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13―半妖の宣告と晴明

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晴明が琥珀に語った言葉。

「もう私ですら、もとの姿に戻すことは出来ない。」

「お前が私のもとを離れようとしたとき。その頭に耳が生え、しっぽは私ですら、消せなくなる。半妖となるのだ。」

その残酷な宣告に、琥珀は頭が一杯になって、しばらくは生活に支障をきたすほど、晴明との会話も不自然になるほどだった。

琥珀は晴明の琥珀の為に用意させた食事にもほぼ手をつけずに、晴明がそのもとをたずねても、語らり合うことはなかった。

流石の晴明も、これにはほとほとまいり、自らの物言いに反省せずにはいられなかった。

ただ、あの時、術をかけているときの晴明は、琥珀を己の物にすることで頭が一杯で余裕が失く、何時になく、術が不完全な物になってしまったのだ。

そして、そのしわ寄せが、琥珀に行った。

「もとの姿に戻すことは出来ない。」

「離れたら半妖となる。」

どちらもまだ幼さを残す琥珀には残酷な宣告だったと、今はおもう。
だが、どちらも、真実だ。
特に特別視すべきなのが。
術のある一定条件の後、琥珀が晴明のもとを離れようとしたときには。
琥珀に語ったことは、現実となる。

離す、つもりはない。と晴明は思う。
『使い』として、大切に大切に、私の屋敷で琥珀のくつろげるよう、琥珀の楽しめるよう、扱おう。
可愛い、琥珀。ずっとそばにいるといい。私が大切に守ってやろう。晴明は改めてそう自分に誓った。
もはや晴明は、この自分の中の琥珀への想いを、愛しさを、抑えきれそうになかった。

                                                    〈続く〉
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