16 / 45
16
しおりを挟む
「ピルは生理が来たその日から飲み始めてください。生理の予定日はいつですか?」
「あ、もう来ちゃいました…金曜日に」
「じゃ次の生理から飲み始めて下さいね。飲み忘れは絶対無いようにしてください。それでも飲み忘れた日は次の日に2錠飲んでください。2日以上飲み忘れたらその月は避妊効果はありませんから、次の次の生理が来た時に1からやり直しになります」
「はい…」
その日からすぐ飲めるわけじゃないんだー…。色々めんどくさいなぁ…けど、丁寧に説明してくれる優しい女医さんで良かった。
「何か質問ありますか?」
「あの、ピルと関係ないんですけど。生理来て4日目なんですけどいつもと違って全然出血が無くて…」
「…それは何日目からですか?」
「えっと…、2日目も3日目も全然ありませんでした。1日目にちょっとあったくらいで…」
「うーん、ちょっと検査してみましょうか」
というわけで、尿検査をさせられ待合室で待っていると診察室に再び呼ばれた。
「エコー撮りますので下着を脱いで診察台に上がって下さい」
エコー?なんで?生理と関係ある?…頭の中に?マークが出まくりながら診察台に上がった。器具が体の中に入って来るのが痛重い…
「妊娠、してますね」
「え!?」
「ここにいるのが赤ちゃんです。5週目ですね」
左頭上にあるモニターで、先生がこれが赤ちゃん、という場所を画面に矢印を出して説明した。
「え、え?生理来ましたよ?生理来てるのに妊娠するんですか?」
「えっと、説明するから診察台から降りて服を着て出てきてください」
…なに?どういうこと?なんで?さっき以上に頭の中が?だらけだ。それからものすごい不安が襲ってきた。
「生理が来たと思ったのは、着床出血ですね。妊娠しましたよっていうしるしみたいなものです」
「…」
「えーっと…17歳?高校生ですか?」
「…はい…」
あたしは消え入りそうな声で返事をした。制服で産婦人科に行くのは目立つだろうと思って私服で来たけど…まぁ高校生ですかって質問になるのが当然か。
「想像してなかったみたいだけど…まだ学生さんだし、しっかり父親の方と親御さんとも相談してくださいね。もちろんピルは処方出来ません」
「ありがとうございました…」
診察室から待合室まで戻る足取りがものすごく重かった。病院を出て家に帰るまでも。
生理が来たって思った時点で、妊娠の兆候なんて全く調べてなかった。着床出血、って何よ…
家に一旦帰って制服を着直して学校に行くつもりだったけど、そんな気持ちは一気に無くなりあたしはひとりぼっちの家で久志くんが帰ってくるまで心細くてずっと泣いていた。
…どうしよう…
***
「菜々?帰ってんの?」
仕事を終えて帰ってきた久志くんが、陽が落ちると共に暗くなってきた部屋の中にいるあたしを玄関から呼んだ。
気配はあるのに返事がないあたしを心配して、早足で部屋に入ってきた。
「どうしたん!めっちゃしんどそうやん…ていうか泣いてる?」
「…出来てた…」
「何が?」
「…赤ちゃんが、出来てた…」
「え?どういうこと?え、なんで?え?」
取り乱す久志くんに抱きつくと更に涙が出てきた。
こうこうで、こうだから生理が来たのは勘違いだった。病院で調べたから間違いない。エコー写真ももらった。
久志くんと向き合い、何度も声を詰まらせながら説明した。ゆっくりでいいよ、って最初に言われて話してたからかなり時間が経っていたと思う。あたしが話を聞いている間久志くんはずっと黙っていた。
話し終わった後もしばらく無言で、部屋にはあたしのすすり泣く声だけが響いていた。
「…ごめん」
久志くんがあたしに向かって土下座をした。
「やめて…」
土下座をしてくるっていうことは、どういうことか。久志くんが口を開く前にわかった。
「ほんまに、ほんまにごめん。…堕ろしてください」
「なんでなん…?」
産めそうにないことはもうわかってた。けど理由が聞きたかった。
「大丈夫やろって軽く考えてた。…今まで失敗したことなかったから」
失敗。久志くんにとっては今あたしが妊娠してる状況は失敗なんだ…
「車乗ってる時も、菜々が検査薬してる時も、もし妊娠してたらって考えた。俺はまだ父親になる覚悟が無い。…菜々のことも子供のことも幸せにしてあげれる自信も無くて」
「…」
「生理来たって言われて安心しきってた」
「…久志くんとは別れるから、父親にならんくていいから、1人で産むのもあかんの?」
「…ごめん。菜々とは別れたくない。たとえ別れて産んだとしても自分の知らんとこで子供が育つなんて考えれへん…」
「迷惑かけへんから…」
「無理やって!まだ子供なんやから親の力とか借りな育てられへんねん。菜々、お母さんに頼れる?助けてくれる?」
あたしは近くにあったティッシュ箱を久志くんに投げた。
痛っ…って眉をしかめながら小さく呟いた久志くんの顔にイラついて、ドライヤーとか化粧水とか、そこら中のものを全部投げつけた。久志くんはあたしを止めずにずっと黙っていた。
「あたしは子供なんやろ!?なんで子供に対して中出しなんかしてたん!?」
「ごめん。ほんまにごめん」
あたしは泣いて暴れて、力尽きて意識を失う様に眠ってしまった。
ごめん。ほんまにごめん。
久志くんは何度も小さく呟きながら、床に突っ伏しているあたしを抱きかかえて、ベッドに寝かせた。
…久志くんだけが悪いんじゃない。久志くんの言葉を鵜呑みにしたあたしだって悪いんだ。大丈夫って言われたし、今までの自分の経験上でも大丈夫だって思ってなぁなぁにしてたんだから。
わかってる。わかってるけど。
産みたい。けど産めない…
この状況になってから、なんてことをしたんだろうってやっとわかった。
「あ、もう来ちゃいました…金曜日に」
「じゃ次の生理から飲み始めて下さいね。飲み忘れは絶対無いようにしてください。それでも飲み忘れた日は次の日に2錠飲んでください。2日以上飲み忘れたらその月は避妊効果はありませんから、次の次の生理が来た時に1からやり直しになります」
「はい…」
その日からすぐ飲めるわけじゃないんだー…。色々めんどくさいなぁ…けど、丁寧に説明してくれる優しい女医さんで良かった。
「何か質問ありますか?」
「あの、ピルと関係ないんですけど。生理来て4日目なんですけどいつもと違って全然出血が無くて…」
「…それは何日目からですか?」
「えっと…、2日目も3日目も全然ありませんでした。1日目にちょっとあったくらいで…」
「うーん、ちょっと検査してみましょうか」
というわけで、尿検査をさせられ待合室で待っていると診察室に再び呼ばれた。
「エコー撮りますので下着を脱いで診察台に上がって下さい」
エコー?なんで?生理と関係ある?…頭の中に?マークが出まくりながら診察台に上がった。器具が体の中に入って来るのが痛重い…
「妊娠、してますね」
「え!?」
「ここにいるのが赤ちゃんです。5週目ですね」
左頭上にあるモニターで、先生がこれが赤ちゃん、という場所を画面に矢印を出して説明した。
「え、え?生理来ましたよ?生理来てるのに妊娠するんですか?」
「えっと、説明するから診察台から降りて服を着て出てきてください」
…なに?どういうこと?なんで?さっき以上に頭の中が?だらけだ。それからものすごい不安が襲ってきた。
「生理が来たと思ったのは、着床出血ですね。妊娠しましたよっていうしるしみたいなものです」
「…」
「えーっと…17歳?高校生ですか?」
「…はい…」
あたしは消え入りそうな声で返事をした。制服で産婦人科に行くのは目立つだろうと思って私服で来たけど…まぁ高校生ですかって質問になるのが当然か。
「想像してなかったみたいだけど…まだ学生さんだし、しっかり父親の方と親御さんとも相談してくださいね。もちろんピルは処方出来ません」
「ありがとうございました…」
診察室から待合室まで戻る足取りがものすごく重かった。病院を出て家に帰るまでも。
生理が来たって思った時点で、妊娠の兆候なんて全く調べてなかった。着床出血、って何よ…
家に一旦帰って制服を着直して学校に行くつもりだったけど、そんな気持ちは一気に無くなりあたしはひとりぼっちの家で久志くんが帰ってくるまで心細くてずっと泣いていた。
…どうしよう…
***
「菜々?帰ってんの?」
仕事を終えて帰ってきた久志くんが、陽が落ちると共に暗くなってきた部屋の中にいるあたしを玄関から呼んだ。
気配はあるのに返事がないあたしを心配して、早足で部屋に入ってきた。
「どうしたん!めっちゃしんどそうやん…ていうか泣いてる?」
「…出来てた…」
「何が?」
「…赤ちゃんが、出来てた…」
「え?どういうこと?え、なんで?え?」
取り乱す久志くんに抱きつくと更に涙が出てきた。
こうこうで、こうだから生理が来たのは勘違いだった。病院で調べたから間違いない。エコー写真ももらった。
久志くんと向き合い、何度も声を詰まらせながら説明した。ゆっくりでいいよ、って最初に言われて話してたからかなり時間が経っていたと思う。あたしが話を聞いている間久志くんはずっと黙っていた。
話し終わった後もしばらく無言で、部屋にはあたしのすすり泣く声だけが響いていた。
「…ごめん」
久志くんがあたしに向かって土下座をした。
「やめて…」
土下座をしてくるっていうことは、どういうことか。久志くんが口を開く前にわかった。
「ほんまに、ほんまにごめん。…堕ろしてください」
「なんでなん…?」
産めそうにないことはもうわかってた。けど理由が聞きたかった。
「大丈夫やろって軽く考えてた。…今まで失敗したことなかったから」
失敗。久志くんにとっては今あたしが妊娠してる状況は失敗なんだ…
「車乗ってる時も、菜々が検査薬してる時も、もし妊娠してたらって考えた。俺はまだ父親になる覚悟が無い。…菜々のことも子供のことも幸せにしてあげれる自信も無くて」
「…」
「生理来たって言われて安心しきってた」
「…久志くんとは別れるから、父親にならんくていいから、1人で産むのもあかんの?」
「…ごめん。菜々とは別れたくない。たとえ別れて産んだとしても自分の知らんとこで子供が育つなんて考えれへん…」
「迷惑かけへんから…」
「無理やって!まだ子供なんやから親の力とか借りな育てられへんねん。菜々、お母さんに頼れる?助けてくれる?」
あたしは近くにあったティッシュ箱を久志くんに投げた。
痛っ…って眉をしかめながら小さく呟いた久志くんの顔にイラついて、ドライヤーとか化粧水とか、そこら中のものを全部投げつけた。久志くんはあたしを止めずにずっと黙っていた。
「あたしは子供なんやろ!?なんで子供に対して中出しなんかしてたん!?」
「ごめん。ほんまにごめん」
あたしは泣いて暴れて、力尽きて意識を失う様に眠ってしまった。
ごめん。ほんまにごめん。
久志くんは何度も小さく呟きながら、床に突っ伏しているあたしを抱きかかえて、ベッドに寝かせた。
…久志くんだけが悪いんじゃない。久志くんの言葉を鵜呑みにしたあたしだって悪いんだ。大丈夫って言われたし、今までの自分の経験上でも大丈夫だって思ってなぁなぁにしてたんだから。
わかってる。わかってるけど。
産みたい。けど産めない…
この状況になってから、なんてことをしたんだろうってやっとわかった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる