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11―晴明の《術》
しおりを挟む琥珀に、
「ここからが、肝心なんだが。」
そう告げた晴明は、心なしか幾分かいつもの強気は見せずに。
その後に続く言葉への琥珀の反応を気遣うようだった。
晴明が、琥珀へ告げたこと。
それは。
「琥珀が夢に浮かされるように里に下りた、あの日こそが《三年の約束》の日であったこと。
けれど、《三年の約束》それこそで琥珀に晴明の《呪》がかかってしまっていたこと。
それにより、必要以上に主として晴明を求めてしまっていたこと。
片側だけ、というのは術として不完全であるため。それをとき、あらたに琥珀への術を使い、晴明は琥珀を《使い》としたこと。」
だった。そして。
琥珀は、真剣な顔で、晴明の言葉を一つも聞きもらすまいとしていた。
そんな琥珀に。晴明は続ける。
「あらたにお前に術をかけ、今度こそ術は本物となった。」と。
琥珀は、胸に、未だ強く晴明への想いを感じたが、これはどこからくるのかと、思わずにはいられなかった。
そして、晴明の言葉の意味を完全には理解出来なかった。
「そして。本当に術のかかったお前を起こすのに、私は。あの方法で起こしたのだが…。」
琥珀が未だ混乱の中にいるのに、晴明は何処か気まずそうにそのまま続ける。そんな晴明に、一気に真っ赤になる琥珀。
そして、ここから琥珀は耳を疑った。
「お前を起こしたとき完全にかかった術で、いまやお前は、完全なる人間の姿になった。そのしっぽを除いては。もう、もとの姿に戻ることはない。いや、出来ない。人間として暮らしていくのに、しっぽさえ必要なときは私の力で消すことができる。」
そう、事も無げに言った晴明に、琥珀は驚き、晴明を見つめて。愕然とせずにはいられなかった。
〈続く〉
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