彼女は何度もやり直す〜どんなあなたも愛してる〜

山中実卯

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第一章

四.教会へ行く

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「ルピナス、気難しい教師ではないけれど、何かあったら必ず私に言いなさい」

「はい、わかりましたお父様」

 朝食を終え、ドレスに着替えたルピナスは玄関ホールで父と教師を待っていた。

 そうして約束の時間になると彼はやってきた。

「ようこそいらっしゃいました、ヒューゴ殿。本日はよろしくお願い致します」

「はは、畏まる必要はない。久しぶりだねシモン殿。すっかり大人になったじゃないか。そちらが私の生徒だな?君の髪の色とそっくりだ」

 ルピナスは父を見上げ、彼が頷くと挨拶をした。

「はじめまして、ヒューゴ先生。本日はどうぞよろしくお願いいたします」

 ルピナスは軽くカーテシーをして答えた。

「この子、本当に平民だったのか?なんだかそうとは思えない身のこなしなんだが...」

 驚いた顔をしているこの男は、伯爵家の次男で父の同級生だった人だ。
 この人は少し変わっていて、本来なら私のような下位貴族の教師になることは無いはずだった。
 しかし彼にとって身分など些細な事でしかなく、学ぶ意志がある者に平等に教え、とても寛容だ。
 教えることが生き甲斐のようで、自らも学ぶことをやめない人である。

 私は五才の頃から学園に通うまで彼から勉強を教わっていたが、このように驚く顔を見るのは初めてだった。

「挨拶や食事作法などは形になっているように思います。ですので先に語学や歴史などを教えてもらいたく貴方にお願いしました。本当は文字から教いただきたかったのですが、先日お伝えした通り、すでに取得しているようです」

「はぁ~そうなんだ。それは教え甲斐がありそうだ、よろしく頼むよルピナス嬢」

 感心した様に呟き、彼の瞳がキラリと輝いた。



 ルピナスが勉強を始めてから一時間ほど経った時だった。
 遠くの方からドタバタと音がした。
 その音が私の居る書斎の前で止まったと思うと、扉が勢いよく開かれた。

「信じられないよ!この子、魔法が使えるじゃないか!」

 ルピナスを脇に抱えながらヒューゴは興奮して捲し立てた。

「語学の次に歴史の勉強に入ったんだがね、あ、語学は問題ないだろう。真面目にやれば入学までに覚えられるんじゃないか。この子真面目だしな」

「この国の歴史も魔法とは切っても切れない縁があるだろう?魔力があり、その力を使える者はいつの時代も重宝されたものだ」

「この子、ルピナス嬢は恐らく二つ以上の属性の魔力を持っている。魔法の話になった時に、手のひらに水を出してみせたんだ!」

「他にも魔法を使えるかと聞いたら、さらに風で本を浮かせてくれた!」

「そうなんですね、それはすごいです。とりあえずルピナスを下ろしてから話しませんか?」



 それからもヒューゴの興奮が収まらず勉強はお開きになった。
 私もルピナスが魔法を使えるということには驚いたが、相手が興奮していると逆にこちらは冷静になるものだ。

 ヒューゴは「ルピナスが祝福を受けるところを見たい」と懇願してきた。
 彼が仲介してくれるというので、彼の同行の下、教会へ行くことになった。
 本来ならば予め申請していなければ祝福を受けることはできない。

「善は急げというだろう?」

 馬車に乗り込んでからもヒューゴは、もう五十を超えているというのに、子供のようにワクワクした気持ちを隠さずに話し続けている。

 この国の貴族には、七才になる誕生月に魔力を調べることを意味する『祝福』を受ける決まりがある。
 何故祝福と呼ぶのかというと、魔力は神から授けられた力だと伝えられているからだ。

 王都や大公領にある神殿、各地にある教会で祝福を受けるのだが、平民だったルピナスはそれをしていない。

 男爵領には祝福を受けられる教会がない。
 そのため隣の領を越えた先、伯爵領にある教会へと向かうこととなった。
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