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∞49【夫婦の間で交わされる無言のやり取り】

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「わたしに“バランス”教えてっ!父!!」

 昼飯時ひるめしどきの食卓に着くやいなや、母が作った薄焼きパンにがっつきながらそう言ったアゾロの顔をしげしげと眺める父。

 アゾロにとっての父がそうであるように、父にとっても娘は理解の外の住人である。

「……バランス?」

 突然、“バランス教えて”ってだけ言われても……
 という顔をする父。

 娘のカップに薄いお茶を注いでやりながら、母がアゾロに訊ねた。

「“強さのバランス”、ってこと?」

 なぜか、家族の中で一番“強さ”から縁遠いハズの母だけが、アゾロの言わんとすることを理解できている。夢のおっさんなら『岡目八目おかめはちもく』とか表現するところだろうが、この世界には囲碁はない。

「そうっ!わたしを強くして、父!!」

 父娘おやこ特有の遠慮のなさで、父に対して一方的に要求だけをするアゾロ

 アゾロこいつワガママだな、一体誰に似たのやら……
 と思いつつ、母の顔を見る父。
 ……貴方あなたよ、と思いつつ父の視線を受け流す母。

「ぼくもつよくなる!一緒にやろ、お姉ちゃん!ね?いいでしょ、お父さん!!」

 純粋に強さを求めるディオアンブラ家長男からの提案により、父の意見も聞かずに昼食後の稽古が決定した。
 5歳の息子エミルからキラキラした瞳を向けられると、父も断りづらい。

 オレ、伯爵様だから結構忙しいんだけど……
 と思いつつ、母に視線で助けを求める父。
 ……諦めなさい、と思いつつ父からの視線を横顔で受け流す母。

 夫婦の間で交わされる無言のやり取りに全く気付くことなく、アゾロは言った。

「みんなで強くなって、故郷ふるさとを守ろう!」
「オー!」

 音頭を取るアゾロと、それに合するエミル。

 いつから、故郷ふるさとピンチになったの……?
 の視線を母に向ける父。
 ……知らな~い、の顔で食後のお茶を喫する母。



…To Be Continued.
⇒Next Episode.
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