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「じゃあ、お仕事頑張ってね」
「うん。ゆっくりして帰りや」
「ありがとう。…あたし今日、蓮くんに電話するから…」
「…了解。また連絡するわ。いってきます」
「いってらっしゃい」
「愛してるよ」
あたしにキスをしてから、ホテルのドアを開けて出て行く剛くんを見送った。
結婚したらこんな感じなのかな…
正直、蓮くんに別れ話をするのは気が重い。あんなに優しい人を悲しませることになるんだから。
けどちゃんとしなきゃ。優しい人だからこそ、これ以上騙し続けるのは辛い。あたしなんかと一緒にいるより、他の人との方が幸せになれるから。ちゃんと蓮くんだけを愛してくれる人が必ずいるから…
“ずっと連絡出来なくてごめんなさい。近々会える時間はありますか?”
やっぱりスマホが鳴ってたのは蓮くんからの着信とメールだった。
蓮くんのメールにそう返信して、身支度を整えてあたしはホテルを後にした。
***
「…ごめんなさい。ほんとに、ごめんなさい…」
その日の夜中…というか朝方、蓮くんはあたしの家に来た。
遅くなるなら疲れてるだろうし、他の日でも大丈夫だよって言ったけど今日絶対に行く、って言われてしまった。
そんな疲れた状態で来てくれるのに、こんな話するなんて申し訳ないなって思ったけど…そんな中で来てくれるからこそ、ちゃんとけじめをつけなきゃいけないと思った。
あたしが話し終わるまで、蓮くんは俯いて相槌も打たずにずっと黙って話を聞いていた。
こんなに重苦しい空気…久志くんに妊娠したことを話した時以来だ。
好きな人がいるから。その人が好きだって気付いちゃったから結婚は出来ないし、もう一緒にいられない。そう言い終わった後蓮くんが口を開いた。
「…俺が菜々と結婚したいって言ったからダメだったんだよね」
「ダメとかじゃないよ…」
「俺が結婚したいなんて言わなきゃずっと菜々と一緒にいれたかもしれないじゃん。俺が結婚したいって言わなきゃ菜々はその人への気持ち気付かなかったんでしょ?」
「…」
「…俺が結婚したいって言ったの忘れて欲しい」
「え…?」
「もう言わないから。結婚なんておこがましいこと言わないしまだそばにいさせて欲しい」
「でもあたし、他の人を好きな状態で蓮くんと一緒にいるなんて申し訳なさすぎて無理だよ…出来ないよ、そんなの」
「それでもいいから」
「…あたし、もうその人とセックスしたんだ」
「え…?」
蓮くんの顔が曇った。まぁ当然だよね。
「ごめんなさい…」
「…嘘だよね?菜々はそんなことする子じゃないよね?」
「嘘じゃない」
「…いつそんなことになったの?」
「ずっと前から何回もそうなってるよ。昨日も、今日の朝もしてたの。その人に抱かれてたから、蓮くんの電話に出なかったの」
「なんで…?」
蓮くんが今にも泣き出しそうな顔をしている。
「…っていうかさ蓮くん、聞いていい?二人で撮られた写真って、蓮くんがわざと撮らせたの?」
「え…」
蓮くんが焦った様子を見せた。それを見てあたしは笑ってしまった。
「やっぱりそうなんだ。責任取って結婚する、みたいな流れにしたかったの?」
「そんなんじゃ…」
「蓮くん、最近だもんね変装し始めたの。撮って下さいって言わんばかりに何の変装もせずに来てたよね。あたしの家に来る時」
「そんなつもりじゃない。俺は菜々と真剣に付き合ってるから!コソコソしたくなかったから…」
「あたしが叩かれるところまで想像してなかったんだ」
「…」
「…ほんとは傷付いてたよ。強がってたんだよ。…菜々は蓮くんにはめられたんじゃないかって好きな人に言われてから、確かに変だなって思ってきた」
「それじゃあなんで気にしてないなんて言ったの?」
「言えなかったの。蓮くんに心配かけたくなかったから」
「ごめん…。けど、はめたなんてそんな言い方」
「だってそうじゃん。…蓮くんがこんなことしなければあたしだって違う人を好きになってなかった。蓮くんのことが信じられなくて、他の誰かのぬくもりが欲しくてセックスしたの。そしたらいつのまにか好きになってたの、ごめんなさい」
「そんな…」
「…もう無理だよね、あたし達…」
「…無理って…」
「好きになってくれてありがとう…。最低な女でごめんね…」
「それでも俺は一緒に」
「自分の彼女を週刊誌に売るような男無理だから!」
「…売ったとかじゃ、ないんだよ…」
「もう、帰ってくれる…?呼び出しといて、自分勝手でごめんなさい」
「菜々」
「ごめんなさい。さよなら」
「ごめん…。菜々のこと、本当に愛してたよ」
聞くに耐えれなくて、あたしは蓮くんに背中を向けてカーペットに座り込んだ。
「…」
「菜々、バイバイ…」
蓮くんが部屋を出て行った。
ぐすっ…
蓮くんがいなくなった途端、涙が出てきた。
…自分でもよくあそこまで嘘が言えたもんだって感心する。傷付いてもないし強がってもないし、寂しいっていう理由で剛くんとセックスしたことなんて一度もないのに。ただ自分が気持ちいいからしてただけなのに。
蓮くんのせいで浮気したみたいな言い方して、罪悪感を煽って。
ただ剛くんと一緒にいたいだけで蓮くんのことを悪者にして一方的な別れ方をした。
蓮くんのこと嫌いになったわけじゃない。けどそれ以上に剛くんのことが好きになってしまったから、蓮くんの愛情がいらないものになってしまった。
けど今泣いてるのは蓮くんへの罪悪感以上に、剛くんと一緒になる為の第一歩を踏み出せた嬉しさが大きいと思うの。
そんな風に、自分勝手な自分が情けなくて、もっと涙が出てくる。
最低だって自分でもわかってる。いつかバチがあたるかもって思うくらい最低だけどあたしはこう思う。
早く剛くんに会いたい…。
「うん。ゆっくりして帰りや」
「ありがとう。…あたし今日、蓮くんに電話するから…」
「…了解。また連絡するわ。いってきます」
「いってらっしゃい」
「愛してるよ」
あたしにキスをしてから、ホテルのドアを開けて出て行く剛くんを見送った。
結婚したらこんな感じなのかな…
正直、蓮くんに別れ話をするのは気が重い。あんなに優しい人を悲しませることになるんだから。
けどちゃんとしなきゃ。優しい人だからこそ、これ以上騙し続けるのは辛い。あたしなんかと一緒にいるより、他の人との方が幸せになれるから。ちゃんと蓮くんだけを愛してくれる人が必ずいるから…
“ずっと連絡出来なくてごめんなさい。近々会える時間はありますか?”
やっぱりスマホが鳴ってたのは蓮くんからの着信とメールだった。
蓮くんのメールにそう返信して、身支度を整えてあたしはホテルを後にした。
***
「…ごめんなさい。ほんとに、ごめんなさい…」
その日の夜中…というか朝方、蓮くんはあたしの家に来た。
遅くなるなら疲れてるだろうし、他の日でも大丈夫だよって言ったけど今日絶対に行く、って言われてしまった。
そんな疲れた状態で来てくれるのに、こんな話するなんて申し訳ないなって思ったけど…そんな中で来てくれるからこそ、ちゃんとけじめをつけなきゃいけないと思った。
あたしが話し終わるまで、蓮くんは俯いて相槌も打たずにずっと黙って話を聞いていた。
こんなに重苦しい空気…久志くんに妊娠したことを話した時以来だ。
好きな人がいるから。その人が好きだって気付いちゃったから結婚は出来ないし、もう一緒にいられない。そう言い終わった後蓮くんが口を開いた。
「…俺が菜々と結婚したいって言ったからダメだったんだよね」
「ダメとかじゃないよ…」
「俺が結婚したいなんて言わなきゃずっと菜々と一緒にいれたかもしれないじゃん。俺が結婚したいって言わなきゃ菜々はその人への気持ち気付かなかったんでしょ?」
「…」
「…俺が結婚したいって言ったの忘れて欲しい」
「え…?」
「もう言わないから。結婚なんておこがましいこと言わないしまだそばにいさせて欲しい」
「でもあたし、他の人を好きな状態で蓮くんと一緒にいるなんて申し訳なさすぎて無理だよ…出来ないよ、そんなの」
「それでもいいから」
「…あたし、もうその人とセックスしたんだ」
「え…?」
蓮くんの顔が曇った。まぁ当然だよね。
「ごめんなさい…」
「…嘘だよね?菜々はそんなことする子じゃないよね?」
「嘘じゃない」
「…いつそんなことになったの?」
「ずっと前から何回もそうなってるよ。昨日も、今日の朝もしてたの。その人に抱かれてたから、蓮くんの電話に出なかったの」
「なんで…?」
蓮くんが今にも泣き出しそうな顔をしている。
「…っていうかさ蓮くん、聞いていい?二人で撮られた写真って、蓮くんがわざと撮らせたの?」
「え…」
蓮くんが焦った様子を見せた。それを見てあたしは笑ってしまった。
「やっぱりそうなんだ。責任取って結婚する、みたいな流れにしたかったの?」
「そんなんじゃ…」
「蓮くん、最近だもんね変装し始めたの。撮って下さいって言わんばかりに何の変装もせずに来てたよね。あたしの家に来る時」
「そんなつもりじゃない。俺は菜々と真剣に付き合ってるから!コソコソしたくなかったから…」
「あたしが叩かれるところまで想像してなかったんだ」
「…」
「…ほんとは傷付いてたよ。強がってたんだよ。…菜々は蓮くんにはめられたんじゃないかって好きな人に言われてから、確かに変だなって思ってきた」
「それじゃあなんで気にしてないなんて言ったの?」
「言えなかったの。蓮くんに心配かけたくなかったから」
「ごめん…。けど、はめたなんてそんな言い方」
「だってそうじゃん。…蓮くんがこんなことしなければあたしだって違う人を好きになってなかった。蓮くんのことが信じられなくて、他の誰かのぬくもりが欲しくてセックスしたの。そしたらいつのまにか好きになってたの、ごめんなさい」
「そんな…」
「…もう無理だよね、あたし達…」
「…無理って…」
「好きになってくれてありがとう…。最低な女でごめんね…」
「それでも俺は一緒に」
「自分の彼女を週刊誌に売るような男無理だから!」
「…売ったとかじゃ、ないんだよ…」
「もう、帰ってくれる…?呼び出しといて、自分勝手でごめんなさい」
「菜々」
「ごめんなさい。さよなら」
「ごめん…。菜々のこと、本当に愛してたよ」
聞くに耐えれなくて、あたしは蓮くんに背中を向けてカーペットに座り込んだ。
「…」
「菜々、バイバイ…」
蓮くんが部屋を出て行った。
ぐすっ…
蓮くんがいなくなった途端、涙が出てきた。
…自分でもよくあそこまで嘘が言えたもんだって感心する。傷付いてもないし強がってもないし、寂しいっていう理由で剛くんとセックスしたことなんて一度もないのに。ただ自分が気持ちいいからしてただけなのに。
蓮くんのせいで浮気したみたいな言い方して、罪悪感を煽って。
ただ剛くんと一緒にいたいだけで蓮くんのことを悪者にして一方的な別れ方をした。
蓮くんのこと嫌いになったわけじゃない。けどそれ以上に剛くんのことが好きになってしまったから、蓮くんの愛情がいらないものになってしまった。
けど今泣いてるのは蓮くんへの罪悪感以上に、剛くんと一緒になる為の第一歩を踏み出せた嬉しさが大きいと思うの。
そんな風に、自分勝手な自分が情けなくて、もっと涙が出てくる。
最低だって自分でもわかってる。いつかバチがあたるかもって思うくらい最低だけどあたしはこう思う。
早く剛くんに会いたい…。
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