤も視野に入れないとならない。
もしも真理亜に縁談が進んでいるとすれば状況も変わる。
課長は、真理亜が大事な部下だからこそ適齢期のこの時期に考えてみたらどうだと言った。
先日母がお膳立てした成瀬のことは問題外だが、家族がそろそろ縁談のことを考えているのはわかっている。
数年前にあの酷い男と付き合ったことで、家族にどれほど心配をかけたかわからない。
実家で暮らしていたので外泊は極力さけていたが、娘の泣いたあとの腫れぼったい顔や
痩せてやつれた身体を心配するあまり何度か事情を聞かれたのだ。
そんな矢先に男から離れてくれたからよかったものの、あのまま続いていたら
そう遠くない時期に家族にも知られてしまったに違いない。
最近の真理亜は落ち着いて何の問題も無いように見えているはずだ。
今、佐々木のことを話したら家族はどう思うだろう。
両親は、特に母は両手を挙げて狂喜乱舞するに違いない。
そこまで考えて真理亜は深いため息をついた。
そもそも佐々木とは付き合い始めたばかりで、まだそういうことは考えられなかった。
マールを飲もうと手を伸ばしたが、グラスはもう空になっていた。
3時頃に軽く休憩を兼ねて自販機でカフェオレを買って席に戻ろうとした時だった。
課長がひょっこり廊下に顔を出して真理亜を見つけると、ちょっといいかと会議室に連れていかれたのだ。
決算も監査も終わって、来月のボーナスの準備が始まるまで取り立てて至急の仕事はないはずだ。
軽い打ち合わせだったら同じフロアのミーティングテーブルを使うはずだし、
そのほかにもガラスで仕切った小部屋もあるのに、
わざわざ別の階の会議室を使うのはよほど大事な用なんだろう。
真理亜は覚悟して話を聞こうと勧められた椅子に座った。
ところが課長の話は意外なものだった。
いずれ真理亜に総合職の試験を受ける気はないかと言うのだ。
最初は結婚の予定がないのか聞くので、お局様になる前に肩をたたかれるのかと思ったら、
総合職の試験とは真理亜は思ってもみなかっただけに驚いた。
真理亜が会社の制度を利用して勉強し、いくつかの資格を取得していること、
先日の営業部との調整に奔走したことなども考慮していると言っていた。
このことは課長だけではなく部長も同じように思っているとも言われた。
とりあえず結婚する予定はありませんと答えると、
急ぐ話ではなく、2~3年後に受けてみたらどうかと言われた。
今時、結婚しても働くことを辞めない人も居る。
しかし総合職となると転勤も視野に入れないとならない。
もしも真理亜に縁談が進んでいるとすれば状況も変わる。
課長は、真理亜が大事な部下だからこそ適齢期のこの時期に考えてみたらどうだと言った。
先日母がお膳立てした成瀬のことは問題外だが、家族がそろそろ縁談のことを考えているのはわかっている。
数年前にあの酷い男と付き合ったことで、家族にどれほど心配をかけたかわからない。
実家で暮らしていたので外泊は極力さけていたが、娘の泣いたあとの腫れぼったい顔や
痩せてやつれた身体を心配するあまり何度か事情を聞かれたのだ。
そんな矢先に男から離れてくれたからよかったものの、あのまま続いていたら
そう遠くない時期に家族にも知られてしまったに違いない。
最近の真理亜は落ち着いて何の問題も無いように見えているはずだ。
今、佐々木のことを話したら家族はどう思うだろう。
両親は、特に母は両手を挙げて狂喜乱舞するに違いない。
そこまで考えて真理亜は深いため息をついた。
そもそも佐々木とは付き合い始めたばかりで、まだそういうことは考えられなかった。
マールを飲もうと手を伸ばしたが、グラスはもう空になっていた。
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